簿記要点整理(1)-仕訳と転記-/友田光明

第 20巻
2013イ ■3月
『京都経済短期大学論集』
特別号
研究 ノー ト
簿 記 要 点 整 理
一
仕 訳 と 転 記
―
友
は
じ
め
(1)
田
光
明
に
本稿は,初 級簿記講座 で使用 してきた簿記学習教材 を,自 学 自習用 としても
利用 できるよ うに整理 。加筆 したものである。簿記学習で初学者が最初 にぶつ
かる項 目は 「仕訳 と転記」 である。 とりわけ 「仕訳」 のルール にとま どう初学
者 も多 く見 られる。そ の 「仕訳」を独学 でマ スターで きる教材 の一つ となれば
と考 えている。
1.仕
訳
「簿記 とは仕訳である」 とオ ーバ ー に表現する人 もいる ように,簿 記 を理解
しマ スターす る うえで,仕 訳 は とて も重要 なものです。仕訳 (Jollnalizing)
とは,簿 記 上の取引を勘定 に正 しく記入す るために,取 引を一 定 のルールにし
たがつて分解す ることです。取引を分解す る,つ ま り勘定科 目ごとに貸 借 平均
(二 面的 )記 入をしよ うとす るとき
,
(1)い かなる勘定科 目に記入す るか。
(2)そ の記入 は借方か貸方か。
(3)そ の金額 はい くらか。
の 3つ の事柄 を決定す ることです。
152
京都経済短期大学論集
(第 20巻
特別号
)
簿記 で取引を分解するとは, 1つ の取引を常に 2つ の事実 (左 側借方要素 と
右側貸方要素 )に 分けて考 えることです。そ の 2つ の事実を同時 に記録する
,
つ ま り,あ る勘定の左借方 に記入 された金額は,必 ず別 の勘定 の右貸方 に同一
の金額が記入 され ることにな ります。
そのために
,
(1)1つ
の金額 を複数 の勘定 に二面的 に記入する勘定科 目 (2つ 以上)を
明 らかにします。
次に,仕 訳帳 (Jollmal)に 取引をそ の発生順
(日
付順 )に 記入す るために
,
(2)そ れぞれ の勘定科 目の左借方 か右貸方を決定 し
(3)勘 定科 目ごとの金額 を確定 します。
,
最後 に,こ の仕訳帳 の仕訳を書 き移す ことによつて元帳へ記入 します
(こ れ
を簿記では転記 (posting)と いいます)。
2.仕 訳 の ル ー ル (1):取 引 分 解 表
取引 の仕訳
,次 の手順 によリマ スター しましょ
(≒ 取引の分解 )の ルール を
う。 このルールが分か つていれば,仕 訳 を見て文章で表現 された元 の取引の概
略を推定する こ ともできます。そのためには,ま ず,取 引の文章 をよく読んで
,
①
使用す る勘定科 目を 2つ 以上発見す る。
② 発見した勘定科目が,簿 記の 5要 素
(資 産 。
負債・資本 。収益 。費用)の
どのグループに属するかを判断する。
③ 左借方記入か右貸方記入かを決めるために,金 額が増加
(十 )し
たのか減
少 (― )し た のか を判断 す る。
④ 簿記 5要 素の勘定の貸借記入ルールにしたがって,左 借方記入か右貸方記
入かを決定する。
⑤ 金額はいくらか,を 決定する。
簿記要点整理
(1)(友 田
)
ここでは,① か ら④ の項 目を考 えます。
そ の前 に,ま ず ,簿 記 5要 素 の勘定 の貸借記入ルールを確認 して くだ さい。
それぞれ の勘定記入ルール にしたが つて,左 借方 と右貸方 に増加
(―
(+)と 減少
)を 各 自 ( )の 中に記入 しま しょう。
<勘 定 の貸借記入 ルール >
貸
資
(
)
益
費
(
)
計
算
