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「はい,こちらお天気相談所」
伊東譲司
著
東 京 堂出 版 ,2012 年 3 月 ,
168 頁 ,1600 円 (本 体価 格 )
ISBN978- 4- 490-20773- 6
『 青 空は な ぜ青 い ので すか ? 』
「光 ので ん わ」,「 波の で んわ 」,「災 害の
気象 に 関連 する 仕 事を し てい る方 な らば, でん わ」, そし て「 知 識の でん わ 」で ある。
一度 は こん な質 問 を受 け たこ とは な いだ ろ
これ ら のタ イト ル から も ,著 者が 一 般に な
うか 。 大学 の授 業 では あ れば 「レ イ リー 散
じみ や すい 言葉 を 用い て 本書 を執 筆 して い
乱に よ るも のだ か ら, 放 射の 勉強 を しな さ
る様子 が読み 取れ るだろ う。
い」,と い えば いい か もし れな い 。し かし,
ここ で は各 章か ら いく つ かの 質問 を 紹介 し
これ が 一般 の人 か らの 質 問だ った ら どう だ
よう 。 質問 に対 す る著 者 の回 答は 示 さな い
ろう。
でお く ので ,読 者 がそ れ ぞれ 読者 な り回 答
その よ うな 答え 方 で納 得 する はず が ない。 を思い 浮かべ なが ら読ん でい ただき たい。
一般 の 人か らの 気 象に 関 する 素朴 な 質問 の
まず「 風の でんわ 」から一 つ。
『風は どう
対応を 一手に 担っ ている のが,気象 庁 の「天
して吹 くんで すか ?」。気象学 の最 も 基礎的
気相談 所」で ある 。
な知 識 の一 つで あ る。 同 時に ,日 常 生活 を
天気相 談所に は 1 日に平 均で 150 件 から
200 件 の 電 話 相 談 が あ る と い う (「 は じ め
送っ て いる 中で 自 然に 感 じる 疑問 で ある 。
私も小 さい頃 にこ の疑問 を持 ってい た。
に」参照)。特 に,台風 や異常 気象 が 起こっ
次に「雲の でん わ 」から 。質問は ,
『 霧と
た時な どは, 300 件か ら 450 件も の 相談が
もやの 違いは 何で すか? 』。こ れは 気 象予報
ある ら しい 。本 書 の著 者 は, 天気 相 談所 予
士な ら おそ らく 答 える こ とが でき る 質問 で
報官 と して 勤務 し た経 験 をも とに , 毎日 寄
ある 。 霧と もや は ,ど ち らも 微小 な 水滴 ,
せら れ る質 問を 選 別し , 質問 の内 容 とそ の
また は 氷晶 でで き てい る が, これ ら の違 い
対応 , 付随 する 知 識を ま とめ て本 書 を執 筆
を説明 できる だろ うか。
して い る。 素朴 な 質問 か ら本 当に こ んな 電
3 章は『光 のでん わ』。文頭 で示 した 『青
話が かか っ てき た のか と思 わ れる 質 問ま で, 空は な ぜ青 いの で すか ? 』は この 章 で紹 介
幅広く 紹介さ れて いる。
さて, 本書で は質 問が 7 つの トピッ クに
され てい る 。ま た,『「 夕 焼け 」っ て どん な
とき に 見え るの で すか ? 』や
『 虹 はど う
分け ら れて 記述 さ れて お り, これ が その ま
して で きる ので す か? 』 など ,こ の 章に は
ま章立 てとな って いる。1 章 から順 に ,
「雨
子供 の 頃に よく 疑 問に 思 った 現象 に 対す る
のでん わ」,「 風の でんわ 」,「 雲ので ん わ 」,
質問 が 紹介 され て いる 。 続い て『 波 ので ん
わ 』。 最 初 の 質 問 は 『 波 は ど う し て で き る
