第8回 生命科学リトリート 2011 年 12 月 1 日 2 日 掛川市 ヤマハリゾートつま恋 プログラム________________________1 アクセス ・貸し切りバス ___________________________________2 ・自家用車 ____________________________________2 ・電車 ____________________3 会場案内 _________________________________________4 連絡事項 ・会費、受付、荷物、昼食 (1 日目 )、ポスター張り付け ___5 口頭発表 ________________________________________6 ・口頭発表一覧 ___________________________________7 ・招待講演 東山先生 ____________________________8 高橋先生 ____________________________9 松本先生 ____________________________10 ポスター発表 ____________________________________11 ・ポスター発表一覧 ____________________________11-13 学生企画型共同研究 案内 _____________________________13 宿泊施設 __________________________________________14 リトリート運営委員 Q &Aを楽しもう! _________________________________14 プログラム 12 月 1 日 9:00 12 月 2 日 7:00 出発 朝食 葉山 8:30 三島 9:30 各自チェックアウト 岡崎 10:45 12:30 9:00 到着、受付 Pradeep Lai (NIG, D4) 大久保 文貴 ( 基礎生物学専攻 , D3) ポスター張付け 13:30 開会挨拶 13:35 口頭発表① 高橋 遼平 ( 生命共生体進化学 , D5) 10:00 コーヒーブレイク 10:10 招待講演② 高橋晃周 先生 小川 裕里 ( 生命共生体進化学 , D5) ( 総合研究大学院大学・極域科学専攻 准教授 ) 加藤 健治 ( 生理科学専攻 , D3) 11:00 渡瀬 成治 ( 遺伝学専攻 , D4) 14:35 コーヒーブレイク 14:45 招待講演① 12:30 ( 名古屋大学理学部 教授 ) チェックイン 16:15 ポスター発表 13:30 19:30 口頭発表② ( 京都大学霊長類研究所 助教 ) Chandak Mahesh (IMS) V. Resmi (IISER Pune, India) Arun Ankush Tanpure (IISER Pune, India) 20:30 招待講演③ 松本正幸 先生 even number group 夕食 昼食 (FD 会議:コンベンション S) odd number group 18:00 18:15 意見交流会 (FD 会議:コンベンション S) 東山哲也 先生 15:50 口頭発表③ 自由討論、ポスター -1- 14:30 写真撮影 14:50 解散、バス 会場へのアクセス 会場 ヤマハリゾートつま恋 住所 〒436-0011 静岡県掛川市満水 2000 電話 0537-24-1111 貸切バスの場合 ( 特に理由がない限り貸切バスで来場下さい) 専攻ごとに貸切バスを手配します。集合場所/時間は別途ご連絡します。 自家用車の場合 ( 特に理由がない限り貸切バスで来場下さい) 東名高速 掛川 IC をおりて 15 分程度です。 北ゲートにて「生命科学リトリート参加」の旨を伝えてれば、無料で入場できます。 駐車場は空いているとことをご利用していただき、MSC( スポーツマンズクラブ ) までお越し下さい。 -2- 電車の場合 新幹線掛川駅、JR 東海道本戦掛川駅よりバスまたはタクシーでのアクセスと なります。バスは本数が少ないので、なるべくタクシーをご利用下さい。 -3- 会場案内図 ホテル ビュッフェテラス 昼食、夕食、朝食 クローク コンベンションホール L ポスター会場 コンベンションホール M メイン会場 ( 口頭発表、招待講演 ) -4- 受付 連絡事項 会費 セミナー当日、貸切バスに乗車の際に各専攻のセミナー委員にお渡し下さい。 貸切バス以外でお越しの方は、受付にてお支払い下さい。 