(
)
(
)
(B/S)
資
)
(
)
益勘定
(
)
勘 定 の 貸借記 入 ル ール が確認 で きた ので ,練 習 問題
う。ただし,練 習問題を取引分解表
(
)
本勘 定
(P/L)
書
収
用勘定
表
債勘定
(
)
(
)
照
対
負
産勘定
(
借
2-1に
トライ してみ よ
(仕 訳のルール①から④までを記入する一
覧表 )に 記入す る とき,次 の点に注意 して くだ さい。
(a)問 題文中の波下線部 は,使 用す る勘定科 目を直接示 しています。
(b)問 題文 中の ( )内 は,使 用する勘定科 目を補 つて示 しています。
(c)簿 記 の 5要 素 の記入は,次 の アルフアベ ッ ト (頭 文字)を 使用す ること。
資産
(assets):A
負債
費用
(expanse):E
収益 (ravenue):R
(habブ lities):L
資本 (capital):C
(d)増 加・減少 については,+ま たは 一で記入する こと。
(e)左 借方または右貸方 の記入は,左 または右で記入す ること。
154
京都経済短期大学論集
練 習 問題
2-1(勘
(第 20巻
特別号)
定 科 目が ,直 接 ,わ か ってい る場合 )
次 の取 引 を分解 して ,取 引分解表 に記入 しな さい 。
(1)現
金 ¥100,000を 元 入 (資 本金 )し て ,営 業 を開始 した。 [資 金調達取 引 ]
<ア プ ロー チ >
使用する勘定科 目を 2つ 以上発見す る。
①
「現金」 と 「資本金」 とい う 2つ の勘定科 目が,直 接 ,示 されています。
なお,「 元入」 とは簿記特有の用語 で,店 主 (=企 業 主)力 ヽ
企業経営のため
に最初 の事業資金を出す ことです。そ の元入 した資金は,「 資本金」勘定 として
記録 します。
発見 した勘定科 目が簿記 の 5要 素 (資 産 。負債 。資本 。収益 。費用 )の ど
②
の グループに属す るかを判断する。
「現金」は [資 産]勘 定,「 資本金」は [資 本]勘 定 の グル ー プです。
左借方記入か右貸方記入かを決めるために,金 額が増加
③
少
(― )し
たのかを判断す る。
個人商店の財産である元入 した 「現金」力ヽ
増加
が増加
④
(+)し たのか減
(十 )し
,そ れは 「資本金」
(+)し た と考 えます。
簿記 5要 素 の勘定 の貸借記入ル ール にしたがって,左 借方記入か右貸方記
入かを決定す る。
「現金」 とい う[資 産]の 増加
加
(+)は 左借方 に,「 資本金」 とい う[資 内
の増
(+)は 右貸方 に記入 します。
以上 ,(1)の 取引分解結果を記入 した ものが,解 答欄 に示 されています。
それでは,(2)の 取引を分解 しま しょ う。
(2)営 業用 の土地 ¥20,000と 店舗用建物 ¥10,000を 買 い入れ,代 金は現金で
支払 つた。
<ア プ ローチ >
① 使用する勘定科目を2つ 以上発見する。
簿記要点整理 (1)(友 田)
この取 引で は,
3つ の勘 定科 目 「
155
」 そ して 「
」,「
」が
,
直接 ,示 され て い ます (波 下線 部 を参 照 )。 この よ うに,取 引 の 分解 に よ り,3
つ 以上 の勘 定科 目が現 れ る場 合 もあ ります。
※ 「 」 には,使 用 す る具体 的 な勘 定科 目を記 入 して くだ さい 。
発見 した勘定科 目が簿記 の 5要 素 (資 産・ 負債 。資本 。収益 。費用 )の ど
②
