プロジェクト リスクマネジメント第3回

プロジェクトの価値 (P/Lベース)
プロジェクト
リスクマネジメント第3回
2010年5月25日(水)
10:15-11:45
Profit & Loss statements (P/L=損益計算書) of projects A, B, C
Sales
COGS
EBT
Tax
売り上げ
製品原価
税引前利益
税金
Net Income
純利益
A
100
60
40
20
20
B
100
80
20
10
10
C
100
90
10
5
5
Return on Sales (ROS)=売上高利益率→A=20%
プロジェクトの価値 (B/Sベース)
プロジェクトの価値 (CFベース)
AとBは10年の定額償却,Cは5年の加速度償却で初年度40%を計上
貸借対照表
Sales
COGS
製品原価
Depreciation
減価償却費
Others
その他
EBT
Tax
売り上げ
税引前利益
Net Income
Return on Equity (ROE)=株主資本利益率→B=20%
減価償却 (depreciation)
税金
純利益
A
100
60
20
40
40
20
20
B
100
80
5
75
20
10
10
C
100
90
20
70
10
5
5
Cash Flow Return On Investment (CFROI)→C=50%
財務諸表 (Financial Statements)
B/S (Balance Sheet) 貸借対照表
Debit
借方
Credit
貸方
Debt
借入
purchased
asset or the
object of the
fund
資金の使途
source of
the fund
Asset
資産
Equity
株主資本
資金の出所
1
貸借対照表
貸借対照表の項目
mil.$
Cash
100
mil.$
mil.$
E
100
PPE
100
100億円の現金を所有
E
100
100億円の工場を建設
PPE: Plant, Property
& Equipment=設備
mil.$
D
50
Cash
50
PPE
100
D
50
E
100
Liquid
Assets
Fixed
Liabilities
50億円は借金で賄う
Fixed
Assets
PPE
150
E
100
Current
Debt
Equity
Capital
Liquid assets (流動資産): Cash, notes receivable (受取
手形), stock of materials (原材料在庫), works in process
(仕掛品), finished goods inventory (製品在庫)
Fixed assets (固定資産): Securities for investment (投資
有価証券), real estate (土地建物),
( 地建物), equipment
q p
(設備),
patents
Current debt (流動負債)
Fixed liabilities (固定負債)
Equity capital (株主資本): Investment from the
shareholders + accumulated net profit
Working capital (運転資本) = Liquid assets – Current
debt
150億円の工場を建設
各項目の定義
 流動資産:1年以内に現金化されたり,売られたり消
費されることが予定される資産.
 固定資産:1年以内に現金化される予定のない資産.
 流動負債:1年以内に現金で支払われる予定の負債.
流動負債 1年以内に現金で支払われる予定の負債
 固定負債:1年以内に現金で支払われる予定のない
負債.
 株主資本:株主からの出資金額と事業活動開始時か
らの累積利益の合計
損益計算書 (P/L)
Sales
- COGS
Depreciation
others
- SGA
EBIT
- Interest expense
EBT
- Tax
Net income
売り上げ
製品原価 (Cost Of Goods Sold)
減価償却
その他
一般管理費 (Sales & General Administration)
営業利益 (Earnings Before Interest & Tax)
利子費用
税引前利益 (Earnings Before Tax)
税金
純利益
キャッシュの増減とB/S
増加
キャッシュ
減少
キャッシュ
流動資産
out
流動資産
in
運転資本
out
運転資本
in
固定資産
out
固定資産
in
流動負債
in
流動負債
out
固定負債
in
固定負債
out
株主資本
in
株主資本
out
ステークホールダー
債権者
政府
株主
権利の強さ: 債権者>政府>株主
還元方法: 金利>税金>配当,キャピタルゲイン
2
キャッシュフローの計算
B/S
P/L (2006年度)
-
-
Sales
COGS
Depreciation
others
SGA
EBIT
Interest expense
EBT
Tax
Net income
プロジェクトのキャッシュフロー
2005年度
流動資産
現金
受取債権
棚卸資産
固定資産(減価償却控除前)
▲減価償却(累計)
固定資産
100
60
10
50
20
20
4
16
8
8
2006年度
流動資産
現金
受取債権
棚卸資産
固定資産(減価償却控除前)
▲減価償却(累計)
固定資産
60
