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『研究開発の現場から』 ケイアールエフエム株式会社 小宮邦文
<この原稿は、財団法人 内藤泰春科学技術振興財団 平成 14 年度 科学技術セミナーの講演録を加筆訂正したものです。>
KRFMが開発します【図 6】の高周波ハイブリットIC は、携帯電話や様々な無線の基地局に使われ
る高周波モジュールとしてOEMで販売する( 一品ものとして)設計しています。( 製造工場は台湾で
すが、User は日本の方々です。)
受動素子部品
(パワフィルタ ・ハイブリッドIC・ コイルフィルタ)
【図 5】
この高周波ハイブリットIC を買われるお客様はそうでもないのですが、一般のICを買われて回路を
設計されている方々が、配線されている電源に重畳される高調波〈ノイズ〉に困られていて、
「どうやっ
て切ろうか」とか、「どうやって止めようか」ということに悩まれていました。
切り取れな かった高調波は
チョ ーク コイルが特許
全て電源ラインに重畳される
コイルフィルタは のオリジナル商品名です
【図 29】
【図 30】
そこで【図 29】の「コイルフィルタ」
。( 通称として「コイフィル
TM
」) というのが在りますが、使
ってみては如何ですかと勧めました。すると、
「使い勝手を良くして欲しい」とか「一個ですませたい」
という要求があったので、誰もが使えるようにと、もっと広帯域にして樹脂パッケージに封止して製品
化しました。
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『研究開発の現場から』 ケイアールエフエム株式会社 小宮邦文
はじめに案内しました【図 5】の商品「パワフィルタ
TM
」です。 EMI とか、EMC と言われる「不
要な電波の消滅」対策に使って、高調波〈ノイズ〉を止めます。どうやって止めるかというと直流の電
源に重畳されて伝わるすべての高調波〈ノイズ〉を出入りさせないようにします。だから、止まります。
パスコンでは切れな い高調波
周波数帯域を、 対数と実数
対数表示
コンデンサ(1608)
バイパス減衰量限界線
実数表示
【図 33】
【図 34】
ここで今までの EMI とか、EMC 対策がどのように実行されてきたか。 技術的な話をします。従来
の電子回路装置の中の電源線路には【図 30】下図の回路図にあるような「=」と同じような記号で書か
れる Capacitor〈コンデンサ〉といわれるものを主に使いました。
「ノイズがバイパスして、綺麗な直流電流だけがIC〈半導体〉に向かう。」いろいろな周波数帯域で
迂回させるためには【図 34】にあるような多種の容量のコンデンサを同時に入れる。すると広帯域に高
調波〈ノイズ〉が切れる。(と言われて来ました。また、宗教のように信仰(?) されて来ました。)
ところが、
【図 34】の測定データからも解るように、破線の左側(薄い青色の領域)はゼロ近辺からノイ
ズが切れてますが、破線から右下側は切れが悪かったり、切れていない帯域がある。
また、【図 34】は、横軸方向が各々「区切り区間」どうしの変化量を見やすくするためにつかわれる
表記方法の、対数表示〈log 表示〉で書かれています。ですからこのような log スケールの表示では 実
際に起こっている現象が、人間の感覚とは違って見えます。
そこで【図 34】を【図 33】下図のように リニア(普通のスケール)に書き換えてみました。
【図 34】
と【図 33】上図は同じもので、図の右側 が10GHz〈ギガヘルツ〉という周波数、その左の区切り目
が1GHz〈ギガヘルツ〉という周波数です。この横軸をリニア表示に直すと【図 33】下図のようにな
ります。1,000 ずつ増えて行くリニア表示で 6,000MHz〈メガヘルツ〉(6GHz)まで書いてあります。
書き換えてみると、コンデンサをいくつ使っても、低い周波数以外は殆ど高調波〈ノイズ〉が切れて
いないことが解ります。 ということはコンデンサという部品は、1GHz 以上の周波数では高調波〈ノ
イズ〉が切れないということが解ります。
では、1GHz 以上の高調波〈ノイズ〉は、どうフィルタリングすればよいのか。
そこで、
「コイフィルTM」どうしを組み合わせて、
「パッケージ化されたフィルタは如何ですか。
」と、
できた商品が「パワフィルタTM」です。
- 2-
『研究開発の現場から』 ケイアールエフエム株式会社 小宮邦文
【図 33】下図の赤線の KHLC-02s と緑線の KHLC-04d が最初にできた商品です。
他社製品との周波数帯域比較
PRODUCT NAME
Frequency Range (GHz)
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
KHLC-10d
POWERFILTER
Other
Manufacturer
KHLC-06d
Bypass
Capacitor
3 terminal
Capacitor
Ferrite Bead
T type Filter
高調波〈ノイズ〉といわれているEMI〈電磁波〉の80%近くが、電子回路基板の直流電源層(パワ
ーライン)から出ています。その直流電源線に繋がるIC〈半導体〉自身も、自分が作り出す高調波とい
うものに自分自身が脅かされると同時に、自分のICから電源を伝って外に垂れ流して平気でいます。
そのために、周りに〈電磁波〉=高調波〈ノイズ〉を発生させます。自分が出したもので、人に迷惑を
かける。 そして、ほかのICが出したものと、自分のものが一緒になって、また別のところにも迷惑を
かける。という複雑な連鎖反応現象が起こっているのです。
【図 36】のようなコンピュータのマザーボードの中には、EMI対策のためのいろいろな部品が現時
点でも搭載されています。それでも、まだ高調波〈ノイズ〉は飛び出す。
それは何故かというと、① 完全に止められる部品が搭載されてない。(コンデンサというものを入れ
れば止まるのだという錯覚の部品だけで対策している。) ② コスト優先で、EMI対策はこの程度で良