のグループに属す るかを判断す る。
「土地」はモ ノなので [
して 「現金」 はもちろん [
]勘 定,「 建物」もモ ノなので[
]勘 定 のグループです。
]勘 定,そ
※ [ ]に は 5要 素 の 1つ を記入 して くだ さい。
左借方記入か右貸方記入 かを決めるために,金 額が増加
③
少
(― )し
(+)し たのか減
たのかを判断す る。
個人商店 の財産 である 「土地」 と 「建物」 を購入 したので,そ れ らの金額 は
<
>(
(
),そ
して「現金」で支払 つたので「現金」の金額は <
>
)し ています。
※<
>に は増加か減少 を,( )に は十か ―を記入 して くだ さい。
簿記 5要 素 の勘定 の貸借記入ルール にしたが つて,左 借方記入 か右貸方記
④
入かを決定す る。
「土地」 とい う[資 産]お よび 「建物」 とい う[資 産]は 増加
で『
』借方 に,「 現金」 とい う[資 産]の 減少
(―
)は『
(+)し ているの
』貸方 に記入 し
ます。
※『
』 には左か右 を記入 して くだ さい。
続 いて,(3)の 取引 に移 りましょう。
(3)茜 T用 の応接セ ッ ト (仮 曇 )¥3,000を 購入 し,代 金は現金で支払 った。
<ア プ ローチ >
① 使用する勘定科目を2つ 以上発見する。
2つ の勘定科目の 1つ は(a)「
」
,も う1つ は(b)「
」が,直 接
,
156
京都経済短期大学論集
(第 20巻
特別号)
示 され てい ます。
※ 「 」 には,使 用 す る具体 的 な勘 定科 目を記 入 して くだ さい。
② 発見した勘定科目が簿記の5要 素
(資 産 。
負債・資本 。収益 。費用)の
ど
の グル ー プ に属 す るか を判 断す る。
」は モ ノな の で[
(a)の 「
[
]勘
定 ,(b)の 「
」は もち ろ ん
]勘 定 の グル ー プです。
※「
」 には使用 す る具体 的 な勘 定 科 目,[
]に は 5要 素 の 1つ を記 入 して
くだ さい。
③ 左借方記入か右貸方記入かを決めるために,金 額が増加 (+)し たのか減
少
(― )し
たのかを判断す る。
」は個人商店 の財産であ り,そ れ を購入 したのでその金額が
(a)の 「
>( ),そ の代金は (b)「
金額は <
>( )し ています。
く
」で支払 つたので (b)「
※ 「 」には使用す る具体的な勘定科 目,<
>に
は増加 か減少 を,(
」の
)│こ
は十か ―を記入 して くだ さい。
④
簿記 5要 素 の勘定 の貸借記入 ルール にしたがって,左 借方記入か右貸方記
入かを決定す る。
(a)「
>( )し ているので『 』借
]は <
>( )は 『 』貸方 に記
」とい う[
]の <
」 とい う[
方 に,(b)「
入 します。
※ 「 」 には使用す る具体的な勘定科 日,[]に は 5要 素 の 1つ を,<
には増加か減少 を,(
)に は十か ―を,そ して『
>
』には左か右 を記入 し
て くだ さい。
取引 (2)と (3)の アプ ローチ の解答例 は,次 の とお りです。
(2)営 業用 の土地 ¥20,000と 店舗用建物 ¥10,000を 買 い入れ,代 金は現金で
支払 つた。
簿記要点整理
(1)(友 田
)
<ア プ ローチ >
使用す る勘定科 目を 2つ 以上発見す る。
①
この取引では, 3つ の勘定科 目 「土地 」,「 建物」そ して 「現金」が,直 接
,
示 されて います (波 下線部 を参照)。 この ように,取 引 の分解 によ り,3つ 以上
