8月10日号

昭和22年6月1
7日 第三種郵便物認可 平成2
7年8月1
0日(毎週月曜日発行)野村週報 第3482号
○
2
01
5年
8 月1
0日号
▽
投 資 の 視 点
米国利上げとアジア株
経
望
原油の供給過剰幅が拡大
界
成長が続くドラッグストア業界
究
ダイフク
済
産
銘
展
業
柄
研
三菱商事
みずほフィナンシャルグループ
○
ケリング
経済データを読む
日銀は新物価指標を採用するのか?
企
業
経
営
米国企業にみる ROE の継続性
資
産
運
用
ROE は投資指標として有用か?
資本市場の話題
GE の事業再編と米国のノンバンク規制強化
天
虫対策グッズが「デング熱」で注目
眼
鏡
野村證券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第142号
加入協会/日本証券業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、
一般社団法人 第二種金融商品取引業協会
野村週報は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的として作成したものではありません。銘柄の選択、投資の最終
決定は、ご自身の判断でなさるようにお願い致します。野村週報のいかなる部分も一切の権利は野村證券に帰属しており、電子的または機械的な方
法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。
第34
82号 野 村 週 報 平成27年8月1
0日 第三種郵便物認可
投資の視点
米国利上げとアジア株
中国本土株下落と米国利上げの影響
経済統計を見ると金融緩和、インフラ投資
の増強など政策効果が徐々に表れ始め、景
中国政府の市場安定化策がとりあえず奏
気が持ち直しつつあることが推察される。
功し、中国本土市場の株価は安定化し始め
また、中国にとって、欧州は米国に次ぐ
ている。つまるところ、景気減速下におけ
輸出先であるが、その欧州の火種が先ずは
る今年6月初頭までの株価の急騰は、①投
沈静化し、米国経済も、今後、拡大のモメ
資対象としての不動産価格が調整局面入り
ンタム(勢い)を増すことが予想される。
②預金金利引き下げ③シャドーバンキング
中国経済のハードランディングシナリオの
(通常の銀行経由ではない資金供給ルー
可能性は小さいであろう。
ト)の規制強化④上海・香港市場間の相互
野村は、今年の12月に FRB(米連邦準備
取引制度の発足 ─ を背景として株式市場
制度理事会)が利上げを開始する可能性が
へ資金がシフトし、実体経済とはややかけ
最も大きいと予想している。市場の見方は
離れたところで生じた現象と言える。
分かれるが、いずれにせよ、年内には利上
中国本土では「社会融資総量」と呼ばれ
げする公算が高まっている。
る社会全体のファイナンスで株式による資
今回の利上げ開始は将来的に政策金利引
金調達の占める割合は約2%に過ぎず、間
き下げ余地を作る正常化であるため、04年
接金融中心である。また、家計が貯蓄に回
以降の利上げ局面のように定期的に利上げ
す所得の割合が高いほど、資産価格の変化
を決定するのではなく、利上げ開始後も慎
が個人消費に及ぼす影響が小さくなるが、
重にデータを見ていくことが想定され、景
中国のように家計貯蓄率が約40%と貯蓄率
気悪化を招くような利上げは考えにくい。
が高い国は、他の国・地域よりも株価変動
利上げ決定直後はアジアの株式も相当程
による資産効果は小さいとみられる。
度下落することが予想されるが、16年末の
アジア諸国間の相互依存関係は年々深化
米国長期金利は3.0%程度と緩やかな上昇
しているが、アジア諸国の実体経済への影
を想定しており、大きなショックにはなら
響は限定的と思われる。中国の6月の主要
ないであろう。
第三種郵便物認可 平成27年8月10日 野 村 週 報 第348
2号
投資の視点
アジア株式市場のストレス耐性
昨年末から今年の8月3日までのアジア
の主要な株価指数の騰落率を順に並べると、
貨建対外債務残高の GDP(国内総生産)比
率をみると、この間、この比率が上昇して
いる国もあれば、低下している国もある。
一方、外貨準備高の GDP 比率を見ると、
中国
(上 海 総 合)
+12.0%、韓 国 +4.8%、
インドネシアを除き、外貨準備の GDP 比
フィリピン+4.7%、香港
(ハンセン)
+3.4%、
率が外貨建対外債務残高の GDP 比率を上
インド+2.5%、マレーシア−1.0%、タイ
回っている。両者を総じていえば、米国の
−3.7%、シンガポール−5.1%、インドネ
金利引き上げのストレス耐性はアジア各国
シア−8.2%、台湾−8.4%となる。
では改善しているといえる。
日本や欧州市場の市場に比べると、中国
な お、15年 か ら16年 に か け て の 実 質
本土を除いて、総じて劣後している。やは
GDP 成長率は、緩やかな減速を図る中国
り、米国の年内利上げを織り込む中で、経
と、商品価格の下落の影響を受けるマレー
常収支、インフレなどファンダメンタルズ
シアはやや減速するものの、その他の国は
(経済の基礎的諸条件)の良し悪しがパ
加速することを予想している。
フォーマンスに相当程度影響していると推
察される。
80年代以降の新興国の通貨危機は、ドル
建ての対外債務残高の膨張と、米国の利上
げを受けた変動金利の利払い負担の増加が
イランの核開発を巡る合意により、来年
にかけて、イランが原油を増産することが
見込まれ、原油価格には下押し圧力がかか
ることが想定される。
エネルギーの海外依存度の高い国が多い
主因となったケースが多い。この観点から、
アジア諸国にとって、原油安は他地域との
アジア諸国の外部ショックに対する「スト
大きな差異化の要因であり、産油国では経
レス耐性」を見てみよう。
