Using Virtual Reality for“ New Clowns ” 4 VRと“ New

概要
立命館大学 理工学部 情報学科
論文紹介
Using Virtual Reality for“ New Clowns ”
Martin Hachet and Pascal Guitton
LaBRI(Universite Bordeaux 1, ENSEIRB, CNRS)
ICVS 2003, LNCS 2897
高町 武志
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【 コンピュータビジョン&ゲーム研究室 】
概要
本研究では Virtual Reality(仮想現実)技術を用い
た映画,あるいは役者達との演劇の実験の成果を発表
する。その方法として、巨大なディスプレイを用い、役
者と聴衆の高度な対話型の Virtual Environment(仮想
環境)内での演劇を行う。この論文の中で、VE の構築
と観客との対話の方法について、ハードウェアとソフト
ウェア両方の面からアプローチする。この技術を使うこ
とによって聴衆に新しい体験をさせることを可能とし、
演劇の新しい分野の開拓につながる。また、人間と VR
の関係を近づけることにもなる。
ンがステージの中央に置かれ、後方には同様に2つのプ
ロジェクターが置かれるような形で演劇を行っている。
Worcester Polytechnic Institute は、ここ数年、演劇と
VRとの融合したショーを劇場で見せるという研究を
行っている。Dance Driving project はアイオワの国立
大学の VR アプリケーションセンターが行っている研究
である。これは学際的な経験構築を目的としていて、ダ
ンスと音楽、そしてコンピュータ上で作られる仮想的な
要素との融合を目的としている。また、フランス調査機
関(French reserch lab(IRIT))と人形会社による、リ
アルタイムでの仮想の人形作りをして、それを実際に動
かすといった研究もなされている [4]。
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4
はじめに
VR と“ New Clowns ”
VR 技術を用いた演劇について研究する為に、本研究
ではフランスの演劇会社を調査することによって、現在
の演劇がどのように成されているのかを調べると共に、
Bordeaux(ボルドー)大学の VR 研究グループによる
VR の調査と VE の構築という作業を行っている。現在
の演劇は、作られたストーリーを流して観客に見せ、照
明効果や役者と聴衆のやり取りによって、聴衆の反応を
画一的に統一する。その為、役者と聴衆とのやり取りの
違いによって、同じ演劇でも異なった感情を観客が抱く
事がありうる。一方、VR 研究グループは、VE を作り
出すためのアプリケーションを構築した。聴衆の興味を
引く大きなディスプレイと、実時間での仮想空間内を航
行でき、また仮想物体の操作を可能にするようなデバ
イスを開発した。この二つの調査と研究を融合して VE
上での VR 演劇を構築する。始めに VR に関する調査
と役者との関連性、VR 構築のための技術の紹介と実験
についてのストーリー、考察について述べ、この研究が
どのように生かされ、将来 VR はどのように発展すべ
きかを検討し結論に導いている。
この章では Virtual Reality と演劇役者について述べ
る。VR がどのように成されているのか、また役者はど
のように演劇を行う上で注意するのかを考察した上で、
両者の融合の可能性について模索している。
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New Clowns とは、現実に存在する真剣な役者であ
る。演劇は聴衆がしっかりと(騒がずに)観ていること
によって、彼らは演じることができる。役者たちの演劇
は即興に基づいており、今までは、即興の元となるのは
現実の環境、つまりは聴衆の反応であった。それが VR
を用いて、さらに広げられることが考えられる。つまり
以前の研究
最近まで、VR技術の演劇構築は一般的ではなかっ
た。VR 調査学会での研究ではいくつかの舞台の要素
(場面や環境など)を映像装置を用いて実時間で作成し、
登場させるといったものがある。巨大な2つのスクリー
4.1
Virtual Reality
VR は、この研究において聴衆を没頭させるための仮
想環境の構築を目的とするためのツールとして考えられ
ている。VR は長い間、HMD(Head-Mounted Displays)
と呼ばれる装置で構成されてきた。頭の動きを追跡する
センサーを装備することで、使用者を VR の世界に没
頭させるような事も可能になっていた。また、一般的に
中のものを操作したりするのにセンサー付きのグロー
ブをつけていた。その後、CAVE[1] という研究概念に
より、大きなディスプレイの VR 環境が登場した。これ
により使用者を VE の世界へ没頭させるということが
可能になった。
4.2 “ New Clowns ”
概要
立命館大学 理工学部 情報学科