の勘定科 目が現れる場合 もあ ります。
※ 「 」 には,使 用する具体的な勘定科 目を記入 して ください。
② 発見 した勘定科 目が簿記 の 5要 素 (資 産 。負債・ 資本 ・収益 。費用 )の ど
のグループに属す るかを判断する。
(A)]勘 定,「 建物」もモ ノなので [資 産 (A)]
勘定,そ して 「現金」 はもちろん[資 産 (A)]勘 定 のグループです。
「土地」はモ ノなので [資 産
※ [ ]に は 5要 素 の 1つ を記入 して くだ さい。
③ 左借方記入か右貸方記入かを決めるために,金 額が増加
少
(― )し
(十 )し
たのか減
たのかを判断す る。
個人商店 の財産 である 「土地」 と 「建物」 を購入 したので,そ れ らの金額は
<増 加 >(+),そ して 「現金」で支払 つたので「現金」の金額は <減 少 >(― )
しています。
※く
④
>に は増加か減少 を,( )に は十か ―を記入 して くだ さい。
簿記 5要 素 の勘定 の貸借記入ルール にしたが つて,左 借方記入 か右貸方記
入かを決定す る。
「土地」 とい う[資 産
(A)]お よび 「建物」 とい う[資 産 (A)]は 増加
しているので『左』借方 に,「 現金」 とい う[資 産
(A)]の 減少
(―
(十 )
)は 『右』
貸方 に記入 します。
※『
』には左か右を記入 して くだ さい。
(3)顧 客 用 の応接セ ッ ト (備 品)¥3,000を 購入 し,代 金は現金で支払つた。
<ア プ ローチ >
①
使用する勘定科 目を 2つ 以上発見する。
158
京都経済短期大学論集
(第 20巻
特別号)
2つ の勘 定科 目の 1つ は (a)「 備 品」,も う 1つ は (b)「 現 金」が ,直 接 ,示 さ
れ て い ます。
※ 「 」 には,使 用 す る具体 的 な勘 定科 目を記 入 して くだ さい。
発見 した勘定科 目が簿 記 の 5要 素 (資 産 。負債 。資本 。収益・ 費用 )の ど
②
の グル ープに属するかを判断する。
(a)の 「備品」はモ ノなので [資 産
産
(A)]勘 定,(b)の 「現金」はもちろん[資
(A)]勘 定 のグループです。
※ 「 」 には使用す る具体的な勘定科 目,[
]に は 5要 素 の 1つ を記入 して
くだ さい。
左借方記入 か右貸方記入 かを決めるために,金 額が増加
③
少
(― )し
(+)し たのか減
たのかを判断す る。
(a)の 「備品」は個人商店 の財産 であ り,そ れ を購入 したのでその金額 が <増
加 >(十 ),そ の代金 は (b)「 現金」 で 「支払 つた」 ので (b)「 現金」 の金額 は
<減 少 >(― )し ています。
※ 「 」には使用する具体的な勘定科 目,<
>に
は増加か減少 を,(
)│こ
は十か ―を記入 して くだ さい。
④ 簿記 5要 素の勘定の貸借記入ルールにしたがって,左 借方記入か右貸方記
入かを決定す る。
(a)「 備品」 とい う[資 産
(b)「 現金」 とい う[資 産
(A)]は <増 加 >(十 )し ているので『 左』借方 に
,
(A)]の <減 少 >(― )は 『右』貸方 に記入 します。
※ 「 」 には使用す る具体的な勘定科 目,[
には増加か減少 を,(
]に は 5要 素 の 1つ を,< >
)に は十か ―を,そ して『
』には左か右を記入 し
て くだ さい。
以上 の結果 を,取 引分解表 に記入できま したか ?
