抄録ダウンロード - 日本コーチング学会

演題番号 POS-01
サッカーの効果的な練習の組み方に関する研究
○當銘美幸(日本体育大大学院)、伊藤雅充(日本体育大)
本研究では、サッカーの各カテゴリーにおけるトップレベルの監督およびコーチがどのように練習メニューを
組んでいるのかを、半構造化インタビューを用いて明らかにすることを目的とした。スポーツ競技において、練
習メニューはアスリートに技能や戦術を獲得させる手段である。デューイによると学習は経験を通してなされる
とされており、練習メニューはアスリートに経験を与える重要な要素の一つであると考えられる。つまりトップ
レベルのコーチは練習メニューを通してアスリートに効果的な経験を与えることができている可能性が高い。対
象者は各カテゴリーで優勝経験のあるトップレベルの監督およびコーチを対象とした。インタビューは、インフ
ォーマントの理解を得たうえでボイスレコダーに録音した。収集されたデータは逐語録として記録され、質的研
究手法にそって分析を行った。トップレベルのコーチの練習メニューの組み方を明らかにすることは、様々な
コーチがより効果的な練習メニューを作成する際の一助になると考えられる。
演題番号 POS-02
2014年サッカー w 杯におけるコーナーキックの有効的な動作について
○西井隆人(日本体育大大学院)、西尾末広(日本体育大)
サッカー競技における得点の割合は、フリーキックとコーナーキックによる得点が全得点の内 1 / 3 を占めて
いる。これまでも、2004 年ヨーロッパチャンピオンシップではセットプレーからの得点が全得点の内 35.6%で
あり、そのセットプレーの得点の内、コーナッキックからの得点は 40%と一番高い割合を占めていることが明ら
かにされている。これらのことから、コーナーキックは得点を得る機会として重要であると考えられ、コーナー
キックからの得点効率を高めることでゲームを有利に運べるのではないかと考えた。コーナーキックに関する先
行研究では、ボールの行き先を追う研究はあるが、選手の動きに着目した研究は管見ながら見当たらない。そこ
で本研究では、コーナーキックを成功させるための選手の動作及び移動軌跡に着目し、その有効性を明らかにす
ることを目的とした。2014 年ブラジル w 杯予選リーグ全 48 試合を対象として、試合映像を基に記述的ゲームパ
フォーマンス分析を行った。得られた結果からコーナーキックの質の高いトレーニング法の組み立てについて検
討した。
演題番号 POS-03
最近の FIFA ワールドカップ4大会のゴールキーパーのシュート処理法の変化
―2010年南アフリカ大会と2014年ブラジル大会の比較を中心に―
○伊藤耕作(宇部工業高等専門学校)
2002 年日韓大会、2006 年ドイツ大会、2010 年南アフリカ大会、2014 年ブラジル大会からそれぞれ 52、55、50、
58 試合を対象に、オープンプレーから放たれた枠内シュート(1165 例)に対してゴールキーパー(GK)がとっ
た処理法について分析を行った。GK のシュート処理法を 5 つに分類しそれぞれの割合を 3 つのシュートエリア別
に比較すると、最も顕著な傾向が示されたペナルティーエリア外からのシュートでは、シュートをキャッチする
割合が大会毎に減少し、シュートを弾く割合が増加していく傾向がみられた。GK のシュートの弾き方を両手と
片手に分類し、さらに GK がシュートを弾いた後の対応を 4 つに分けて比較した結果、WC02 は GK が両手で弾い
たボールを自らキャッチする割合が最も高かったが、WC06 では片手でボールを弾いてコーナーキックへ処理す
る割合が増加していた。また、WC10 では GK が両手で弾いたボールを敵が処理する割合が増加したが、WC14 で
は GK が弾いたボールを味方が処理する割合が増加していることが明らかになった。
―21―
演題番号 POS-04
皇后杯全日本女子サッカー選手権大会のシュート傾向に関する事例研究
○森政憲(筑波大学大学院)
、田村達也(早稲田大学大学院)、堀野博幸(早稲田大学スポーツ科学学術院)、
小井土正亮(筑波大学体育系)
、中山雅雄(筑波大学体育系)、浅井武(筑波大学体育系)
サッカーのゲームパフォーマンス分析では、得点あるいはシュートに至るまでの攻撃に着目した研究が多い。
女子サッカーを対象とした研究では、世界大会でのシュート傾向や男女間を比較したシュート傾向の分析が行わ
れている。そこで本研究では、日本トップレベルにある女子サッカーチームのプレーパフォーマンスをシュート
傾向に着目して事例的に明らかにすることを目的とした。対象試合は、第 35 回・第 36 回皇后杯全日本女子サッ
カー選手権大会の決勝及び準決勝の合計 6 試合である。シュートに至った全ての攻撃を分析対象とした。分析項
目は、
「シュート時間」
、
「ボール奪取位置」
、
「アシスト位置」
、
「アシスト者のタッチ数」
、
「アシストパスの球種」
、
「アシストパスキックの種類」
、
「シュート位置」
、
「シュート者のタッチ数」
、
「シュートの球種」
、
「シュートキッ
クの種類」とした。データ解析はχ 2 検定を用いた。その結果、日本女子サッカートップレベルのシュート傾向
の一側面が明らかとなった。
演題番号 POS-05_IMP-01
シナプソロジーが中学生男子サッカー選手のボールポゼッション時の状況判断力に及ぼす効果
○南薗佑太郎(鹿屋体育大大学院)、村上俊祐(鹿屋体育大大学院)、
塩川勝行(鹿屋体育大学)、髙橋仁大(鹿屋体育大学)
サッカーは 11 対 11 で行うゴール型のスポーツで、思考、判断、決断、実行を繰り返し、相手より多くのゴー
ルを奪うスポーツである。これらの能力の向上は、経験に依存することが多いのが現状である。状況判断力の向
上に有効なプログラムとして「シナプソロジー」が近年注目されている。シナプソロジーとは、基本動作に感覚
器刺激と認知機能刺激を加え、脳に混乱を起こすことによって脳機能を活性化させることを目的としている(シ
ナプソロジー普及会、2014)。アメリカンフットボール選手を対象にした研究では、協調性や脳の注意機能が高
まったという結果が報告されている。そこで本研究は、中学生男子サッカー選手を対象に、シナプソロジーを導
入することによって状況判断力に与える影響について検討することを目的とした。通常のトレーニングに加え
て、サッカーの基本動作を基に考案したシナプソロジーのプログラムを実施する。プログラムの前後で、状況判
断を必要とするボールポゼッションテストを実施し、選手の状況判断力を質的、量的に検証する。
演題番号 POS-06
日本の大学サッカー選抜チームにおけるゲームコンセプトに関する検討
―日・韓大学サッカー選抜戦のゲーム分析を通して―
李宇韺(専修大学スポーツ研究所)
、川田尚弘(拓殖大学)、大平正軌(流通経済大学)、松本尚也(桃山学院大
学)
、吉村雅文(順天堂大学)
、大嶽雅人(日本大学文理学部)、飯田義明(専修大学スポーツ研究所)
日本サッカー協会は 2005 年宣言として 2015 年までに世界ランキングトップ 10 入りを掲げ、その日本代表チームが世界
で結果を残すために、日本代表チームの礎となる育成年代の強化を強調している。そうでなければ継続的に日本代表チー
ムを強化することは困難であり世界ランキングに入ることは勿論、近年レベルが上がってきているアジアでも上位レベル
を保つのは容易ではないであろう。
日本と韓国は世界と異なり、学校制度のなかでスポーツ強化が図られてきた歴史があり、プロ選手に成るために多様な
コースが用意されている 3)
。そのなかでも大学を経由してのプロ選手は年々増加をしており、日本サッカー界の底上げの
ためにも大学年代の強化も一つの大きな課題といって差し支えないであろう。全日本大学サッカー連盟では、2 年に 1 回開
催されるユニバーシアード大会優勝を目指して選手を選抜し、強化を図ってきている。このように大学年代の強化の必要
性はいうまでもないが、それではどのように育成していくかという指導者の育成も大切になってくる。つまり、豊富で的
確なコーチング論を有した指導者を育成していくことが、結果的に育成年代の強化になるということなのである。
そこで本研究においては、まず指導者がゲームコンセプトとして何を選手に伝え、試合のデータ分析から何がコンセプ
ト通り出来、何がすることが出来なかったかを明らかにすることを目的とする。ただし、本研究ではその後の修正トレー
ニングまでを含めていない。そのため次期ユニバーシアード大会まで継続的に代表を追い、問題点をどのようなトレーニ
ングにより修正するかのプロセスを蓄積することにより、コーチング学研究のゲームコンセプト認識トレーニングの方法
論を明らかにしていくことを目指している。
―22―
演題番号 POS-07
中学生サッカー選手のチーム戦術に対する認識について
○小圷昭仁(防衛大学校)、長谷川望(愛知東邦大学)
本研究は、中学生サッカー選手のチーム戦術に対する認識構造を明らかにし、戦術指導の一助となり得るチー
ム戦術観測定尺度を作成することを目的とした。中学生サッカー選手 380 名を対象とし、チーム戦術に対する印
象を問う 44 項目から成る質問紙を用いて、調査を実施した。得られた回答に対して、探索的因子分析を施した結
果、5 因子が抽出された。次いで、各因子の項目数統一を意図した探索的因子分析を実施した。その結果、各項
目はそれぞれの因子に従属し、.40 以上の因子負荷量とともに単純構造を示した。抽出された因子は、第 1 因子
「熟達化」、第 2 因子「能力偏重」
、第 3 因子「指示の受容」
、第 4 因子「方略の把握」、第 5 因子「指導者依存」と
命名された。その後、5 因子(15 項目)のモデルに検証的因子分析を行った。その結果、適合度は GFI=.963、
AGFI=.944、CFI=.972、RMSEA=.030 であり、充分な値であった。潜在変数から観測変数へのパス係数は、全て
有意であり(p<.001)
、中程度以上の正の値(.42 − .79)が示された。これにより、5 因子 15 項目で構成されるモ
デルが容認され、構成概念妥当性が検証された。本研究では、中学生サッカー選手のチーム戦術に対する認識構
造が 5 因子構造であることが明らかとなった。
演題番号 POS-08
サッカーにおけるクロスボールのシュートの正確性について
〜シュートの位置とステップワークに着目して〜
〇松竹貴大(大阪体育大学トレーニング科学センター)、坂本康博(大阪体育大学)
サッカーにおけるサイドからの攻撃、クロスボールからのシュートは効果的な攻撃方法として試合でよく見ら
れる得点シーンの一つである。現在、大阪体育大学サッカー部では、グラウンダーのクロスボールをダイレクト
でシュートを打つ時の位置、ステップワークや体の向きなどのポイントを意識づけて取り組んでいる。ダイレク
トシュートはゴールキーパーがタイミングを取りにくいといった長所がある為、ボールを枠内に蹴りこむことが
出来れば効果的な攻撃となる。また速いグラウンダーのクロスは反応するのが難しく守備側の選手にとっても攻
撃側の選手にとっても難しいボールとなるので、ピンポイントでフォワードに合わせることが出来ればゴール
キーパーも反応できず強力な攻撃となる。
そこで、本研究では、クロスボールにおける効果的なシュートの打ち方を指導現場に役立てる為に、シュート
する位置やシュートへの入り方がシュート正確性にどのように関係しているのか検討を行った。
演題番号 POS-09_IMP-02
侵入型球技種目における「ボールをもたない動き」の戦術的知識に関する研究
○青山彰吾(筑波大学大学院)、松元剛(筑波大)
本研究の目的は、侵入型球技種目全般に共通する戦術的知識テストを作成・実施し、
「ボールをもたない動き」
の知識の獲得状況を明らかにすることとした。戦術的課題には Griffin et al.(2001)の「Tactical Principles Rub
ric for the 7 Tactical scenarios」を参考に、
『スペースの創出』および『スペースの活用』を設定した。問題は紙
面上で正しい戦術行動を取っているものを選択する形式とし、全 8 問(創出・活用 4 問ずつ)で構成した。対象
者は中学生男子サッカー選手 66 名(12.6 ± 0.7 歳)と一般男子中学生 49 名(13.1 ± 0.8 歳)とした。なお、一般中
学生はサッカー以外の侵入型球技専門を「侵入群」
、侵入型以外の球技専門を「非侵入群」
、球技以外の種目専門
およびスポーツ経験のないものを「非球技群」に分類した。結果は、
『スペースの活用』得点では群間に有意な
差は認められなかったが、
『スペースの創出』得点において、サッカー群が非侵入群および非球技群よりも、侵
入群が非球技群よりも有意に高い値を示した。以上より、侵入型球技種目の経験が『スペースの創出』の戦術理
解に大きく影響することが明らかとなり、また、戦術的課題には難易度が存在することが示唆された。
―23―
演題番号 POS-10_IMP-03
中学校バスケットボール部員における集団凝集性と集合的効力感の測定
○西野剛(大阪体育大学大学院)
近年、スポーツ集団の競技パフォーマンスと正の関連性があるとされている集団凝集性、集合的効力感につい
て、様々な研究が行われている。しかし、それらの研究は、高校生や大学生などを対象としたものが多く、中学
生を対象としたものはほとんど見られない。これには、中学生を対象としにくい様々な要因が考えられる。ま
た、GEQ(GroupEnvironmentQuestionnaire)の翻訳版、CEQS(CollectiveEfficacyQuestionnaireforSports)の
翻訳版についても中学生では理解しにくい文章表現もある。本研究では、中学生バスケットボール部員(男子 n
= 122、女子 n = 143、1 年生 n = 108、2 年生 n = 83、3 年生 n = 74)を対象として、集団凝集性、集合的効力感の
測定を行うため、GEQ の翻訳版、CEQS の翻訳版を中学生用に一部修正し、その信頼性を検証した。また、中学