いと妥協している。 ③ 設計者に個々のIC〈半導体〉のEMIが見えないため総合的な高調波対策の
効果が解らない。(カタログデータが実装時も適用できると錯覚してしまっている。)
④ ノイズが高調
波だと理解していない。
EMC対策設計者の方々からは、反論もあるでしょうが、私共はこういう結論に達しました。
EMIを止めるためには、このようにして対策すればいいという方法論はあるのですが、それがうま
く実行されていない。原因はコストや時間や技術なのです。コンピュータ・クロックの周波数がどんどん
早くなっていくスピードに、設計現場の技術が追いつけない。どんどん進んでしまって、小手先の技術
が通用しなくなってきたというのも現状としてあります。
「どうしたら良いのか。
」この回答を求めて、KRFMはこの4年間、その都度開発した商品の開発費
を取り戻す時間も無いまま次から次へと、国や行政 そして 多くの財団から助成をいただきながらも開
発して来ました。
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『研究開発の現場から』 ケイアールエフエム株式会社 小宮邦文
コンピュータのIC〈半導体〉といわれる電子装置は、デジタルの信号を高速でやり取りしています。
そのやり取りのための並列の信号ラインは、8ビットだったり、32ビットだったり、64ビットだっ
たりと様々です。64ビットということは、64本の線がフラットケーブルみたいに並んで
並列に計
算する信号をやり取りしていると思ってください。
高速とパルス応答
デジタ ル回路の電圧波形
∼高速になって問題化したパルスの遅れ∼
5V
直流
電源
5V
電圧
波形
直流
負
荷
電源
電圧
波形
負
荷
0V
0V
オーバーシュート
High レベル
5V
リンギング
リングバック
スレッシホールドレベル(閾値)
0.8V
0V
tr
( 立上がり )
Low レベル
tf
アンダーシュート
電圧変化の時間
配線によるパルスの遅れが誤動作の原因になる
【図 23】
【図 13】
【図 13】のような遅れ問題もありますが、とにかく高調波の問題だけをみてみますと、電子回路基板
の上で、デジタルの信号を次から次へとIC〈半導体〉が伝えていくときに、
【図 30】の模式図のよう
に高調波〈ノイズ〉はこれら個々のIC〈半導体〉が作ってしまうのです。しかも、このIC〈半導体〉
の中には何十万ゲートといわれる大規模な〈半導体素子〉が存在します。その一つひとつが、【図 23】
でいいましたスイッチの例えと同じように、スイッチングしていて、カチカチと動くわけですから、高
調波〈ノイズ〉が広帯域に発生します。
この高調波〈ノイズ〉が電源から漏れ出しても、コンデンサを入れておけばバイパスの役割をするか
ら、大きく外部には「出て行かない」という人や、この高調波〈ノイズ〉をグランドに全部垂れ流して
もグランドが「吸い取ってくれる」と思っている人がいまだにいます。
コンデンサでバイパスしてもその高調波〈ノイズ〉はまた、元に戻ってきます。ですから、現象とし
ては【図 30】の模式図の右図のように複合の高調波〈ノイズ〉だらけになります。
IC〈半導体〉に直流電源を供給して動かすということは、この【図 30】の電源ラインのように、い
ろんな高調波〈ノイズ〉が電源層で、一瞬ごとに複雑に発生しているのです。
ただし、電源に重畳された高調波の電力が「どこまでだったらマズイのか」、
「どこまでだったら影響
がないのか」
、これを「誰が決めるのか」と言うことも、難しい問題になります。
微弱な電波で動く機械装置を使う人にとっては、例え1mW〈ミリワット〉でも他から電波が出てい
ると大変困るものです。オーバーですが、無線の基地局で何10W〈ワット〉も出しているところでは
1mW の電波が飛んで来てもあまり困らない。このように考えると、すべての環境に適合する規格を作
って、規制するということは大変な作業です。人間がやっている以上、利害もあって難しい。
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『研究開発の現場から』 ケイアールエフエム株式会社 小宮邦文
ここからは、開発しましたコイル部品、受動部品の中でも一番シンプルな素子である「コイフィルTM」
【図 29】
、
【図 38】からもおわかりの
の話になります。今、台湾で製造されている「コイフィルTM」は、
とおり、一見普通のコイルです。
呼び名はいろいろありまして、総称が「デカ
ップリング・デバイス」〈不結合回路装置〉。機能
コ イルの常識を
覆す
イルの常識を覆す
から付いた名称は「コイルフィルタ」。一番使わ
両端にショートリングをつけるなんて非常識
れている名称です。他社でも使っています。
今までのコイル部品
「コイルフィルタ」という名称は 1995 年頃か
ら使いはじめたのですが、これをふとどきにも商
標登録 (商標盗録) した会社があります。 通称名
コイルの特徴
①
②
③
④
で「コイフィル」と呼びます。
「コイルフィルタ」
従来品(コイル)より2倍以上の広帯域(-20dBライン)
低域用と広域用の両特性(∼10GHz)合成が可能
超小型(Φ0.4実現)になっても半田実装が容易
インピーダンスが変らないボールポイント実装
の盗録に懲りて商標登録しました。
「コイフィルTM」は、今でもたまに何だこんな
ものといわれます。KRFMが設立された5年前
【図 9】
に量産を始めようと機械を作りだしたときにも、
新開発ですか ? 小さく巻いただけではないのですか? とよく言われました。
ちょっと説明しますと、今までのコイルというのは実は【図 9】左図のようなものでした。下側にあ
る逆L字のところが半田実装をする端子で、それ以外のところは綺麗に絶縁されていてコイル状に密着
して巻いてあり、端子のところよりも本体のコイル部は浮いています。
しかし、
「コイルフィルタ」=「コイフィルTM」は【図 9】右図で、両方の端面が、コイルと同じ並び
に在ってリング状の電極を形成しています。コイル線材の被覆を削って、そこにメッキをして電極にし
てあります。
マザーボ ード の上面
フェ ラ イト コ アを付ける効果は?