常収支悪化につながるのと裏腹に、アジア
野村のグローバルリサーチでは主要新興
国の対外債務について、オフショア(外国
の原油の純輸入国では、経常収支の改善を
支える要因となろう。
人向け)市場で発行されたアジア各国籍の
また、政策金利は総じて低位、ないしは
外貨建債券を含む実体的な外貨建対外債務
歴史的低水準で推移すると予想され、株式
残高を推計している。前回の FRB の利上
市場にとって下支え要因となろう。
げ開始直前の2003年と2014年について、外
(佐々木 文之)
第34
82号 野 村 週 報 平成27年8月1
0日 第三種郵便物認可
経済展望
原油の供給過剰幅が拡大
OPEC が増産
特に、OPEC が日量100万バレル増産して
いたことが注目される。
原油価格が再び下落に転じた。WTI(米
OPEC は、6月5日の総会で、日量3000
国軽質原油)期近物先物価格が、7月下旬
万バレルの生産目標の据え置きを決定した
以降、1バレル当り50ドルを割れて弱含む
が、既に目標を超えた生産が行われていた。
展開となった。供給過剰感の強まりが、原
国別の生産枠が決められていないため、歯
油価格下落の背景となっている。
止めがきかず、今後も高水準の生産が続く
需要面では、中国の景気減速感が強まり、
原油需要の伸びの減退が、市場で意識され
と見られる。更に OPEC が増産する可能
性も否定できない。
ている。供給面では、市場で予想されてい
一方、IEA によると、年間の世界の原油
た以上に OPEC(石油輸出国機構)が増産
需要の増加は、2015年が日量140万バレル、
したこと、イランが輸出を再開する可能性
2016年が同120万バレルと見込まれている。
が生じたこと、そして、米国のシェール・
需要の増加だけでは、早期に供給過剰が解
オイルの減産が限定的になると観測され始
消することは困難であり、原油価格に抑制
めたことなどが、市場参加者に注視される
圧力がかかる環境にある。
油種別原油価格動向
ようになった。
実際、7月10日に公表された IEA(国際
エネルギー機関)の月報で、世界の原油の
供給過剰幅が、1∼3月期の日量160万バ
レルから、4∼6月期には同320万バレル
へ拡大していたことが判明した。需要が日
量40万バレル減少し、供給が日量120万バ
レル増加していた。需要の減少は、季節的
な変動による側面があると見られるため、
より注意を要するのは、供給の増加である。
(ドル/バレル)
150
140
130
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
05/1/3
07/1/3
09/1/3
11/1/3
13/1/3
15/1/3
(年/月/日)
WTI
北海ブレント
ドバイ
(注)WTI(米国軽質原油)はニューヨーク商業取引所、北海ブ
レントはICE-Futuresの各期近物先物価格。ドバイは現物
積み出しFOB価格。
(出所)トムソン・ロイター・データストリーム
第三種郵便物認可 平成27年8月10日 野 村 週 報 第348
2号
経済展望
原油価格の低位安定継続へ
公算が大きいと見られる。供給過剰状態が
続く中、原油価格が低位で推移する期間の
OPEC が高水準での生産を続ける、ある
長期化が予想される。WTI 期近物先物価
いは更に増産する可能性がある一方で、需
格が1バレル当り45ドル以下で推移し続け
要の伸びが限定的と見込まれている。した
ることも考えられる。
がって、供給過剰幅が縮小するかどうかは、
また7月14日に、イランの核開発に関す
米国のシェール・オイルの減産動向が引き
る国際協議が合意に至り、イランが将来的
続き鍵を握ると見られる。
に増産できる可能性が生じた。IAEA(国
しかし、原油価格下落の下、シェール・
際原子力機関)による、イランの核開発に
オイルの生産性が、企業努力によって高め
関する査察結果の報告は、12月15日に予定
られてきていることなどを背景に、シェー
されており、まだ増産が実現するかどうか
ル・オイル開発の抑制が、一巡し始めた可
は不透明な状況にある。ただし、イランに
能性がある。最近は、米国の油田向けリグ
対する経済制裁が解除されると、来年には、
(油田を掘る掘削装置)の稼働数が減少し
イランが増産を進め、原油の供給過剰状態
なくなっている。原油価格が再び低下した
が更に強まることとなろう。
ことから、シェール・オイルの開発が、再
経済制裁が解除された場合、イランは、
度、抑制されていくことも考えられるが、
日量70万バレル程度を、安定して増産する
生産性が高められているため、更に開発が
ことが可能と推察される。世界の原油市場
大幅に抑制されることは、考え難くなって
で、供給過剰状態が更に長期化しかねず、
いる。
WTI は1バレル当り40ドル前後へ低下し、
仮に米国の油田向けリグの稼働数が、今
安定することもあり得よう。
後、横這う状況となった場合、シェール・
依然として、中東・北アフリカの産油地
オイルの減産は、限定的になることが想定
域における地政学的不安定性が続いており、
される。生産性が高められていることを考
急に供給障害が発生し、原油価格が上昇す
慮すると、来年にかけて、日量100万バレ
ることも完全に排除することはできない。
ル程度の減産にとどまりかねない。このよ
しかし、現状では供給過剰状態が続き、原
うな状況となった場合には、2016年前半に
油価格が低位で安定する可能性が高まって
おいても、相当程度の供給過剰状態が残る
いると見られる。
(大越 龍文)
第34
82号 野 村 週 報 平成27年8月1
0日 第三種郵便物認可
産業界
成長が続くドラッグストア業界
専門家を数多く確保し、調剤や化粧品のカ
大手企業のシェア拡大が続こう
ウンセリングサービスに注力する企業、ス
日本チェーンドラッグストア協会によれ
ケールメリットを活かしてプライベートブ
ば、ドラッグストア市場は14年度で6兆円
