検索するキーワードを入力 検索 HOME > 連載コラム > カクテルバー物語:第一夜 ブルーマンデー 読者のみなさんはじめまして。「カクテルバー物語」監修の竹田英和です。今月号から、カクテルバー・Kissポートを舞台にし た、ショートストーリー(フィクション)を連載することになりました。 この講座ではカクテルの紹介だけでなく、バーでのマナーやよもやま話もさりげなくお伝えしたいと思います。よろしくお願い します。 初めての失敗だった。入社して5年、何事もそつなく仕事をこなしてきた僕が、まさか商 談の時間を間違えるなんて…。小雨降る最悪の月曜日の帰り道、ふと目に入ったカクテ ルバーの看板。気がついたらカウンターの前に腰掛けていた。 「お客様、何をお作りいたしましょう?」 バーテンダーの突然の声にハッとした。 「あ、とりあえずビールを…」 「かしこまりました」 グラスに注がれるビールを、ただぼんやりながめていた。 「お仕事の帰りですか? それになんだか元気がなさそうですね」 「いや、色々あってね。あんまり気にしないでください…」 「そうですか…。まあ、今日はゆっくりしていってください」 「………」 僕はちびちびとビールを飲み始めた。 「次は何を飲まれますか?」 バーテンダーの声で気がつくと、グラスは空だった。もう少し飲んでいこうか…。 「じゃあ、ジントニックでも」 「よろしければ私に任せてもらえませんか?」 適当に言ったんだし、何でもいい。 「あ、それじゃあ…」 しばらくすると鮮やかなマリンブルーに輝くグラスがゆっくりと差し出された。この店のお 薦め品なのか? 「こちらをどうぞ」 「ブルーマンデー」 ブルーマンデー」レシピ ウォッカ:45 ml コアントロー:15 ml ブルー・キュラソー:1tsp ※コアントローはオレンジエキスのリ キュールであるホワイト・キュラソー の1種。ブルー・キュラソーはオレンジ エキスのリキュール(青色)。 1tspは 小さじ1杯のこと。 カクテルはお客様とバーテン ダーのコミュニケーションの結 晶のようなもの。その日の気 分や体調、好みによって調整 いたします。だから名前なん て知らなくても大丈夫! 「何か飲みたい」からスタート グラスを手にして口に運んだ。さわやかな香りとスッキリした喉越しが、胸の中のモヤモ ヤを和らげてくれるようだった。 「うまい! さっぱりしてておいしい!」 「ブルーマンデーといいます」 よりによってこんな日に…。 「ブラックマンデーはご存知ですよね?」 '87年10月19日の月曜日、NY株式が史上最大の暴落をした日。何の話をしたいのだ? 「その日、ウォール街の片隅のカクテルバーで生まれたのが、このブルーマンデーで す。『憂鬱な月曜日を吹っ飛ばし、スッキリ前向きに生きよう!』ってノリで…。今日、お 客様はだいぶお疲れのご様子でしたので…」 バーテンダーはニッコリ微笑んだ。 「実は、仕事で大失敗をしてしまって。すみません…。そういうことを話すのは苦手で…。 でも 隠せないものですね」 「いえいえ、そんな気がしただけですよ」 不思議な安堵感が胸いっぱいに広がった。そして、僕は続けてこう言った。 「もう一杯ください」 しましょう。でも「何でもいい」 だけはご勘弁を(笑)。 「私は竹田といいます。お客様はどうお呼びすればよろしいですか?」 「港といいます」 「港さん、わざわざ雨の中をありがとうございました。またお近くにお寄りの際にはぜひ 遊びに来てください」 「ありがとう。また!」 バーテンダー、いや竹田さんのおかげで心が軽くなった。僕は竹田さんに感謝しつつ、 カクテルバーKissポートを後にした。 カクテルに関する質問・疑問は、 〒107-0052 港区赤坂4-18-13 Kissポート財団「カクテル講座」係まで。 ※このストーリーはフィクションです。 ▲このページのトップへ |個人情報保護について [PDF]| (公益財団法人 港区スポーツふれあい文化健康財団) 港区赤坂4-18-13赤坂コミュニティーぷらざ 電話:03-5770-6837/Fax:03-5770-6884 お問い合わせ:[email protected] このホームページはKissポート財団の公式ホームページです。このホームページのすべての権利は当財団に帰属します。 当財団の許可なく複製、転載は出来ません。
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