2013年 8月号 第三十七話 統計数値に注意する④ 国内外のメディアで

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ぐぅのうぇぶへい
参 議 院 選 挙 で 自 民 党 が 圧 勝 し た 。こ の 勝 利 は 、安 倍 首 相 の 成 長 戦 略 ア ベ ノ ミ ク ス
によるが、その実現性を疑問視する国内専門家は多い。経済の門外漢にとっては、
アベ ノミク スをどのように理 解しど う評価すべき か 、よくわからない 。将 来のこ と
であ り、専門家 を含め誰にも 正しい 予測は困難な 問題で あるが 、国内メデ ィアの 取
り上 げ方に は、偏りがあるよ うに思 われる。この ような 場合、海外の見方や評価 に
耳を 傾ける のも一つの方法で ある。今回は 、内外 の主要 メディ アや経済専 門家に よ
る 「 Abenomics」 の 情 報 入 手 の 具 体 的 な 方 法 つ い て 紹 介 し よ う 。
第三十七話
統計数値に注意する④
国 内 外 の メ デ ィ ア で Abenomics を チ ェ ッ ク
アベノミクスを推進する安倍首相が、次々と繰り出す成長戦略の「具体的な目標
数 値 」に 、国 内 メ デ ィ ア や 経 済 専 門 家 が 振 り 回 さ れ て い る 。例 え ば 、「 農 家 の 所 得 倍
増 」、「 国 民 所 得 150 万 円 増 」、「 企 業 の 設 備 投 資 を 年 間 70 兆 円 に 」、「 イ ン フ ラ 輸 出
を 30 兆 円 に 」 な ど な ど 。
これらの数字の信憑性については、多くのメディアや専門家が疑問を投げかけて
い る 。ネ ッ ト で 調 べ る に は 、{ 農 家 の 所 得 倍 増 }、{ 農 家 の 所 得 倍 増
{ 国 民 所 得 150 万 円 増
ア ベ ノ ミ ク ス }、
安 倍 首 相 }な ど と キ ー ワ ー ド 検 索 す れ ば 、各 種 メ デ ィ ア や
専門家のコラムから、さまざまな情報が入手できる。
「 農 家 の 所 得 倍 増 」だ け に つ い て み て も 、NHK( 時 論 公 論 ほ か )、日 経・朝 日 新 聞 、
東 洋 経 済 ・ 日 経 BP ネ ッ ト な ど な ど 、 テ レ ビ 局 、 大 手 新 聞 社 、 主 要 雑 誌 な ど マ ス コ
ミの多くが、この問題点を指摘している。
た だ、このアベノミクスの場合、 これら の具体 的な数値の信 憑性に ついて チェッ
クす るだけでなく、安倍首相の成長 戦略そ のもの のチェックが 、必要 になる と言っ
てよい。成長戦略の中身とその将来性と実現性について、多面的に調べることが重
要になる。特に、国内の主要メディアや専門家の情報だけでなく、海外の主要メデ
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ィア や経済専門家からの情報収集が 重要に なる。
海 外 メ デ ィ ア が 、日 本 に 関 心 を 寄 せ る の は 、2011 年 3 月 の 東 日 本 大 震 災 の 大 事 故
以来 といってよい。アベノミクスの 今後の 行方は、日本経済だ けの問 題ではなく、
世界経済への影響も大きいからである。
ア ベ ノ ミ ク ス に 対 す る IMF( 国 際 通 貨 基 金 )や FRB( 連 邦 準 備 制 度 理 事 会 )の 見
解や、英エコノミスト・フィナンシャル・タイムズ・ブルームバーグなど海外主要
メデ ィアの報道は、海外投資家の動 向に大 きく影 響する。
アベノミクスに関する資料を集める上で心がける点は、マスメディアへの政治圧
力の動向である。今回の参議院選挙の前と後で、マスコミの報道スタンスが大きく
変わっているのはこのためといってよい。海外メディアからの情報収集が重要なの
は、日本政府の圧力がかかり難いためである。
さて、国内の主要記事について網羅的に調べるには、ヤフーのリンクサイトであ
る 「 ト ピ ッ ク ス 」 覧 ( http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/) が 便 利 で あ る 。
トピック欄には、ニュース一覧「安倍政権の経済対策」が用意されており、新聞
紙 や 週 刊 誌 の 記 事 へ の リ ン ク ( こ の 記 事 を 書 い て い る 時 点 で 、 500 件 ) が 張 ら れ て
いる。このニュース一覧が便利で重要なのは、時系列の順に資料が入手できる点で
ある。アベノミクスへの見方や評価は、時々刻々変化しているからである。
このアベノミクスを調べるのに、最も便利であり重要なのがウィキペディアであ
る。それは、アベノミクスの紹介、アベノミクスを取り巻く日本経済の事情や歴史
だ け で な く 、政 府・野 党 の 立 場 や 見 解 、海 外 の さ ま ざ ま な 反 応( 賛 成・反 対 )、そ し
て、 情報源への膨大なリンク集が、 掲載さ れてい るからである 。
アベノミクスをウィキペディアで調べてみると、安倍とエコノミックスを合わせ
た 造 語 で 、 2012 年 11 月 か ら 多 用 さ れ 始 め た 言 葉 で あ り 、 ド イ ツ 語 、 英 語 、 フ ラ ン
ス 語 で 、「 Abenomics」 と 表 記 さ れ て い る と い う 。
アベノミクスについての海外の関心の高さを反映して、英語版のウィキペディア
に は 、「 Abenomics」の 見 出 し で 、内 容 が 紹 介 さ れ て い る 。こ の 中 の Criticism の 項
目には、批判的見解を述べている専門家の氏名も記載されており、その名前を頼り
にして、更に、そのウェブサイトで詳しく批判内容を調べることが大切である。
ま た 、 グ ー グ ル で 、 {ア ベ ノ ミ ク ス site:ja.wikipedia.org}と し て ウ ィ キ ペ デ ィ ア
のサイト内検索を行うと、アベノミクスに関する経済の出来事から、アベノミクス
言及している内外専門家の氏名まで、簡単に入手出来る。
日 本 の メ デ ィ ア は 、『 海 外 メ デ ィ ア「 ア ベ ノ ミ ク ス に 厳 し い 目 」= 金 融 政 策 偏 重 に
市場 が不信感』といった記事を掲載 するこ とが少 なくないが、 この読 み方に は注意
が必要である。読者にとって海外記事の引用紹介は便利であるが、オリジナル記事
に 再 度 ア ク セ ス す る こ と が 大 切 で あ る 。例 え ば 、あ る 要 約 紹 介 記 事 の 見 出 し は「 [FT]
アベ ノミクスが危険なこれだけの理 由」で あるの に対して、オ リジナ ル記事の見出
し は 「 ‘Abenomics’is not enough to rescue Japan」 と な っ て い る 。
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