教員:¥2000 学生:¥1000 受付 スポーツマンズクラブ (SMC) エントランスロビーにて、受付を行って下さい。 名札をお渡しするので、所属、氏名、学年をご記入下さい。名札は専攻ごとに 色分けされています。 基礎生物学専攻 白 生理科学専攻 青 先導科学専攻 遺伝学専攻、その他 スタッフ 赤 緑 黄 荷物 コンベンションホール S をクロークとして利用できます。 ただし、係員を常在させないため、貴重品は各自て管理して下さい。 一日目の昼食 ビュッフェテラスにランチボックスが用意してあります。 ポスター貼付け ( コンベンションホール L) 受付後、コンベンションホール L の指定されたパネルにポスターを貼付けて下さい。 -5- 口頭発表 発表者の方へ ・発表者は各自ノートパソコンをご用意下さい。パソコンをご用意できない方は 運営係 ( アドレス ) までお問い合わせ下さい。 ・スライドは全て英語で準備ください。 ・発表原語は原則、英語としますが、重要な点または難解な点に関しては日本語 での補足説明可。 ・発表前の休憩時間内に発表用のパソコンをプロジェクターに接続して下さい。 ・プロジェクターの接続端子は D-sub です。D-sub 端子への変換コネクタを各自 ご用意下さい。 ・発表時間 15 分、質疑応答 5 分 ・会場 コンベンションホール M -6- 口頭発表 一覧 口頭発表① 12 月 1 日 , 13:35-14:35 小川 裕里 ( 生命共生体進化学 , D5) モンキチョウ複眼における青視細胞分光感度の雌雄差 加藤 健治 ( 生理科学専攻 , D3) 筋−末梢神経間の人工神経接続による手首運動の随意制御 渡瀬 成治 ( 遺伝学専攻 , D4) 出芽酵母 Mcm10 は DNA 複製において、安定な DNA へリカーゼ複合体形成後の 新たなステップに必要である 口頭発表② 12 月 1 日 , 19:30-20:30 Chandak Mahesh (IMS) Dynamic structural fluctuation of free heptameric GroES studied by the use of hydrogen-exchange technique and 2D NMR V. Resmi (IISER Pune, India) Quenching of dynamics in neuronal networks Arun Ankush Tanpure (IISER Pune, India) Fluorescence Detection of a DNA Abasic Site using an Emissive Pyrimidine Ribonucleoside Analogue 口頭発表③ 12 月 2 日 , 9:00-10:00 Pradeep Lai (NIG, D4) The genetic dissection of neural circuits regulating zebrafish behavior 大久保 文貴 ( 基礎生物学専攻 , D3) チャネルロドプシン 2 を用いた光刺激マッピングによる運動野間の 機能的結合の同定 高橋 遼平 ( 生命共生体進化学 , D5) 先史時代琉球列島におけるイノシシ・ブタ (Sus scrofa) の導入に関する研究 -7- 招待講演① 12 月 1 日 , 14:45-15:35( 講演 40 分、質疑応答 10 分 ), コンベンションホール M ライブセル解析で迫る花粉管ガイダンスの仕組み 東山哲也 先生 ( 名古屋大学理学部 教授 ) ご略歴 1999 年 3 月 東京大学大学院理学系研究科 博士課程修了、日本学術振興 会特別研究員 PD を経て、同年6月より同研究科助手。2007 年 1 月より名 古屋大学大学院理学研究科教授、現在に至る。この間、2004 年にフランス・ ルイパスツール大学にて海外研修。2010 年より ERATO 東山ライブホロニ クスプロジェクト研究総括。 抄録 多細胞生物において、個々の細胞は、近距離あるいは遠距離にある他の細胞とコミュニケー ションをとりながら、自分の位置や役割を知ります。私は顕微鏡下に見られる個々の細胞の 個性に興味があり、これまで顕微鏡下にある細胞や分子を狙って自由自在に操作・解析でき るようにしたいと考えてきました。そのような生物学分野をライブセル生物学と位置付け、 その展開を目指しています。 これまで主に、植物の生殖過程で見られます、「花粉管ガイダンス」や「重複受精」とい う現象について研究を進めてきました。