【図 36】
【図 35】
これと同じようなリング構造を、どこに触っても電極として使えるという実装のメリットだけで、特
許を出された関西の有名な M という会社があります。審査請求ができませんでしたので、数年まえから
誰が作ってもいいという公知のアイデアとなりました。
しかし、「コイフィルTM」はコイル部分の形が同じ構造に見られますが、電磁気的な動作原理、高周
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『研究開発の現場から』 ケイアールエフエム株式会社 小宮邦文
波的な特性や細部の構造などの違いから、米国では特許を取得しました。
今までも、ほとんどの技術者 (特に高周波の技術屋さん) は、コイルは Q〈クオリティ・ファクター
と言いまして、コイルの性能を表す数値です〉が、これが高い程良いコイルだと思っています。ですが、
実は Q が低いコイルも必要だったのです。
コイルというのはインダクタとか誘導子といわれ、私が学生の頃は〈電波=電磁波〉を発生させるた
めの発振器を作る時の部品でした。しかし、今はICが発振させた高調波〈ノイズ〉を止めるために、
たくさん使われています。
高調波〈ノイズ〉を止めるための理屈は簡単でして、コイルは高い周波数の交流(高周波)ほど通し
にくいのです。その反対に、いつまでも同じ電圧で暴れない、直流に近い周波数の電気は抵抗なくスッ
と通してくれます。高調波〈ノイズ〉を止めるために、このようなコイル製品がたくさん使われます。
チョ ーク コイルとインダク タ
GHz帯対応のチップビーズインダクタと
当社製KF2シリーズコイルフィルタとの比較
チップビーズ
インダクタ
KRFM社製
コイルフィルタ
リード付き
コイルフィルタ
半田実装
コイルフィルタ
薄膜インダクタ」
【図 38】
【図 37】
「コイフィルTM」は、他社製のコイルやインダクタ 部品に比べると帯域が広くとれ、周波数の上限
も20GHz 近辺まで伸びていて、高調波〈ノイズ〉を阻止することができます。
【図 29】は、どの位の大きさかと見ていただくための写真です。1円玉や定規の上に乗せるとこうい
う感じです。定規の数字は cm の単位ですから、1/10 の線が mm、その半分の線は 0.5mm です。
大きいもので、2ミリから3ミリくらい。小さい方の長さは、約 1.6mm です。左うえに在るのは、
0.5mm の芯が出ているペンシルです。この芯とほぼ同じ直径だけコイルの中が空いています。 品種に
よっては、中にコア材料が詰まっているものもあります。
誰にもできそうですが、初めて、細いドリルの刃を芯棒にして工場の部材置き場からもらってきたエ
ナメル線を巻き付けて作ってから、今日の製品ができるまでに10年の歳月が流れました。
今は自動化された機械 (これも助成金をもらって試作した) が、 メイン工場の台湾にあります。朝か
ら晩まで一日中電源を入れておくと、四角い大型の弁当箱位の箱に、朝行くとたくさんコイルがたまっ
ています。
今、自動機一台で1カ月に 50 万個くらいできます。
50 万個といわれると驚かれるかもしれませんが、私はこれを 100 億個作るつもりです。何故そういう
話が起こるのか、ご説明いたします。
従来品で大手の部品メーカーが作っている「積層チップインダクタ」と言われる、KRFMの「コイ
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『研究開発の現場から』 ケイアールエフエム株式会社 小宮邦文
フィル」と同じような働きをする、受動素子の特性測定データを【図 40】に示します。
【図 40】のすべてのグラフ線が下に向かって、鋭く尖っています。 下に向かって深くなればなる程、
良い「コイル=インダクタ」すなわち、Q が高いコイルといわれます。
これを直列に2個並べてみました。並列にもつないで見ました。いずれも、特性のカーブは殆ど同じ
になります。【図 40】は「積層チップインダクタ」という四角いセラミックのような形に作られている
インダクタですが【図 39】は、【図 9】左図にあった「一般的な巻き線コイル」を【図 40】と同じよう
に直列接続したり、並列接続にした時の、それぞれの特性グラフです。
「積層チップインダクタ」に比べ
て「巻き線コイル」は急峻な切れ込みが弱く、その幅も少し広がっています。
【図 39】と【図 40】の共振点(くの字に曲がった鋭い凹み点)の周波数が違っているのは、たまたま実
験で使ったインダクタの値が「積層チップインダクタ」とは違ったためです。
積層型チップインダクタの
並列接続と直列接続
一般的な巻線型チップインダクタの
並列接続と直列接続
【図 39】
【図 40】
深く落ち込んでいるグラフの形を見ていただくと、
【図 39】は広がり、
【図 40】は狭くなっています。
狭いと云うことは、 高調波〈ノイズ〉を切る帯域幅が、狭いということで、狭帯域しか切れない。巻線
型の【図 39】は少し広い帯域まで切れます。これに比べて【図 43】の「コイルフィルタ」=「コイフ
ィルTM」は違っています。
2個の並列組み合わせも、直列組み合わせも、
【図 39】や【図 40】とは違います。3種類のインダク
タの中で、
「コイフィルTM」が一番広く帯域がとれています。 それに直列接続すると阻止する深さが増
えます。直列接続すると高調波〈ノイズ〉の切れる量が約 2 倍になります。直列接続は足し算ができる
のです。KRFMの「コイフィルTM」の面白い特長です。
このように、他社のインダクタにできない特長がありますから、世の中のデジタル信号が高周波にな
ってくれば来る程、
「コイフィル」は重宝されるはずです。そう思うと、現在の「積層チップインダクタ」
の1種類でさえ、1社で月産 5,000 万個は作っていますので、年間10億は読めます。そう考えると、
100億個という数字は、実現性の無い話では在りません。
もう一度コイルの話をいたします。
「チョークコイル」という名前で、アメリカの特許が通りました。
「チョーク」というのは、昔はほとんどの車についていて、冬になると引っ張ってエンジンをかけまし