それでは,(4)∼ (12)ま での取引例 を同 じよ うに考えなが ら,各 自,取 引分
解表 に記入 してみま しょう。
簿記要点整理 (1)(友 田)
(4)営
(5)商
159
業 用 の 自動 車 (車 両 運 搬 具 )¥80,000を 購 入 し,代 金 は現 金 で 支 払 つ た 。
品 ¥15,000を 仕 入 れ (仕 入 ),代 金 は現 金 で 支 払 つ た 。
[購 買
(=仕 入)取 引 ]
(6)商 品 ¥45,000(原 価 ¥10,000)を 売 り上げ(売 上 ),代 金は現金で受取 つ
た。 [販 売取 引 ]
(7)商
品 ¥20,000を 買 い入 れ (仕 入 ),代 金 は現 金 で 支払 つた 。
[購 買
(8)商
(=仕 入 )取 引 ]
品 ¥90,000(原 価 ¥65,000)を 販 売 し(売 上 ),代 金 は現 金 で受取 つた 。
[販 売取 引 ]
(9)商
品 ¥15,000を 購 入 (仕 入 )し ,代 金 は現 金 で 支 払 つた。
[購 買
(=仕 入 )取 引 ]
(10)従 業 員 に今月分 の給 料 ¥5,000を 現 金 で 支払 つた 。
(11)店 の 電 気代 (水 道 光熱費 )と して現 金 ¥6,700を 支払 つた。
(12)店 主が現金¥50,000を 追加元入 (資 本金)し た。
[追 加出資 =追 加 の資金調達取引]
京都経済短 期大学論集 (第 20巻
引分解 表
勘 定 科 目
5要 素
A
注 )簿 記 の 5要 素 =資 産
+
右
金
左
左
左
現
+
勘 定 科 目
資
本
金
5要 素
C
+
+
右
2-11取
練 習 問題
特別号 )
右
:A,負 債 :L,資 本 :C,収 益 :R,費 用 :E
仕訳で重要な金額 の情報がな い とはいえ,取 引分解表 は, 1つ の取引を常 に
2つ の事実
(左 側借方要素 と右側貸方要素)に 分 けていることがわか ります。
そ の 2つ の事実 を同時 に記録する,つ ま り,あ る勘定の左借方 に記入 された金
額 は,必 ず別 の勘定 の右貸方 に同一の金額が記入 されるための情報 を合 んでい
ます。
例 えば,練 習問題 2-1の 取引分解表 (1)の 記録が意味 しているのは,「 現金
とい う勘定 の左借方 (左 側借方要素)」 と「資本金 とい う勘定 の右貸方 (右 側貸
簿記要点整理
(1)(友 田)
161
方 要 素 )」 に 同 時 に 「そ れ ぞ れ 同 一 の 金 額 を記 入 しな さ い 」 と い う こ とで す 。
(「
⑤ 金 額 は い く らか ,を 決 定 す る。」 とい う こ とに つ い て は ,後 述 しま す 。)
さて,練 習問題 2-2で は,勘 定科 目が,直 接 ,わ か らない場合 の取引も出
てきます。
使用す る勘定科 目群 を参考 にしなが ら,次 の練習問題 の取引を,同 じ要領 で
取引分解表 に記入 しま しょう。ただ し,波 下線部 と下線部は,直 接示 されてい
ない勘定科 目を発見す るための ヒン トにな つてい ます。なお,す でに出てきた
勘定科 目について ヒン トがない もの もあ ります。
練習問題 2-2:次 の取引を分解 して,取 引分解表 に記入 しな さい。
<勘 定科 目群 >
(同 じ勘定科 目を何度使 って もよい。
)
建
金 1備
地 1車 両 運 搬 具 1買
掛
金 1借
上 1受 取 利 息 1仕
入 1給
品
入
金
支
付
掛
物
資
現 土 売
金 1貸
金 1売
料
本
金
払 利 息
(1)現 金 ¥3,000,000,土 地 ¥5,000,000,お よび店舗用建物 ¥2,000,000を 二
入 して,営 業 を開始 した。
(2)事 務処理用のパ ソコン¥100,000を 買 い入れ,代 金は現金で支払 つた。
(3)商 品 ¥150,000を 仕入れ,代 金は現金で支払 つた。
(4)商 品 ¥80,000を 売 り上げ,代 金は現金で受取 つた。
(5)商 品配達用 の軽 トラック¥250,000を 買い入れ,代 金は現金で支払 つた。
(6)商 品 ¥300,000を 買い入れ,代 金は掛 け 崚調蟹り とした。