植物(被子植物)では、受粉後に発芽した花粉管細 胞が、めしべの中を長距離伸長し、正確に卵細胞のある胚のう(雌性配偶体)まで到達しま す。我々は、胚のうが裸出するユニークな植物であるトレニアに着目し、in vitro での顕微 細胞操作を中心とした解析から、卵細胞のとなりに 2 つある助細胞という細胞が、LURE と 名付けた複数のペプチドを分泌して花粉管を誘引することを発見しました(Higashiyama et al., 2001, Science; Okuda et al., 2009, Nature)。また、花粉管から放出される 2 つの精細胞が 重複受精する仕組みについて、ライブイメージング解析で初めて実際の様子を捉えることに 成功しました(Hamamura et al., 2011, Curr. Biol.)。 こうした知見から、我々の興味はさらにめしべの組織中で起こっている複雑で精密な制御 にも向かっています。最近の取り組みと、明らかになってきた興味深い知見を紹介します。 -8- 招待講演② 12 月 2 日 , 10:10-11:00( 講演 40 分、質疑応答 10 分 ), コンベンションホール M バイオロギングによる動物「目線」の生態学 高橋晃周 先生 ( 総合研究大学院大学・極域科学専攻 准教授 ) ご略歴 2001 年総合研究大学院大学極域科学専攻・博士課程修了。博士 (理学)。英国南極調査所ポスドク研究員などを経て 2005 年から 国立極地研究所/総合研究大学院大学極域科学専攻・准教授。 これまで 8 回にわたり南極・亜南極域でのペンギンの野外生態 調査を行ってきた。 抄録 動物の行動・生態の研究では、対象となる動物をよく観察することが研究の基本です。と ころが、野外の環境で自由に生活する動物を追跡して観察することは容易ではありません。 特に海の上を数百キロも飛び回ったり、数百メートルの深さまで潜ったりする海洋動物の直 接観察は至難のわざです。そこで私たち国立極地研究所(極域科学専攻の基盤機関)の研究 チームでは、小型の記録計を動物に装着することにより「動物自身に」行動や周囲の環境な どを測定・記録させる技術の開発に長年取り組んで来ました。「バイオロギング」(生物+記 録する)と名付けられたこの技術は、およそ 20 年前の開発当初は潜水の深度を計測できる だけで、潜水する動物の研究にのみ有効な特殊な技術と見なされていました。ところが近年 では加速度、GPS、カメラなど、様々なセンサーを搭載して動物の体の動きや位置など様々 な計測を行うことが可能になり、海洋のみならず陸上の動物の研究にも広く使われ始めてい ます。特に小型のカメラ記録計を使うことで、行動と同時に動物の「目線」でその周辺の環 境を記録することが可能となり、動物の行動・生態と生息環境との関係についての研究が進 展しています。本講演では、この技術を使って私たちが行っているペンギンなどの極域海洋 動物の行動的適応の研究、環境変化が南極の海洋生態系に与える影響についての研究を紹介 します。 -9- 招待講演③ 12 月 2 日 , 13:30-14:10( 講演 40 分、質疑応答 10 分 ), コンベンションホール M 脳の報酬系:外側手綱核と中脳ドーパミンニューロンの役割 松本正幸 先生 ( 京都大学霊長類研究所 助教 ) ご略歴 1999.3 横浜国立大学工学部卒業 2001.3 東京工業大学大学院総合理工学研究科修士課程修了 2005.3 総合研究大学院大学生命科学研究科博士課程修了(理学博士) 2005.4−2005.6 自然科学研究機構生理学研究所 研究員 2005.7−2009.11 アメリカ国立衛生研究所 研究員 2009.11−現在 京都大学霊長類研究所 助教 抄録 報酬は動物の行動を動機付けする主要な要因のひとつである。たとえば、空腹時に眼の 前にリンゴあれば、それに手を伸ばそうとする行動が動機付けされる。脳の報酬系とは、 このような報酬に関わる機能に関連した神経系であり、学習や意欲、快情動と深く結び付 いている。 特に、中脳に分布するドーパミンニューロンは、脳の報酬系を構成する重要なファクター である。ドーパミンニューロンは、前頭前野や大脳基底核に投射し、これらの領域にドー パミンを放出する。特に、報酬を得て欲求が満たされたときや、報酬を得ることが期待さ れるときに興奮性の活動を示し、予測していた報酬が得られなかったときに抑制性の活動 を示す。そして、このようなドーパミンニューロンの活動は、我々の学習や意欲のコント ロールに深く関わっている。たとえば、ドーパミンの働きを阻害する薬物を被験者に投与 すると、報酬を得るための学習が障害される。 