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『研究開発の現場から』 ケイアールエフエム株式会社 小宮邦文
た。あの「チョーク」と同じ意味です。 辞書を引きますと「閉塞」とか「情報を受け付けない」という
ような言葉が書いてあります。高周波=高調波〈ノイズ〉を止めて、低い周波数は通すという意味です。
現在量産品で一番小さな「コイフィルTM」の内径は、ペンシルの芯くらいですが、開発品では、0.38mm
と言うのがあります。巻いてある線材の太さは、直径 0.11mm の銅線の外側に 0.03mm の被服が着いて
いますので、直径が 0.17mm になります。
この被膜は、耐温度特性に優れた線で、大体 300℃くらいのハンダ槽に 20 秒とか 30 秒間漬けても被
膜が取れないという、今世の中で大量生産されている被膜着き電線材の中では、一番温度に強い被膜で
す。ですから端子を作るためには、この被膜を機械的に剥離しなくてはなりません。
この剥離の量産機械開発に3年位かかりました。特許はございませんが、結構ノウハウが在ると思い
ます。ですから、この文章での詳細説明は割愛させて頂きました。
「コイルフィルタ」=「コイフィルTM」を組み合わせた「パワフィルタTM」は、可聴周波数から信号
が切れます。こんな小さなコイル部品が、どうしてこんな下の周波数から高調波〈ノイズ〉が切れるの
か。と疑がわれるのですが、実は低い周波数はコイルではなく別のもので切っています。ですから、ひ
とつの商品になった「パワフィルタTM」は、下から上まで切れるということで〈超広帯域フィルタ〉な
のです。
しかし、従来から在るフィルタ部品は【図 31】下側や【図 33】下図左側からもわかるとおり、組み
合わせても 5GHz までの商品は在りませんでした。
最近では一番凄いといわれる〈3端子キャパシタ〉という海外の部品ですが、カタログが届きまして、
10GHz〈ギガヘルツ〉まで切れているというる商品が発表されました。
グランド配線長による特性変化(1)
グランド配線長による特性変化(2)
∼ ログ・スケール ∼
∼ リニア・スケール ∼
3 Terminal Capacitor
KHLC
3 Terminal Capacitor
0
0
0
-10
-10
-10
-20
-20
-20
LONG
-40
-50
SHORT
-30
LONG
-40
SHORT
-50
LONG
-30
SHORT
-40
-50
-40
-50
-60
-60
-60
-70
-70
-70
-70
-80
-80
-80
0.001
0.01
0.1
1
10
0.00001 0.0001
Frequency (GHz)
6.65 ⇒ 5.14 GHz (@20dB)
0.001
0.01
0.1
1
10
-80
0
1
2
3
4
Frequency (GHz)
Frequency (GHz)
5.28 ⇒
SHORT
-30
-60
0.00001 0.0001
LONG
-20
Attenuation (dB)
-30
Attenuation (dB)
0
-10
Attenuation (dB)
Attenuation (dB)
KHLC
5
6
0
1
2
3
4
5
6
Frequency (GHz)
0.67 GHz (@20dB)
【図 42】
【図 41】
広帯域を売り物にして2年で、大手から追いつかれた。ベンチャーで資金力が無いので市場で負ける
のではないかといわれました。けれども、
「コイフィルTM」の特許はくつがえりません。
それは、実験室で作って「10GHz まで伸びた」と云う物に比べ、今まで実地で失敗を重ねて現場で
培ってきて、実際に作られる基板上で「20GHz まで伸ばした」KRFMの実践技術との違いです。
10GHz ともなると実験室の治具の上での特性は、実際の使用時にはなかなか実現できません。
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『研究開発の現場から』 ケイアールエフエム株式会社 小宮邦文
【図 41】と【図 42】は、現在の〈3端子キャパシタ〉と「パワフィルタTM」のノイズ除去特性の比
較測定データで、同じ測定データですが【図 41】はフィルタ部品の業界で一般に用いられる〈log 表示〉
のグラフです。
【図 42】はKRFMが使い始めた〈リニア表示〉の同じ測定データです。
〈3端子キャパシタ〉という製品の実装時のウィークポイントがわかると思います。赤い矢印の幅だ
け、実際に使う条件のときに特性が変化したことを表しています。両方の左図が、小社の「パワフィル
タTM」KHLC シリーズの電気的特性です。こちらは 5GHz 近くまでグランドパタ−ンの影響を受けにく
いことがよくわかります。
【図 37】左の緑線グラフは、日本のある会社が作ったチップビーズ・インダクタの高調波〈ノイズ〉
阻止の特性グラフです。横軸方向にフィルタリングする周波数の帯域が表示されます。2000(2GHz)
と書かれた横軸のところに「くの字形」の先端がきているグラフがKRFMの「コイフィルTM」です。
2GHz という周波数でもこれだけ(−30dB 以上) の高調波〈ノイズ〉を止めます。
しかし、チップビーズの方は、半分の1GHz 位までしか止められません。けれども、KRFMの「コ
イフィルTM」は低い周波数、1GHz 以下の数百、数十 MHz が殆ど止められません。それに比べて、チ
ップビーズは低い周波数で高調波〈ノイズ〉を止めることができます。
KRFMは、従来の部品メーカーと共存できればいいと考えています。従来品が1GHz まで切れるの
であれば、私共の商品と組み合わせると、もっと広い帯域まで阻止する提案ができるはずです。このよ
うな組み合わせができるのが「コイフィルTM」の特長です。
個別の商品「コイフィルTM」は、
【図 32】のように いろいろの周波数帯域を持っています。ところが、
【図 31】や【図 32】からわかる通り 低い周波数から遙かに
一個の商品「パワフィルタTM」になると、
高い周波数まで高調波〈ノイズ〉を切ることができます。
ユーザーの目的に合わせて使い分けをしていただける商品群は今も揃っています。
コイルフィルタ KF2−13−4の
パワフィルタ と は?