(7)上 記 (6)の 掛 けで仕入れた商品代金を,現 金で支払 つた。
(8)商 品 ¥170,000を 販売 し′ 代金は掛 け (売 掛金)と した。
(9)上 記 (8)の 掛 けで販売 した商品代金を,現 金で受取 つた。
(10)得 意先に現金 ¥500,000を 貸 し付 けた。
(11)上 記 (10)の 貸付 にともな う利息 ¥12,500を 現金 で受取 つた。
162
京都経済短期大学論集
(第 20巻
特別号)
(12)取 引銀 行 か ら現 金 ¥400,000を 借 り入れ た。
(13)上 記 (12)の 借入 に ともな う利 息 ¥16,000を 現 金 で 支払 つた。
(14)店 員 に対 す る給 料 ¥90,000を 現 金 で 支払 った 。
(15)店 主 が 現 金 ¥500,000を 追加 元 入 した。
引分解 表
勘 定 科 目
5要 素
左
左
右
+
勘 定 科 目
5要 素
+
(12)
注 )簿 記 の 5要 素 =資 産
:A,負 債 :L,資 本 :C,収 益 :R,費 用 :E
右
2-2:取
練 習 問題
簿記要点整理
(1)(友 田)
3.仕 訳 のル ー ル (2):取 引分 解 表 か ら略 式 の 仕 訳 ヘ
取引分解表か ら略式 の仕訳 を学ぶ前 に,確 認問題 (練 習問題 3-1)を しま
しょ う。ただ し,こ れまで 「左借方」 を左,「 右貸方」を右 としてきま したが
,
これか らは左側 を借方 の 「借」
,右 側 を貸方 の 「貸」として記入する ことにしま
す。
練習問題 3-1:次 の取引を分解 して,取 引分解表 に記入 しな さい。
(1)現 金 ¥1,000,000を 元入 して,営 業を開始 した。
(2)営 業用 の金庫 ¥150,000を 買い入れ,代 金は現金で支払 つた。
(3)商 品 ¥200,000を 買 い入れ,代 金の うち¥40,000は 現金で支払い,残 額は
後 日支払 うこととした。
(4)商 品 ¥100,000を 売 り上 げ,代 金の うち¥30,000は 現金で受取 り,残 額 は
後 日受取 ることとした。
(5)取 引銀行か ら現金 ¥300,000を 借入れ た。
(6)今 月分 の家賃 ¥70,000を 現金で受取 った。
(7)本 月分 の家賃 ¥80,000を 現金で支払 った。
(8)今 月分 の水道代 (水 道光熱費)¥96,000を 現金 で支払 った。
164
京都経済短期大学論集
5要 素
注 )簿 記 の 5要 素 =資 産
+
勘 定 科 目
5要 素
+
借
勘 定 科 目
特別号)
貸
引分解 表
貸 借
3-1:取
練 習 問題
(第 20巻
:A,負 債 :L,資 本 iC,収 益 :R,費 用 :E
仕訳 とは,簿 記上の取引を分解する ことでした。すなわち,取 引分解表には
,
① 使用する勘定科目を 2つ 以上発見する。
② 発見 した勘定科 目が簿記 の 5要 素
(資 産・負債・資本
。費用 。収益)の ど
のグループに属するかを判断する。
③ 左借方記入か右貸方記入かを決めるために,金 額が増加
少
(― )し
(+)し たのか減
たのかを判断する。
④ 簿記 5要 素の勘定の貸借記入ルールにしたがって,左 借方記入か右貸方記
入かを決定する。
以上 の事柄 を記入 しました。
ところが,こ の取引分解表 では,仕 訳 の重要な要素の 1つ である 「金額の情
簿記要点整理 (1)(友 田)
165
報」 の記録 があ りません。また,そ れぞれ の取引をい ちい ち取引分解表 に記入
するのは,と ても面倒 です。そ こで,「 ⑤ 金額はい くらか,を 決定す る。」 とい
う要素を合 む,元 帳 に転記す るために必要な情報 をもつ と簡単 に記録す る仕訳
の形式をマ スター しま しょう。
それは次 の ような左右対称形式 であ り,「 略式 の仕訳」と呼ばれ ています。略
式 とはいえ,こ の記録 か ら,元 帳 (す べ ての勘定 口座 を集めた帳簿 )へ 転記を
行 うことが可能 とな ります。
この形式では,借 方側 の勘定科 目と金額 が左側 に記録 され,貸 方側 の勘定科
日と金額 が右側 に記録 されます。 したが つて
,