ただ、これまで多くの研究がドーパミンニューロンの報酬機能に関わる役割について報 告しているが、その活動がどのような神経メカニズムによって制御されているのかという 根源的な問題については不明な点が多い。我々がおこなった最近の研究は、外側手綱核と 呼ばれる神経核からドーパミンニューロンへ伝達される神経シグナルが、その活動制御に 深く関わっていることを明らかにした。 今回の講演では、ドーパミンニューロンの報酬や意欲への関わりを報告した先行研究、 そして我々がおこなった外側手綱核に関する研究について紹介する。また、大学院時代か ら海外でのポスドク、そして現在に至る私のキャリアパス等についてもお話できればと思 う。 -10- ポスター発表 場所:コンベンションホール L 発表時間 : 発表 8 分、質疑応答 4 分 発表者の方へ ・ポスターは A0( タテ 120cm, ヨコ 90cm)で作製して下さい。 ・ポスターは全て英語で作製して下さい。 ・ポスターは指定された場所に貼付けて下さい。 ・発表は偶数、奇数グループに分かれて行います ( グループは下記参照 )。 ・発表原語は英語です。 聴講者の方へ ・所属グループの発表時は、所属グループでの討議に参加して下さい。それ以外の 時間は自由に聴講して下さい。 ・それぞれの発表後にも自由時間を設定しています。 ポスター発表者一覧 吉田直樹/細胞集団の協調的極性化におけるWnt翻訳後修飾の役割 A 佐々木武馬/シュート由来根粒形成抑制物質の探索 B 磯村成利/ C 上條真弘/栄養状態・および肥満に伴う脳脂肪酸代謝の変化 D 上村恭平/線虫C. elegans非対称細胞分裂におけるWnt経路因子のダイナミクス解析 A 福島健児/食虫植物の消化酵素における平行進化 B 内山博允/雄ヒメシロチョウの 凸凹複眼 における個眼多様性 C 金子将也/運動課題遂行中のサルにおける淡蒼球ニューロン活動のグルタミン酸およびGABA作動性調節 D 庭山律哉/線虫初期胚の細胞質流動の力学 A 菅谷友美/Molecular mechanisms of reversed evolution in Houttuynia cordata A 藤原邦代/光誘起赤外差分光法によるpHRタンパク質の構造変化解析 B 箱崎敦志/下部尿路機能の中枢性制御機構解明のためのin vivoパッチクランプ法の開発 C wu quan/TGFb signaling is essential for sex differentiation of male germ cells D 徳江萌/マウスの精子形成 潜在的幹細胞 を制御する機構を探る B 川嶋彩夏/霊長類チトクロームP450の分子進化 C 鳴海麻衣/マウス脳内における新規シアル酸化糖鎖の解析 D Bebarinde Isaac Adeyemi/Rodent uniqueness in cDNA sequences A 鎌形貴範/動物発生におけるWntタンパク質の脂質修飾機能解析 B 吉田后那/柑橘類樹木の匂いがナミアゲハの生得的な色嗜好性を変える C 岡澤剛起/サル視覚野における物体表面光沢への選択的活動:fMRI研究 D 吉野彬子/アデニル酸シクラーゼ1がマウス体性感覚野におけるバレル細胞の樹状突起方向性に与える影響の解析 A 角谷絵里/オオミジンコの脱皮関連遺伝子のクローニングと発現解析 B Abhishek S. Sahasrabudhe/Role of Fmn2 at the Neuronal Growth Cone C 高山靖規/脈絡叢におけるTRPV4活性を介したATP放出 D -11- C D A B 小野聖二郎/植物の減数分裂の進行に必須な遺伝子群の解析 - 周辺細胞との相互作用の観点から - A 宮城明日香/神経パターニングに働く新規遺伝子の探索とその機能解析 B 加藤晋/GISを用いた遺跡立地と分布の選択パターンの研究 C 杉尾翔太/小脳発生におけるバーグマングリアの役割 D 小池紘子/生殖細胞性分化における性分化因子の探索と機構の解明 A 伊神香菜子/精子幹細胞集団が分化と自己維持を両立させるメカニズムの解明 B 萬歳明香/DTC遺伝子検査は遺伝子決定論を助長しうるか C 橋本弘和/神経前駆細胞における新規LewisX合成α1,3フォコシルトランスフェラーゼ遺伝子の機能解析 D 保坂碧/DNAメチル化制御因子間の遺伝的相互作用 A 李琛/Cold Shock domain Protein function in reprograming from differentiated cells to stem