生の学年差、男女差による特性をみることとした。信頼性は、Cronbach’s α係数を算出して確認した。下位尺度
も含め、概ね高い内的整合性が確認された。学年差、男女差では、集合的効力感に有意な差がみられた。
演題番号 POS-11_IMP-04
バスケットボール競技におけるキックアウトの有効性に関する研究
○小谷究(日本体育大学)、藤田将弘(日本体育大学)
本研究では、バスケットボール競技のゲームにおいてキックアウトとシュート成功率の関係を明らかにし、指
導現場における基礎的データを得ることにしたい。対象とした 10 試合からハーフコートマンツーマンディフェン
スに対するオフェンスにおける 379 本の 3 ポイントシュートが得られ、分析を行った。キックアウトによる 3 ポイ
ントシュート成功率は 47 ± 20%、アウトサイドからのパスによる 3 ポイントシュート成功率は 30 ± 13%であり、
キックアウトによる 3 ポイントシュート成功率は、アウトサイドからのパスによる 3 ポイントシュート成功率に
比べ有意に高い値を示した(p < 0.01)
。キックアウトによる 3 ポイントシュートの割合は勝チームが 24 ± 14%、
負けチームが 18 ± 8% であり、アウトサイドからのパスによる 3 ポイントシュートは勝チームが 76 ± 14%、負け
チームが 82 ± 8% であった。以上の結果から、キックアウトを行うことで高確率の 3 ポイントシュートを打つこ
とが可能となることが明らかとなり、キックアウトからの 3 ポイントシュートを増加させることで、ゲームの勝
利につながることが示唆された。
演題番号 POS-12
バスケットボールの非ボール保持者の状況判断の因子構造
○八板昭仁(九州共立大)
、青柳領(福岡大)、倉石平(早稲田大)、野寺和彦(玉川大)、
大山泰史(九州共立大)
、川面剛(九州共立大)、案浦知仁(福岡大大学院)
バスケットボールのプレイヤーは、ボール保持時だけでなくボール非保持時の動きや戦術が重要であり、ボー
ル保持者のみならず他の味方プレイヤーの位置関係や相手プレイヤーの状況の理解などを瞬時に判断してプレイ
する状況判断能力が必要である。そこで本研究は、バスケットボールのゲームにおける非ボール保持者の包括的
な状況判断能力テストによって、非ボール保持時の状況判断の構造を明らかにすることを目的とした。対象は、
5 大学のバスケットボール選手 158 名であり、非ボール保持時の戦術行動とみられる 107 項目の状況判断能力テス
トを実施した。各項目の正答は 5 名中 3 名のバスケットボール指導者の解答が一致したものとし、採点可能とな
った 78 項目を対象として探索的因子分析を行った。その結果「セットオフェンスにおける選択的注意」
、
「トップ
エリアにおけるパスレシーブのための動き」などと解釈できる 4 つの因子が抽出されたので報告する。
―24―
演題番号 POS-13_IMP-05
バスケットボール競技におけるリアルタイムゲーム分析の有効性に関する研究
○山中萌衣(鹿屋体育大学大学院)
、村上俊祐(鹿屋体育大学大学院)、木葉一総(鹿屋体育大学)、
塩川勝行(鹿屋体育大学)、髙橋仁大(鹿屋体育大学)
バスケットボール競技において、ゲーム分析は試合に勝利するための重要な一つの手段である。そこで本研究
は、バスケットボールの試合中にゲーム分析の結果をリアルタイムに出力する手法を構築し、その精度について
検討することを目的とする。大学女子バスケットボール部の試合を対象とし、ゲーム分析ソフトである SportsC
ode を用いて、個人別のエリア毎のシュート本数、シュート確率、およびシュートの種類についてリアルタイム
に出力する分析方法を構築する。構築した手法でのリアルタイムの分析結果と、ビデオ映像をもとに確認しなが
らの分析結果とを比較し、リアルタイム分析結果の誤差について検証する。その結果、リアルタイム分析結果と
ビデオ分析結果との間には、一定の精度があることが確認された。本研究の手法によって、実際の試合中のリア
ルタイムのゲーム分析を一定の精度で行うことが可能になったといえる。
演題番号 POS-14
バスケットボール競技のディフェンスにおける方向転換技術
○福田有利子(筑波大学大学院)、内山治樹(筑波大学体育系)
バスケットボール競技において、オフェンスの多様な動きに応じた方向転換技術を身につけることは、ディフ
ェンスのパフォーマンス向上に大きく貢献すると考えられる。そして、ボール保持者に対するディフェンスの方
向転換技術には、主にドロップステップターン(DS)とヒップターン(HT)が用いられている。しかし、これ
までの研究では、DS と HT における方向転換時の速さを比較検討したものが報告されているに過ぎず(McCormi
ck.etal.、2014)
、方向転換時における角度や方向転換までの距離が速さに及ぼす影響は未だ解明されていない。
そこで本研究では、女子バスケットボール選手を対象に、DS と HT における方向転換角度の違いが方向転換速度
に及ぼす影響を比較検討し、ディフェンスにおける方向転換の方法(DS または HT)の内実を明らかにすること
で今後のディフェンス指導に貢献することを目的とした。
演題番号 POS-15_IMP-06
24秒ルールの変更によるバスケットボールのゲーム様相の変化
○原大典(鹿屋体育大学大学院)
、村上俊祐(鹿屋体育大学大学院)、木葉一総(鹿屋体育大)、
三浦健(鹿屋体育大)、髙橋仁大(鹿屋体育大)
バスケットボールのルールは、2000 年の 10 分 4 ピリオド制の導入、ショット・クロックの 30 秒ルールが 24 秒
ルールへと変更、2010 年の 3P ラインの拡大とノーチャージエリアの設置など、たびたび変更されてきた。そし
て、2014 年 10 月からは 24 秒ルールの一部が、
「フィールド・ゴールあるいは最後のフリースローのボールがリン
グに触れたのち、シューター側チームのプレイヤーがそのリバウンドのボールを取った場合は,24 秒計は 14 秒か
らはかり始める。
」
(FIBA,2014)へと変更された。この変更により、ショットの回数や攻撃回数が増加すると
考えられている。そこで本研究では、バスケットボールの BOX スコアに着目し、ルール変更による数値的変化
について検討することとした。ルール改正前の 2013 年とルール変更後の 2014 年の W-JBL のリーグ戦を対象に、
公式ホームページに掲載されている BOX スコアを用いて数値的変化について比較する。なお、攻撃回数(Posses
sion)については、BasketballonPaper(Oliver,2004)を参考に、Possession=FGA-OR+TO+FTA × 0.4 とした。
BOX スコアから見る数値的変化について、リーグ全体としてルール変更による大きな変化は見られなかった。
―25―
演題番号 POS-16
バスケットボール競技における低身長チームの戦術に関する研究
―ペイントエリアに着目して―
〇韓超(筑波大学大学院)
本研究は、2013 年アジア選手権大会でベスト 4 に進出したフィリピンと中華台北という 2 つの低身長チームの
ペイントエリアでの戦い方を明らかにすることで、低身長チームが高身長チームに勝利するための方策を得るこ
とを目的とした。分析方法は、全試合におけるペイントエリア内得点を勝敗別に比較し、ペイントエリアへの侵
入回数、侵入成功回数、侵入率、侵入成功率及び侵入成功時における局面の勝敗別の比較と侵入方法及び侵入後
のプレイの検討を行った。本研究の結果から、低身長チームはペイントエリア内の得点を数多く挙げることが勝
利に結びつき、そのためにも、常にペイントエリアへの侵入を試み、それをできる限り早い段階で終わらせるこ
とが、しかし、ペイントエリアに侵入するには 1 対 1 の高い能力が不可欠であるとともに、カットを効率的に用
いることも重要であることが明らかとなった。また、侵入後のプレイは「シュートすること」が第一であり、そ
れには、高度なシュート技術を持たねばならないことが示唆された。
演題番号 POS-17
バスケットボールにおけるフローター・シュートのメカニズムと指導のポイント
○町田洋介(筑波大学大学院)内山治樹(筑波大学体育系)吉田健司(筑波大学体育系)
「制限区域内での得点の低さ」は、バスケットボール男子日本代表の課題の一つである。本研究では、それを
克服するための新たなオフェンスの手段としてフローター・シュートの有効性に着目し、3 次元動作分析(VICO
NMX+)を用いて、このシュートに固有のメカニズムと高い成功率を得るための指導上のポイントを明示するこ
とを目的とした。分析の結果、ジャンプ・シュートやレイアップ・シュートと比して、一定の構えを創らずとも
よい、弱い手首のスナップ、ボードの最高点と同程度の高いアーチ、といった固有のメカニズムから成っている
ことが明らかとなった。また、垂直ジャンプ(29cm)、ボール保持の際の構え、リリース動作、リリース高
(27cm)
、リリース角度(52 度以上)
、ボール回転(1 〜 2 回転)という 6 つの指導のポイントが判明した。これら
のフローター・シュートのメカニズムと指導のポイントは、他のシュートとの相違を説明する際に役立つととも
に、今後、代表チームのみならず、わが国のあらゆるレベルのコーチやプレイヤーに貢献するであろう。
演題番号 POS-18_IMP-07
大学テニス選手のグラウンドストロークにおけるボールの回転数の分布
―打球コースの違いによる比較
〇村上俊祐(鹿屋体育大学大学院)、北村哲(びわこ成蹊スポーツ大学)、
髙橋仁大(鹿屋体育大学)、前田明(鹿屋体育大学)
近年、ボールに多くの回転を与えられることが、テニスのパフォーマンスを規定する一つの要因となってい
る。ボールの回転数についての報告も増えてきており、村松ら(2014)は、世界トップ選手のサービスの打球速
度と回転数のデータを示している。しかし、グラウンドストロークについては、打球速度と回転数を合わせた
データは殆ど見られず、トップレベルを目指すプレーヤーにおけるデータも少ない。そこで、大学テニス選手を
対象に、フルスイングできる状況を想定したヒッティングテストを行い、打球速度および回転数の分布を明らか
にすることを目的とした。各選手ともに、グラウンドストロークにおける打球速度と回転数の間に、負の相関が
みられ(p<0.01)、その打球速度―回転数関係は、選手の特徴や課題を表す可能性が示唆された。また、クロス
方向の打球の方が、速度が高い傾向がみられた。
―26―
演題番号 POS-19
ユニバーシアードチーム(男子テニス)の強化活動報告
-3大会のメダル獲得に至った強化事業から ○宮地弘太郎(大阪体育大学)
、道上静香(滋賀大学)、細木祐子(園田学園女子大学)、
高橋仁大(鹿屋体育大学)、小屋菜穂子(九州共立大学)、
北村哲(びわこ成蹊スポーツ大学)、梅林薫(大阪体育大学)
2012 年ユニバーシアード競技大会(深圳)
、2014 年ユニバーシアード競技大会(カザン)、東アジア競技大会
(天津)において日本チームとして、合計 6 個のメダル(混合ダブルス銅 2, 銀 1, 男子団体銅 1, 個人シングルス金 1,
ダブルス銅 1)を獲得した . 獲得に至った取り組みを、本大会でのコーチング事例、国内合宿(ゲーム分析、座
学、混合ダブルス、男子ダブルス、男子シングルス)体力測定合宿等から、多角的に事例報告する . 結果は当日
発表する。
演題番号 POS-20
テニスラケット装着型センサーによる打球種別の判定に関する研究
○髙橋仁大(鹿屋体育大学)
、村上俊祐(鹿屋体育大学大学院)、北村哲(びわこ成蹊スポーツ大学)
テニスラケット装着型センサー(SonySmartTennisSensor、以下スマートセンサー)は、打球時の振動と加速
度を感知してラケットとボールのインパクトポイント、スイングスピード、ボール初速度、回転のレベルおよび
打球時の打球種別を認識して表示する。スマートセンサーを使用することにより、打球時の情報を簡便に記録、
確認することが可能となり、プレーヤーの技能を評価する有効な手段となりうると考えられる。このスマートセ
ンサーを指導現場で実際に使用する際には、その精度がどの程度であるかを認識したうえで使用することが必要
である。そこで本研究は、スマートセンサーを使用した際に記録される打球種別の判定にどのような誤差がある
かを明らかにすることを目的とした。学生テニス選手によるゲームを対象に、スマートセンサーを装着したラケ
ットおよびアプリをインストールしたタブレット端末を使用して、打球種別の記録を行った。その結果、スピン
系の打球の判別には一定の精度が確認されたものの、他の打球の判別には誤差があることが明らかとなった。
演題番号 POS-21
学生テニス競技の団体戦におけるベンチコーチの言葉かけの効果に関する研究
○能勢優史(広島大学大学院)
、尾方剛(広島大学大学院)、又吉孝昭(広島大学大学院)、
多治見幸亮(筑波大学大学院)、出口達也(広島大学)
テニス競技において、団体戦のみ許されているベンチコーチは、チェンジコートの際、選手に直接アドバイス
をすることができる。そのため、団体戦の試合では、ベンチコーチの存在が勝敗に大きな影響を与えていると考
えられる。本研究では、学生テニス競技における団体戦の勝敗に大きな影響を与えていると考えられるベンチ
コーチの言葉かけに着目し、試合でのベンチコーチの言葉かけの種類、またどのような言葉かけが効果的なのか
を調査し、ベンチコーチの効果について検討することを目的とした。
研究の結果、ベンチコーチの言葉かけは試合結果に大きな影響を与えることが明らかとなった。競技成績の高
い人や指導経験が長い人がベンチコーチをすることで、試合展開や試合の状況に応じてより具体的で適切な言葉
かけができ、またミスはどのような種類で何が原因なのかを理解し、さらにミスの原因と次回への手掛かりとな
る言葉かけをすることで勝利をすることができることが明らかになった。
―27―
演題番号 POS-22
大学女子テニス選手におけるエラーの起きた状況とその発生要因に関する研究
○平田大輔(専修大学・日本体育大学大学院)、柴原健太郎(日本体育大学大学院)、