TM
並列接続と直列接続
■ 半導体(IC,LSI)にとって致命的な電源ノイズを止める
■ 高速動作になればなるほど深刻化する高調波を解消
■ 全てのデジタル電子装置が必要とする不要輻射対策
【図 43】
【図 44】
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『研究開発の現場から』 ケイアールエフエム株式会社 小宮邦文
「積層チップインダクタ」や「巻き線コイル」と同じ機能を持った受動素子に薄膜インダクタがあり
ます。
【図 38】の真中の「グルグル」がそれです。両隣の「コイフィルTM」と同じスケールですので、
大きさが判ると思います。最初に開発された高周波ハイブリッドIC は、薄膜技術(Thin Film Technology)
で作られていましたが、今はコストの面からも、この薄膜技術と厚膜技術の両方を使い分けます。
20年位まえのお話しですが。TRW 社との CATV アンプの技術提携でアメリカに行っていたとき、
アメリカでは市民権がない技術者は RF とか高周波とか云う分野の仕事には就けませんでした。まだ、
米ソ冷戦の時代で、高周波が、軍需産業と結びついていたからだと思います。
けれども、市民権のない人たちでも働ける高周波関連の会社が、唯一 CATV 事業でした。だから色々
な国の人がいました。私もそこで勉強させていただきましたが。当時、そこでもこのような薄膜のコイ
ルを開発していました。
IC を作るシリコン基板の上に、このようなインダクタを作ったが、(確かベトナムの方だったと思い
ます)うまく行かなかったと云われました。日本に帰ってきて、やっぱり必要になって同じようなもの
を、私も薄膜技術で作ってみましたがやはり、うまくいかなかった。
自分で作ってみて初めて分かるのですが。電流をたくさん流して暗い部屋で見ていると、光り出しま
した。膜厚が薄くて抵抗値が高いためです。抵抗値を低くするためにはブロック塀のような、幅よりも
高さが高い、専門用語ではアスペクト比の高いといいますが、溝の奥が見えないような深いエッチング
をしなければいけません。当時の技術で希望の抵抗値にすることは、メッキプロセスを変えても大変難
しい技術でした。
技術屋のもの作りは、一個だけできてもだめです。多量に、確実に、安く作れるものを求められます。
そうすると、コイル=インダクタは、電線を巻く訳ですから一番簡単で確実に作れて、特性も出ます。
そんなところから、この「コイフィルTM」ができたのです。誰も作ってくれなかったので、回路屋が自
分で作ることになってしまいました。
高周波で使う受動部品の難しさが、もう一つあります。最初にお話しいたしましたが「コンデンサ」
がいつも「コンデンサ」ではない。
「インダクタ」が「インダクタ」に見えない。
「抵抗体」も同じ。
高い周波数になると「受動素子部品」は機能がシンプルなだけに、周りの影響を受け易くなります。
これが、高周波で使う受動部品の問題で、一番大変なところではないかと思います。
【図 44】
コンデンサを電子基板のIC電源ラインに搭載する代わりに、
「パワフィルタTM」を乗せると、
右図のように、電源層の高調波〈ノイズ〉は綺麗に無くなります。嘘だろうと皆さん云われますが、何
度測ってみてもノイズは出ていません。勿論、完璧に対策するためには「パワフィルタTM」を 1 個だけ
入れたら止まるという、そんな簡単な話ではありません。
私共が回路基板設計を受託して設計しているのも、アドバイスだけではすべてが伝えられないためで
す。
「アナログ的な基板設計をやってください」といっても、判ってもらえません。そういう意味も含め
て「電源のノイズを止めます」
「高調波を解消します」と口で言うのは簡単ですが、なかなか現実の設計
は大変です。
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『研究開発の現場から』 ケイアールエフエム株式会社 小宮邦文
「コイフィルTM」というのは超小型のコイル部品で、
「パワフィルタTM」というのは「コイフィルTM」
を組み合わせたもので誰でも使えます。電源端子に入れれば高調波〈ノイズ〉は止まります。
しかし、「コイルフィルTM」は組み合わせを間違えたり、先程、低い周波数で切れる他社のチップイ
ンダクタの話をしましたが、このような部品と組み合わせなければ低いところから切れなかったりと、
いろいろな実装技術も必要です。うまく効果をあげるには高周波の技術が何より必要です。
今回、アメリカで開発しようとしている、CPU やIC〈半導体〉パッケージ中に入れてくださいとい
う「電源デカップリング」への応用は、ICを使って電子回路を設計する方たちが、ICパッケージの
外でEMIの対策をしなくてもいいですよというものです。
【図 45】は、総務省傘下のTAO(通信・放送機構)の助成金で開発しました、13GHz まで切れる「パ
ワフィルタTM」の周波数特性と他社のフィルタの比較データです。
電気の公害 ノイズ を取る
高調波 ノイズ 阻止 フィルタ
パワフィルタ の 周波数帯域
TM
移動体通信機器用
マイクロ波ハイブリッドIC
電源用高調波阻止フィルタ
(パワフィルタ)
ノイズ対策の
プロ集団
EMI /EMC対策
インダクタ
RF帯域阻止フィルタ
(コイルフィルタ)
【図 45】
【図 46】
KRFMの各製品カタログは、インターネットでおろせますがそれぞれ 1∼2 枚くらいしかありません