cells B 安達大輝/繁殖後回遊中キタゾウアザラシの遊泳パターンの変化 C 高桑徳宏/「無意識」に受け取る視覚刺激による連合学習について D 高橋明大/ゲノムの安定性とCAF-1 complexの関わり A 篠塚裕子/ショウジョウバエ始原生殖細胞における母性蛋白質Ovoの機能解析 B Emmanuel Mpolya/Epidemic dynamics of vector-borne diseases on an urban-rural star network with commuters: a case of malaria C 大川都史香/免疫性神経疾患における自己抗体の標的抗原同定と作用機序の解明 D 坂口あかね/心筋前駆細胞におけるSfrp5の機能 A 佐藤優/マウス雌性生殖器官における動物プランクトン群集の分布特性 B 小島本葉/昭和基地沖における動物プランクトン群集の分布特性 C 高橋陽香/涙の認知に関わる心理学的メカニズムとその神経基盤 D 趙薇/Ripply2は体節形成におけるMesp2のTbx6の負の調節に必要であるか? A 杉山ありさ/ショウジョウバエ生殖幹細胞ニッチにおける細胞外基質の役割 B 山道真人/カタツムリの1遺伝子種分化における突然変異の固定確率 C 石川達也/局所薬剤投与による活動依存的なスパイン運動性の変化 鈴木亜友美/皮質下領域Adenylyl cyclase1 (AC1)のバレル形成における役割 D A 柴田美智太郎/シロイヌナズナにおけるペルオキシソームを分解するオートファジーの役割 B Ameya Suhas Mahajan/Regulation and transcript mobility of knotted1 like RNA of potato C 中畑義久/神経伝達物質の変化に伴うグリシン受容体の局在と機能的変化 D 付煜/A new type transposon: Vandal21, without terminal inverted repeats, can transpose in plant. A 谷津遼平/爬虫類等の温度依存的性決定における分子機構 B Ying Zhang/Investigation of conformations and dynamics of gangliosides by NMR technique C 高木一代/個体全体の消費エネルギーにおける基礎代謝、運動および食事によるエネルギー消費量の算出とその生理学的意義 D 琴梨世/イネ生殖細胞発生に必須なARGONAUTEタンパクの機能解析 A 西村俊哉/性分化時におけるメダカの生殖細胞、支持細胞の網羅的遺伝子発現解析 B 別府薫/グリア活動光制御法によるグリアから神経への作用機序の解明 C 佐藤達也/視床下部CRHニューロンによる接触・代謝調節機構 D 田邉彰/MSM-B6コンソミックマウス系統を用いた不安様行動の分子遺伝的解析 A 原佑介/ツメガエル原腸陥入時に先行中胚葉が生み出す力の機能解析 B 武田浩平/Shall we dance? :鳥のダンス解明への挑戦 C 波間智行/サル視覚皮質における色情報表現 D 羅ブンジュウ/体性感覚野におけるヒゲ-バレル神経回路発達の細胞・分子メカニズムの解析 A 篠塚琢磨/生体内におけるWntの挙動の解析 B 稲熊あすみ/生細胞内におけるmRNAのリアルタイムイメージング用プローブの開発 C 田淵紗和子/オレキシン神経 - セロトニン神経間相互作用の解明 D Pui Han Pin/The molecular mechanisms of NANOS2 in the establishment and maintenance of murine spermatogonial stem cells (SSCs) A 林健太郎/原腸形成における力学的刺激による細胞応答の解析 B Dwi Wahyu Indriani/Recording of Basal Ganglia Activity in Normal Awake and Behaving Mice C 橘高裕貴/μ-オピオイドによる痒みはTRPA1を介して生じる D 神澤秀明/福島県三貫地貝塚の縄文人骨のミトコンドリアDNA解析 A 豊田賢治/オオミジンコの環境依存型性決定機構の遺伝子基盤解明に向けて B 乾こゆる/ヒトAQUAPORIN7における偽遺伝子化メカニズムの解析 C Eulalia Coutinho/Hypothalamic Regulation of Glucose Metabolism in the Peripheral Tissues D Nadeeka Nilmini Hettaiarachchi/Conserved noncoding sequences in plants A 養老瑛美子/ミヤコグサ新規根粒非着生変異体 daphne の解析 B 河野美恵子/感想・湿潤状態の地衣体間で発現が異なる遺伝子の同定 C 宮本愛喜子/ミクログリアの神経回路再編における役割の解明 D -12- A B C D A B C D A B C A B C 「学生企画共同研究」 案内 「学生企画型共同研究」への積極的な応募を !! 