大阪市立科学館研究報告 26, 109 - 110 (2016) 「赤青緑の光サイエンス」 光源の変更について 小 野 昌 弘 * 概 要 2015 年 6 月 5 日 〜8 月 30 日 に実 施 したサイエンスショー「赤青緑の光 サイエンス」は、2012 年に実施 した「光 のヒ・ミ・ツ」の再 演 である。内 容 的 には、ほぼ完 成 されたものとなっており、光 の三 原 色 について の理 解 、影 に色 がついて見 えるような実 験 を通 して、補 色 に関 して楽 しみながら 学 ぶこと、また、科 学 的 思考 の涵 養 ができる内 容 となっている。本 実 験 では、光 の三 原色を作るため液 晶プロジェクターを使 用し た。前 回 はスライドプロジェクターを利 用 していたが、その変化や使 い勝手 について以 下に紹介する。 1.はじめに 映し出すことで実験ができる。 光の三原 色に関 する本 実 験 で、RGB 各 色 を作るた めに、液 晶 プロジェクターを使 用 した。使 用 した液 晶 プ 2.実 験方 法 ロジェクターは、エプソン EB-SO3である(販 売 終 了 液晶プロジェクターに RGB のそれぞれの JPG データ 品)。本 液 晶プロジェクターは長 谷 川 学 芸 員 が、光の 3 が入 った USB メモリを接 続 し、その画 像 をスライドショ 原 色 の展 示 を作 るにあたり使 用 していた液 晶 プロジェ ー表示することで、常時 各色 を映し出すことができる。 クターの後継 機である。 それら 3 台のプロジェクターを 1 台のテーブルに並べ、 映し出される RGB の色 画面 の高さを調整する。 図1.エプソン EB-SO3 本体左下に写真 のように USB メモリを接 続 できる。 図2.プロジェクターの配置 。手前から R、G、B の色 が出るようにしてある。 利 点 は 、USB ( タ イプ A ) が 使 用 でき る と こ ろであ る 。 USB(タイプA)とは、通 常 の USB メモリがつながる、一 般的な形 状のものである。USB メモリに RGB の JPG 画 像を入れ、3台のプロジェクターから RGB をそれぞれ、 * 大阪市立科学館 主任学芸員 ono@sci-museum.jp 3.液 晶プロジェクター利 用の利 点 液 晶 プ ロジェク ターを 使 用 した 場 合 、以 前 使 用 して いた ス ライド プ ロジェ ク ターと 比 較 し、有 利 な点 は 、以 下のとおりである。 ①色味 スライドプロジェクターは 100V-300W のランプを使 - 109 - 小野 昌弘 用 しているが、いわゆる白 熱 電 球 色 をしており、そこへ クターの電 球 に負 荷 をかけるため、適 正 な使 用 方 法 で RGB のカラーフィルター(ケンコートキナー製 )を使用 し はない。 ても元 々の光 源 が電 球 色 であるため、白 色 光 を作 るた めに色温 度変換フィルターを使 用 する必 要 がある。 液 晶 プ ロ ジ ェ ク タ ー に つ い て は 、 200W で あ る が 、 2600 lmほどの明 るさを持 ち、明 るさについては、 遜 色 ないうえ、スライドプロジェクターより白 色 光 に近 い光 を 出 すため、RGB を混 ぜたときにも白 色 光 として認 識 し やすい。 ②ランプ寿命 スライドプロジェクターは、現 在 ほぼ液 晶 プロジェクタ ーに置 き換 え られているた め、ランプもほ ぼ僅 少 在 庫 販 売 しかない状 態 である。当 館 では、ランプ在 庫 を有 しているが、将 来 的 には、在 庫 切 れとなるのが目 に見 図3.液 晶プロジェクターとライトをふさぐカバー。 えている。 右 側 の黒 い板 状 のもの。 本 実 験 で、スライドプロジェクターを使 ったときにラン プの ON-OFF を頻 繁 に行 うため、通 常 の常 時 点灯 使 用 より、球 切れが起 きやすい状 態 である。 それに対 して、液 晶 プロジェクターの場 合 は、電 源 を 一 旦 落 と すと 、再 立 ち上 げまで時 間 がかか るた め、こ 液 晶 プロジェクターのランプの場 合 、実 験 中 の ON -OFF をしない運 用 をしたことから、ランプ交 換の心配 のような電 源の ON-OFF の使用方法 では、実験がで きない。 もない状 態であった。 そのため、図 3のような手 製 の遮 光 板 を用 意 した。し かし、この方 法 では、各 光 の色 を確 認 するのに、演 示 ③映像枠の調 整 者 が一 々液 晶 プロジェクターの前 にこの遮 光 板 をおく 液晶プロジェクターの調 整 機 能 により、台 形 補 正 など 必要があり、演示がしにくくなった。 を使うことで、映 し出 される RGB の画 像 のひずみを少 なくすることができ、見 やすくなる。 さらにもう一 点 は、間 違 えて電 源 ボタン等 で、プロジ それに対 して、スライドプロジェクターは、映 し出 され る映 像 枠 の形 のひずみ補 正 できないため、その映 し出 ェクターが 消 灯 してしまった 場 合 、再 立 ち上 げまで時 間がかかることである。 される形 状 が大 きくひずみ、その映 像 の形 状 が気 にな る。 5.まとめ サイエンスショーとして演 示 を行 う際 、実 験 や演 示 の ④小型化・軽量 化 流 れが切 れるのは、見 学 者 としてストレスがかかるとこ 液晶プロジェクターは幅 約 297㎜奥 行 き 234 ㎜、高さ ろである。もちろん、実 験 がきちんと見 えないということ 77 ㎜重さ、2.4 ㎏と軽 量 なため、実 験 の際 の移動がし は更なるストレスで、ショーを見ることを放棄されてしまう やすい。特に重さは、スライドプロジェクターが 1 台 で 7 ことになる。色 見 の問 題 や映 像 調 整 の容 易 さから、本 ㎏あったため、大 幅 な軽 量 化 が進 み、取 り扱 いが容 易 光 の三 原 色 の実 験 には、液晶 プロジェクターの使 用 が になった。 有 効 であると考 えられるが、光 を出 す、消 すといった部 分 での演出 上のぎこちなさが、ショーの流れのスムーズ 4.液 晶 プロジェクター利 用 の不 利 な点 さをそいでいる部 分がある。 先 に述 べた、3の①、②に記 したが、スライドプロジェ 今 後 、液 晶 プ ロジェクターの光 の出 し方 や消 し方 に ク タ ー の 場 合 、 ハ ロ ゲ ン 電 球 の た め 、 電 源 の ON - ついてス ムーズに 行 える よう な仕 組 みを 考 案 し、 次 回 OFF に対 して、光 が瞬 時 に出 たり、消 えたりする。その 再演がある場合に備えたい。 ため、電 源の ON-OFF スイッチがついたタップに接 続 することで、手元 で容 易 に RGB の各 色 をつけたり、消 したりすることができる。そのため、光 の色 を確 認 するた め、各 色 をつけたり消 したりする実 験 が、ストレスなく行 える。なお本 来 、このような使 い方 は 、スライドプロジェ - 110 -
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