佐藤周平(青山学院大学)
、村上貴聡(東京理科大学)、森井大治(日本体育大学)、
佐藤雅幸(専修大学)、西條修光(日本体育大学)
平田ら(2014)は、大学女子テニス選手の試合において全ポイントの 50%以上でエラーがみられ、その内容は
フォアハンドストローク、クロスラリー、リターン、ダブルフォルトであることを報告している。また、アンフ
ォースドエラー(以下:UE)の要因について調査したところ、主な要因は「情報処理過程」
「情動・感情」であ
ることも明らかにしている。しかし、UE の起きる状況との関連については明らかにされていない。そこで本研
究では、どのような状況でどのような要因が見られるかについて明らかにすることにした。
大学女子テニス選手10名を対象に簡易ゲーム(8ゲームマッチ)を行い、選手が UE をした直後に IC レコーダー
にその要因について録音をし、UE の起きる状況との関連をみた。
UE 全体の発生要因を分析した結果、多かった上位 10 の言葉をみたところ「打つ」
「ボール」
「ミス」
「思う」
「前」
「入る」
「相手」
「足」
「サーブ」
「アウト」といった技術面、心理面、戦術・戦略面における要因が多くみら
れた。
演題番号 POS-23
男子トップテニス選手のベースラインプレーにおける攻撃場面の特徴
○北村哲(びわこ成蹊スポーツ大学)、松本健太郎(東海学園大学)、
村上俊祐(鹿屋体育大学大学院)、髙橋仁大(鹿屋体育大学)
テニスにおいて高いパフォーマンスレベルでは、攻撃能力の高さが重要とされており、効果の高い攻撃的プ
レーを数多く遂行できるだけでなく、攻撃場面での攻撃の効果が高くなるようトレーニングを積む必要がある。
本研究は、男子世界ランキング上位選手のベースラインプレーにおける攻撃場面の特徴について検討し、テニス
選手の攻撃能力評価のための指標を得ることを目的とする。分析の結果、
(1)サーバーはレシーバーと比較し、
攻撃場面の発生頻度が有意に高く(S:66.2%,R:33.8%)
、
(2)サーバーの攻撃場面における攻撃効果は、ラリー
3 本目において有意に得やすく、それ以降の打球は攻撃効果が得にくくなること、また、レシーバーの攻撃場面
における攻撃効果はどのラリー回数でも得にくく、特にラリー 4 本目は有意に得にくいことが明らかになった。
演題番号 POS-24_IMP-08
野球の2塁打走における合理的なベースランニング法
○福田将司(筑波大学)
、吉田拓矢(筑波大学)、苅山靖(筑波大学)、図子浩二(筑波大学)
野球の試合で走塁はチームの得点力を向上させる手段であり、特に一点を争う試合展開では勝利するために極
めて重要な要因になる。しかし、打撃や守備に関する研究と比較して走塁に関する研究は極めて少ない。そこで
本研究では、2 塁打走の 1 塁ベース(1B)における触塁の足や走塁軌跡に注目し、タイム、足跡、ピッチ、スト
ライド、直線走との速度低下率を検討した。被験者は大学野球選手とし、走塁が得意な被験者と苦手な被験者を
選出した。試技は 2 塁打走と 54m 直線走を全力で行わせ、区間ごとのタイムを比較した。2 塁打走は 1B への触塁
を左右の足で行わせ、走塁軌跡の膨らみを比較した。その結果、速度低下率が低い被験者は 1B までの膨らみを
大きくし、1B 付近のピッチを変化させずストライドを維持して触塁することが認められた。一方、1B への触塁
を右足にした場合に速度低下が抑えられる傾向にあった。したがって、2 塁打走における 1B 付近での速度低下を
抑えるためには、27-30m 区間の膨らみ軌跡の取り方と右足で 1B への触塁をすることが、合理的なベースランニ
ング法であることが示唆された。
―28―
演題番号 POS-25
野球のバッティングにおける素振りと実打のバット軌道の再現性
〇大室康平(八戸工業大学基礎教育研究センター)
野球のバッティングの練習方法の一つに、バットスイングのみを行う「素振り」がある。素振りは、ボールを
打った場合の打球のように、目に見える結果が出るわけではない。運動スキルを学習する際にフィードバックは
有効な情報となるが、個人で行う素振りはフィードバックを得にくいトレーニングであると考えられる。そのた
め素振りと実際にボールを打つ打撃(ティーバッティング)の違いを明らかにし、素振りの特徴を理解すること
は、有効な知見となると考えられる。実験は大学の硬式野球部に所属する選手 11 名を被験者とし、素振りとテ
ィーバッティングを各 20 本ずつ行わせた。それぞれの試技をハイスピードカメラ(TM-Research 社製、E2)2 台
を使用し、1000fps で撮影した。撮影した映像を動作解析用ソフト(DKH 社製、FrameDias Ⅳ)に取り込み、イ
ンパクト直前のバットヘッド(先端側)とグリップの 3 次元座標を算出し、インパクト付近での 20 回分のバット
位置座標を算出した。事前に行った予備実験ではティーバッティングに比べて、素振りの方が上下方向のバット
のばらつきが大きくなる傾向が認められた。発表では、11名分の結果から素振りと実打の比較について報告する。
演題番号 POS-26
北海道の中学野球選手における股関節の屈曲 ・ 伸展を重視したトレーニングの敏捷性、瞬発力への影響
〇平間康允(札幌国際大学)
野球選手にとって必要な体力要素として、主にスピード(短距離走)や敏捷性(切り返し走)
、瞬発力(ジャ
ンプ)などが挙げられ、これらの体力要素は互いに関係が深いと考えられる。多くの先行研究(岩竹ほか、2008;
三本木ほか、2011)において、10m、30m 走と立ち幅跳び、立ち 5 段跳びについては相関関係が認められている
が、立ち幅跳びのようなジャンプ系種目と切り返し走との関係を検討した先行研究は特に見受けられない。しか
しながら、近年(2004 年から 2013 年の 10 年間)の北海道における中学野球選手の体力間の関係を検討した大菅
ら(2014)は、立ち幅跳びの成績優秀者が 20m 切り返し走(以下、P・A テスト)においても好成績であったこと
を報告しており、志賀(2013)も、跳躍動作における股関節角度と短距離走の疾走速度に有意な相関関係がある
と報告していることから、P・A テストにおいて、筋力発揮だけでなく、股関節の適切なポジショニングが重要で
あることが窺える。そこで本研究では、大菅ら(2014)と同様の条件で中学野球選手の 10m、30m 走、P・A テス
ト、立ち幅跳び、立 5 段跳びを測定し、股関節の適切な屈曲 ・ 伸展を重視した一定期間のトレーニング効果を検
討した。
演題番号 POS-27
投手のバント処理に関する一考察
バント時のセカンド送球における異なる捕球方法の比較
○梶田和宏(筑波大学大学院人間総合科学研究科)、川村卓、奈良隆章
野球の投手において投球技術とともに牽制やフィールディングなどの下位技術も重要な投手の技術・能力であ
ると考えられる。投手に関する研究では投球の動作分析は多く行われているが、牽制やフィールディングに関す
る研究はあまりみられない。そこで本研究は、T 大学硬式野球部投手 10 名(右投げ 8 名、左投げ 2 名)を対象に、
バント時のセカンド送球に着目して、ゴロ捕球の方法を正体と半身に分け、ハイスピードカメラ 2 台を用いて、
捕球・送球動作を中心に送球時間と精度について検討することを目的とした。試技はマウンドから寄り付きを開
始し、正面のゴロをホームベースから 10.44m 付近で捕球をして、セカンドベース上に設置した得点番に正体と
半身の捕球で 10 球ずつ送球することとした。送球時間と精度の評価には、ゴロ捕球からリリース時と得点番到達
時までの時間、頭部と腰部の動作変位、野球能力テストで使用されている得点番の合計得点を用いた。実験結果
による考察では、投手におけるバント処理の技術獲得には、ゴロの状況に応じて最適な捕球方法を選択し、捕
球・送球動作の個人差を考慮して、より速く安定した送球ができるように指導する必要があると考える。
―29―
演題番号 POS-28_IMP-09
野球球技におけるチームづくりに関する事例研究
○野本尭希(筑波大学大学院人間総合科学研究科)、川村卓(筑波大学)
コーチングとはプレイヤーがなりたいと思う自分に近づけるためにサポートすること(日本体育協会、2012)
と定義されている。しかし、チームスポーツにおいては、個々のプレイヤーの成長だけではチーム力の強化につ
ながらず、プレイヤー間の相互関連(吉田、1993)を意識したチームづくりもコーチに求められる。そこで、本
研究は社会人野球チームにおける 1 シーズンのチームづくりに着目し、チーム、選手らがどのように変化してい
ったのかを調査・検討することによって、チームづくりを行う上での有効な資料を得ることを目的とした。対象
となるチームは、過去に全国大会に4 度出場した経験のあるチームであるが、3 年前に全国大会へ出場して以来予
選での敗退が続いていた。2013 年 7 月から 2014 年 11 月のコーチング期間中、コーチによる指導記録やチームメン
バーとの対話記録などのフィールド記録を収集し、それを基に事例を作成した。その結果及び考察の詳細につい
ては学会当日に報告する。
演題番号 POS-29_IMP-10
内野手のゴロ処理におけるアプローチ局面に着目した指導に関する事例研究
○小倉圭(筑波大学大学院)、川村卓(筑波大学)
内野手のゴロ処理において捕球の確率を高めるためには、捕球が容易なバウンドであるショートバウンドや落
ち際で捕球すること、いわゆる「バウンドを合わせる」ことが重要である。打者のインパクト時から捕球するま
でのアプローチ局面において、速さやバウンドの高さ、回転などの打球の性質を手掛かりとし、最適な捕球地点
を予測するのである。しかし指導現場や指導書においては、捕球姿勢やフットワークについての指導が多くみら
れる。捕球姿勢やフットワークの重要性は明らかである一方で、それらを意識するあまり、打球にアプローチで
きず「足が止まってしまう」選手がしばしば見受けられる。そこで本研究では、ゴロ処理において「足が止まっ
てしまう」という問題を抱えている A 選手を事例とし、アプローチ局面に着目した指導を行い A 選手の意識や動
きがどのように変化していったのかを検討することで、内野手のゴロ捕球を指導する際の知見を得ることを目的
とした。本研究では、コーチによる指導記録や A 選手との対話記録などのフィールド記録から、A 選手の変化に
ついて検討し報告する。
演題番号 POS-30
ウィンドミル投法のステップ動作に関するバイオメカニクス的研究
〇綿谷貴志(青森県スポーツ科学センター)
ウィンドミル投法はソフトボール競技における投球法のひとつであり、腕を 1 回転させて生み出す遠心力を利
用すること、リリース前に前腕を大腿部に当てる「ブラッシング」などが特徴的である。そのため、投球腕の動
作に関する研究は多く行われている。一方、先行研究や指導書の中には投球方向へのステップ動作に関して述べ
ているものもあるが、投球パフォーマンスとの関係について一様な見解は示されていない。そこで本研究では、
ステップ中の下肢動作が球速および重心速度に及ぼす影響をバイオメカニクス的観点から検討した。被験者はウ
ィンドミル投法を専門とする高校女子ソフトボール投手 16 名とし、捕手後方に置かれたスピードガンによって投
球時の球速を計測した。また、投手側方に設置されたハイスピードカメラで撮影した動画をもとに投球中の身体
各部分をデジタイズし、分析に必要な力学的変量を算出した。分析の結果、球速とステップ中の最大重心速度と
の間に有意な相関関係が認められるとともに、最大重心速度が大きい投手ほどステップ脚の大腿動作範囲と大腿
角速度が大きい傾向がみられた。
―30―
演題番号 POS-31_IMP-11
大学女子フィールドホッケー選手における体力特性に関する研究
○長谷部謙二(大阪体育大学大学院)
、四宮邦彦(大阪体育大学大学院)、黄金禄(大阪体育大学大学院)、神門
啓介(大阪体育大学大学院)
、出井章雅(同志社大学)、鈴木奈津美(大阪体育大学)、梅林薫(大阪体育大学)
近年、あらゆる競技スポーツにおいて、体力的要素が重要視されていることはいうまでもない。しかし、フ
ィールドホッケー競技の場合、身体的過酷なスポーツであるが故に体力的特性を把握することは重要であり、今
後の指導にも繋がると考えられる。そこで本研究は、T 大学の女子フィールドホッケー選手を対象に技能レベル
別、およびトレーニング期分け別による体力の違いを把握することを目的とした。測定項目については、身体組
成、握力、背筋力、長座体前屈、上体おこし、T テスト、反復横跳び、立ち幅跳び、立ち 5 段跳び、投球、50m
走、Yo-Yo テストを行った。測定は 2 月のオフシーズン初期と 11 月のインシーズン直後 2 回実施した。その結果、
レギュラー選手と非レギュラー選手を比較すると、インシーズン直後、レギュラー選手において間欠的持久力が
有意に高かった。また、レギュラー選手の間欠的持久力、下肢パワー、敏捷性の体力要素が 2 月より 11 月におい
て有意に向上した。このことは、インシーズンにおけるフィールドホッケーの実践練習によって効果が表れたの
ではないかと推察される。このことから、フィールドホッケー競技の場合、練習・試合の中で体力を維持または
向上させていけるような体力的要素の練習を組み込んでいけるかが重要ではないかと考えられる。
演題番号 POS-32_IMP-12
大学女子バレーボールチームの一般準備期におけるトレーニング実践とその効果に関するフィールドワーク
○片岡悠妃(筑波大大学院)
、中西康巳(筑波大)、藤林献明(立命館大)、図子浩二(筑波大)
本研究は研究主体者が大学女子バレーボールチームに学生コーチとして身を置き、常に目的と構想を打ち立
て、計画を立案し、意図を持った実践を展開し、その記録を事実として記述し残すフィールドワークを実施した
ものである。手がかりとしたデータは、研究主体者の実践したコーチング行動とトレーニング行動に関してコー
チング日誌の中に記述した内容、トレーニング効果を客観的に評価したコントロールテストの結果、試合戦績で