異分野の研究者との衝突と理解からは研究テーマのアイデアが出てくることが よくあります。「統合生命科学」プログラムでは、「アイデアを得て他のひとを 説 得して研究サポートを獲得する」というプロセスを経験すること自体を「大 学院教育の一貫」ととらえ、新しい企画を考えています。リトリートでは、異 分野の 学生間の交流によって新たなアイデアが生み出されることが期待され ます。今回のリトリートで他専攻の人と話をして、よいアイデアや仮説が出て きたら、それを試すための「学生企画型共同研究」の計画書を 書いてください。 1. 他専攻の学生とチームを作り、申請書を書いてください。( 日本語でも 結構です。) 2. 50-100 万の予算で1年間の研究をサポートします。 3. 5-10 件の採択を考えています。 4. 申請書は、採択不採択に関わらず添削してお返しします。 -13- 宿泊施設 ホテル・ノースウインング テェックイン 1 日目の招待講演終了後、16:00-16:15 までに済ませて下さい。 部屋割り票は当日、配布します。 テェックアウト 2 日目の朝食後、各自でフロントに鍵を返却して下さい。 客室備品 バスタオル、フェイスタオル、浴衣、歯ブラシ、石けん、シャワーキャップ、 シャンプー、髭剃り、電気ポット、ドライヤー、冷蔵庫。 室内風呂、館内に大浴場 ( 入浴時間 6:30-9:00, 11:00-23:30) があります。 夜間は施錠されますので、23 時以降の外出は控えて下さい。 セミナー運営委員 教員 遺伝学専攻 基礎生物学専攻 生命共生体進化学 鍋倉 淳一 岩里琢治 椎名伸之 松下敦子 吉村 由美子 前島一博 林 誠 生理科学専攻 皆川 純 学生 遺伝学専攻 基礎生物学専攻 生命共生体進化学 岡澤 剛起 田邉 彰 養老 瑛美子 磯村 成利 田淵 紗和子 鈴木 亜友美 鎌形 貴範 萬歳 明香 生理科学専攻 Sumru Keceli 佐々木 武馬 宮本 愛喜子 杉尾 翔太 -14- 1 Q&Aを楽しもう! 以下の内容は来年刊行予定の “English for Scientists”という教科書から抽出したものです.この内容は 総研大の以下の授業の教材としても用いられています. English for Scientists (遺伝学専攻/遺伝研): http://www.nig.ac.jp/jimu/soken/courses/EfS/EfS_2011/index.html English Education Program “Presentation Course” (自然科学研究機構): http://www.nips.ac.jp/eep/curriculum.html その1:質問をしよう 科学プレゼンテーションにおいて、質疑応答のセクションは欠かせません。よい「質問」は、聴衆 に知的刺激を与え、会場全体を盛り上げます。的を射た「質問」が、講演者の eye opener となって、 その後研究の方向性を変えてしまうこともあります。この単元では、研究者として必須の技能であ る「質問」の仕方について考えます。 まず、科学プレゼンテーションにおける「質問」の目的について考えてみましょう。内容が理解で きない時に、それを確かめる為に質問をするのは当然です。それは、科学的場面に限ったものでは ありません。多くの場合、自分が分からない時には、ほかのみんなも分からないものですから、 「質 問」する事は、自分のためだけでなく、聴 衆 み ん な の 理 解 を 助 け る 事になります。それに加えて、 科学者は、いろんな他の目的で質問します。その多くは質問の形式をとりながらも、必ずしも答え を期待していないものです。講演者に対する助言であったり、自分の仮説を投げかけるものであっ たりします。また、講演者に向けてではなく、聴衆に全体に問題を投げかけることも多いです。つ まり、「質疑応答」は、プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 全 体 の 理 解 を 深 め 、 会 場 一 帯 と な っ て 議 論 を 交 換 す る ものです。