10
20
30
97
7
90
150
流動負債
買掛金
短期借入金
固定負債
長期借入金
社債
資本
50
40
10
50
20
30
50
150
70
5
25
40
110
17
93
163
流動負債
買掛金
短期借入金
固定負債
長期借入金
社債
資本
52
42
10
53
28
25
58
163
プロジェクトのCF=プロジェクトを実施した場合のCF
-プロジェクトを実施しなかった場合のCF
埋没コスト (sunk cost) を無視する
機会コスト (opportunity cost) を考える
CF=純利益+減価償却-投資-運転資本増分=-3
Present Value (現在価値)
資金流列
CF=純利益+減価償却-投資-運転資本増分
PV  CF0 
Stream of cash flows
プロジェクトの価値
プロジェクト自体の価値は資金の調達方法に
依存しない.(資本コストは割引率により考慮)
CF1
CF2
CFn


2
1  r  1  r 
1  r n
Discounted Cash Flow
正味資金流列
FCF=営業利益(1-税率)+減価償却-投資-運転資本増分
Net Cash Flow = Free Cash Flowで評価する
Stream of free (net) cash flows
FCF=営業利益(1-税率)+減価償却-投資-運転資本増分
CF=純利益+減価償却-投資-運転資本増分
3
企業とプロジェクト
投資家の期待利益率
Capital Market
Investment
Investor
株式>債券
Corporate Management
Financing
Financial Asset
Investment
Management
Return
Return
Investment
Real Asset
Return
Corporate Finance
Finance
Net Present Value と IRR
企業内の資金の流れ
NPV  FCF0 
FCF1
FCF2
FCFn


2
1  r  1  r 
1  r n
IRRは NPV  0 となるような r
IRR: Internal Rate of Return (内部収益率)
ROR: Rate OF Return (利益率,収益率,利回り)
DCF-ROR: Discounted Cash Flow Rate Of Return
NPVの例
IRRの例
Discount Rate= 10%
Project A
Free Cash Flows
Present Values
NPV
Year0
-100
-100
6.53
Year1
10
9.09
Year2
20
16.53
Year3
30
22.54
Year4
40
27.32
Year5
50
31.05
Project B
Free Cash Flows
Present Values
NPV
Year0
-100
-100
20.92
Year1
50
45.45
Year2
40
33.06
Year3
30
22.54
Year4
20
13.66
Year5
10
6.21
Project A
Free Cash Flows
IRR
Year0
-100
12 01%
12.01%
Year1
10
Year2
20
Year3
30
Year4
40
Year5
50
Project B
Free Cash Flows
IRR
Year0
-100
20.27%
Year1
50
Year2
40
Year3
30
Year4
20
Year5
10
4
IRRの感度
資源開発プロジェクトの正味資金流列
Project A
Free Cash Flows
IRR
Year0
-1000
100.0%
Year1
2000
Year2
0
Year3
0
Year4
0
Year5
0
Project B
Free Cash Flows
IRR
Year0
-1000
26.0%
Year1
0
Year2
0
Year3
2000
Year4
0
Year5
0
Project C
Free Cash Flows
IRR
Year0
-1000
14.9%
Year1
0
Year2
0
Year3
0
Year4
0
Year5
2000
2004 2005
15.4 19.2
2007 2008
25.8 28.4
2009 2010
38.8 43.9
2011
27.9%
84.6
80.8
74.2
71.6
61.2
56.1
72.1%
Gold Price, $ per ounce (London pm fix)
1600
オーストラリアとカナダのベースメタル
金価格推移
6,000
1400
1200
1000
800
600
400
200
Source: Global Insight
4,000
円/g
オーストラリアのIRR=8%
カナダのIRR=20%
オーストラリアのリードタイム33年
カナダのリードタイム8年
オーストラリアの平均純利益はカナダの3倍
5,000
0
Jan-71 Jan-74 Jan-77 Jan-80 Jan-83 Jan-86 Jan-89 Jan-92 Jan-95 Jan-98 Jan-01 Jan-04 Jan-07 Jan-10
3,000
2,000
1,000
0
Jan-71 Jan-74 Jan-77 Jan-80 Jan-83 Jan-86 Jan-89 Jan-92 Jan-95 Jan-98 Jan-01 Jan-04 Jan-07 Jan-10