VE を調節することによって、役者の心理等に影響を与
えて、表現の仕方を変える、といったような事が可能に
なるからである。
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Experimental Scenario
本実験では、役者と聴衆に VR の環境を体験するた
めのシナリオとして、都市の航行と惑星の探索という二
つのシナリオを作成している。このシナリオでは、2人
の役者を含む20人の参加者が VR 上での実験に参加
した。実験では人のいない都市を航行し、人がいないと
いう謎を追うべく未知の惑星を探索する。都市はフラン
スの Bordeaux(ボルドー)をモデルとして行われ、聴
衆もボルドーの市内を航行した。未知の惑星では役者の
一人がスクリーン裏に移動し、スクリーンには移動した
役者のアバター(ここでは VR 上に登場する人物)が聴
衆の示すポイントに移動し、怪物や亡霊に出会うといっ
たシナリオが用意されている。
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結果
この実験を行った結果、観客は非常に良い体験をし
た、との反応を得られた。この実験は、3つの恩恵をも
たらした。1つは、役者達が観客を導いて冒険すること
で、芸術的な演劇が作れたことである。2つ目は、観客
が出会ったことの無い新技術を体験できたということが
挙げられる。3つ目は、実時間での VE との触れあいを
体験する事が可能となったということである。
図 1: スクリーンショット:左 (CAT), 右 (実験)
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Technical Solutions
VR によるインタラクティブな演劇構築のために、3
つの要素を考える必要がある。1つ目は場面のモデリ
ングに関して、2つ目はシーンをどのように表現して
観客に認識してもらうかについて、そして3つ目は VE
に対応できるインターフェースについてである。
6.1
Modeling
モデリングに関して、小さく、重要なものは写真から
3 D 物体を作るアプリケーションを使って作成した。ま
た、ボルドーの都市の構築には 3D geomarketing[3] を
使い、VRML(Virtual Reality Modeling Language) を
用いて建物を構築した。建物のテクスチャは DB から作
成しており、本物の写真、あるいは絵を使った外観を作
ることが可能である。
6.2
Perception
それぞれのシーンにおいて、聴衆が正しく場面を認識
できるような環境として、30メートルの曲がったスク
リーンと3台の高解像度プロジェクターを用いて、巨大
な VR 空間を表現している。また、全方位サウンドシス
テムにより、聴衆に更なる臨場感をもたらしている。
6.3
Interaction
VR 空間において聴衆との対話を実現させるために、
ここでは CAT[2] と呼ばれるデバイスを用いている。聴
衆はそれを操作して、VR 空間上の都市を航行すること
が可能となる。また、レーザーポインタのような装置を
用いることによって、VR 空間上での座標を指定するこ
とも可能にしている。
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結論
巨大スクリーンによる VR 空間や、VR 空間での行動
を可能にした革新的なインターフェースを用いることに
よって、参加者たちは直感的な方法で VE と対話するこ
とができた。それは新しい経験をもたらし、演劇役者の
研究の分野を広げた。今後の研究の方向性として、シン
プルな機材や環境下で VR 空間を構築し、手軽に新しい
技術を体験できるようにするということが挙げられる。
参考文献
[1] Cruz-Neira, C., Sandin, D.J.,DeFanti, T.A.:
Surround-Screen Projection-Based Virtual Reality: The Design and Implementation of the
CAVE. ’93.
[2] Hachet, M., Guitton, P., Reuter, P., Tyndiuk,
F.:The CAT for efficient 2D and 3D interaction as
an alternative to mouse adaptations. To appear in
Proceeding of Virtual Reality Software and Technology, ’03.
[3] Hachet, M., Guitton, P.: From Cadastres to Urban Environments for 3D Geomarketing. ’01.
[4] Jessel, J.P., Jaspart, C., Flores J.J.: Computer
Animation and Virtual Reality for Live Art Performance. Proceedings of Virtual Storytelling.
’01.