平成 20 年3月 埼玉県環境部温暖化対策課・埼玉県環境科学国際センター H19 年度埼玉県ヒートアイランド対策事業 ヒートアイランド調査報告概要版 (県内気温観測調査報告) 1.調査の概要 埼玉県内の気象庁による気温の観測は、熊谷地方気象台やアメダスなど 8 地点ありますが、 県内の広域的な気温状況は把握できていません。そこで、埼玉県全域の気温状況を把握するた めに、県内 50 か所の小学校の百葉箱に温度データロガーを設置し、気温を計測しました。今 回、夏季(6月~9月)の4か月間の気温について検討を行うと共に、記録的な猛暑だった8 月 16 日の気温状況についても検討いたしました。その結果、夏季を通して県南部~北東部が 比較的高温でした。また、最高気温が 40℃を超えた地点は 21 地点で、その全てが 8 月 16 日に記録していました。 2.調査方法 県内 50 か所の小学校を選定し、それ ぞれの百葉箱に温度データロガーを設置 し、正時より 15 分間隔で気温を測定し ました(写真 1)。 温度データロガー 写真 1.小学校の百葉箱と温度データロガーの設置例 3.平成 19 年夏季(6 月~9 月)の気温 図 1 は、小学校の百葉箱 50 地点 で計測した日平均気温の月平均値よ り作成した気温分布図です。 日平均気温の月平均値は、6月~ 9月の期間を通して県南部~北東部 が高温傾向にありました(図 1 は 7・ 8 月のみ)。特に、さいたま市~南東 部の東京都との県境の地域で気温が 高く、8 月の月平均気温は 29℃を超 えていました。 一方、西部の秩父地域は比較的低 温でした。 夏季における県内の測定地点間の 気温差は、3℃~4℃程度でした。 また、最低気温の地点間差が最高気 温の地点間差に比べ大きい傾向を示 していました。 また、夏季の最高気温が 40℃を超 えた地点は 21 地点で、その全てが 8 月 16 日に記録していました(5 を参照)。 7月 8月 図 1.平成 19 年 7 月~8 月の日平均気温の月平均 平成 20 年3月 埼玉県環境部温暖化対策課・埼玉県環境科学国際センター 4.8 月の真夏日(日最高気温が 30℃以上)、猛暑日(日最高気温が35℃以上)およ び熱帯夜(夜間の最低気温が25℃以上)の日数 8 月における真夏日の日数は、22日~27日と埼玉県内における地域による差はあまりあ りませんでした。一方、猛暑日の日数は、県南部~北東部において多く、西部地域で少ない傾 向が認められました(図 2)。 また、8月の熱帯夜の日数も猛暑日日数と同様に、0日~22日と地域間による差が顕著で した。秩父市などの西部地域では熱帯夜になることはほとんどありませんでしたが、さいたま 市など南東の地域は熱帯夜の日数が多く、夜間の気温があまり下がっていなかったことが明ら かになりました。 8 月の猛暑日日数 8 月の熱帯夜日数 図2.8 月における猛暑日と熱帯夜の日数 5.高温を記録した 8 月 16 日 14:00 の県内の気温状況 平成 19 年 8 月 16 日に埼玉県熊谷市と岐阜県多治見市において、観測史上最高気温となる 40.9℃を記録しました(気象庁)。図 3 は、8 月 16 日の県内で高温を記録した時間帯である 14:00 について小学校百葉箱のデータなどを用いて作成した気温分布図です。 8 月 16 日 14:00 における県内の計測値の最高気温は 41.5℃、最低気温は 35.4℃で、県 内全域で高温でした。特に県の北部~南東部地域で高温になっていました(図 3)。 なお、8 月 16 日の日最高気温が 40℃以上を記録した地点は 21 地点で、13:00~15:00 に記録していました。また、県内の最高気温は 41.8℃でさいたま市の小学校 3 地点と鷲宮町 の小学校 1 地点で記録しました。気温の測定方法、測定機器などが異なるため一概に比較は出 来ませんが、気象庁観測史上の最高気温である 40.9℃以上の地点は 12 地点でした。 熊谷気象台 越谷アメダス 図3.8 月 16 日 14:00 における県内の気温分布 平成20年3月 埼玉県環境部温暖化対策課・埼玉県環境科学国際センター H19年度埼玉県ヒートアイランド現象対策事業 ヒートアイランド調査報告書概要版 (都市緑地・河川のクールアイランド効果及び冷気滲み出し効果調査報告) 1 調査の概要 近年、緑地や河川などのヒートアイランド緩和機能(クールアイランド効果)が注目されています。