オーストラリア
ブラジル
カナダの
金鉱山開発
プ ジ クト
プロジェクト
金鉱山開発プロジェクト
探鉱費 (1990年換算百万ドル,1983-1988の総額)
オーストラリア 273 (1983-1986),ブラジル 200,カナ
ダ 2216
経済性評価対象鉱山発見数
オーストラリア 45,ブラジル 23,カナダ 66
プロジェクト当たり期待価値 (1990年換算百万ドル)
オーストラリア 12,ブラジル 24,カナダ -24
Mackenzie B.W. & Doggett M.P.,
Worldwide trends in gold exploration,
1992
IRRの期待値
オーストラリア 18%,ブラジル 19%,カナダ 4%
5
再投資を考慮 (Growth Rate of Return)
初期投資$100,000が毎年$37,185の利益を
生み残価はなし
プロジェクト期間中,他に最低でもIRRが12%
であるような投資案件が存在し,毎年の収益
はすべてそのような案件に再投資される
Growth Rate of Return の式
project A-1
Free Cash Flows
IRR
Year0
-100000
25.00%
Year1
37185
Year2
37185
Year5
37185
sum
85925
project A-2
Free Cash Flows
minimum
i i
IRR
Year0
0
12.00%
12
00%
Year1 Year2 Year3 Year4 Year5
-37185 -37185 -37185 -37185 199051
sum
50311
project total
Free Cash Flows
Growth ROR
Year0
-100000
18.76%
Year1
0
Year2
0
Year3
37185
Year4
37185
Year3
0
Year4
0
n 1
FCF0 
その他の評価指標
Year5
sum
236236 136236
 FCF 1  R 
i
n-i
i 0
F
1  RG n
資本コストと機会コスト
ROI (return on investment)
会計上の利益/投資金額
Pay-back
y
period (回収期間)
p
単純に何年で投資金額が回収できるか
ROE (return on equity)自己資本利益率
資本コストが10%
他に同程度のリスクでIRRが20%のプロジェ
クトがある
初期投資$100,000,10年間毎年$15,000の
初期投資$100 000 10年間毎年$15 000の
FCFが見込まれ,かつ10年後の設備の残価
が$100,000であるようなプロジェクトの評価
平均の税引き後利益/自己資本
Free Cash Flows
IRR
多数のプロジェクト間の選択
リスクは等しいとする
Year0
-100000
15.00%
Year1
15000
Year2
15000
・・・
・・・
Year9
15000
Year10
115000
財源制約下の資本割当 (capital rationing)
資本コスト10%
財源制約10億円
Cost of capital= 10%
Project A
Free Cash Flows
NPV
Year0
-10
21.4
Year1
30
(億円)
Year2
5
Project B
Free Cash Flows
NPV
Year0
-5
16.1
Year1
5
(億円)
Year2
20
Project C
Free Cash Flows
NPV
Year0
-5
11.9
Year1
5
(億円)
Year2
15
6
収益性インデックス (profitability index)
Project A
Year0
Free Cash Flows
-10
NPV
21 4
21.4
Profitability Index 2.1
Project B
Year0
Free Cash Flows
-5
NPV
16.1
Profitability Index 3.2
Project C
Year0
Free Cash Flows
-5
NPV
11.9
Profitability Index 2.4
Year1
30
(億円)
Year2
5
複数の財源が割り当てられる場合
現在と1年目にそれぞれ10億円投資できる
1年目にさらにproject Dというオプションがあ
る
Cost of capital= 10%
(億円)
Year1 Year2
5
20
Year1
5
(億円)
Year2
15
Projects
A
B
C
D
Year0
-10
-5
-5
0
Year1
30
5
5
-40
Year2
5
20
15
60
(億円)
NPV
21.4
16.1
11.9
13.2
PI
2.1
3.2
2.4
0.4
LP (linear programming)による解法
整数計画法 (integer programming)
それぞれのプロジェクトの一部に投資できる
ものと考える
プロジェクトA,B,C,Dの採用する割合をそれ
ぞれxA, xB, xC, xD,とする
とする
LPを解くと,プロジェクトAの50%,プロジェクト
Bの全て,プロジェクトDの75%に投資するこ
とになる
プロジェクトの 部分に参入することが難しい
プロジェクトの一部分に参入することが難しい
場合には,xA, xB, xC, xDを0または1とする
整数制約を設け整数計画法を用いる