ランドで商品を展開する企業、大型物流セ
だ。化粧品と日用雑貨の成長率は緩慢だが、
ンターや自動発注システムなどインフラ整
けん
医薬品と食品が市場の成長を牽引し、今後
備による店舗作業の省力化でローコストオ
も年率1∼2%増で市場が拡大すると予想
ペレーションを実現し価格競争力を磨く企
される。上位5社合計のシェアは、ドラッ
業など、それぞれ差別化を図っている。
グストアは36%と、同じく日用品を扱うコ
中長期的には、競争が激化し、企業の優
ンビニエンスストアの86%と比べて低い水
勝劣敗の加速が予想される。生き残りには
準に留まっている。業界には中小チェーン
個々の差別化要素の一段の強化や、複数の
店や個人経営店が多く存在し、大手チェー
差別化要素の確立などで、競争優位を実現
ンは今後、成長する余地があろう。
す る こ と が 重 要 で あ ろ う。ま た、大 手
業界は各地域に高いシェアを有する上位
チェーンによる中小チェーンの取り込みが
企業が存在し、群雄割拠の状況である。各
加速し、業界再編も進むと予想される。
商品別市場成長率
地域のトップは、北海道と東北がツル
ハ HD、関東はマツモトキヨシ HD、
医薬品
日用雑貨
東海と近畿はスギ HD、北陸・甲信越
(前年度比、%)
20
化粧品
その他(食品)
15
10
5
はクスリのアオキ、中国地方及び四国
0
と九州はコスモス薬品である。各社の
出店意欲は旺盛で、地域拡大を続ける
方針で、各地で競争が激化している。
上位企業はそれぞれ独自に強みに磨
きをかけて差別化を図っている。例え
ば、高い知名度を活かして薬剤師など
(億円)
70,000
60,000
50,000
市場規模
医薬品
化粧品
日用雑貨
その他(食品)
40,000
30,000
20,000
10,000
0
FY00 FY01 FY02 FY03 FY04 FY05 FY06 FY07 FY08 FY09 FY10 FY11 FY12 FY13 FY14 FY15E
(出所)日本チェーンドラッグストア協会
第三種郵便物認可 平成27年8月10日 野 村 週 報 第348
2号
産業界
ツルハ HD は、単品管理の徹底による便
高収益の大手2社に注目
利な品揃えや長時間営業で高い利便性を提
業界トップレベルの収益性を実現するサ
供し安定集客する。自店間競合を抑制する
ンドラッグとツルハ HD に注目している。
ため、調剤店、食品強化店など、近隣する
サンドラッグは、立地別のきめ細かい品
店舗で機能を分散させ、強固で効率的なド
揃えと、メリハリの利いた価格戦略による
ミナントを構築しているのに加え、高採算
効果的な特売で集客し、計画的な労務管理
の化粧品の推奨販売やプライベートブラン
などローコストオペレーションの徹底によ
ド の 積 極 導 入 も 奏 功 し、営 業 利 益 率 は
り、営業利益率は5.8%(15.3期)と、業界
6.1%(15.5期)と業界トップレベルを実現
平均3.5%を上回り、業界トップレベルの
する。16.5期は前期に積極改装を実施した
収益性を実現する。足元、化粧品の需要が
東北の販売回復などで同13%営業増益を予
回復するなか、当社は化粧品の売上構成比
想。中期では、年100店の出店を継続する
が高いことから、16.3期は前期比23%営業
方針。加えて、13年11月の中四国でシェア
増益と相対的に強い業績回復が見込まれる。
3位のハーティウォンツ買収に続き、15年
また、09年に買収したダイレックスは高採
7月に中四国でシェア2位のレディ薬局を
算の医薬化粧品の導入により収益性が向上。
子会社化すべく公開買い付けを実施するな
中期業績は、ダイレックスの出店により業
ど、M&A による成長期待も相対的に高い。
績堅調が予想されるほか、現在開発を進め
また、店舗作業の省力化を目的とした物流
る食品強化型路面店の出店が本格化すれば、
構造改革も実施し、収益性強化にも余念が
成長期待が一段と高まろう。
ない。
(成清 康介、正田 雅史)
ドラッグストア各社のバリュエーション(価値評価)表
コード
銘柄名
株価
PER
(8月3日)
営業増益率
PBR
ROE
配当
利回り
DPS
円
FY15予
倍
FY16予
倍
FY15予
%
FY16予
%
FY15予
倍
FY15予
%
FY15予
%
FY15予
円
6,330
23.2
20.5
30.4
8.7
2.0
9.1
0.9
60.0
22.2
4.2
17.2
0.4
60.0
【ドラッグストア】
3088 JP
マツモトキヨシHD
3349 JP
コスモス薬品
16,030
26.2
21.6
5.4
3391 JP
ツルハ HD
11,300
27.5
24.8
13.4
6.6
3.7
14.1
0.8
88.0
9989 JP
サンドラッグ
7,510
21.9
19.2
23.4
10.9
3.4
16.7
0.9
70.0
24.7
21.5
18.2
12.1
3.4
14.3
0.8
4社単純平均
(注)PER:株価収益率、PBR:株価純資産倍率、ROE:自己資本利益率、DPS:一株配当、株価は7月28日。
(出所)野村予想
第34
82号 野 村 週 報 平成27年8月1
0日 第三種郵便物認可
銘柄研究
コード
6383
ダイフク
〈機械〉
マテハンシステムのトップメーカー
自力要因で今期営業最高益が射程圏
保管や搬送、仕分け、ピッキング、情報
16.3期は、受注高、売上高が2期連続で
システムなど多様なマテハン(物流)機器
最高額で、営業利益も200億円と会社予想
を最適なシステムに仕上げて提供するメー
の180億円を上回って最高益(08.3期の207
カー。市場シェアは国内が首位、世界でも
億円)が射程圏と予想する。
ドイツの Schaefer に続いて第2位。
最大の見所は、
(1)
e コマース(電子商取
15.3期 の 事 業 別 の 売 上 高 構 成 比 は、