① 左側には,勘 定の借方に金額を記入する具体的勘定科日とその金額
② 右側には,勘 定の貸方に金額を記入する具体的勘定科日とその金額
を,常 に,記 入する ことにな ります。
では,上 記練習問題 3-1の 取引分解表 にもとづいて,略 式 の仕訳 に トライ
しま しょう。
166
[練
京都経済短期大学論集 (第 20巻
3-1解 答欄 ] <左
側 =借 方 >
勘 定 科 目
(現
金
金)
特別号)
<右 側 =貸 方 >
← │→
勘 定 科 目
額
1,000,000
(資
本
金
金)
額
1,000,000
この 略式 の 仕訳 を見 る と,例 えば,(1)の 仕 訳 が意 味 してい るの は ,「 現 金 と
い う具 体 的 な勘 定 の左 借方 に1,000,000円 ,資 本 金 とい う具体 的 な勘 定 の 右 貸方
に1,000,000円 記 入 しな さい 」 とい うこ とです。 これ を,実 際 に元 帳 に転記
(=
書 き移 した)し た も の が ,現 金 口座 左 借 方 と資 本 金 口座 右 貸 方 の 取 引番 号
(1)[本 来 は, 日付 を記 入 す る ]の よ うにな ります。
この よ うに,仕 訳 を元 帳 に転記 す る (=書 き移 す )具 体 的 な手続 きは,取 引
の番号順 に次 の よ うに行 い ます (転 記 の よ り詳 しい 手続 き につ い て は後 述 )。 あ
らためて ,(1)の 取 引 は
,
① 現金勘定 の左借方に,番 号 と金額を書き移す =左 借方勘定科目への転記。
② 資本金勘定 の右貸方 に,番 号 と金額を書き移す =右 貸方勘定科 目へ の転記。
とい うように,普 通,最 初に左借方勘定科 目の仕訳を,そ して次に右貸方勘定
科目の仕訳を元帳に書き移 していきます。
なお,各 勘定口座の[ ]内 には,各 具体的勘定科目が資産
:A,負 債 :L,
簿記要点整理 (1)(友 田)
資本
167
:C,収 益 :R,費 用 :Eの どの グル ー プ に属 す るか を,( )内
には金額
の増 加 は +を ,金 額 の 減少 は 一 を 自分 で記 入 し,勘 定 の 貸借記入 ル ール を も う
一 度確認 して くだ さい。
それ で は,(2)か ら (8)ま で の仕 訳 も元 帳 に転記 して くだ さい 。
京都経済短期大学論集 (第 20巻
(
特別号 )
)
売
金[
掛
― ― ― ― ― │―
― ――
_____‐
]
(
)
‐ ‐‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐‐ ‐ ― ― ― ― ―― ―― ― ― ― ― ‐‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐‐ ‐ ‐ ‐― ― ― ― ―― ― ― ― ― ― ‐
品[
]
金[
]
(
)
‐ ― ― ― ― ― ― ‐ ― ― ― ― ― ― ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― l_____
買
掛
____│_____―
―― ― ― ‐ ― ‐‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐‐ ‐ ― ― ―― ― ― ―― ― ― ― ― ― ‐‐ ‐ ‐ ‐ ‐‐ ― ― ― ―― ― ― ―― ― ― ― ― ― ―
金[
入
借
_l________―
L
― ―― ― ― ― ―
金[
本
資
]
]
!1)
(
_L
上[
)
999:9.Q9
]
(
)
]
(
)
― ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ― ‐ ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ‐ ‐ ‐ l‐ ‐ ‐ ‐ ―
受
取
家
賃[
]
入[
_│________―
(
)
支
払
家
‐ ‐ ― ― ―― ― ― ― ‐ ‐ ‐‐ ― ― ― ―― ― ― ‐ ‐ ‐‐ ‐ ‐ ‐― ―― ― ― ‐ ‐‐ ‐ ‐ ― ― ― ―― ― ― ― ―― ― ― ‐ ‐ ‐ ‐‐