maximize NPV  21.4 xA  16.1xB  11.9 xC  13.2 xD
10 xA  5 xB  5 xC  0 xD  10
 30 xA  5 xB  5 xC  40 xD  10
0  xA  1, 0  xB  1, 0  xC  1, 0  xD  1
subject to:
キャッシュフローの要点
→ プロジェクトAとプロジェクトDが採用される
プロジェクトリスクマネジメント
会計上の利益とキャッシュフローは違う
会計上の利益を計算する際,経常支出は控除する
が,資本支出は控除されず,代わりに減価償却費
が控除される
キャッシュフローは税引後ベース
キ
シ
は税引後ベ
プロジェクトを採用することによるキャッシュフ
ローの変化分(固定費も)のみを考える
運転資本増分はキャッシュアウトフロー
事業の他の部分に与える影響を全て含める
埋没費用(sunk cost)は忘れる
リスクの識別(認識)
定性的リスク分析
定量的リスク分析
定
析
リスク対応計画
リスクの監視・コントロール
(from PMBOK)
7
リスクの識別
リスク識別のツールと技法
技術・品質・性能リスク
文書レビュー
情報収集技法
不確実な技術への依存,非現実的な性能目標,プ
ロジェクト期間中の適応技術の変更など
マネジメントリスク
時間や資源の不適切な割り当て,いい加減なプロ
時間や資源の不適切な割り当て
いい加減なプロ
ジェクト計画やマネジメント
組織上のリスク
組織内の他のプロジェクトとの資源の競合など
外部リスク
法・制度的環境の変更,ストライキ,オーナーによ
る優先順位の変更,カントリーリスク,天候など
定性的リスク分析
ブレーンストーミング,デルファイ法,SWOT(強み・
弱み・好機・脅威)分析
チェックリスト
過去の情報や類似プロジェクトから作製する
前提条件の分析
図解技法
特性要因図,プロセス・フローチャート,影響図
(from PMBOK)
リスク影響度の評価
リスクの定性的発生確率・影響度
リスク等級マトリックス
プロジェクト前提条件の検定
プロジェクト目標
前提条件の安定性と,前提条件が間違っていた場
合のプロジェクトへの影響評価
データ精度の等級付け
非常に低い
0.05
低い
0.10
リスク影響度
普通
0.20
高い
0.40
非常に高い
0.80
コスト
軽微なコスト増
コスト増5%未
スケジュール
ジ
軽微なスケ
ジュール遅延
スケジュ ル遅 プロジェクト全体 プロジェクト全体 プロジェクト全体
スケジュール遅
延5%未満
の遅延5-10%
の遅延10-20% の遅延20%超
スコープ
品質
コスト増5-10%
コスト増10-20% コスト増20%超
スコープの非主
顧客が受容しな 実用に耐えない
軽微なスコープ
スコープの主要
要部分への影
いスコープの縮 プロジェクトの最
の縮小
部分への影響
響
終成果物
小
実用に耐えない
非常に厳しい用 顧客の承認が 顧客が受容しな
軽微な品質劣化
プロジェクトの最
途にのみ影響 必要な品質低下 い品質低下
終成果物
リスクの理解度,リスクに関する入手可能データ,
データの質,データの信頼性などに関する検討
(from PMBOK)
発生確率・影響度マトリックス
発生確率
0.90
0.70
0 50
0.50
0.30
0.10
具体的なリスクに対するリスク点数
リスク点数=発生確率×影響度
0.05
0.09
0.18
0.36
0.04
0.07
0.14
0.28
0 03
0.03
0 05
0.05
0 10
0.10
0 20
0.20
0.02
0.03
0.06
0.12
0.01
0.01
0.02
0.04
0.05
0.10
0.20
0.40
目標に対する影響度(配分尺度)
(from PMBOK)
定量的リスク分析
0.72
0.56
0 40
0.40
0.24
0.08
0.80
(from PMBOK)
 特定のプロジェクトの目標を達成できる確率を決定
する
 プロジェクトに予想されるリスクを数量化し,不測の
事態に必要となるコストおよびスケジュールの代替
案を考える
 プロジェクトの全リスクに対する個々のリスクの相対
的な寄与分を数量化して,最も注意すべきリスクを
特定する
 現実的で達成可能なコスト,スケジュール,スコープ
の目標を明らかにする
(from PMBOK)
8
プロジェクトの選定基準
課題03:
制約最適化法
線形計画法,動的計画法,整数計画法,非線形計
画法,多目的最適化
効果測定法
便益・費用分析,スコアリング・モデル,回収期間,
キャッシュフロー分析,NPV,IRR,GRR,ROE,ROI
など
(from PMBOK)
それぞれどのようなときに有利なのか?
Project A
Free Cash Flows
IRR
Year0
-100
20.27%
Year1
50
NPVs
0.00%
5.00%
10.00%
15.00%
20 00%
20.00%
25.00%
50.00
34.10
20.92
9.86
0 47
0.47
-7.57
Project B
Free Cash Flows
IRR
Year0
-100
20.25%
Year1
60
NPVs
0.00%
5.00%
10.00%
15.00%
20.00%
25.00%
38.00
26.47
16.53
7.90
0.35
-6.30
Year2
40
Year3
30
Year4
20
Year5
10
Year2
45
Year3
33
Year4
0
Year5
0
9