引)
・流通業での拡販で成長力が高まってい
FA&DA(一般製造業・流通業向け)が37%、
ることである。加えて、
(2)
M&A の活用に
eFA(液晶・半導体業界向け)が22%、AFA
よる北米やアジアでの事業基盤の拡大、
(3)
(自動車業界向け)が23%で、この他に空
豊富な納入資産がもたらす高採算なサービ
港手荷物の搬送システムや洗車機・ボウリ
ス売上高の増加、
(4)
工場でのコストダウン
ング関連の事業を展開する。仕向地別の売
や工事現場でのプロジェクト管理の徹底、
上高構成比は日本が34%、アジアが30%、
海外案件の習熟に伴う体質強化の進展 ─
北米が27%、欧州・中南米他が9%で、近
が見込まれる。自力要因の度合が強く、需
年は M&A(合併・買収)で、海外事業基
要が振れやすい機械セクター内でも、今来
盤の強化に弾みが付いている。
期の安定成長が期待できる。(野口 昌泰)
〈発行済株式総数〉・・・・・・・・・・・・・・・・・1億1,367万株
〈上場市場〉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・東
〈時 価〉8.3 現在・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1,771円
〈売買単位〉8.3 現在・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100株
2,250円
2,000
〈株価収益率〉16.3 連結予想基準 ・・・・・・・・・・14.4倍
〈株価純資産倍率〉15.3 連結実績基準 ・・・・・・・1.8倍
〈自己資本当期純利益率〉15.3 連結実績 ・・・・・・・・・・・9.6%
〈自己資本比率〉15.3 連結実績・・・・・・・・・・・・39.8%
決算期
(日本式連結)
売上高
営業
利益
経 常 親 会 社 1株当たり 1株当たり
利 益 株主利益 当期純利益 配 当 金
百万円
百万円
百万円
百万円
円
円
1,750
12.3
198,052
4,217
4,022
1,223
11.1
15.0
1,500
13.3
202,337
8,010
7,999
4,439
40.1
15.0
14.3
241,811 12,556 13,191
7,740
70.0
18.0
750
15.3
267,284 14,883 15,783
9,810
88.6
22.0
500
16.3
(予)315,000 20,000 20,600 13,600
122.7
30.0
17.3
(予)337,000 24,000 24,600 16,400
148.0
40.0
1,250
1,000
09
10
11
12
13
14
15年
250
第三種郵便物認可 平成27年8月10日 野 村 週 報 第348
2号
銘柄研究
コード
8058
三菱商事
〈卸売業〉
非資源分野が業績をけん引
キャッシュ創出力の高さは魅力
LNG(液化天然ガス)や原料炭事業など
商社業界では自社株買いや下限配当方針
強みを持つ資源分野の業績は、資源価格の
の導入など、株主還元策が投資テーマの一
下落による悪影響により伸び悩んでいる。
つとなっている。16年3月期も1,000億円
一方で、円安を背景に機械や化学品といっ
を上限とする自社株買いを発表するなど、
た海外需要向けの事業が好調に推移してい
株主還元に積極的な点は注目できよう。
る他、生活産業分野も堅調な業績となるな
業界内でもキャッシュの創出力が高く、
ど、資源以外の分野が全体業績のけん引役
株主還元の余力は大きい。実際に、15年3
となっている。
月期のフリーキャッシュフロー(余剰現金
中国の景気鈍化を背景に新興諸国の需要
増)は6,400億円超の黒字となった。特に、
動向には懸念が生じているが、インフラ、
成長が見込めない分野の資産を売却して、
金融事業などでは過去からの事業投資から
成長分野へ再投資を実施するなど、保有資
の利益貢献が期待でき、業界内でも相対的
産の入れ替えを積極化している。保有資産
に安定的な業績が期待できると考えている。
の質が高いこともあり、こうした入れ替え
また、保有資産の質が高く、大型の減損処
もキャッシュフローを下支えしている。
理が発生するリスクも低い。
(成田 康浩)
〈発行済株式総数〉・・・・・・・・・・・・・・・・16億2,404万株
〈上場市場〉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・東、名、LON
〈時 価〉8.3 現在・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2,648.5円
〈売買単位〉8.3 現在・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100株
3,000円
2,750
2,500
〈株価収益率〉16.3 連結予想基準 ・・・・・・・・・・11.6倍
〈株価純資産倍率〉15.3 連結実績基準 ・・・・・・・0.8倍
〈親会社所有者帰属持分当期純利益率〉15.3 連結実績 ・・・7.5%
〈親会社所有者帰属持分比率〉15.3 連結実績 ・・・・33.2%
決算期
(IFRS)
収益
営 業 税引前 親会社所有者 基本的1株当たり 1株当たり
利 益 利 益 帰属当期純利益 当期純利益 配 当 金
百万円
百万円
円
円
12.3
5,565,832 271,122 454,708 452,344
274.9
65.0
13.3
6,009,887 169,021 442,726 323,457
196.5
55.0
14.3
7,635,168 233,107 531,954 361,359
219.3
68.0
15.3
7,669,489 211,143 574,722 400,574
246.4