ので、全部印刷しても 0.5cm にもなりません。一方で大手部品メーカーでは、数 cm もある分厚いカタ
ログがもらえます。 CDカタログもたくさんくれます。しかし、
「電磁気ノイズ対策部品」というのは
種類が豊富にあれば良いと言うものでもありません。多品種に渡るとどれを使ったら良いか解らない。
それでも、一番いいと言われるものを探し出して、実験室の予備実験でもうまくいって、実際の基板
に乗せたところが【図 42】のように、特性がカタログ通りにでていない。ということが平気で起こって
しまいます。これが高周波の基板設計の現状です。いつもいい状態でグランド端子はとれないのです。
例えば、携帯電話の基板はグランド(地面)には繋がっていません。空中に浮いて使われます。4∼5 cm
四角の基板があるだけで、グランドではありません。そういう使い方をするのに、確実に強烈なグラン
ドを取った測定器で測られる「いい特性」と同じになるはずはありません。
高周波の電気的特性は、基板の環境で変わります。そして多くの中小企業、零細企業は、測定器も無
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く、確認をするのにも経費が嵩みます。
IC〈半導体〉を作っている人たちが、もっと電源のことを考えてくれれば、もっといい電源デカッ
プリングの素子を最初からきちんとIC〈半導体〉の中に組み込んでいてくれていれば、今日のような
高調波〈ノイズ〉問題は起こっていなかったはずです。もっと言えば、IC屋さんはユーザーのことを
真摯に考えていなかった。デジタル回路をICを買ってきて、自分で組んだことが無い人たちが、IC
を設計していたのです。
電子回路基板の直流電源入口と、すべてのIC〈半導体〉の電源端子に「パワフィルタ」を入れてい
ただければ、確実に〈EMI=電磁気干渉〉というものは止まります。だが、「パワフィルタ」は、
〈E
MI=電磁気干渉〉を止めるために開発されたものではありません。
高調波〈ノイズ〉が止まり、
〈EMI=電磁気干渉〉の飛び出しも止まるのは、「パワフィルタ」が下
は可聴周波数から、上は10数GHz までの広い帯域にわたる〈高調波=交流信号〉を電子基板の上の電
源ラインや電源層に垂れ流さないように、発生源に「セン」をするためです。
電源から漏れる高調波が止められれば、電源から高調波の電力が漏れません。直流という電力だけが
入ったり出たりするのみで、高調波のエネルギーは電源からは出て行きません。
このことは、消費電力のセーブになると思うのです。
「パワフィルタTM」には、このほかに、ほどういったメリットがあるのか。
今注目を集めているのは、
「電源のセキュリティ」です。 インターネットなどでよく聞きます、サー
バーといわれるコンピュータに、悪意の電波が発振されたとします。 業界の用語では、ジャミングされ
たという言い方もあります。
ジャミングの一番いい例は、パチンコ屋さんのパチンコ台の前で、発振器から電磁波を出したら、突
然玉がたくさんでてしまった。この様なことが、IC〈半導体〉がジャミングされたということになり
ます。
「パワフィルタ」を搭載すればこういうことができなくなります。
ところが、パチンコ屋さんは誰も使ってくれません。2 年位前からこういう使い方があると、いろい
ろとお話をしましたが、使っていただけません。
では、実際にパチンコ屋さんはどうしているかというと、悪意の電波を捉える装置を設置して、警報
を鳴らしてガードマンが来るのを待つのです。 まさかこのガードマンの会社が、潰れたら困るからとい
うことで「パワフィルタ」を使わないということでは無いでしょうが。
悪意の電波を受けてもICが誤動作しない。パチンコの玉が間違って出たりしないための対策部品を
付けてください。と言っているのですが、今とられている対策は、電波が出たらガードマンが飛んでき
て、それをやっている人を捕まえるという方法です。
技術屋としては「なんだか、おかしい」と思うのですが、
、、
。
当社が零細企業だから、心配で使わないのでしょうか。
信頼性が皆さんに良いものとして認めていただけないのは、商品が何故いいのか、何処がいいのか、
をわからせることができないからでしょうか。
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恐らく、電波が何かとか、高調波が何かとか、EMCが何かということを解かっていただけなかった
からだろうと、反省しております。
設立当初から、小社の製品が軍需産業や防衛産業に使われるのは困りますと言ってきました。しかし、
そういう分野の方が一番に使いたいと言ってきます。ずっと断り続けてきたのですが、、
。 来年度、アメ
リカ事務所ができますと、売ることになると思います。止めてもどうせどこかで買われてしまうと思う
からです。
一般のかたへの一番の売り文句は何かと言うと「コンピュータの電源から秘密が漏れるのを止めます」
というものです。 皆さん、コンピュータ画面からの電波をアンテナで拾うと内容が読まれるという話を、
NHK などのテレビでご覧になった方もいらっしゃるかと思います。
私共の話しは、飛んできている電波ではありませんで、コンピュータの電源に乗っている〈高調波=
電波〉ですが、これから情報が読まれるというものです。読まれるだけではなく、ある時は、電波を送
り込まれて邪魔されます。( もちろん電源が問題だとわかれば、世の中には頭の良い方がいっぱいいら
っしゃるので、私共の商品以外にも開発されるはずです。)
それはそれとして、私は、こういうビジネ
