テーマ 「泌尿器科の新しい手術~ロボット手術ってなんだろう~」 講演要旨 2009 年に手術用ロボットが薬事法で承認され、2012 年 4 月に前立腺がんに対する全摘 手術が保険収載されました。それ以降手術ロボットを導入する施設が増加し、前立腺がん 手術も徐々に増加しています。現在ロボットで手術ができる疾患は泌尿器科領域が最も多 く、前立腺がん、腎がん、膀胱がんなど、他に消化器外科領域で大腸がん、胃がん、婦人 科領域で子宮筋腫、子宮がん、胸部外科領域で肺がん、縦隔腫瘍があります。前立腺がん 以外は保険が適用されません。 ロボット手術は、術者がコンソールという飛行機のコックピットのような操作ボックス で機械を操作しながら行うものですが、機械が自動で行う操作は全くありません。あくま でも術者の腕や指先の操作を、精密に手振れをなくして伝えるに過ぎません。しかし、こ れまで開腹手術ではなかなか見にくかった骨盤内部の様子が立体的に良く見え、手動の腹 腔鏡手術の道具では操作しづらかった細かい切開や吻合(縫い合わせること)が体内で行 えるようになったことで、格段に出血の少ない手術ができるようになったことは非常に画 期的なことです。逆に触感がないことが合併症の原因となることもあり、機械の特性の十 分な理解と手術チームの協調が重要です。 ロボット手術の最大の特徴は、拡大してみることができる 3D カメラの映像と、自由度の 高い小さなロボット鉗子の動きによって、繊細な手術操作が可能になったことであり、こ のことによって前立腺がん手術では排尿機能や男性機能をなるべく残しながら手術できる ことも多くなってきました。前立腺がんに比べて腎がん、膀胱がんではこれまでの開腹手 術と比べた大きな研究結果はあまりなく、ロボット手術が明らかに優れているというとこ ろまで言い切れませんが、縫合操作がしやすかったり、臓器の摘出までに出血量を少なく できたりすることは利点と考えて良いと思われます。 これらのロボット手術の利点となりうる病状は、前立腺は限局がん、腎がんは小さい腫 瘍径、膀胱がんは筋層浸潤までのできるだけ早期に近いことが条件となります。本講座で はロボット手術の特徴、利点欠点、ロボットを用いた泌尿器科がん治療につい解説します。
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