あった。本研究の結果から、学生コーチとしてトレーニングを効果的に推進し高い成果を納めるためには、適切
なトレーニング課題の設定、種目選択、回数や頻度の設定などのトレーニング指導に加えて、数値では評価でき
ない「選手の意識」や「取り組む姿勢」などを導くコーチング行動の良否が強く影響を及ぼすことが示唆され
た。このようなコーチングの場に研究主体者が身を置くフィールドワーク研究から得られる知見は、世界外的な
解釈では理解できない内容、すなわち世界内的に生きる当事者としての実践者の理解を深めることに役立つもの
であると考えられる。
演題番号 POS-33_IMP-13
ハンドボール競技におけるサイドシュート動作の研究
嘉数陽介(東海大学大学院)、栗山雅倫(東海大学)、横山克人(東海大学)
ハンドボール競技におけるサイドシュートは、ゲームの流れを左右する重要な一要因であることが報告されて
いる。サイドシュートの局面は、ゴールキーパー(以下、GK とする)と 1 対 1 の状況であるため、GK を欺瞞す
る能力が必要とされる。サイドシュート決定要因については、多岐にわたり報告されているが、3 次元の動作解
析システムを利用したサイドシュート動作の研究は見受けられない。そこで本研究は、パフォーマンスレベルの
異なる被験者間におけるサイドシュート動作を比較検討し、相違を明らかにすることで、重要な要素を見出すこ
とを目的とした。研究方法は、シュート踏切位置(角度)を指定し、異なるパフォーマンスレベルの被験者によ
る試技を 3 方向から撮影した。得られた試技映像から、日本体育協会公認スポーツ指導者の資格を有する 3 名の
コーチにより印象分析を行い、共通して挙げられた観点を分析項目とした。加えて、動作解析システムを用い、
3 次元 DLT 法により動作解析を行った。その結果、パフォーマンスレベルの最も高い被験者の動作の特徴から、
サイドシュートにおける重要な要素が明らかとなった。
―31―
演題番号 POS-34
ゲーム分析からみた2014年アジア競技大会における水球女子日本代表チームのプレーの特徴
○榎本至(鎌倉女子大)
、藤原秀規(京都府立鳥羽高)
、洲雅明(大分県立芸術文化短大)
、南隆尚(鳴門教育大)
2014 年 9 月〜 10 月にかけて韓国の仁川にて開催された第 17 回アジア競技大会女子水球競技(参加全 6 チームに
よる 1 回総当たり方式)において、日本代表チームは銀メダルを獲得した。本研究の目的は、同大会における女
子水球競技を対象として Notational 型ゲーム分析を行い、女子日本代表チームのプレーの特徴を明らかにするこ
とである。Notational 型ゲーム分析の分析項目は、各攻撃の最終局面における結果情報(得点、シュート、及び
ミスによる攻防転換など)
、及び退水に関する情報(発生時の状況など)とし、これらのプレーに関与した選手
名情報と攻撃時間情報についても併せて分析対象とした。こうした分析項目情報については、大会実行委員会
(http://www.incheon2014ag.org/index)の作成による公式スコアシートのデータ、及びスタンド中央部よりフ
リーハンド撮影した試合のビデオ映像より得た。女子日本代表にとってライバルチームである中国(同大会 1 位)
とカザフスタン(同大会 3 位)との、分析項目に関する比較検討を中心として、日本代表チームのプレーに関す
る特徴と課題の抽出を試みた。
演題番号 POS-35_IMP-14
ハンドボール競技の1対1局面における防御者の予測的判断
◯田口貴仁(東海大学大学院)、栗山雅倫(東海大学)、横山克人(東海大学)
ハンドボール競技においてパフォーマンス能力を決する要因として、戦術的能力は極めて重要であり、戦術的
能力の構成要因は多岐にわたると考えられている。構成要因のひとつである予測的能力には、観察、認知、判断
の過程があり、予測を伴う判断がプレーの善し悪しを左右する一要因と考えられる。相反して、ハンドボール競
技の 1 対 1 局面において、防御者の進行方向予測を欺瞞できる能力は、攻撃者にとって重要な能力である。そこ
で本研究では、ハンドボール競技における防御者の進行方向予測を欺瞞する能力に着目し、攻撃者のフェイント
動作における課題を検討することを目的とした。方法は、1 対 1 局面における防御者の視点から攻撃者のフェイン
ト動作を撮影した。撮影した映像を 0 歩目以降、1 歩目以降、2 歩目以降、3 歩目以降を遮蔽するように編集し、
映像を作成した。作成した映像から進行方向を予測することで攻撃者の防御者に対する欺瞞性を測るデータを得
た。これらの結果からハンドボール競技の 1 対 1 局面における、フェイント動作による防御者に対する欺瞞性を
検討した。
演題番号 POS-36_IMP-15
“ ある若手アシスタントコーチ ” が経験した7ヶ月間に渡る大学跳躍チームでのコーチング事例
◯林陵平(筑波大学)、図子浩二(筑波大学)
本研究は T 大学陸上競技部の跳躍選手 47 名を対象として、2014 年の 4 月から 10 月までの 7 ヶ月間(213 日間)
に渡るアシスタントコーチとしての実践報告である。事例をまとめる際に手がかりにしたデータは、筆者が日々
記録したコーチング日誌の記述データであり、主な内容はコーチングとトレーニングに関する事項であった。筆
者は 7 ヶ月間で合計 148 日間、延べ 612 時間をコーチングに費やしており、これは全生活時間の 11.97% に相当す
る。アシスタントコーチとして、ヘッドコーチをサポートする他に、数名の選手のパーソナルコーチングを経験
した。その経験則を通した若手コーチの学びの過程に関する一端を提示すると、チームに関わり始めた 4 月〜 5
月は、コーチングに対する「不安」に関する記述が非常に多く、自らのコーチングに自信がなかったが、徐々に
選手との信頼関係が形成され、選手からコーチングを求められた旨の内容に関する記述が増加した。その他にも
様々な問題に直面し、それを解決するための思考と試みを試行錯誤しながら実践した事実を論考し提示した。本
事例はこれからコーチを目指す人の学びに役立つ経験知を提供するものである。
―32―
演題番号 POS-37_IMP-16
“ ある男子三段跳選手 ” における大学4年間のパフォーマンス変化と
トレーニング事例に関するコーチング学的研究
―15m92まで記録を高めた男子三段跳選手の事例を手がかりにして―
○米澤宏明(筑波大学)
、林陵平(筑波大学)、図子浩二(筑波大学)
本研究では、インターハイ優勝のタイトルを有して入学し、大学 4 年次に日本選手権 3 位の戦績を納めるに至
った “ ある男子三段跳選手 ” の長期トレーニング事例について提示した。事例対象者は、常に目的と構想を打ち立
てて計画を立案し、意図を持った実践を展開し、その記録を記述データとして有している選手であった。大学 4
年間の記録の変遷とともに、その際の映像フォーム、跳躍比(Hop・Step・Jump,%)
、助走速度をデータとした。
4 年間の中での跳躍スタイルの変更は大きく、シングルアームからダブルアームアクションへ、跳躍比はホップ
型からイーブン型スタイルへと意図的な変化を促し、技術的な改革を継続的に実践していたことが提示できた。
一方、怪我の回数が非常に多く、トレーニングの中断も頻繁であった。さらに、ネガティブ思考に陥り易く、メ
ンタルな要因が試合結果に反映したことも提示できた。これらの事例提示は、ジュニア選手の育成や三段跳のト
レーニングを実施する際に役立つ実践知を提供しているものである。
演題番号 POS-38
骨ストレッチングが400m 走パフォーマンスに及ぼす影響
○黒坂志穂(福山平成大学)
、松村卓(身体運動研究所)、明石啓太(広島大学)
関節に存在する複数の固有受容器に刺激を入れることを目的とした関節刺激運動(骨ストレッチング)を 1 ヶ
月間行うことで陸上中距離選手の400m 走パフォーマンスに及ぼす影響を検討した。被験者は陸上競技歴5年以上
の大学陸上競技部所属の中距離選手 13 名とし、1 ヶ月身体 6 箇所(手首、肋骨、肩甲骨、背骨、股関節、足関節)
の関節に骨ストレッチングを実施し、通常通りの陸上練習を行った。骨ストレッチングは各関節 1 分程度とし、
選手たちは通常練習に加え 6 分間のトレーニングを行った。骨ストレッチングトレーニング前後において、400m
全力走を行い,心拍数(HR)
、RPE、血中乳酸濃度(Lab)
、走スピード、ピッチ、ストライドを計測した。その
結果、ピッチ、ストライドの双方において有意な増加が認められ、骨ストレッチングは関節可動域の増加及び筋
収縮促進に影響を及ぼすことが明らかとなった。従って骨ストレッチングは長期間継続することで、走パフォー
マンス向上の一手段となりうることが示唆された。
演題番号 POS-39_IMP-17
十種競技記録の分析的研究
○檀野俊(大阪教育大学大学院)
、松本智好(大阪教育大学大学院)、生田泰志(大阪教育大学)
陸上競技の十種競技は十種目の合計点数を競う競技である。競技特性から、限られた時間と体力の中で、効率
よく競技力を向上させることが求められる。近年少しずつ日本記録の更新がなされてきているが、世界との競技
レベルの差は未だ大きいのが現状である。本研究では、各種目間の関連性について世界と日本での違いを明らか
にすることを目的とした。2000 年以降の世界選手権・オリンピックに出場した選手 134 名を世界群、2009 年以降
の各年度日本ランキング 20 傑に入っている選手 34 名を日本群とした。総合得点と各種目の得点の平均値を比較
した結果、世界群に対し日本群は有意に競技力が劣っており、特にフィールド種目において顕著な差がみられ
た。総合得点に対する各種目の得点割合をみると、得点獲得のパターンは類似していた。しかし各種目間の相関
をみると、日本群では走種目と投擲種目の間で負の相関が多くみられたが、世界群ではほとんどみられなかっ
た。さらに世界群ではフィールド種目の間に日本群より多くの正の相関がみられた。これらのことから世界群は
フィールド種目において、身体的な特性以外の技術的な共通点をもってトレーニングを行っている可能性が示唆
された。
―33―
演題番号 POS-40
女子やり投げ競技者における下肢のトレーニングがやり投げ動作に与える影響
○中野美沙(筑波大学体育系)
、大山卞圭悟(筑波大学体育系)、尾縣貢(筑波大学体育系)
これまでに、跳躍運動の遂行能力とやり投げパフォーマンスとの間に有意な相関関係があることが報告されて
いるように、やり投げにおいて下肢が果たす機能の重要性は認識されてきている。しかし、下肢のトレーニング
がやり投げ動作にどのような影響を与えるかについては検討されていない。本研究の目的は、学生トップクラス
の女子やり投げ競技者 2 名を対象に、通常行っているトレーニングに加えて下肢のトレーニングを行うことが、
投動作およびパフォーマンスに与える影響について検討することであった。トレーニングは、専門的準備期に当
たる期間に 6 週間行った。トレーニング期間中、対象者は通常のトレーニングに加えて、ジャンプトレーニング
を 2 種目(ハードルジャンプおよびスピードバウンディング)
、ウエイトトレーニングを 2 種目(体重の 30% 程度
のバーベルを担いでのランジウォークおよびステップアップ)
、計 4 種目を週に 2 回ずつ実施した。また、対象者
が参加したトレーニング前後の公式競技会を撮影し、3 次元動作分析を行うことで、トレーニング前後の動作を
比較した。その結果、やり投げのパフォーマンスは向上した。動作の詳細に関しては、当日報告する。
演題番号 POS-41_IMP-20
短距離走スタートにおけるブロッククリアランスと疾走加速様態の関係
○篠原康男(神戸大学大学院博士研究員・日本学術振興会特別研究員 PD)、前田正登(神戸大学)
短距離走では、レース中の最大疾走速度がパフォーマンスと強く関係することから、最大疾走速度に至るまで
の加速局面は重要な局面であるといえる。また、ブロッククリアランスはその後の加速局面に影響を及ぼすとい
われている。そこで本研究では、短距離走スタートにおけるブロッククリアランスと疾走加速様態の関係につい
て検討することを目的とした。被験者は、学生男子短距離選手 15 名とした。被験者には、競技会を想定したス
ターティングブロックからのクラウチングスタートを行わせた。Set 時から被験者が 30m 付近に達するまでのブ
ロッククリアランスを含めたスタートおよび加速局面の疾走様態を、完全に同期した 4 台のビデオカメラを用い
て撮影した(60fps)
。分析の結果、30m の疾走タイムが同程度の 2 名において、ステップ長が優位な加速をする
選手はスターティングブロックをしっかり押せる姿勢をとっており、ステップ頻度が優位な加速をする選手は前
方に倒れやすい姿勢をとり、スターティングブロックから早期に離地していた。
演題番号 POS-42
疾走中のピッチを高める聴覚刺激トレーニングの研究
○山田淳史(東海大学大学院)、高野進(東海大学)、植田恭史(東海大学)
100m 走は、最大疾走局面における疾走速度を高めることが、記録向上につながる。疾走速度はピッチとスト
ライドによって構成され、両要素を高めることが最大疾走速度向上につながるとされている。ストライド長を伸
ばす有効なトレーニングとしてバウンディング運動等が挙げられているものの、ピッチ数を高めるトレーニング
の報告は少ない。
そこで本研究では、短距離陸上競技者を対象に、ピッチ数5step/s となる300bpm のリズムを聴く聴覚刺激を用
いて、ピッチ数を高めるトレーニングを検討することを目的とした。クラウチングスタートからの 60m 全力疾走
を実験試技とし、スタートから 50m を中心に前後 5m 区間の区間疾走動作をオプトジャンプを用いてピッチ、ス
トライド、疾走速度を測定を行なった。聴覚刺激前後の疾走動作の変化を分析した。詳細な結果については当日
報告する。
―34―
演題番号 POS-43
通常ストライドより短いマーク間距離に設定したマーク走の効果について
〇斎藤壮馬(びわこ成蹊スポーツ大学大学院)、高橋佳三(びわこ成蹊スポーツ大学)、
志賀充(びわこ成蹊スポーツ大学)