70.0
16.3(予) 7,700,000 220,000 488,000 360,000
228.5
56.0
17.3(予) 7,900,000 240,000 515,000 380,000
241.2
69.0
百万円
百万円
2,250
2,000
1,750
1,500
1,250
1,000
09
10
11
12
13
14
15年
750
(注)12.3期までは米国 SEC 基準ベース。営業利益は、IFRS ベース=売上総利益−販売費及
び一般管理費、米国 SEC 基準ベース=日本の会計基準に従った表示
第34
82号 野 村 週 報 平成27年8月1
0日 第三種郵便物認可
銘柄研究
コード
8411
みずほフィナンシャル
グループ
足元業績は好調な推移
〈銀行〉
ガバナンスを梃子に改革加速に期待
15年4∼6月期決算は総じて顧客関連収
今後の中長期的な注目材料は、当社の先
益が好調に推移との印象である。役務利益
進的なガバナンス体制を、梃子に一層の企
て
(銀行合算)が前年同期比15%弱増加と他行
こ
業改革を進められるか、であろう。
比強く、みずほ証券(連結)の純営業収益
当社はメガバンク初の委員会設置会社へ
も同35%増加している。業務純益は連結・
の移行、社外取締役が取締役会議長となる
銀行合算ともに前年同期比で増益達成と好
など、ガバナンス(企業統治)面では先進
印象。株式関係損益(銀行合算)も533億円
的な体制をとっている。こうした外部の声
と通期計画の約7割を既に達成している。
やガバナンス面での規律を梃子に佐藤社長
7月31日付で、オリエントコーポレー
が進めてきた企業改革・風土改革が更に進
ション(オリコ)との連携強化並びに出資
展するか、それを好調な非金利収益の持続
比率引き上げ(22%程度→49%程度)を発
的な成長につなげることができるかに、野
表した。持分法適用関連会社との位置づけ
村では注目している。また、当社が先陣を
は不変。当社として、次世代決済への取り
切って表明した政策保有株売却において、
組み強化やオリコの中計進捗支援等の狙い
先進的なガバナンス体制が果たす役割と実
等があるものと想定されよう。
行力にも市場の注目が集まる。(高宮 健)
〈発行済株式総数〉・・・・・・・・・・・・・・・247億7,143万株
〈上場市場〉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・東、NY
〈時 価〉8.3 現在・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・263.5円
〈売買単位〉8.3 現在・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100株
325円
300
275
250
225
200
175
〈株価収益率〉16.3 連結予想基準 ・・・・・・・・・・・9.0倍
〈株価純資産倍率〉15.3 連結実績基準 ・・・・・・・0.8倍
〈自己資本当期純利益率〉15.3 連結実績 ・・・・・・・・・・・8.6%
〈自己資本比率〉15.3 連結実績・・・・・・・・・・・・・4.3%
決算期
(日本式連結)
経常
収益
経常
利益
親会社
株主利益
1株当たり
当期純利益
1株当たり
配 当 金
百万円
百万円
百万円
円
円
12.3
2,715,674
648,561
484,519
20.6
6.0
13.3
2,913,005
750,376
560,516
23.0
6.0
14.3
2,927,760
987,587
688,415
28.2
6.5
15.3
3,180,225 1,010,867
611,935
24.9
7.5
16.3(予) 3,372,464 1,060,223
727,492
29.4
8.0
17.3(予) 3,479,693 1,069,593
727,562
28.9
8.5
150
権
利
落
ち
125
100
75
09
10
11
12
13
14
15年
(注)09.1 1→1000 株式分割
株式分割を考慮した修正株価である。
第三種郵便物認可 平成27年8月10日 野 村 週 報 第348
2号
銘柄研究
コード
KER FP
ケリング
〈フランス 小売〉
グッチなどの高級ブランドを展開
主力のグッチの売上が回復
高級ブランドのグッチなどを傘下に持つ
14.12期は中国の綱紀粛正と卸売事業の
フランス企業。1963年に材木取引会社とし
合理化の影響で高収益のグッチが減収と
て創業、90年代には百貨店のプランタンを
なったことが響き、営業減益となった。
買収し、小売業に業態転換した。その後、
しかし、足元ではグッチの売上が力強い
90年代末からブランド企業を買収する一方、
回復を見せている。15年4∼6月期では為
プランタンを売却するなど、事業ポート
替や買収の影響を除く売上高は前年比
フォリオを大胆に入れ替えてきた。
4.6%増となり、アジアを除く各地域で2
14年の売上構成比はグッチ、ボッテガ・
桁の伸びとなった。ボッテガ・ヴェネタ、
ヴェネタ、イヴ・サン・ローラン等のラグ
イヴ・サン・ローランも、それぞれ同ベー
ジャリー部門が68%、プーマなどのスポー
スで9.3%増、27.3%増と高い伸びを見せた。
ツ&ライフスタイル部門が32%。営業利益
地域別では、米国、日本、欧州が好調で
ではグッチが約6割を占めた模様。
ある。新コレクションの投入や販促の効果
地域別売上構成比は西欧31%、北米21%、
に加え、日本や欧州では海外からの旅行者
日本10%、アジア太平洋26%、その他12%
数が増加し、その恩恵も受けていると見ら
と世界に展開している。
れる。(Christopher Walker、山口 正章)
〈発行済株式総数〉・・・・・・・・・・・・・・・・・1億2,628万株
〈主要上場市場〉・・・・・・・・・・・ユーロネクスト(パリ)
