A3.9 ファイナンシャルプランナーが破産し、弁護士が訴追され、そして医師が病気になる。これは専門職の皮肉である。こ の面白い本は、診療行為や病気になる経験、そして患者でもある医師が自分の主治医と持った相互作用について、顕 微鏡で観察しながら解剖したものである。「医者が患者になる時」の目的は、力関係、尊厳、否定、誤り、罪の意識、コミ ュニケーション、権威、専門の範疇、感情的な距離、そして数字の解釈(結果を予測する検査結果と統計)に焦点を当て ながら、病気を抱えた医者という独特な状況に注目していくことで、医者と患者との間の複雑な関係についてのより深 い理解を示すことである。 生活が変わったとはいえ、運よく短かった病気を体験した後、精神科医の Robert Klitzman は 70 人の患者と面談した。 そしてその著書で、医療格差の別の側にいることについての患者の反応を紹介した。インタビューされる人の多くは比 較的若く、今後より専門的な職業を持つことになる人たちだった。半分は HIV 感染者であり、いくらか歪められたサンプ ル抽出になっている。残りの半分は様々な深刻な診断を与えられた人たちだった。男性も女性も含まれている。インタ ビューがどのように組み立てられたのか、明らかではないが、Klitzman は特定のテーマと副テーマに関してインタビュ ーを受ける人たちの反応をまとめ上げた。また、それを描くために医師患者間の物語を使用している。Klitzman が見出 したことを非科学的であると退けるのは大きな間違いであろう。なぜなら、この本の最大の強みは患者の言葉の豊富さ にあり、それを通して読者は、病気が移り変わり、「人の生命は無秩序で複雑なものである」と直に学ぶからである。 重病という不幸を持った医者ならだれでも、この本でインタビューを受けた人たちが示した反応、感情、ストレス、報い といったものを理解することになろう。Klitzmanとインタビューを受けた人たちが記すように、病気は見せかけを取り去る ものであり、医師が患者となった時に医師にとって最も重要なことについての問題、自己同一性と職業上の責任につい ての問題、そして患者と医師の間、専門家としての考え・行動と個人としての考え・行動との間での曖昧な境界について の問題、これらの問題の核心を晒すものである。 この本の価値は、Klitzman による、自身の病気に対する医師の様々な反応についての描写の仕方、同時に強い共通 性についての記述の仕方に見出される。それは同じく患者となった同量の視点から、医師が自分自身を見つめる機会 をもたらすものである。医師患者間の実際の言葉に接すると、患者の人間性が読み手に深く触れ、読み手は触れられ るがままとなる。明らかに、この本で詳述されている病気体験に関する観察は、医師患者間を超えて全ての患者へと広 がるものである。 一方で、この本にある語りはいくらか途切れがちであり、また繰り返しが多い。不思議な考え方といった概念は繰り返 し現れる。また患者が自身の人格を見出していくこと(患者の人格は著者によって隠されている)が繰り返しえがかれ、こ れによって読者はそれを追跡し続けることができる。Klitzman はインタビューを受けた人の反応について、患者自身の 言葉の力により所々で中断しながら、まとめたり解釈を与えたりしている。インタビューを受けた人たちの言葉と異なり、 まとめの語りによって、患者が読み手に取って馴染み難く同情を寄せにくい存在にしてしまう危険性がある。そして Klitzman の指示的な書き方は、インタビューを受けた人自身が語ったことに基づいて結論を下す機会を読者から奪って しまうものである。 患者になることの意味についての深い理解は、病気になった医者に耳を傾けることで得ることができる、というのが 「医者が患者になる時」の圧倒的なメッセージである。この本は深い質問で終わっている。それは、患者の真の状況に ついての深い認識は教えられるものか、というものだ。医師から患者に向けてどの程度感情移入すると、しすぎとなる のか?医師患者関係においては、誰が誰の世話をするのか?医者が本質的に持っている力はいつ良いものとなるの か?いつ悪いものとなるのか?その分析(実際、その本のことだが)は、医師とは何かという問題のまさに核心に迫る。 その答えが鮮明になるのは、医師が自身の病気やあらゆる身体的問題、感情的問題、哲学的問題、専門職上の問題、 金銭的な問題、道徳的問題、スピリチュアルな問題、そして倫理的問題に直面したときである。 【解答例】 The reviewer Janet R. Gilsdorf perceives that the strength of When Doctors Become Patients is that the book contains a lot of words of the doctors who have become patients. For example, in this book, various responses and common responses of doctors to their own illnesses are described in their own words. Listening to these words allows doctors to understand better what it is like to be a patient and how great the effect of an illness on a patient’s life is. In addition, these words give doctors a chance to deeply consider what a doctor is from the viewpoint of patients. It is not until doctors become patients that doctors can accurately answer the question of what a doctor is. In conclusion, doctors can deeply understand what a patient is and what a doctor is if they read this book. This eventually leads to a better understanding of the complex relationship between doctors and patients.
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