本研究は大学生陸上競技短距離選手(10 名)を対象にマーク走の効果に関する研究を行った。実験試技は 50m
走を 3 回行い、1 回目は通常疾走(Pre)、2 回目はマーク走(Mark)
、3 回目は再び通常疾走(Post)を行った。
マーク間距離は被験者の通常ストライドの90% に設定し、20 ‐ 40m 区間に10ヶ所設置した。撮影にはハイスピー
ドカメラを使用し、二次元座標分析を行った。分析項目は、50m タイム、疾走速度、接地時間、滞空時間、ピッ
チ、ストライド、下肢 3 関節の角度および角速度、関節トルクおよびトルクパワーである。本研究の結果、Post
のピッチの増加とストライドの維持により疾走速度が増加した。また、マーク走時における接地直前の股関節お
よび膝関節角速度が増加する傾向にあった。これらのことから、マーク走は接地直前の動作を変化させる可能性
があることが示唆された。
演題番号 POS-44
走幅跳における女性選手の踏切準備動作に関する研究
―脚動作に着目して―
○村上裕也(びわこ成蹊スポーツ大学)、志賀充(びわこ成蹊スポーツ大学)
目的:本研究は女性選手を対象とし、試合時の走幅跳における踏切準備動作の特徴を明らかにすることであっ
た。方法:被験者は走幅跳を専門とする女性 18 人とした(自己記録 5m64 ± 0.18m)。撮影方法は、踏切 3 歩前か
ら踏切までの分析区間を 2 台の高速度カメラ(CasioEX-F11/300)を使用した。分析は三次元 DLT 法を用いて三
次元座標を得た後、関節及び身体部分角度、角速度を算出した。結果および考察:試合における被験者の記録は
5m30 ± 0.21m であった。踏切準備動作の特徴として、踏切 1 歩前の接地中において、支持脚の膝関節屈曲動作が
大きくなる傾向を示した。一方、上位選手と下位選手の比較として、上位選手は踏切 3 歩前から 1 歩前の各滞空
局面後半において、膝関節角度の大きくなるタイミングが速く、さらに股関節伸展角速度も低下を示した。つま
り女性における上位選手は、①踏切にかけて脚を置きに行くような動作と、②足部が地面に対して低い位置を通
過する動作、これらの技術を行っていたと考えられる。
演題番号 POS-45_IMP-19
陸上競技専門家と非専門家間の観察的動作評価能力の差に関する研究
○早狩成美(筑波大学大学院)、木越清信(筑波大学)
短距離走の指導を行う際、陸上競技を経験したことのある者(陸上競技専門家)は、他人の疾走動作を適切に
評価できると考えることが一般的であろう。しかし、陸上競技専門家が非専門家と比較して動作を評価する能力
が優れていると報告している先行研究は存在しない。そこで本研究では、疾走動作の動画を観察させ、専門家と
非専門家との疾走動作を評価する能力を比較及び検討することを目的とした。
本実験は、陸上競技専門家 6 名と陸上競技非専門家 6 名に小学生 10 人の疾走動作を観察させた。観点は膝関節
及び腿上げ角度の 2 点で、回答用紙の選択肢は 30°
から 80°
までの間で 10°
ずつの幅を持たせ、5 つの選択肢に設定
した。
2 要因分散分析の結果、有意な交互作用は認められず、陸上競技専門家と非専門家との間の主効果は認められ
なかった。しかし、観点においてのみ主効果が認められた。
―35―
演題番号 POS-46
男子三段跳における記録水準の異なる群のキネマティクス的比較
○鈴木雄貴(中京大学大学院)、桜井伸二(中京大学)
【目的】男子三段跳において、記録水準の異なる選手のキネマティクス的比較を行い、競技水準に応じた課題
を明らかにし、指導に役立つ知見を得ることである。【方法】対象者は、男子三段跳出場者 35 名(14.28-16.28m)
とし、2 台のビデオカメラ(60Hz)を用いて撮影した。3 次元 DLT 法によって得られた 3 次元座標を矢状面に投
影し、2 次元平面上で分析を行った。対象者は、クラスタ―分析によって、上位群(A 群;16.28-15.59m)、中位
群(B 群;15.45-14.98m)
、下位群(C 群;14.73-14.28m)に群分けした。群間比較において、B 群は A 群を、C 群
は B 群を目標に設定し、有意差がみられたところに課題があるとして考察した。
【結果】B 群の課題は、ホップ・
ステップ跳躍距離を大きくすることである。ステップの離地時において、膝関節を固定した合理的なキック動作
が重要であると考えられる。C 群の課題は、助走速度を高めるとともに、ホップの踏切を計測ライン近くで行う
ことといえる。また、ジャンプの踏切において、鉛直速度を獲得しジャンプ跳躍距離を大きくすることと考えら
れる。以上の項目が、競技水準に応じた課題の一部と考察でき、これらを参考にすることで、合理的なトレーニ
ングの作成に役立つと考えられる。
演題番号 POS-47_IMP-20
身体重心の挙動からみた三段跳における3回の跳躍比率を変化させる踏切技術に関する指導法
○藤林献明(立命館大学)
、大塚光雄(立命館大学)、本城豊之(立命館大学)、伊坂忠夫(立命館大学)
【目的】三段跳指導の導入段階では、3 回の跳躍の距離を予め規定して(特に 1 回目もしくは 2 回目の跳躍距離
を抑制する)
、跳躍比率のバランスを良くすることで合計跳躍距離を増大させるトレーニングが実施されている。
本研究では、上記の課題を達成するための具体的な踏切技術とその指導方法について明らかにする。
【方法】熟練男子三段跳選手 1 名を対象として、1 回目の跳躍距離を他の跳躍距離よりも 2%以上大きくする条
件(HJ)と、3 回の跳躍比率の差を 2%未満にする条件(BJ)を設定した 2 タイプの三段跳を実施させて、踏切中
のキネマティクスデータ(身体重心と接地点、振込脚および腕の合成重心)の相違点に着目した。
【結果・考察】BJ は HJ と比較して 3 回の跳躍における水平速度の減速量と鉛直速度の獲得量が小さいが、合計
跳躍距離には相違がないことが認められた。BJ の三段跳を達成するための踏切技術・指導法として、踏切脚は柔
らかいバネのように利用すること、振込脚および腕では前方への振込動作とそれぞれの合成重心を踏切接地時に
付着部よりも前方へ配置することを習得・助言することが 1 つの有効な手段となる。
演題番号 POS-48_IMP-21
3D キネティクスを用いた男子走高跳トップジャンパーの技術評価
○戸邉直人(筑波大学大学院)、苅山靖(筑波大学)、図子浩二(筑波大学)
走高跳では曲線助走や踏切脚の動き、リードレッグやアームアクションなどに自由度があり、トップジャン
パーは自らに合致した技術をオーダーメイドで創造している。これらのことから、選手は個人ごとに技術を評価
し、課題を明確にする必要がある。本研究では、3 次元キネマティクス・キネティクスのデータを、エビデンス
として技術評価のために利用し、パフォーマンスを向上させる試みを遂行した “ あるトップジャンパー ” について
報告する。2m31 の記録を持つ男子走高跳選手 1 名を対象として、試合形式による跳躍試技を実施し、モーション
キャプチャーとフォースプレートシステムを用いて計測を行い、3 次元的なキネマティクス・キネティクスデー
タを算出した。これらのデータと内観やコツなどの質的なデータを手がかりにして、当該選手の技術課題につい
ての評価診断を実施した。日本記録の 2m34 までパフォーマンスを向上させるための技術課題を抽出すると共に、
その理論背景について検討した。これらの知見は、当該選手のパフォーマンスを向上させるために役立つもので
あると共に、男子走高跳選手のためのトレーニングやコーチングに有益になることが考えられる。
―36―
演題番号 POS-49
大学生短距離選手による100m 走中の疾走速度、ストライド、ピッチの変化と体力要素との関係とその性差
○友光駿(大東文化大大学院)
、川本竜史(大東文化大)、佐藤真太郎(大東文化大)、
只隈伸也(大東文化大)
、千葉佳裕(城西大)、邑木隆二(駿河台大)
本研究では大学生男女短距離選手を対象として 100m 走中の疾走速度、ストライド、ピッチの変化関係および
体力要素との関係とその性差について明らかにすることを通じて、男女短距離選手を指導する際の留意点につい
て検討することを目的とした。被験者は大学生短距離選手19名(男性11名、女性8名)とした。被験者には100m
全力スプリント走、等速性脚筋力および鉛直ジャンプの測定を実施した。使用機材は7台の高速度カメラ(240fps)
、
等速性筋力測定装置(BIODEX)
、床反力計(Kistler)であった。スプリント走では疾走速度、ストライド、ピ
ッチを算出した。等速性脚筋力は 60、180、300deg/s での下肢関節(股、膝、足)の屈曲・伸展トルクを測定し
た。鉛直ジャンプはスクワットジャンプ、カウンタームーブメントジャンプ、ドロップジャンプ、リバウンドジ
ャンプを測定した。本研究の結果、疾走速度、ストライド、ピッチの変化と体力要素との関係には性差がみら
れ、体力的性差がパフォーマンスに影響していることが示唆された。
演題番号 POS-50
「ハンマー投初心者の動作特性」投射パラメータの変化について
○松本智好(大阪教育大学)
、生田泰志(大阪教育大学)、来田宣幸(京都工芸繊維大学)、
野村照夫(京都工芸繊維大学)
ハンマーの動作学習について、よりよい学習内容や方法を明らかにするため、ハンマー投初心者の動作につい
て分析した。ハンマーを初めて投げる者が最低限の教示を受け3回の試技をした。撮影した映像を元に3次元 DLT
法により算出した座標を用いて分析したところ、投射パラメータ(初速・投射高・投射角)はそれぞれ特徴的な
変化を示した。この変化から、指導を受けない者が独力で工夫し練習した際、何が学びやすく、何が学びにくい
のか、またその際の学び方の傾向について明らかにした。
演題番号 POS-51
競泳のキックスタートにおける利き足の前後の配置がスタートパフォーマンスに与える影響
○金沢翔一(日本女子体育大学)、森山進一郎(日本女子体育大学)、
宮地健人(東京学芸大学大学院)、北川幸夫(日本女子体育大学)
本研究は、競泳のキックスタートにおいて利き足の前後の配置がスタートパフォーマンスに与える影響を明ら
かにすることを目的とした。被検者は日本学生選手権に出場経験のある大学女子競泳選手 22 名とした。利き足の
定義は、ボールを蹴る側とした。試技は、利き足を前に配置した場合(A 型)と利き足を後に配置した場合(B
型)の計 2 本とした。分析は、身体分析点の 2 次元座標値を用いて身体重心を算出し、キネマティクス的指標(跳
び出し時および入水時の速度と角度、ならびに飛距離)を求めた。また、BIODEX(SAKAImed 製;BDX-3)を
用いて、60、180 および 300deg・s-1 の角速度における膝関節屈曲伸展筋力を測定した。その結果、全てのキネマ
ティクス的指標において、A 型と B 型との間に有意な差は認められなかったが、300deg・s-1 の伸展筋力において
のみ利き足の方が有意に高値を示した(P<0.05)
。以上の結果より、利き足の前後の配置は、競泳のスタートに
おけるパフォーマンスに影響を及ぼさない可能性が示唆された。
―37―
演題番号 POS-52
Semi-tetheredSwimming における負荷の違いがストロークパラメーターに及ぼす影響
○森誠護(鈴鹿工業高等専門学校)
、寺本圭輔(愛知教育大学)、村松愛梨奈(日本体育大学大学院)
競泳において最大泳速度と泳パワーの間には有意な相関関係がある。水中でのレジスタンストレーニング法の
一つに Semi-tetheredSwimming(前方への移動を伴う泳運動、以下 STS)がある。STS は様々な負荷での最大努
力泳が可能であり、実施時に発揮される力と前方移動速度から水泳時のパワー出力を定量化できるため、泳パ
ワー測定やトレーニングにも応用されている。本研究では多段階に負荷を変換できる簡易型泳パワー測定装置を
用いて、STS における負荷の違いがストロークパラメーターに及ぼす影響について検討する事を目的とした。実
験は無負荷での 25m 全力泳を 1 回、STS での 15m 全力泳を 3 段階の異なる負荷で各 1 回ずつ実施し、最大泳速度、
最大泳パワー、最大牽引力を算出した。実験時には水中及び水上動作を泳者の左側方より撮影し、水上映像から
ストロークタイムとストローク長、水中映像からストローク深度とキック深度を算出した。その結果、各負荷に
おける STS 時のストローク長は無負荷泳時と比べて有意に短くなっていた。また、ストローク深度には有意な差
が見られなかったものの、キック深度は無負荷泳時と比べて STS 時で有意に深くなっていた。
演題番号 POS-53
競泳平泳ぎのドリルトレーニングに関する研究
―ドルフィン平泳ぎとヘッドアップ平泳ぎの検討―
○馬場康博(新潟医療福祉大)、奈良梨央(新潟医療福祉大)、
市川浩(新潟医療福祉大)、下山好充(新潟医療福祉大)
水中環境で行う競泳は空中に比べて抵抗の大きい水中で行われるため、抵抗を軽減させるドリルトレーニング
(以下、ドリル)が多用されている。本研究はドリルにおけるドルフィン平泳ぎとヘッドアップ平泳ぎによる一
過性の動作変化について観察することを目的とした。競泳選手 10 名を対象に 25m の全力泳、ドルフィン平泳ぎ、
ヘッドアップ平泳ぎを実施した。なお、全力泳はドリル前後に行った。撮影映像より平均泳速度、ストローク
長、ストローク頻度、リカバリー時間(肘関節最大屈曲から膝関節最大屈曲まで)を算出し評価した。その結
果、リカバリー時間においてドルフィン平泳ぎは全力泳よりも 4.4% 〜 5.2% 有意に減少した。しかし、ドリル前
後の全力泳は平均泳速度、ストローク長、ストローク頻度、非推進局面に有意差は認められなかった。以上のこ
とからドリル中は課題修正のための動作を実施できたとしても有意な即時的変化の可能性は小さいことが明らか
となった。今後、ドリルトレーニングの縦断的評価による効果の検証が課題となった。
演題番号 POS-54
競泳のキックスタートにおいてブロック期の重心高を維持する指導は適切な跳び出し角度の獲得につながるか?