〈時 価〉8.3 現在・・・・・・・・・・・・・・・175.80ユーロ
〈売買単位〉8.3 現在・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1株
(ユーロ)
250.00
〈株価収益率〉15.12 期連結予想基準 ・・・・・・・18.1倍
〈株価純資産倍率〉14.12 連結実績基準 ・・・・・・2.1倍
〈自己資本当期純利益率*〉14.12 期連結実績基準 ・・・11.1%
〈自己資本比率〉14.12 期実績基準 ・・・・・・・・・45.7%
決算期
(IFRS 基準)
売上高
営業
利益*
税前
利益*
当 期
純利益*
1株当たり
当期純利益*
百万ユーロ
百万ユーロ
百万ユーロ
百万ユーロ
ユーロ
200.00
13.12
9,656
1,751
1,541
1,231
9.78
150.00
14.12
10,038
1,664
1,467
1,177
9.35
100.00
15.12
(予)11,461
1,720
1,538
1,222
9.70
16.12
(予)12,128
1,899
1,739
1,371
10.88
50.00
0.00
09
10
11
12
13
14
15 年
13.6 子会社分離・独立に伴う調整済み(調整係数0.984)
(注)1. 外国企業の会計制度は日本企業のものと異なり、グループ構造が変化した
場合など、過去に遡って実績値が修正されることがある。
2. 営業利益、税前利益、当期純利益、一株当たり当期純利益、自己資本当期
純利益率は継続事業ベースに調整後。
3. 当期純利益は親会社の所有者に帰属する当期利益。15.12期以降の一株当た
り利益はアナリストが予想する発行済株式数を基準に算出。
4. 発行済株式総数などの基本情報はブルームバーグより取得。
5. 業績予想は2015年7月28日時点。
第34
82号 野 村 週 報 平成27年8月1
0日 第三種郵便物認可
経済データを読む
日銀は新物価指標を採用するのか?
日本銀行が、7月の金融経済月報で「生
を踏まえると、当面はエネルギーを除いた
鮮食品・エネルギーを除いた CPI〈消費者
総合指数もみていくことが適当と考えてい
物 価〉」(以 下、「エ ネ ル ギ ー を 除 く コ ア
ます」と発言した。
「当面は」との条件付き
CPI」)を新たに掲載したことが金融市場で
であり、エネルギーを除いた物価に注目す
話題を集めている。一部では、日銀が同指
るのは、一時的な措置と言えそうだ。
標をターゲットとして採用するとの憶測も
こうした発言を踏まえると、日銀が新物
浮上している。従来、重視されてきた「コ
価指標を採用するとの観測は深読みし過ぎ
ア CPI」は6月時点で前年比+0.1%なのに
であろう。日銀の狙いは、大幅下落してい
対し、「エネルギーを除くコア CPI」は同
るエネルギーを除けば、インフレ基調は安
+0.8%で、ターゲットの変更は、2%の
定的に推移しており、最近は緩やかに加速
インフレ目標達成に大きなアドバンテージ
しつつある点をアピールするところにあっ
(有利性)になるようにも見える。
たのではないだろうか。
日銀の真意はどうだろうか。月報発表後
エ ネ ル ギ ー 安 の 影 響 が 強 ま り、
「コ ア
の中曽副総裁、石田委員の発言から、その
CPI」は目先前年比マイナスになる公算が
ヒントを掴むことができる。中曽副総裁は
大きい。しかし、日銀は「エネルギーを除
「この(エネルギーを除くコア CPI)部分
くコア CPI」に着目することで、これを一
を注目していくことによって、CPI、コア
時的な現象と見做し、現行政策を維持する
CPI がどの段階で1%を超えていくかとい
だろう。その後、エネルギー安の影響が剥
うのもある程度予見できるようになるので
落すれば、日銀の焦点は「コア CPI」に戻
はないかと思っています」と述べた。
「エネ
り、それが2%に達するのかが勝負所にな
ルギーを除くコア CPI」に注意を払いつつ
る。日銀は16年度前半頃にそのタイミング
も、最終的には「コア CPI」を重視すると
が到来すると予想しているが、その実現性
の意思を読み取れる。一方、石田委員は
はかなり低い。その時、日銀はインフレ目
「昨年来のエネルギー品目の変動が消費者
標達成時期の延期か、追加緩和の選択を迫
物価全体に大きな影響を及ぼしている状況
られることになるだろう。 (
橋 泰洋)
第三種郵便物認可 平成27年8月10日 野 村 週 報 第348
2号
企業経営
米国企業にみる ROE の継続性
現 在、日 本 企 業 の 間 で は 中 長 期 的 な
プに関して超過 ROE の中位水準を時系列
ROE(自己資本利益率)の向上が一大テー
で確認している。ここで、超過 ROE は企
マとなっている。議決権行使助言会社の
業全体の中位水準からの乖離を表す。
ISS が公表した取締役選任基準や、JPX 日
ROE が 最 も 高 か っ た 第 五 分 位 は 超 過
経400インデックスの選定基準に ROE が採
ROE が低下、最も低かった第一分位は上
用されたことからも企業が ROE を向上さ
昇しており、グループ間の相対格差は残し
せるインセンティブは高い。
つつも ROE が平均水準に回帰している傾
うかが
昨年度はアマダ、ファナックなど、積極
向が伺える。利益の増大に合わせて機動的
的な株主還元の実施を発表した企業が話題
な株主還元を行わなければ、自己資本は増
をさらった。ROE は税控除後の利益を自
大していくが、米国企業は日本企業と比較
己資本で除して算出される指標であり、株
して従前から株主還元に積極的である。そ
主還元を行うことで分母の自己資本が削減
の点を加味しても ROE は中位水準に回帰
され、ROE が向上するというメカニズム
しているということだ。足元の ROE の高
だ。一方で、今年度は企業の M&A(合併・