答え る だけ でな く ,電 話 をし てき た 人の 感
の? 』であ る。ここ で紹介 され ている『波』
情を 読 み取 り, ま るで カ ウン セラ ー のよ う
は大 気 の波 動で は なく , 海の 表面 に 立つ 一
に接 す るこ とが 大 事な 場 合も ある 。 たと え
般的 な 「波 」で あ る。 一 般の 人が 天 気相 談
相手 が感 情 的に 電 話を かけ て きた と して も,
所に 大 気の 波動 に 関す る 質問 をす る こと は
天気 相 談所 の職 員 が電 話 口で 喧嘩 を して は
考えに くい。
いけな いので ある 。
ただ , 最近 は異 常 気象 の 説明 を 通じ て,
本書 で は, 最後 に 「寒 い ほど き れい な冬
偏西 風 の蛇 行や ロ スビ 一 波と いう 言 葉が 一
の自 然 」と して , 霜柱 や 霧氷 ,氷 柱 など の
般の人の耳に入り始めており,専門的な
写真が 掲載さ れて いる。ただ,
「知 識 のでん
「波 」 の質 問が 天 気相 談 所に 届い て いる か
わ」の あとに 特に 説明も なく 出てく る ため,
もし れ ない 。さ て 本題 に 戻っ て, 次 のト ピ
やや 唐 突な 感じ を 受け た 。個 人的 に は, 最
ックは「災害 ので んわ」。ここ では 台 風 や地
後に 全 体の まと め のよ う な章 があ っ ても よ
震, 集 中豪 雨な ど ,災 害 をも たら す 事象 に
かっ た ので はな い かと 思 う。 また , 本書 に
関す る 質問 と回 答 が書 か れて いる 。 その 中
は多 く の図 が掲 載 され て いる が, 本 来カ ラ
から一 つ,
『なぜ 台風 は「 上陸す る 」と表現
ーと 思 われ る図 が すべ て 白黒 だっ た こと が
するの ですか ?』。これ は私も 知ら な かった
残念で ある。
が, 皆 様は ご存 じ だろ う か。 いわ ゆ る雑 学
本書 を 読ん で, 著 者の 回 答が 適切 だ と思 わ
である 。最 後に『知 識ので んわ』。気 象学の
れる 質 問も あれ ば ,私 な ら別 の言 い 方で 回
基礎 知 識か ら天 気 予報 , 地球 温暖 化 まで ,
答す る ,と いう 質 問も あ った 。質 問 に対 す
様々 な知 識 に関 す る質 問が 紹 介さ れ てい る。 る答 え は一 つで は なく , いろ んな 答 えが あ
『天 気 予報 はど う やっ て 作っ てい る のか 教
るは ず であ る。 本 書を た だ読 み流 す だけ で
えてく ださい ?』。これ は気象 の研 究 者や気
なく , 質問 に対 す る読 者 なり の回 答 を考 え
象予 報 士は ,必 ず と言 っ てい いほ ど 聞か れ
なが ら 読む こと で ,本 書 を読 む価 値 がさ ら
る質問 ではな いだ ろうか 。以 上が全 7 章の
に高ま るので はな いだろ うか 。 1 日 に 150
簡単 な 紹介 であ る 。な お ,本 書が 昨 年の 東
件近く あると いう 電話。 是非 第 2 弾 ,第 3
日本 大 震災 の後 に 執筆 さ れた こと も あり ,
弾を期 待した い。
随所で この震 災の ことが 触れ られて いる。
最後に ,改め て本 書評の 読者 へ。
本書 の 中で の隠 れ たお 勧 めが ,時 々 登場 す
『青空 はなぜ 青い のです か? 』
る「 電 話奮 闘記 」 であ る 。こ こで は 実際 に
いい回 答を思 いつ いただ ろう か。
行わ れ た電 話で の やり 取 りが 会話 形 式で 書
かれ て いる 。こ れ を読 む と, いか に 多様 な
電話 が 天気 相談 所 にか か って くる の かが よ
くわ か る。 質問 に よっ て は, 質問 に 正確 に
(海洋 研究開 発機 構
川 瀬宏 明)