スがこれから大事になってくるのではないかと考えています。
最後に、なぜ、私共の商品が面白いと言っていただけるようになったかといいますと、
、
、。
ひとつには、こういうコイル部品は、誰でもできると思えるからです。
IC〈半導体〉を作れとか、チップ・コンデンサを作れますか?と言われると、「ウッ」と考えてしま
いますが。このコイルは誰でもできます。1個や2個ならすぐできます。そして、非常によくノイズが
止まります。
米国で特許が取れました。だから、皆さんにどんどん使って頂きたいと思います。特許のお金を儲か
りたいと思うから言っているのではありません。( ここにいらっしゃる、皆さんのためにたくさん使わ
れてほしいのです。)
こんな話しをします。 カードの暗証番号が読まれるからインターネットで の買い物はしない。
使
わないとおっしゃる方があります。 この「通信が危ない」の延長線上で 皆さん、
「住基ネット」を考え
てみてください。
私は横浜に住んでいますので「嫌です」と申請できました。しかし、言いませんでした。どうせ遅か
れ早かれ、登録されてしまうからです。
私は、その「住基ネット」をセーブしている役所に情報が置いてあるのは危ないと思います。役所に
お勤めの方を、とやかく言うつもりはありません。けれど、情報漏洩は人が一番危ないと思います。
役所が、 指紋ではすぐに破られてしまいましたので、別の識別方法を用いて、扱う人も情報に対して
も、完璧なセキュリティを施した施設を作り、そこに出入りする誰にも、勝手に使われないようにした
とします。( 恐らくそれは可能だと思います。) ところが、その時に施設の電源を悪戯(ジャミング)され
たらどうなるでしょうか。ハード側から、データが壊されたり、換えられたり、盗られたりするという
ことに対して、今は全く対応が取られていません。法律ももちろんありません。
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国会議員や役人の偉い方達が、法律を考えている間に、通信方法もコンピュータもどんどん速くなっ
て、普通の人間には、想像すらできない程大容量に上がってきています。
これに対して、コンピュータのキーパーツを作っている半導体屋さんは、いろいろな開発を考えてい
ますが、「電源のセキュリティ」を考えている半導体屋さんはほとんどいません。
電子回路装置の設計は、ほとんど中小企業や下請け会社に流れてきますが、電源には、一番危ないス
イッチング電源のボードしか使われていませんので、高調波〈ノイズ〉は、全部スカスカ入り込みます
し、スカスカ出て行きます。
私が「コイフィルTM」や「パワフィルタTM」を技術者の皆さんにどんどん使ってくださいというのは、
みんなが使えば安くなって、もっと使われる。そしてどんどん使って、高調波〈ノイズ〉を止めて欲し
いのです。私自身の、自分の「セキュリティ」が危ないからです。
このような話しを、どうやって皆さんに伝えていったらよいのかと考えます。
また、こんな話しをします。 新しい開発で、10GbE (テンジービ−イー=10 Giga bit Ethernet ) と
呼ばれる光ケーブルを使うインターネットのための、光と電気信号の変換部分の回路部品をやっていま
す。受信部と送信部のところをハイブリットICにするのです。
レーザー・ダイオードというのがあって、電気信号の周波数でいうと数MHz から10GHz という非常
に帯域の広い高調波成分をもった信号で、このレーザー・ダイオードを揺すると、レーザー・ダイオード
から出ている光がそれにつられて点滅します。それで多量の情報が伝わるのです。この光を、ケーブル
で伝えて行くのに、ご存知の日本が作り出した日本発の「プラスティックの光ファイバー」があります。
私共も是非後押しをしたいと思っておりまして、 そうなると、このくらいの、今の USB ケーブル
の1/3位のコネクタがカチッとコンピュータの後ろに入ってきて、ISDN が遅いよ。ADSL の方がいい
ですよ。いや、CATVの方がもっと速いですよ。と言っていますが、そのCATVの約 1000 倍もの
情報がスカッと入ってきます。
多分、あと数年で一般の技術レベルまで降りてきます。ではこれらのシステムをどうやって売ってい
けばよいのか、どうやってコンテンツなどの商売を広げればよいのかというのを考えていくときに、一
番大きな問題は「セキュリティ」だと思います。
レーザー・ダイオード(Laser Diode):電圧をかける (電流が流れる)とレーザー光を出す半導体素子。光ケーブルの光
源やコンパクトディスク、光磁気ディスク、DVDなどの読み書き装置に使われる。
ファイバー(Fiber)
:意味は繊維、食物繊維という意味。ここでは Optical fiber の意味で光学繊維。ガラスや合成樹脂
の細い透明樹脂でできていて、単体や束ねて光像や情報信号を伝送する。
デファクト(Defacto):単語の意味は、事実上(の)。ここでは Defacto standard の意味。誰れもが、基準とか規格で
あると思うように、世の中に流布し、知られているもののこと。
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USB(Universal Serial Bus):1995.3 月、インテルやマイクロソフトなどが共同で発表したパソコン周辺機器への接
続の規格。最大で 127 の機器をツリー状(パソコンを中心)に接続できる。