さに惑わされず、それを継続するための競
買収)が活発な様子である。ROE の分子に
争優位性を備えているかを見極めることが
あたる利益の方を成長させることで中長期
本質的と言えよう。
米国企業の超過ROEの推移(2004∼14年)
ROE の推移の分析結果である。具体的に
は、企業を2004年時点の ROE の大小で5
つのグループに等分し、それぞれのグルー
2013
2012
第四分位
第五分位
2011
2010
2009
2008
2007
は、米国上場企業の2004∼2013年における
2006
の過去推移から一定の示唆が得られる。図
第一分位
第二分位
第三分位
2005
能だろうか。
これは難しい問いだが、ROE
15
10
5
0
−5
−10
−15
−20
−25
−30
2004
それでは、高 ROE を維持することは可
超過ROE(%)
的に ROE を向上させる施策に、より意識
が移っているように感じられる。
(村岡 宏是)
(注)母集団は米国上場企業のうち、2004∼2013年(暦年ベース)
の通期でデータが取得可能な企業。うちROE100%以上と
−50%以下の企業及び債務超過の企業を除外。超過ROEは
各企業のROEから全企業のROE中央値を控除した値。
2004年時点の超過ROEにより企業を5つのグループに分け、
グループ毎の中央値をグラフ内で表示。
(出所)FactSetより野村作成
第34
82号 野 村 週 報 平成27年8月1
0日 第三種郵便物認可
資産運用
ROE は投資指標として有用か?
ROE(自己資本利益率)が話題だ。昨年
も低いグループ(Q1)の翌1年間の平均リ
8月に経済産業省より発表されたいわゆる
ターンはともに7.6%であった。これは、
「伊藤レポート」では、わが国企業の収益
予想がすでに株価に織り込まれているため、
力の低さが問題視され、企業は資本効率を
予想 ROE が投資指標として有用でないこ
意識した経営への転換を図って ROE を高
とを表している。
めるべきだとされている。
グラフのもう一方の値(黒い部分)は、
もし企業が事業リスクを高めずに、事業
実現した ROE と1年前の予想 ROE の差に
の収益性を向上させれば、株価は上昇する
よって5つに分けた各グループの過去1年
であろう。つまり、企業がバランス良く
間の平均株価リターンを表す。この差が最
ROE を高めれば、株価上昇という恩恵を
も大きい Q5と最も小さい Q1のリターン差
既存の株主にもたらすはずである。
は26%と大きい。
では、投資する際の銘柄選択の指標とし
この結果は、事前の予想 ROE と実現さ
て ROE は有用だろうか。将来の実現 ROE
れた ROE の差(つまり予想外の ROE の変
の値を事前には知ることはできないため、
化)によって、株価リターンに差が生じる
予想 ROE を投資指標に利用する場合を考
ことを意味している。
各グループの平均株価リターン
える。予想 ROE はプロのアナリストたち
が予想する今期利益の平均から算出した。
過去20年間のデータを用いて、毎年6月
(内山 朋規)
(%)
30
予想ROEによる五分位
25
実現ROEと予想ROEの差による五分位
20
末に東証1部上場企業を予想 ROE の大き
さで5つのグループに分け、その後1年間
の株価リターンの平均をグラフ(白い部分)
に示した。
15
10
5
0
−5
この結果から、予想 ROE は将来の平均
株価リターンと無関係であることが分かる。
予想 ROE が最も高いグループ(Q5)と最
Q1(低)
Q2
Q3
Q4
Q5(高)
(注)東証1部上場企業を対象。1995年から2015年まで毎年6月末
に、予想ROEで五分位にした各グループの翌1年間の平均株
価リターンと、実現ROEと1年前の予想ROEの差で五分位に
した各グループの過去1年間の平均株価リターンを表す。
(出所)野村
第三種郵便物認可 平成27年8月10日 野 村 週 報 第348
2号
資本市場の話題
GE の事業再編と米国のノンバンク規制強化
米国を代表し、世界最大のコングロマ
与信や不動産投資などに用いられたため、
リットでもあるゼネラル・エレクトリック
破綻した場合に金融市場への影響が大きい
(GE)は4月10日、金融事業から事実上撤
と当局は考えた。2014年11月には金融事業
退し、インフラストラクチャーやエネル
のリスクに応じて一定の自己資本、流動資
ギーなどから構成される産業部門を軸に事
産の保有の義務付けなど、銀行と同じ規制
業再編を行うと発表した。背景には、銀行
を GE キャピタルに課す方針を米連邦準備
からノンバンクへと広がる金融規制の対象
理事会が示した。
範囲の拡大がある。
既に金利低下などで金融事業の収益性が
2008年の世界的な金融危機を受け、破綻
低下していた同社にとって、金融規制の遵
が金融市場に大きな影響を与えうる金融機
守コストの増加は一層の収益性低下を意味
関(システム上重要な金融機関)への規制
した。アナリストや株主から金融事業縮小
強化が10年の G20サミットで合意された。
を求めるプレッシャーがあったこともあり、
これを受け、米国規制当局がシステム上重
金融事業からの撤退を判断した。
要な金融機関の具体的な特定方法と規制の
このように米国では、事業会社傘下のノ
策定を進めた。金融機関の規模、市場との
ンバンクであっても、金融事業の規模が大
関係(市場調達への依存、レバレッジ〈借
きく、資金調達において短期金融市場への
入〉比率等)、組織・取引内容の複雑性に注
依存が大きい場合、金融規制の対象になり
目しており、銀行に加え、保険会社や事業
うる。GE による金融事業撤退は、金融事
会社の金融子会社も規制対象となる。
業と非金融事業を2本の柱として抱えるコ
GE の金融事業は、かつては販売金融中
ングロマリットがビジネスモデルとして難
心 で あ っ た。し か し、金 融 子 会 社 の GE