― ― ― l― ―
(
)
_____―
― ‐ ‐‐ ‐ ― ― ‐― ― ― ― ― ―‐ ‐ ‐ ‐― ― ― ― ―― ― ― ‐ ‐ ‐ ―― ― ― ― ―― ― ― ―‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ―― ―
賃[
]
― ― ―‐ ― ‐ ‐ ‐‐ ― ― ― ― ― ‐‐ ‐ ‐ ―― ― ― ― ―― ― ‐ ‐ ‐‐ ― ― ― ― ―― ‐ ‐ ‐ ‐‐ ― ― ― ― ―― ―
水 道 光 熱 費[
]
簿記要点整理 (1)(友 田)
練 習 問題
3-2:次
169
の取 引 の 仕訳 を示 し,元 帳 に転 記 しな さい。 なお ,元 帳 ヘ
の 記入 は,番 号 と金額 の み記 入す る こ と。
(1)商 品 を ¥850,000で 仕 入れ ,¥500,000は 現 金 で 支払 い ,残 額 は 掛 け とした。
(2)仕 入 先 よ り現 金 ¥1,500,000を 借 り入 れ た。
(3)上 記 借 入金 に対す る利 息 の一 部 ¥30,000を 現 金 で 支 払 つた 。
(4)(2)の 借入 金 を返 済す る と ともに,利 息 の残 り¥40,000を 合 わせ て ,現
金 で 支 払 った 。
(5)得
(6)得
意 先 に現 金 ¥950,000を 貸 し付 けた。
意 先 よ り,利 息 ¥50,000と 合 わ せ て ,(5)の 貸 付 金 の 返 済 を 現 金
¥1,000,000で 受 け取 つた。
(7)商 品を¥780,000で 売 り上げ,¥300,000は 現金で受 け取 り,残 額 は掛 け
とした。
(8)営 業用 の建物 と備品をそれぞれ ¥30,000,000と
¥1,200,000で 購入 し,代
金は現金で支払 つた。
(9)売 掛金 の うち¥1,000,000を 現金で回収 した。
(10)店 員 に対す る給料 ¥1,200,000と 電気代・ ガ ス代 ¥300,000を 現 金 で 支
払 つた。
(11)借 方合計 と貸方合計 を求めな さい。
170
[練
京都経済短期大学論集 (第 20巻
3-2解 答 欄 ] <左
勘 定 科 目
(11)
借 方 合 計
側 =借 方 >
金
特別号)
<右
額
勘 定 科 目
貸 方 合 計
側 =貸 方 >
金
額
簿記要点整理
(1)(友 田
)
貸
建
備
買
付
掛
金
借
金
物
入
金
受取利息
仕
給
入
料
____」 I_________一 J― ―一一
水道 光熱 費
____J___
__―
)元
(注
帳のすべての勘定科目を,仕 訳
支 払 利 息
」 一 一
―
に使用します。
172
京都経済短期大学論集
結
び
に
(第 20巻
か
え
特別号)
て
これ まで筆 者 は仕訳 の説 明法 として ,取 引 の 分解 (分 析 )を 取 引文 の 下部 に
あ るい は取 引 ご とに説 明記 入 す る方 法 を とって きた。 この教 材 で は,そ れ を一
表 にま とめた 「取 引分解 表 」 を設 け,そ して 略式 の 仕訳 に進 む 学習法 に してい
る。仕訳 は 1つ の取 引 を常 に 2つ の事 実 (左 側借 方 要 素 と右側 貸方 要素 )に 分
けて 考 え る こ とで あ った。「取 引分解 表 」も,同 様 に 1つ の 取 引 を常 に 2つ の事
実 に分 けて 考 える形式 で あ る。 そ して ,最 終 的 に左側 借方 要素 と右側 貸方要 素
に整 列 させ る こ とに よ り,略 式 の 仕訳 へ 到達 す る こ とを可能 にす る もので あ る。
そ の意 味 で ,記 帳技 術 で あ る簿記 の 第 一 歩 ともい え る仕訳 を,初 学者 が よ り容
易 に理 解 す る もの にな つて い る ので は な いか と考 えて い る。
なお ,本 稿 で は,正 式 な仕訳 帳 へ の記 入 方法 ,仕 訳 帳 の役 割 と目的 ,お よび
転記 の しかた の詳 細等 につ い て紹 介 す る こ とが で きなか つた ,と い う点 を最 後
に付 言 して お く。