健康づくりのための身体活動 +10(プラス・テン)から始めよう 埼玉県立大学保健医療福祉学部 看護学科 講師 會田みゆき 日本の平均寿命(2012 年)は、男性が 79.94 歳、女性が 86.41 歳であり、女 性は世界第1位、男性も過去最高を記録しました。このうち、健康上の問題で 日常生活が制限されることなく生活できる期間、すなわち「健康寿命」はどれ くらいでしょうか。2010 年のデータを見てみると、埼玉県においては、男性 70.67 年(平均寿命 79.71 年)、女性 73.07 年(平均寿命 85.92 年)です。男性 は 9.04 年、女性は 12.86 年が、日常生活に制限のある期間になります。健康寿 命を延ばし,日常生活に制限のある期間を縮めることは,QOL(Quality of Life; 生活の質)を高めるためにも,必要なひとつの要素と言えます。 健康寿命を縮める要因に、メタボリックシンドローム、ロコモティブシンド ローム(注)、認知症などがあげられます。身体活動不足は、肥満や生活習慣病 発症、高齢者の自立度低下や虚弱の危険因子でもあり、健康寿命を縮める要因 にもなります。ゆえに、日常における身体活動量増加を目指した取り組みは重 要になってきます。 健康づくりのための身体活動基準 身体活動(physical activity)とは、安静にしている状態よりも多くのエネル ギーを消費するすべての動作であり、「生活活動」(日常生活における労働・家 事・通勤など)と「運動」 (スポーツ等体力の維持・向上を目的とした意図的継 続性のある身体活動)の2つに分けられます。身体活動は、健康づくりに欠か すことができない生活習慣であり、平成 25 年度から開始された「第二次健康日 本 21」では、 「日常生活における歩数の増加(男性 9000 歩、女性 8500 歩)」 「運 動習慣者の増加(約 10%増加)」「住民が運動しやすいまちづくり・環境整備に 取り組む自治体数の増加(47 都道府県)」が目標として設定されています。また、 健康づくりのための身体活動基準は、 「健康づくりのための身体活動基準 1013」 に示されています。 身体活動 (生活活動+運動) 運動 〔今よりも 10 分多く 体を動かす〕 65 歳未満は 60 分/日、 65 歳以上は 40 分/日の身体活動 〔運動習慣をもつ 30 分以上の運動を 週 2 日以上〕 +10(プラス・テン)から始めましょう 健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)では、今より 10 分多 く体を動かすことを推奨しています。ご自身の生活や環境を振り返ってみて、 いつ・どこで+10できるか考えてみましょう。 日常生活の中の動作のちょっとした工夫によって、+10が実行できます。 例 ・近場なら、乗り物を使わずに歩く ・エレベータを使わずに階段を上る ・まめに体を動かす(拭き掃除をまめに) ・ちょくちょく外出する ・座っている時間を短くする ・リモコンを使わない ・CM 中にストレッチ、筋トレ ・職場のトイレは遠い所へ など 歩行は、通勤や家事など日常生活でも頻繁に行っているものであり、歩数は 日常的に測定・評価できる身体活動量の客観的指標になります。歩数を目安に 身体活動量を増やしていくのもよいでしょう。目標を設定しやすく、その数字 は励みになります。1000 歩のウォーキングに要する時間は約 10 分(600~700 m程度)といわれています。+10で、約+1000 歩になります。 健康づくりは“どれだけ知っているか”だけではなく、 “どれだけ実行するか” です。+10を合言葉に、健康づくりのための一歩を踏み出してみましょう。 (注)ロコモティブシンドローム 運動器症候群。通称「ロコモ」。骨・関節・筋肉など体を支えたり動かしたり する運動器の機能が低下し、要介護や寝たきりになる危険が高い状態のこと。 <参考> 厚生労働科学研究 健康寿命のページ:http://toukei.umin.jp/kenkoujyumyou/ 厚生労働省ホームページ 厚生統計・白書:http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/ 健康日本 21(第二次) :http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkounippon21.html 健康づくりのための身体活動基準 2013、アクティブガイド: http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple.html
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