しくなったことを示しているといえよう。
キャピタルによるコマーシャル・ペーパー
投資家にとっても、金融規制が事業会社の
や債券の発行規模が大きくなり、多くの金
財務・事業構造にも影響を及ぼしうること
融機関やファンドを通じた資金調達が拡大
を認識し、その動向を注視していく必要が
する一方、同社の調達資金が消費者向けの
ある。
(吉川 浩史)
第34
82号 野 村 週 報 平成27年8月1
0日 第三種郵便物認可
天眼鏡
虫対策グッズが「デング熱」で注目
◆昨夏、約70年ぶりの国内感染で大騒ぎ
剤「フマキラー プレミアム 550ml」
になったデング熱。デングウイルスを
を新発売した。BBQ や庭作業などのア
持っている蚊に刺されることによって感
ウトドアシーンを想定し、
“殺虫と忌避が
染が成立することから、今夏も、蚊の姿
同時に行える”点がセールスポイント。
を見かけるたびに「大丈夫か?」と一抹
有効成分には、殺虫の速効性に優れた
の不安を覚える人も多いだろう。蚊に刺
「イミプロトリン」と「d‐T80‐フタルス
されないためには、蚊が多い場所に出向
リン」を使用し、薬剤の蒸散が高く忌避
かなければいいことは分かっている。で
効果に優れた「トランスフルトリン」、そ
も、そうもいかないのが人の世の常だ。
して持続性に優れた
「トラロメトリン」の
◆2003年の開発以来、アウトドアシーン
4つの成分を最適な比率で配合。
また、
万
を中心に着実な人気を誇ってきた防虫素
が一植物に薬剤が付着したとしても、薬
材が「スコーロン」だ。アース製薬が開
害が出にくいよう処方している点も特徴。
発した揮散しない防虫剤と、帝人グルー
虫よけ効果は最大で24時間も持続する。
プが開発したナノレベルの接着技術(薬
◆人にデング熱を媒介する蚊として知ら
剤を生地に安定的に固着させる技術)に
れているのは、ヤブカ属に属する種類の
より、洗濯しても効果が落ちにくい洗濯
み。今後も人 VS 蚊の戦いは続くだろう
耐久性を向上させた。虫が近寄らないの
が、英知の限りを尽くして阻止したい。
ではなく、
「近寄ってきてとまるが、と
まっても嫌がって逃げていく」という仕
組み。昨夏のデング熱騒ぎから注目が一
「野村週報」
定期購読の
ご 案 内
定 折 定
期 り 期
購 返 購
読 し 読
料 ﹁ ご
郵希
1 便望
3 年 振の
年 間 替方
間 分 用は
分 3 紙﹁
一 1 ﹂郵
括 5 を便
払 0 お振
8 円 送替
4 ︵ り用
0 0送 し 紙
料 ま﹂
円 ・ すを
︵ 税 。ご
送 料込 ま 利
用
︶ たく
・ 税 、
だ
ご
込 購 さ
︶
い
読
毎
。
週 のハ
方
月 のガ
曜 住キ
日 所に
発 変住
行 更所
︵ の︵
地 手郵
域 続便
に き番
よ は号
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、
は ガ氏
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月 話記
曜 での
午 直う
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後 接
、
以 マ、
︿
降 ー野
と ケ村
な テ證
る ィ券
こ ンマ
と グー
も 部ケ
あ へテ
り ごィ
ま 連ン
す 絡グ
部
︶ く﹀
だ
さ
い
。
段と高まり、製品を扱うティムコによる
と、これまでのアウトドア用途以外にも
男性用のカーゴパンツやパーカー、アー
ムカバー、女性用のスパッツなどの一般
衣料にも広がりを見せている。2015年度
夏向けの販売量は前年比約3倍増という。
◆フマキラーは今年3月、新発想の殺虫
「天眼鏡」は、現在話題の新商品や新技術を
解説したものです。ご投資の参考となる情
報提供を目的としたものではありません。
野村證券からのお知らせ
当社で取り扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は
約定代金に対して最大1.404%(税込み)
(20万円以下の場合は、2,808円(税込み)
)の売買手
数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管
理費用(信託報酬)等の諸経費、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等に
は価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。商品ごとに手数料等およびリスク
は異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、
等をよくお読みください。
問い合わせ先 〒103-8011 東京都中央区日本橋1-9-1 野村證券マーケティング部 03(3211)1811(大代表)
C 野村證券 2015 ●野村證券インターネットホームページ http://www.nomura.co.jp/
○
平 第
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十 二
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年 月
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込
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〒 一 103-8011
部 野 東
京
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村
三 中
證 央
円
区
日
︵ 鳥
券 本
送
橋
株 一
料 海
丁
・
式 目
九
税 清
会 番
込
一
︶ 志 社 号