○明石啓太(広島大学)
、黒川隆志(広島大学)、出口達也(広島大学)、
西山健太(広島大学)
、森木吾郎(広島大学)、足立達也(広島大学)
競泳のスタート局面のおいて競技力の低い泳者は過度に下方へ向かって離台しがちである。本研究では、その
ような泳者に対し、ブロック期の重心高を維持するためのスタート方法を指導することで、適切な跳び出し角度
の獲得につながるかを検討した。被験者は大学生男子 6 名(3 名は水泳部所属、残りの 3 名は他の運動部所属)と
し、Pre 測定と Post 測定の間に練習日を 3 日設けた。練習日はブロック期における重心高の維持のため、前脚の
膝関節(KA)を曲げすぎないこと、離台までに上体を大きく起こすことをポイントに指導した。測定時に 4 台の
高速度カメラで試技を撮影し、3 次元 DLT 法により動作解析した。その結果、Post 測定では前脚 KA の最小角度
の増加、重心高差の抑制、跳び出し角度の上向きが有意に見られ(p<.05)
、上体角度差も拡大傾向にあった。よ
って、ブロック期の重心高を維持するために、前脚 KA の過度な屈曲を抑えることと離台までに上体を大きく起
こすことを指導することで、適切な跳び出し角度の獲得につながると示唆された。
―38―
演題番号 POS-55
競泳キックスタート動作中の筋出力の特徴
○網倉麻紀子(日本大学)
、目黒拓也(日本大学大学院)、武田篤(日本大学大学院)、
鈴木淳也(玉川大学)、野口智博(日本大学)
競泳のキックスタートは、近年確立されたスタート動作であり , 指導方法が確立されていない。本研究は、キ
ックスタートの動作・筋活動の特徴を、筋電図を用いた分析により明らかにすることを目的とし、それらの情報
から、コーチや選手に基礎的な情報提供をできるよう客観的かつ解剖学的な示唆を得ることを目的とした。被験
者は、全国大会入賞レベルの男子競泳選手 2 名とした。筋電図は m - Biolog2(S&ME 社製)を用いて、下肢 8 部
位の筋群の筋出力を計測した。そして、パフォーマンスの指標として 10m 通過タイムを計測した。その結果、筋
群ごとに見たキックスタート時の筋出力動態と、優れたキックスタート動作時の筋活動の特徴は、大腿直筋の筋
出力が強く、後足下退部はプライオメトリックな収縮を行っていたことが分かった。
演題番号 POS-56_IMP-22
最大努力泳時におけるクロール泳の上肢動作と下肢動作について
○佐藤大典(中京大学大学院)、高橋繁浩(中京大学)
【目的】最大努力泳中の上肢動作と下肢動作について3 次元画像解析法を用いて分析し、両動作の関係性を明ら
かにすること。
【方法】被験者はクロール泳にて全国大会出場レベルの男子競泳選手 8 名とした。試技は50m プー
ルにて8m 間の最大努力泳を行った。右手が入水してから再度右手が入水するまでの1ストローク中の上肢動作と
下肢動作を分析した。
【結果】下肢動作は鉛直方向に行われていた。これは、上肢動作が推進局面中に発生する
下肢を沈めるモーメントを打ち消すために行われていると推察された。また、上肢動作と下肢動作の関係性で
は、キャッチにおいて 6 名の選手が第 2 キックを対応させていたのに対し、第 3 キックと対応させていた 2 名の選
手は長距離を専門としており、他の選手と比べてグライド局面割合が長かった。また、IdC において短距離専門
群では Superposition 型もしくは Opposition 型の上肢動作を行っているのに対して、長距離専門群では Catchup
型の上肢動作が行われていた。このことから、専門距離が異なることにより、最大努力泳時のストロークタイプ
に違いが見られる可能性が示唆された。
演題番号 POS-57
ワイレス LED マーカーを用いた競泳スタートの水中運動情報収集の試み
○武田剛(順天堂大)
、酒井紳(筑波大大学院)、鈴木大地(順天堂大)
競泳台上スタートは泳者の身体が水面へ衝突する運動である。このため、入水時の衝突によって泳者の身体に
は大量の気泡が付着するため、光学機器を用いた運動計測には計測点の識別能の低さが問題視されてきた。この
識別能の低さから競泳の運動計測の研究では泳速度推定方法の研究が盛んに実施されている。本研究はこの識別
能の低さを輝度の高いワイヤレス LED マーカーを身体に付着し、精度良く泳速度を推定するための、スタート水
中動作用のマーカー装着方法の提案を行う。被験者は競技レベルの高い大学男子競泳選手 10 名とした。自発光型
LED マーカー(煌、ノビテック株式会社)をセグメントの識別点添付(末端や関節中心)
、またセグメント重心
への直接添付(一部セグメントのみ)し、計測点の 2 次元画像分析を実施した。LED マーカー「煌」の装着によ
り、計測点の識別能は従来のテープやインクによるマーキングと比較すると飛躍的に向上した。一部計測点にお
いては気泡の密集が見られることから、体幹と上腕においてはセグメント重心直接添付の方が精度良い泳速度が
推定できると考えられた。
―39―
演題番号 POS-58
呼吸動作の有無がバタフライ泳動作に及ぼす影響
―脚動作に着目して―
○長堀一輝(新潟大学大学院)、大庭昌昭(新潟大学)
【目的】バタフライ泳の呼吸動作は、泳速度の減少をもたらす動作とされている。そのため泳速度の減少を少
しでも抑える呼吸動作を身に付けることが重要となる。そこで本研究では、呼吸動作の有無がバタフライ泳動作
(脚動作に着目して)に与える影響について検討することを目的とした。
【方法】被験者は大学水泳部に所属し、
バタフライを専門とする選手 5 名とした。25m を 4 試技(主観的努力度 70%・80%・90%・100%)× 2 セット実
施し、1 セット毎に呼吸あり(以下 EB とする)と呼吸なし(以下 NB とする)を行った。各セットの 4 試技目は
努力度 100%とし、他の努力度はランダムで行った。泳者の側方から撮影した映像をもとに、2 次元 DLT 法によ
って身体各部の位置座標を算出し、動作分析を行った。
【結果・考察】泳速度は同努力度間において EB の方が低
い傾向を示した。キックの蹴り幅においては、第 1 キックでは違いがみられなかったが第 2 キックでは EB の方が
大きい傾向を示した。これは呼吸をする際、上肢を水面上に持ち上げ、下肢が沈み込んだことが影響したと推察
される。
演題番号 POS-59
反転授業を利用した水泳授業実践
〜一般大学生を対象に〜
○鈴木淳也(玉川大学)
、目黒拓也(日本大学大学院)、金井茂夫(玉川大学)、野口智博(日本大学)
近年は、デジタル化が進み ICT(InformationandCommunicationTechnology)を活用した授業が行われるよう
になってきた。その中でも、講義内容を事前に視聴し、授業中にオンラインで学んだ知識の確認や応用する学習
を行う「反転授業」が徐々に広まりつつある。体育実技における反転授業の研究は、北ら(2014)のソフトボー
ル授業の報告がみられるが、水泳授業の研究は見当たらない。本研究では、反転授業を利用した水泳授業を実践
し、その有効性を検討することを目的とした。被験者は、T 大学で体育実技(水泳)を履修している一般学生 40
名(男性 23 名、女性 17 名)であった。結果としては、今後も予習動画を示す授業スタイルを大学体育実技で取
り入れた方がよいと考える学生が多くみられ、
「泳ぎのイメージ作りに役立った」等、肯定的な意見が聞かれた。
また、授業前後で、泳記録の向上がみられ、反転授業を利用した水泳授業において一定の効果が示唆された。
演題番号 POS-60
小学校教諭の水泳および着衣泳歴と水泳および着衣泳授業に対する意識について
○目黒拓也(日本大学大学院)、鈴木淳也(玉川大学)、野口智博(日本大学)
本研究では、東京都 S 区と北海道 S 市の公立小学校 30 校の教諭を対象に、2013 年 11 月から 12 月および 2014 年
6 月から 7 月の期間において、
「水泳歴について」
、
「着衣泳歴について」
、
「水泳および着衣泳授業に対する意識に
ついて」などの質問項目で作成したアンケート調査を実施し、20 校 209 名(男性 94 名、女性 115 名、39.5 ± 11.3
歳)から回答を得た。統計処理は SPSSStatistics21(IBM 社製)を用いて、名義尺度について x2 検定を行い、有
意水準は5%未満とした。その結果、小学校教諭の水泳および着衣泳歴は東京都 S 区が北海道 S 市に対し有意に高
く、エレメンタリーバックや道具を使った救助法、立ち泳ぎなど、着衣泳の実技指導について、水泳および着衣
泳歴のある者が、水泳および着衣泳歴のない者に対し「指導可」と回答した者が有意に多かった。以上のことか
ら、着衣泳を指導する際、小学校教諭は自らの水泳、着衣泳歴に少なからず影響を受けていることが考えられ、
子どものみならず大人に対する着衣泳の指導および普及が必要であると考えられる。
―40―
演題番号 POS-61
競技力向上においてコーチから受ける影響に関する研究
―男子体操競技トップ選手に着目して―
○細川史裕(日本体育大学大学院)
日本の体操競技は世界で戦える数ある種目の一つである。本研究では、男子体操競技におけるトップレベル選
手の競技力(成績)が向上する際、どのような影響をコーチから受けていたのかを、半構造化インタビューを用
いて明らかにすることを目的とした。対象者は日本国内トップレベルの選手を対象とした。多くの研究者による
と、コーチ行動がアスリートのパフォーマンス、幸福感、モチベーションの向上へ繋がると示唆されている。こ
のことからアスリートがコーチから与えられる影響力は計り知れないものがあると言える。インタビューは、イ
ンフォーマントの理解を得たうえでボイスレコダーに録音した。収集されたデータは逐語録として記録され、質
的研究手法にそって分析を行った。トップレベル選手の競技力が向上する際、コーチからどのような影響を受け
ているのかを明らかにし、それらを体系的にまとめることによって他のコーチへの有意義な知識の共有が可能に
なると考えられ、意義があると考えている。
演題番号 POS-62
吊輪における高得点の要因に関する一考察
〜第68回全日本学生体操競技選手権大会(予選)を対象として〜
○國西佑輔(上越教育大学大学院生)、周東和好(上越教育大学大学院)
本研究では、男子体操競技の吊輪において高得点を獲得する選手とそうでない選手の演技の傾向と得点の要因
を明らかにすることを目的とした。第 68 回全日本学生体操競技選手権大会(予選)に出場した 1 部校の選手 114
名を対象とし、吊輪の演技をビデオカメラで撮影し、その映像資料と演技得点(決定点)
、演技構成とその出来
栄えに関する筆者の観察メモに基づいて、選手が吊輪において高得点を獲得する要因と演技の傾向について検討
した。その結果、114 名の平均得点は 13.36 点であり、平均点以上の選手で中水平支持を実施している選手は 26
名、平均点以下の選手は 8 名であった。さらに上位 15 名のうち 13 名の選手は高難度の中水平支持を 2 回あるいは
1 回実施していた。そのうち中水平支持を実施していない 2 名の選手は他の高難度の力技を実施していた。また、
中水平支持を実施した平均点以下の選手 8 名には、着地での転倒や中水平支持に大きな実施欠点があった。
演題番号 POS-63
アスリートの自律を目指した大学柔道コーチのコーチング実践技術研究を通して
○赤尾将吾(日本文理大学)
私は現在九州の大分県 N 大学の柔道部でコーチをしている。2012 年の 2 月から柔道部のコーチを任され指導を
開始した。私の赴任当初、部の状況はお世辞にも良いとは言えないものであった。部員の出席はまばらで練習に
来ても目標や目的意識がなく、毎日淡々と練習をしている学生がほとんどだった。そこで私は、選手たちが自律
し、課題や目標をしっかり持ち、それに向かって質の高い学習、質の高い練習をしていけるようなコーチングを
したい、もっと柔道を楽しんでほしいという動機から本研究を実施するに至った。本研究は大学柔道部コーチで
ある私自身に焦点をあて、自らのコーチング能力を向上させるためのものである。第 1 章では選手の自律を目的
としたコーチングについて先行研究や自分自身の経験をもとに考察した。第 2 章では、技術研究の時間に焦点を
当て、第 1 章で掲げた理想のコーチ像に近づくことを目的としたアクションリサーチを繰り返し、コーチ行動を
修正しながらコーチング能力の向上を行った。第 3 章ではアクションリサーチやインタビューの結果を踏まえて
より良いコーチングについて考察した。
―41―
演題番号 POS-64
国内インラインスピードスケート選手のカーブ滑走動作の技術的要因に関する研究
◯岡部文武(早稲田大学大学院スポーツ科学研究科)、土屋純(早稲田大学スポーツ科学学術院)
本研究の目的は、インラインスピードスケート競技のカーブ滑走動作に関する技術的要因を検討することであ
る。日本代表を含む 5 名のカーブ滑走動作を対象とし、矢状面における支持脚の大腿傾斜角、前額面における身
体傾斜角および支持脚の下腿傾斜角、滑走方向および側方への重心移動距離を分析した。その結果、優れた選手
には以下の特徴がみられた。
(1)大腿角の増加に伴い、重心が前方かつ上方に移動したことから、支持脚大腿を
起こし重心を滑走方向へ移動させる傾向にあった。また、滑走方向への重心移動距離は日本代表選手の方が大き
い傾向にあった。
(2)前額面における身体傾斜は支持脚下腿とともにカーブ内側に傾斜し、プッシュオフ動作終
盤に向けてより傾斜したが、日本代表選手ではより身体を傾斜させる傾向にあった。また、側方への重心移動距
離は日本代表選手の方が大きい傾向にあった。以上より、優れたカーブ滑走動作は、身体の傾斜を大きくし側方
への重心移動を大きくするとともに、支持脚大腿を起こして重心を滑走方向へ移動させる傾向にあることがわか
った。
演題番号 POS-65
スキー・エアリアル競技における得点と局面時間の関係
FIS ワールドカップ2014大会(USA)を対象として
○平山大作(国立スポーツ科学センター)、石毛勇介(国立スポーツ科学センター)、
中里浩介(国立スポーツ科学センター)