ISDN(Integrated Services Digital Network):総合サービス・デジタル通信網。電話、ファックス、インターネット
接続などのサービスを行うデジタルの通信回線網。
:電話局と通信加入者の中間にある接続点までは光ファイバなどで結び、
ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)
そこから先の通信加入者までは従来の銅線で結び、銅線だけの時より早い通信を行う。
「セキュリティ」というと、ガードマンを雇う、警備会社みたいなイメージがありますが、
「セキュリ
ティ」は大事なことで、高調波〈ノイズ〉で「人を邪魔しない〈=EMI〉ことと、人に邪魔されない
〈=EMC〉ということ」とは同義語だと思います。
人の邪魔をしないから、邪魔されたくもない。そうであれば、自分を自分が守らなければならないの
です。人任せではいけません。
技術者が、いろいろな電子回路の設計をする時も、ソフトウェアの設計をする時も、大事な考え方だ
と思います。このような考え方に、同調してきた、トリガー(trigger=引き金)となったのは、
「コイフィ
ルTM」や「パワフィルタTM」を初めて作って、売り歩いたことからでした。
「ファイアウォールをかけなさい」
。
「こんなインストールの仕方をしては危ない」
。「ウイルスにやら
れます」。
「ハッカーにやられます」
。 と脅かされるこいとがありますが。ハッカーでは無く、クラッカ
ーが電源から入ってくるかもしれません。
今も、デジタル信号が流れる信号線路だけしか見な人がほとんどです。けれども電源線路のところこ
そ大事で、高調波〈ノイズ〉の対策を取らねばならないというのが、私の提案です。
ファイアウォール(Fire Wall)
:インターネットと LAN の間に通信を管理し、外部からの攻撃や不正アクセスか内部
の LAN などのネットワークを守るコンピュータの砦。
ハッカー(Hacker)
:日本では、コンピュータのシステムの中に不正に入り込み、違法行為をおこなう者の総称。本来
の意味は「手斧ひとつで家を造る人」のことで、創造的な才能のあるプログラマに対する尊称。海外では、違法行為を行
うのは Cracker といい、区別される。
2000 年代に入って 3 年が経ちます。ひょっとしたら、
「大変なことが起こるかもしれない」と思うと
きがあります。事件が起こらないと世間は対策を取らないというのが常ですが、
「近い将来、情報通信の
世界にまずいことが起こるのではないか」そう思うからこそ、何とか「起こらないようにしたい」
。
そのために、私共は、どういうお手伝いができるだろうか。
「コイフィルTM」は【図 29】のとおり、ここまで小さくなりました。IC〈半導体〉のパッケージの
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中に入れることは可能です。もっと小さくして、もっと性能を上げて、もっと作り方を変えて、ICや
LSIの中に入れる開発をしようとしています。
パワフィ ルタ ( KHLCシリーズ)
KHLCシリーズ) 実装例
ICからのノイズを遮断
IC電源回路実装例
ICの電源ピンのすぐ側に入れる
主な特徴(ベネフィット)
特徴
1) 20GHzまでの
高周波領域に対応
提供機能
高速対応IC間の干渉を
確実に阻止することが可能
z
コイルフィルタ
2) 30kHz∼10GHz
までの広帯域に
対応
電源入力部実装例
z
パワフィルタ
3) ICにデカップリング
デバイスを内蔵可能
z
z
外部からのノイズを遮断
電源供給コネクタのすぐ側に入れる
【図 47】
ベネフィット
システムメーカー
① 高速ICをインテグレーションすることが可能
小型化、システム全体としての低コスト化を実現
② IC配置の制約を極小化でき、設計の自由度を向上
システムメーカー
システム内に発生する様々 ① 広帯域対応により、複雑なシステム構成でも、確実に
デカップリングが可能
な周波数の高調波成分を
1種類の部品で対策可能
② ノイズ対策にかかる開発期間の短縮、開発コストの
低減
チップ間近で効果的な
デカップリングが可能
機器のコアとなるIC自体に
ノイズ対策機能を組み込み
可能
システムメーカー
① 最大級の高調波阻止効果を得ることが可能
② デバイス内蔵ICの実装だけで、高速システムの構築を
実現
③ 電源ライン配線、IC配置の自由度を向上
チップメーカー
① ノイズ対策フリーのIC提供が可能
【図 48】
デカップリング、すなわち結合が起きない電源部の開発です。
電源から高調波〈ノイズ〉取り去る、デカップリング・デバイス回路を開発して、CPU や光ケーブル
の最先端半導体に使って貰う。その最先端の、ほとんどのメーカーが、アメリカ企業です。ですから、
私共もアメリカで、日本のプラスティック・ファイバーとともに、世界中に売って、世界のデファクトに
なりたいと考えます。
通信の周波数が上がるということは、情報の容量が増えるという事です。容量が増えるということは、
それだけたくさんの情報が入って来るということですから、その情報の選び方が重要になってきます。
そして、くどいようですが、セキュリティの問題は、これから、とても大きな問題になってゆくと思い
ます。
そろそろ、お時間になりますので、これで終わらせて頂きます。
今日はどうもありがとうございました。
(2002.10.24)
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