そこ で、県内の市街地に残された緑地4ヶ所について、緑地のクールアイランドとしての機能を把握するため、定 点による気温の連続観測と、自転車を利用した移動観測により緑地周辺の熱環境を詳細に調査しました。その 結果、緑地の高い冷却能力と、一部ではその冷気の周囲への滲み出しが確認されました。 2 クールアイランド効果とは 3 大きな規模の緑地には、クールアイランドと呼ば れる冷たい空気のかたまりが形成されます。この冷 気は周囲に滲み出しヒートアイランド現象を緩和す ると考えられています。 ● ● ● ● クールアイランド効果の模式図 調査地点 宮内庁埼玉鴨場 別所沼公園 大宮氷川神社 大宮公園 久喜甘棠院 越谷市 緑地面積 約12ha さいたま市南区 緑地面積 さいたま市大宮区 緑地面積 約21ha 久喜市 緑地面積 宮内庁 埼玉鴨場 4 約 9ha 約 3ha 大宮氷川神社・大宮公園 定点観測結果(その1) 緑地内の平均気温は、7月は0.5℃~1.0℃、8月は0.8℃~1.2℃、9月は0.6℃~0.8℃緑地外に比べ低く、 明らかなクールアイランドの形成が確認されました(表)。各調査対象毎の同一時刻における緑地外の最高気 温と緑地内の最低気温の差は図1のような頻度分布となり、平均で1.6℃の差となりました。緑地内外の温度差 が最も大きかったのは8月17日の久喜甘棠院とその周辺で、緑地外の最高気温と緑地内の最低気温の差は最大 7.1℃となりました。緑地周辺の温度分布を見ると、緑地のほぼ中央に低温域が発生し、緑地から遠ざかるに従 い温度が上昇する傾向が確認されました(図2、3)。 表 期間 7月 9月 7~9月 調査対象 大宮氷川神社 大宮公園 埼玉鴨場 別所沼公園 久喜甘棠院 4区平均 大宮氷川神社 大宮公園 埼玉鴨場 別所沼公園 久喜甘棠院 4区平均 大宮氷川神社 大宮公園 埼玉鴨場 別所沼公園 久喜甘棠院 4区平均 平均 図1 緑地内平均 気温(℃) 緑地外平均 気温(℃) 内外温度 差 23.0 24.0 -1.0 23.2 24.0 22.9 23.3 23.8 24.5 23.6 24.0 -0.6 -0.5 -0.7 -0.7 27.7 28.9 -1.2 27.8 28.7 27.5 27.9 28.8 29.5 28.5 28.9 -1.0 -0.8 -1.0 -1.0 23.9 24.7 -0.8 5% 24.2 24.6 23.7 24.1 24.8 25.2 24.4 24.8 -0.6 -0.5 -0.7 -0.6 0% 25.1 25.9 -0.8 緑地内外の平均気温の差の頻度分布 (7、8月 午後3時) 30% 25% 20% 頻度 8月 緑地及び近隣市街地の平均気温とその温度差 15% 10% -0.5~0 0~0.5 0.5~1 1~1.5 1.5~2 2~2.5 2.5~3 3~3.5 3.5~4 緑地内外の温度差(℃) 4 定点観測結果(その2) 図2 図3 定点観測による緑地とその周辺の温度分布 (2007年8月平均気温) (2007年8月平均気温より作成) 宮内庁 埼玉鴨場 緑地の中心からの距離と気温との関係 別所沼公園 久喜甘棠院_緑地外 久喜甘棠院_緑地内 埼玉鴨場_緑地外 埼玉鴨場_緑地内 大宮氷川神社大宮公園_緑地外 大宮氷川神社大宮公園_緑地内 別所沼公園_緑地外 別所沼公園_緑地内 30.5 8月の平均気温(℃) 30 29.5 29 28.5 大宮氷川神社・大宮公園 久喜甘棠院 28 高 27.5 低 27 26.5 0 200 400 600 800 1000 1200 緑地中心からの距離(m) 5 移動測定結果 自転車による移動測定は、別所沼公園と埼玉鴨場を対象に行いました。その結果、別所沼公園、埼玉鴨場と もに、対象緑地は周辺地域に比べ温度が低く、クールアイランドが形成されていることが確認されました。ま た、埼玉鴨場では、対象緑地だけではなく、その脇を流れる元荒川に沿って温度の低いエリアが確認され、河 川にもクールアイランドが形成されていることが確認されました。さらに、緑地や河川の風下にも低温域が認 められ、冷気の滲みだし現象が起きていると考えられました(図4)。移動測定による調査期間中、最も温度 の高い地点と低い地点の温度差は最大6.7℃でした。 移動観測用機材 図4 宮内庁 埼玉鴨場周辺の温度分布図 (2007年8月14日13時30分 移動測定データより作成) 小型GPS 埼玉鴨場 冷気滲みだしと 思われる低温域 通風型温度計 元荒川 調査ルート 風向
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