Topics 2020 年までの東京 23 区賃貸住宅市場 はじめに 2001 年の J-REIT の創設以来、日本の賃貸住宅市場は大きく変貌を遂げようとしている。従来の個 人オーナーによる土地活用目的のアパート経営や、サラリーマンのワンルームマンション投資から、機 関投資家や年金基金の資金を導入した、プロのマネジャーによる賃貸住宅経営の時代に入っている。 大手不動産会社や生命保険会社を中心としたプロによる運用の歴史があるオフィス・セクターと異な り、賃貸住宅セクターは一般的に見てプロによる運用の歴史が浅い。そのため、需要や供給を分析し たレポートも少ない。 そこで、昨年秋の「米国住宅セクター分析からの示唆」に続く第 2 弾として、日本の賃貸住宅市場に ついて分析を試みた。賃貸住宅市場の中心である都市部のモデルとして東京 23 区を取り上げ、現状 および今後の傾向を分析する。 東京23区の賃貸住宅市場の現状 東京 23 区には 2003 年時点で約 441 万戸の住宅ストックがあり、そのうちの約 240 万戸(54%)を賃 貸住宅が占めている。賃貸住宅の空室率は 14.2%、約 34 万戸の空室がある。 ここでは賃貸住宅を「賃貸マンション」「アパート等」「公団・公社・公営住宅」「給与住宅」の4つに大 別しているが、このうち J-REIT 等の投資対象である「賃貸マンション」は約 91 万戸あり、住宅ストック全 体の 21%、賃貸住宅の 38%を占めている。 一方、東京 23 区の世帯数は、2003 年時点で約 384 万世帯である。 世帯主の年齢層別比率は 15 ∼24 歳 8.0%、25∼34 歳 18.7%、35∼44 歳 16.9%、45∼54 歳 15.5%、55∼64 歳 17.2%、65 歳以上 23.7%と、全国平均と比べて比較的バランスが良い。地方からの若年層の流入による社会増でバラン スが保たれている。 2020 年の市場予測 日本全体は人口減少時代を迎えているが、東京 23 区の世帯数は 2003 年から 2020 年までに約 384 万世帯から約 435 万世帯へ、約 51 万世帯増えると予測される。 また、年齢層別の持ち家比率にもとづく予測モデルによると、賃貸住宅の需要は 2003 年の約 240 万戸から 2020 年には約 260 万戸へ、約 20 万戸増加すると試算される。 賃貸住宅の社会的耐用年数を 40 年と仮定すると、この間に約 92 万戸の滅失が見込まれるため、 合わせて約 112 万戸の新規供給が必要となる。このうち賃貸マンションは約 52 万戸と予測される。これ を 10 年間に換算すると約 31 万戸に相当し、この供給ペースは過去供給の多かった 1970 年代および 1980 年代に匹敵する。 つまり、2020 年までの東京 23 区の賃貸マンション市場は、多少の大量供給があっても吸収できるほ どの需要が見込まれ、賃料水準も維持あるいは上昇すると予想される。 まとめ 東京 23 区の賃貸マンション市場は、2020 年にかけて需給共に堅調に推移すると予測される。予測 の前提として建物の社会的耐用年数を 40 年としたが、2020 年時点で築 40 年以上の賃貸マンションは 旧耐震基準の建物であることから、建替えられる可能性が高い。 2020 年以降、たとえば 2030 年においては新耐震基準の建物が大半を占めるため、社会的耐用年 数が伸び、新規供給にブレーキがかかる可能性があるが、少なくとも 2020 年までは、賃貸マンション市 場は安定的に成長するものと思われる。 仁 位 清 丸 NOMURA REAL ESTATE DEVELOPMENT CO., LTD
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