Isabelle Perrin

CD 批評
イザベル・ペラン ハープ
Isabelle PERRIN, Harpe; Integral Classic, 2007, Int 221.159
20世紀初頭を象徴する偉大なハープの作品
のCDを作るにあたり、演奏者が自分の名前以
外何もタイトルにつけないというのは、ある程
度落ち着いた自信と、自分への確信が必要で
ある。表現の中から余計な音楽的解釈は取り
除き、作品の上に立ってひたすら音楽をし、演
奏する。
最近イザベル・ぺランによってリリースされた
CDがまさにそれである。CDのカバーにあるカ
プレ、フォーレ、ピエルネ、ルーセルという作曲
者のリストは、中身が何であるか最小限のヒン
トを与えてくれる。
アン・グリフィスによって書かれた素晴らしい
完全な解説がCDに付いており(フランス語・英
語・日本語で印刷されている)、19世紀後半に
生きた作曲家たちの音楽を含んだ記述がされ
ているが、このCDの作品は20世紀前半以降のものであり、西洋の中心として「光の都」であったパ
リで、ほとんどの作品が初演されてる。
グランジャニーの「子どもの時間」の非常に楽しい読み聞かせのようなオープニングのあと、ぺラ
ンが紹介するのは、よく知られているガブリエル・ピエルネの「即興奇想曲」である。ここで演奏とレ
コーディングの質が即座に現れる、特に呼びかけと応答の部分でぺランの強弱のコントロールの仕
方、そしてアルペジオの伴奏の上でメロディーを引き出す能力がすばらしい。
ほとんどのハープ奏者が知っているように、アンドレ・カプレはペダルグリッサンドを演奏会用レ
パートリーで初めて使った作曲家の一人であり、ぺランは「スペイン風ディヴェルティメント」の中で
それが簡単であるかの様な印象を与える。その残響はほとんど即興のように聞こえ、グリフィスの
解説のように、フラメンコギターのスタイルを思い起こさせる以上のものだが、ここで弾かれている
のは41本弦の数が多い楽器である。
フォーレの2つの曲、「塔の中の王妃」と「即興曲」はこのCDのハイライトであり正にこのCDの為
に選曲されたと言える。これまであらゆるハープ奏者たちがリサイタルや演奏会のプログラムでこ
の曲を演奏しているが、ペランの演奏は中でも最も優れていると言えるだろう。特に印象的なのは、
ハーモニックスと伴奏のバランス、全体的にメローディーラインがはっきりしていること、そしてこの
曲の強弱の速い展開を、繊細なコントロールでぺランが維持しているところである。
最後に、ぺランの師であるエリザベス・フォンタンがパリ音楽院で習っていた、マルセル・トゥルニ
エの「ソナチネ」でこのCDは終えられている。ここでぺランは、再度、多くのハープ奏者たちに親しま
れている領域に飛び込み、「ソナチネ」が要求しているドラマと魅力を確かな感受性で表現している。
このCDはベルギーのフランク・ワレという教会で録音、マニュエル・モヒノによって製作されている。
教会の自然な響きと、ハープの存在感がありしかし不自然でない音とが完璧に調和している。何ヶ
所か、教会の自然な響きの長さよりも前にフェイドアウトしているようだが、これだけ質の良いCDを
聞くことからすれば小さなことに過ぎない。陳腐な演奏で使い古されたレパートリーに、ペランは新
しい活力を見事にもたらし、世界中のハープ奏者に素晴らしい模範を示している。正に「イザベル・
ぺラン ハープ」というタイトルにふさわしい人である。
By Roger Greive (Harp Column誌) 訳:東海林悦子