スキー・エアリアル競技は、専用のキッカー(ジャンプ台)を飛び、空中での演技を競う種目である。エアリ
アルの「得点」は、空中での演技の「エア点」に、技の「難度点」を掛け合わせたもので示される。本研究の目
的は、得点(エア点、難度点)と局面時間(キッカーでの滑走時間、滞空時間)の関係について検討することと
した。対象は、FIS ワールドカップ 2014 大会(USA)に参加した男子エアリアル選手 28 名とした。側方および
後方から 2 台のビデオカメラ(60Hz)を用いて撮影した。その結果、エア点と局面時間に有意な相関関係はみら
れず、難度点とキッカーでの滑走時間には有意な負の相関関係がみられ、難度点と滞空時間に正の相関関係がみ
られた。国際大会出場レベルの選手において、難度の高い技の実施には、飛び出し速度を高めて滞空時間を長く
することが必要であると考えられる。
演題番号 POS-66_IMP-23
シル・ホイール(CyrWheel)の習熟過程に関する研究
―ピボット動作に着目して―
○大塚隆(東海大学体育学部)
シル・ホイール(CyrWheel)とは、等身大ほどの一本の鉄製リングのことをいい、一輪ラートとも言われて
いる。サーカス等で使用されているほか、近年はスポーツ種目の一つとしても普及が始められている。本研究で
はシル・ホイールの基本回転であるピボット回転に着目し、初心者がその技術を習得していく過程を明らかにす
ることで、今後の指導資料を得ることを目的とした。シル・ホイール未経験者 2 名を対象とし、相互の運動観察
と内省報告による 18 回の練習を行った。その結果、手・足の位置の修正、膝を曲げることによる回転の安定、腰
の姿勢修正によるバランスの確保、回転加速に関する意識の変化など、運動の習熟過程における形態や運動感の
特徴が明らかとなった。本研究においてはピボット回転の精協調位相には至らなかったものの、ホイールを「自
転」から「公転」へと発展させるための回転加速技術の重要性が示唆された。
―42―
演題番号 POS-67
インチョン2014アジアパラ競技大会におけるブラインドサッカ―アジア強豪国の分析
―中国代表の攻撃について―
○大嶽真人(日本大学文理学部)
、橋口泰一(日本大学松戸歯学部)、坂本宗司(日本大学文理学部)、
伊佐野龍司(日本大学文理学部)
、李宇韺(専修大学)、松崎英吾(日本ブラインドサッカー協会)
ブラインドサッカーは、パラリンピックに 2004 年アテネ大会より B1 クラスが「Football5-a-side」として正式種目とな
った。日本では 2002 年に日本視覚障害者サッカー協会が発足し関東・関西を中心に本格的に普及した。しかし、2008・
2012 年のパラリンピックに出場することがかなわなかったが、2016 年リオ大会出場に向けて強化がなされている。
これまで視覚障害者のスポーツに関する研究は、リハビリテーションや運動の教授法など様々な観点で行われてきてい
るが、競技力向上を目的とした研究はあまりみられず、ブラインドサッカーの競技力向上を目的とした研究は少ない。今
後日本が世界との差を縮めるためにも競技力向上に特化した科学的な研究およびサポートが急務であると言える。
そこで本研究は、インチョン 2014 アジアパラ競技大会におけるアジア強豪国の攻撃に着目し、中国代表のドリブルおよ
びシュートに関する攻撃場面の基礎的な分析を通して、代表および代表選手の競技力向上の手がかりを見出すことを目的
とした。
本研究は、JSPS 科研費(26350794 ならび 26350795)の助成を受けて行われました。ここに記して感謝申し上げます。
演題番号 POS-68_IMP-24
車椅子バスケットボールにおける「流れ」と勝敗の関係
―時間と得失点差に着目して―
○池田英治(茨城県立医療大学医科学センター、筑波大学大学院人間総合科学研究科)、
橘香織(茨城県立医療大学理学療法学科)、内山治樹(筑波大学体育系)、
岩井浩一(茨城県立医療大学人間科学センター)、和田野安良(茨城県立医療大学医科学センター)
車椅子バスケットボール(WheelchairBasketball:WB)は、健常者バスケットボールとほぼ同一のルールに
則って行われる競技でありながら、その特性は健常者バスケットボールと大きく異なることが報告されている
(池田ほか、2013)
。WB が「競技スポーツ」として発展するためには、戦術的特性について検討した専門的知見
の蓄積が急務である。そこで、本研究では、WB における得失点差と勝敗との関係について検証するために、
IWBF 世界選手権等のゲームを研究対象として、それらの内から、各ピリオド立ち上がり 5 分時及び終了時の得
失点差の抽出し、それらを独立変数、試合の勝敗を従属変数としてロジスティック回帰分析を施した。ゲームの
勝敗に影響を及ぼす独立変数のオッズ比を算出することで、コーチのゲーム・プランニングにとって有用な知見
を提示する。
演題番号 POS-69_IMP-25
大学生および障がい者バドミントン選手への指導事例から得たコーチング学的視点
○金子元彦(東洋大学)
現代におけるコーチングの対象は競技スポーツのみならず、アダプティッド・スポーツや学校体育における運
動指導も含むものと理解され、競技種目や指導の対象者を問わず、そこに横たわる普遍性を探求することが目指
されている。しかし、パラリンピックを含む障がい者スポーツについては、その歴史的背景もあって、医療福祉
関係者がその指導に携わることがほとんどであった。そのため、こうした本学会で探求されているようなコーチ
ング学的視点からの研究は乏しい。
そこで本研究では大学生および障がい者バドミントン選手への指導機会を得た筆者の指導を題材として、両対
象への指導の共通点や相違点について事例的に報告し、コーチング学的視点の提供を試みたい。研究を進めるた
めの資料としては指導の際の記録(メモ、メール等)等を用いる。たとえば、個別競技種目の技術に関する研究
を深めることは障がい者選手への還元性が高く、逆に筋力に依存できない障がい者選手への指導を通じて技術の
細部を検討することは大学生選手への指導に還元できる示唆が得られる可能性があると考えられた。
―43―
演題番号 POS-70
混戦型球技種目選手における筋力発揮が走パワーの間欠的持続能力に及ぼす影響
明石光史(大阪経済大学)
、田中守(福岡大学)、田中宏暁(福岡大学)、檜垣靖樹(福岡大学)
混戦型球技種目の試合中はボディコンタクト由来の筋力発揮が頻繁に発現しており、その筋力発揮が試合中の
走パワーの間欠的持続能力に影響を及ぼしていると考えられる。そこで、シャトル走パワー(スピード型)の間
欠的持続能力を評価する測定と、それに混戦型球技種目特有の動きである方向変換走パワー(力型)を組み込ん
だ測定とともに、回復期間に筋力発揮を加えた測定も行い、筋力発揮がシャトル走パワーや方向変換走パワーの
間欠的持続能力に及ぼす影響と体力特性との関連性を検討した。筋力発揮を含まない測定の走行距離は、筋力発
揮が加わったことでシャトル走パワーや方向変換走パワーのみの走行距離より低下したことから、筋力発揮がそ
れぞれの走パワーの間欠的持続能力に影響を及ぼすことが示唆された。筋力発揮が加わった測定の走行距離と有
酸素性作業能力との間も有意な相関関係が認められたことから,筋力発揮が加わってもそれぞれの走パワーの間
欠的持続能力を維持するためには有酸素性作業能力に優れる必要性が示唆された。しかし、筋力発揮や方向変換
走パワーが加わることによる走行距離の低下は、有酸素性作業能力の高い者ほど大きいことが示唆された。
演題番号 POS-71_IMP-26
リバウンドジャンプテストによる下肢3関節の筋力・パワーアセスメント法
○図子あまね(筑波大学)、苅山靖(筑波大学)、図子浩二(筑波大学)
本研究では ReboundJump におけるパフォーマンス変数だけでなく、腰・膝・足関節のトルク・パワー・仕事
(関節キネティクス)をリアルタイムに計測できるシステムを開発し、下肢 3 関節に関する筋力・パワーに関する
アセスメント法について検討した。男女 41 名の跳躍選手を対象にして RJTEST を実施し、RJ 指数、跳躍高、接
地時間とともに、下肢 3 関節のトルク・パワー・仕事を算出した。従来、関節キネティクスの算出には多大な時
間と労力が必要とされていた。そこで、本研究では RJ 実施直後リアルタイムに、上記データが自動的に算出・表
示される QuickMotionAnalysisSystem(DKH 社との共同開発)を開発し、測定に利用した。得られた接地時間
と跳躍高の優劣から分類したタイプ別、競技レベル別、男女別、個人別に評価した関節キネティクスについて検
討するとともに、その評価診断法について論考した。RJTEST は現在スポーツ界に広く普及しているが、本研究
で開発したシステムとアセスメント法を利用した RJTEST は、パフォーマンス変数に加えて、下肢 3 関節のトル
ク・パワー・仕事をリアルタイムに評価し、高いエビデンスを有したトレーニング評価を可能にすることが明ら
かになった。
演題番号 POS-72
爆発的パワー向上を狙いとしたコンプレックストレーニングの有効性
○中嶋俊文(東海大学大学院)、植田恭史(東海大学)
本研究では、高負荷ウエイトトレーニングとプライオメトリクスエクササイズを組み合わせたコンプレックス
トレーニングが、爆発的パワー向上に効果的であるという仮説を検証し、指導現場で役立つトレーニング法の一
資料とすることを目的とした。被験者は陸上競技跳躍種目を専門とする男子学生とし、3 週間の期間に計 12 回の
トレーニングを実施した。トレーニング前後でリバウンドジャンプ能力及び跳躍高と接地時間、自転車全力ペダ
リングでの最高回転数及びパワーと体重あたりのパワー、フィールドテストの立五段跳と 20m 走、ウエイトト
レーニング種目のハイクリーン及びクウォータースクワットの最大挙上重量を測定した。その結果、コンプレッ
クストレーニングを 3 週間継続して実施したグループにおいて、RJ 指数及び跳躍高と接地時間に有意な向上が認
められた。以上のことから、爆発的パワーを向上させるための方法として、コンプレックストレーニングを用い
ることが有効であるということが示唆された。
―44―
演題番号 POS-73
競技特性の違いにおけるレジスタンストレーニング経験の比較と関係
○武田篤(日本大学大学院)、野口智博(日本大学文理学部)
レジスタンストレーニング(以下、RT とする)はスポーツにおける競技力向上の手段として広く用いられて
おり、様々なスポーツ種目において各々の競技特性に則った RT を行うことが推奨されているが、実際の実施状
況や選手の目的意識などについては不明な点が多い。本研究ではスポーツ競技歴を持つ大学生184名を対象に RT
に関するアンケート調査を実施した。アンケートは RT 経験の有無を選択させ、その回答に沿った質問を選択す
る形式で行った。被験者が専門とするスポーツ種目を競技特性ごとに「測定型」
、
「判定型」
、
「評定型」の 3 つに
分類し、RT 経験の有無によって「経験者群」と「未経験者群」に分類した。経験者群では判定型が 65.6%で最も
多く、次いで測定型 32.8%、評定型 1.6%であったが、未経験者群では判定型 56.5%、評定型 25.8%、測定型 17.7
%となり、測定型と評定型の割合が両群間で逆転する結果となった。また、出場試合のレベルを国際大会〜地域
大会の 5 段階に分類した結果、経験者群が最も多かったのは国際大会出場レベルの 78.3%であったのに対し、未
経験者群が最も多かったのは地域大会出場レベルの 53.3%で、競技レベルにより RT 経験に違いがみられた。
演題番号 POS-74
ハードルジャンプ運動における条件設定の違いと下肢関節発揮トルクの関係
―滞空期に着目した検討―
○髙橋和将(新潟医療福祉大学)、市川浩(新潟医療福祉大学)、尾縣貢(筑波大学)
本研究では、ハードルジャンプ運動に用いるハードル高およびインターバルの変化が下肢関節の発揮するトル
クに与える影響を検討した。跳躍種目を専門とする男子大学陸上競技者 1 名に対し、ハードル高 3 設定(0.7m、
0.8m、0.9m)およびインターバル 4 設定(1.4m、1.6m、1.8m、2.0m)を組み合わせた計 12 設定において、5 台の
ハードルジャンプ運動を行わせた。4台目を越える滞空期を分析局面とし、下肢関節の発揮トルク・トルクパワー
を算出した。各試技を比較した結果、ハードル高が高くなると、特に股関節伸展トルクが大きくなる傾向にあっ
た。また、インターバルが広がることでも股関節トルクは大きくなる傾向が見られたが、インターバル 2.0m 設定
では屈曲トルクが大きくなるが、伸展トルクが小さくなっていた。以上のことから、ハードル高は特に股関節伸
筋群への、インターバルは特に股関節屈筋群への負荷を変化させる設定であることが示唆された。
演題番号 POS-75_IMP-27
鼠径部周辺痛既往歴者のインサイドキック動作解析
○高橋将(早稲田大大学院)
、川本竜史(大東文化大)、加藤駿太(早稲田大大学院)、福林徹(早稲田大)
本研究の目的は、バイオメカニクス的観点から、鼠径部周辺痛(Groinpain; 以下 GP)既往歴者のインサイドキ
ック動作における特徴を明らかにすることであった。インサイドキック動作解析の結果、膝関節最大屈曲時、GP
既往歴群の股関節外転角度は、コントロール群と比較して小さかった。一方、Ballimpact 時の股関節内転角速度
は、GP 既往歴群が速かった。以上より、GP 既往歴群は、①股関節を大きく外転させることが困難であること②
内転角速度を速めてボールをインパクトするという動作的特徴が認められた。すなわち、これらの動作が鼠径周
辺部への力学的ストレスへとつながっていた可能性が考えられた。すなわち、GP 既往歴者の再発予防のために
は、股関節の内転に強く依存させないインサイドキック動作を習得させる指導が必要であると考えられる。これ
らの新たな知見は、既往歴者の治療・再発予防の一助となりえる可能性が示された。
―45―
演題番号 POS-76
『女性における助走つきホッピングの脚動作特性』
○志賀充中嶋絋希(びわこ成蹊スポーツ大学)
目的:本研究は 3 種類の片脚連続跳躍(ホッピング)における動作的特徴を明らかにすることを目的とした。
方法:被験者は大学女子選手 11 名を対象とした。カメラの撮影および地面反力の測定は、跳躍試技の 2 歩から
3 歩目の分析区間を 3 台の高速度カメラ(CasioEX-F1・1/300)を用い撮影し、3 歩目に地面反力計を設置した。
分析方法は三次元 DLT 法を用いて三次元座標を得た後、身体の関節角度・角速度を算出した。ホッピングの実
験試技は、①立位からの跳躍、② 2m 助走からの跳躍、③ 4m 助走からの跳躍、以上 3 種類の 5 段跳躍とした。
結果および考察:本研究では助走を用いてホッピングをすることによって、接地時間の短縮を狙いとした。そ
の結果、各跳躍は助走距離を増加させることによって、跳躍距離が増大し(p<0.01)、接地時間が短縮する傾向
を示した。次に接地中の脚動作は、助走の増大と共に足関節屈曲動作が抑えられた。また助走距離の増大と共に
滞空局面における膝関節の角度変位は大きく、同時に股関節トルクが大きな値を示していた(②<③ , p<0.05)
。
詳細はポスターにて。
演題番号 POS-77
ユース世代のアスリートを持つ親がコーチに求めるもの
○水野洋子(日本体育大学大学院)
、水野増彦(日本体育大学)、伊藤雅充(日本体育大学)
ユース世代のアスリートに対する親の影響は強く、コーチが親とのトラブルや問題に直面することは少なくな
い。スモールら(スモールら、2011)は、コーチとアスリートと親の三角関係がユーススポーツにおける社会的
システムの自然な要素であり、コーチと親の関係を高めることが、三角関係の調和を高め、トラブルを最小限に
抑えることにつながると述べている。また、久崎ら(久崎と石山、2012)は、スポーツに参加する子どもの心理
的発達に及ぼす影響について、大人の肯定的な行動や認知がスポーツに対する有能感や価値に対する子どもの知
覚を高め、さらに内発的動機付けやスポーツ活動の決定意志を維持したり高めたりするというプロセスが存在す
る可能性を示唆した。コーチと親の関係に関する研究は欧米でよく行われているが、日本においてはコーチと親
の関係についての研究はあまり行われていない。そこで本研究では、
「親がコーチに対して何を求めているか」に
ついて、陸上競技チームに所属するユース世代のアスリート男子 8 名、女子 13 名の親 17 名(うち兄弟 4 家族)を
対象に、自由記述式アンケート調査を行い、質的分析手法により分析を行った。その結果は、効果的なコーチン
グ(Côté & Gilbert, 2009)で求められるアスリートの結果(有能さ、自身、関係性、人間性)を支持するもので
あった。
演題番号 POS-78_IMP-28
研究成果をコーチング実践に結びつけるための提案
○民内利昭(木更津東高等学校)、坂田洋満(木更津工業高等専門学校)
スポーツ科学分野において、日本の運動分析手法は世界でもトップクラスであるといわれている。しかし例え
ば疾走指導に関しては、15 年以上前に「もも上げ、地面を蹴る指導は意味のない指導である」という指摘をス
ポーツ科学が行なっているにもかかわらず、依然として多くの指導現場では従来通りの指導が行なわれている。
その理由の一つに、日本のスポーツ科学では新たな運動技術の開発・指導法の提示がなされていないことが挙げ
られる。演者らは新たな疾走指導法を提示し研究室と実践現場でその効果について検証を行なっている。その中
で、なぜスポーツ科学研究が進んでいる日本で新たな運動技術・指導法が開発されなかったのかという疑問が浮
かんだ。すると特定・抽出した理想とされる運動技術を研究しコーチング実践に結びつけるには、運動技術に関
する特殊な状況を認識し、従来あまり行なわれていない方法で研究を進めていかなくてはいけないことがわかっ
てきた。本発表では、研究成果をコーチング実践に活用するための組織的な研究スタイルについて提言したい。
―46―
演題番号 POS-79_IMP-29
随筆コーチング誌の製作によるコーチング学の創造について
○川島康弘(大阪体育大学)
、曽根純也(大阪体育大学)、中井俊行(大阪体育大学)、
梅垣明美(大阪体育大学)、作道正夫(大阪体育大学)
大阪体育大学コーチング系では、コーチングについて建て前ではなく本音でお互いの情報交換ができる場を持
ちたいとの主旨で、1996 年より「櫂」と命名したコーチング誌の編集 ・ 出版を行っている。年 1 冊の発行で、本
年は 17 号を出版する。コーチ教育コース在籍学生の副読本としても使用している。
人間社会におけるスポーツの役割や、スポーツをどの様な感覚、観点で見て行い、学生指導に生かすかという
ことから、スポーツの感動、コーチング点描、コーチングクリニック、コーチの視角という章立てを行っている。
現場で指導に立っている教員が、日々のトレーニングや指導の中で起こる出来事を纏め、他種目におけるト
レーニングのヒントとなることもある。第 3 号からは世界の舞台で活躍した指導者が、自身の経験や実践におけ
るコーチングの創造を披瀝した「技を拓く」を特集している。
競技会や日々のトレーニングにおける記録は、次のトレーニングの反省的実践となることから、本冊子「櫂」
は研究誌としてコーチングの一助となるものと考えられる。
演題番号 POS-80
中学校部活動指導にあたる教員のストレスに関する研究
○飯塚駿(大東文化大学大学院)、遠藤俊郎(大東文化大学)、
榎戸慎(大東文化大学大学院)、池田志織(大東文化大学大学院)
教員の教育活動において、全ての教員が同じ校務を実行するわけでなく、教科や部活動、など異なった校務を
担当していることから、教員のメンタルヘルスは、近年、悪化の一途をたどっているといわれている(小橋、
2013)。しかし、教員のストレスを対象としたこれまでの研究において部活指導に着目した研究は見受けられな
い。そこで本研究では、中学校教員の部活指導に当たる教員のストレスの特徴を明らかにすることを目的とし
た。中学校教員 248 名(男性:147 名、女性:101 名)を対象とし、教員用ストレッサ―尺度を用いて質問調査を
行った。分析の結果、
「職場環境」の因子においては男性教員よりも女性教員の方が有意に高い値(t(246)
=2.84,<.01)を示し、運動部を担当とする教員より文化部を担当とする教員の方が有意に高い値(t(225)=2.97,p<.01)
を示した。また、体育教員よりその他の教科を担当する教員の方が有意に高い値(t(246)=4.53,p<.01)を示す
結果となった。これらの結果から、合併的に精神的疾患を引き起こす可能性が示唆され、教員の離職にも繋がる
可能性があるため、学校側は教員それぞれの適正や事情に合わせた配慮が必要である。
演題番号 POS-81
中学校課外活動者の心理的実態に関する研究
―怒りに着目して―
〇榎戸慎(大東文化大学大学院)、遠藤俊郎(大東文化大学)、
飯塚駿(大東文化大学大学院)、池田志織(大東文化大学大学院)
教員の教育活動において、教職現場での体罰やパワーハラスメントなどの攻撃行動が注目されている。しかし
怒りに着目した研究は、学生や社会人などを対象とした研究が散見されるが、教員を対象とした怒りに関する研
究は現在行われておらず、質的、量的にも十分な状態ではない。そこで本研究では、部活動指導にあたる中学校
教員の怒りについて検討し、明らかにすることを目的とする。本研究では、中学校教員 248(男性:147 名、女
性:101 名)を対象とし、攻撃性質問紙を用いて質問紙調査を行った。分析の結果、
「身体的攻撃」の因子におい
て、文化部を担当の教員より運動部の教員の方が高い傾向がみられた(t(225)=1.79,p<.1)
。また「言語的攻撃」
において、文化部を担当する教員よりも運動部を担当する教員の方が有意に高いという結果が認められた(t(225)
=2.97,p<.01)。これらの結果から、中学校教員は「言語的攻撃」言葉の攻撃を教育活動でおこなっている可能性
が示唆された。
―47―
演題番号 POS-82
アーチェリー競技における大学部活動の実態調査
〜競技パフォーマンスに着目して〜
○岩崎優也(早稲田大大学院)
、堀野博幸(早稲田大スポーツ科学学術院)、森政憲(筑波大大学院)
【背景】アーチェリー競技を今後強化していくにあたって競技スタートの多くを占める高校・大学アーチェリー
部での活動には大きな意味があり、普及や強化する点においても注目すべき年代であることに違いない。そこ
で、まずはアーチェリー競技の活動環境に焦点をあてた基礎資料が必要である。
【目的】大学アーチェリー競技
における練習環境の実態を明らかにし(目的 1)
、競技パフォーマンスをもとに競技成績と環境要因との関連を明
らかにすること(目的 2)を目的とした。さらに、競技パフォーマンスに関連して選手自身の技能課題について
事例的に調査・考察すること(目的 3)を目的とした。
以上を明らかにすることにより、アーチェリー競技の競技パフォーマンスを向上させる要因や低下させる要因
が明らかとなり、コーチング分野や実際のコーチング現場に有益な情報を提示できると考えられる。
演題番号 POS-83_IMP-30
東日本大震災・支援活動としての「交流型」体操指導の事例
〜つくば市在住の福島県双葉町避難者との活動実践から〜
○長谷川聖修(筑波大学)
、古屋朝映子(筑波大学)、檜皮貴子(新潟大学)、鈴木王香(國學院大學)
2011.3.11 東日本大震災から 4 年。復興の中で最も深刻な問題は、東京電力福島第一原子力発電所の事故による
放射能汚染である。現在、福島県より約 500 名が茨城県つくば市に避難している。中でも、双葉町など帰還困難
区域の住民は、新たなコミュニティの中で、つくば市民とともに生きがいのある、健康な暮らしを望んでいる。
長期化する避難生活を健康づくりの観点から見ると、従来のイベント的な活動に加え、日常の暮らしを取り戻す
ための定期的な支援が求められている。そこで、筑波大学体操場を拠点として、つくば市民と福島県民の交流の
場として「うつくしま(う・つくば+ふくしまの略)体操教室」を定期的に開催している。この交流型の体操
は、参加者の心の垣根を取り払い、異なるコミュニティを融合させる機会となった。さらに、被災地域以外の者
が深刻な原発問題を共有できる場ともなり、震災・復興の風化を防ぐ意味でも大きな役割を果たしている。
演題番号 POS-84
保護者の身体活動サポートと子どもの運動習慣との関連
―小学生から高校生を対象にして―
○今野亮(順天堂大学)、桜庭景植(順天堂大学)
本研究の目的は、子どもの運動習慣と保護者から受けた身体活動サポートとの関連を検討し、その有効性や年
代による特徴の差異を明らかにすることである。調査対象者は、スポーツ健康科学部と医学部に所属している大
学 1 年生 322 名とその保護者 492 名であった。調査内容は、学生には過去(小学校から高等学校まで)の運動実施
状況、保護者には子どもに対する身体活動サポート、過去、及び現在の運動実施状況であった。
身体活動サポートについて因子分析をしたところ、3 因子 12 項目が抽出された。これら 3 因子は、子どもの各
年代における運動実施状況と対応しており、全ての年代において運動実施群は非実施群と比較すると保護者の身
体活動サポートは有意に高く、性差や年代による各因子得点の差異が明らかになった。つまり、保護者は子ども
に対して性差を意識して年代によってそれぞれに適したサポート内容を選択し、子どもが運動に興味を持つよう
なアプローチが求められ、子どもの運動習慣の形成やその後の運動継続の一端を担っていると考える。
―48―
演題番号 POS-85
未就学児のボールゲームにおける状況判断能力の変化
―Ballschule(バルシューレ)の実践を通して―
○奥田知靖(北海道教育大学岩見沢校)
、佐藤徹(北海道教育大学岩見沢校)、房野真也(広島文化学園大学)
ボールゲームにおいて、選手はゲーム中に出現する戦術的課題を素早く且つ的確に達成することが重要である
ため、状況判断能力を高めておくことが必要である。この状況判断能力のトレーニングに関する先行研究では、
認知的トレーニングや戦術的アプローチの有効性が報告されているが、これまで小学校低学年や未就学児を対象
とした研究は少ない。そこで本研究では、未就学児における状況判断能力の現状およびその変化について明らか
にすることを目的とした。対象は、3 歳〜 6 歳の未就学児 30 名とし、Ballschule の理論に基づき、1 回 45 分間で 10
回から 20 回の状況判断能力のトレーニングを行った。この様子をすべてビデオ撮影し、対象者の行動変化を 2 次
元 DLT 法による映像解析手法および Ballschule の戦術・技術要素を視点とした視認的評価を行った。その結果、
トレーニングの経過に伴い、相手(障害物)を認識した行動、目的地(ゴール)まで移動する際の速度およびそ
の経路に変化が認められた。
演題番号 POS-86
種々の鬼遊びにおける動きの特性について
○彦坂修一郎(三重大学大学院)、八木規夫(三重大学)
幼児期に多様な運動経験は重要であり、その運動経験のひとつとして鬼遊びは広く用いられている。そのよう
な鬼遊びの中に含まれる多様な動きの特性について知見を得ることは幼児の運動遊びを考えるにあたって重要な
ことであると考える。本研究は、人とりおに型である変わり鬼としっぽとり、集団遊戯おに型であることりお
に、場所おに型であるワニ鬼においてそれぞれ幼児の動きの軌跡を 2 次元 DLT 法を用いて水平面上の XY 座標で
表し、種々の鬼遊びにおける動きの特性を明らかにすることを目的とした。分析対象は、K 幼稚園に通う 5 歳児
10 名とした。測定方法として、K 幼稚園で行われた 4 つの鬼遊び実践を斜め上方からビデオカメラを用いて撮影
した。その結果、変わり鬼としっぽとりでは、類似した軌跡を示した。ことりおにでは、オニとコが共に円形の
軌跡を示した。ワニ鬼では、オニは左右に動く軌跡を示し、コは左右に動く軌跡と短い距離を直線的に移動する
軌跡を示した。以上のことから、鬼遊びによって幼児期に多様な動きを経験させるためには、種類の違う鬼遊び
を行う必要があることが示唆された。
―49―