質疑応答を含めて、プレゼンテーションが完結するといいって良いでしょう。 なぜ,質問をする必要があるのでしょうか?まず第一に、質問をする事は科学者にとっての特権で あり、本質でもあります。疑問を持たない科学者なんてあり得ません。すべての研究は、疑問から 始まります。ですから、何事についても、興味を持ち、疑問を持てるということは、科学者として の大きな財産です。「質問力」は、経験に依存して培われます。最初はなかなか考えがまとまらず、 気の利いた質問を考えることができないかもしれません。でも、質問を考えながら講演を聴く習慣 をつければ、どんどんと疑問が湧いてくるようになります。このように問題意識をもって発表を聞 くことができる active listener は、ただ受動的に聞くよりも、はるかに多くのものを理解でき、吸収 できます。 質問をするもう一つの特典は、みんなに覚えてもらえることです。自分を売り込むことが必要な科 © 2011 Tatsumi Hirata National Institute of Genetics/Department of Genetics, SOKENDAI 2 学者にとって、これはとても大切です。科学者とは、観察好きで分析好きな生き物です。あなたの 質問を聞いて、「この人は誰だろう」「何を研究している人だろう?」「どんな事に興味があるのか な?」と思っている聴衆が、会場にはたくさんいます。自分の興味や感性を活かした質問をどんどん して、みんなにあなたの事を知ってもらいましょう。 とはいっても、質問するのはなかなか勇気がいるものです。尻込みしてしまう気持ちもよくわかり ます。 “At the Bench: A Laboratory Navigator” Kathy Barker 著、では質問をためらう聴衆の気持ち を、次のように代弁しています。 1) My question wonʼt interest anyone else, so Iʼll ask the speaker after the seminar. 2) I wonʼt be able to express my question, it is too complicated. 3) Iʼm probably supposed to know the answer, it is my field. 4) It is too obvious a question. Everyone else knows the answer. 5) I donʼt want to look stupid or unread. 6) I donʼt want to have a confrontation in public 7) I must have missed the slide that would explain. I canʼt let on that I wasnʼt paying attention. でも、こんな言い訳をしていても誰のためにもなりません。 “Forget about your hang-ups and just ask questions!” です。がんばりましょう。 実際、科学者にとって「質問する」ことは必須です。学会や講演で、必ず1つ以上「質問する」こ とを目標にするとよいでしょう。繰り返しますが、「質問」はすればするほど「うまく」なります。 思い切って質問すれば、「得るもの」は必ずあります。 質問しようと思っても、なかなかよい質問が思いつかない人へのアドバイスです。講演を聴きなが ら、次のような事を考えてみましょう。 「知りたい気持ち」が、ふつふつと沸き上がってきませんか? 1. この研究の key question は何か? 2. 講演者はこの次にどんな実験やデータを提示してくるか、予想しながら話を聞こう。 3. これまで講演者が提示した実験データを突き合わせると、あなたならどんな結論を導く? 4. この講演の中で、最も重要なデータはどれか?そのデータに穴はないか? 5. 実験結果は、研究の key question に答えたのだろうか? 6. 講演者の解釈以外に、この実験結果を説明できる「別の解」は無いか? 7. 何か皆が見落としている要素は無いか?当然あるべき実験や情報が抜け落ちて無いか? 8. 全てのデータは矛盾していないか? 9. 講演者の話と、あなたの知っている事実や知識との間に、矛盾は無いか? 10. この研究発表と、あなた自身の研究や興味と,共通する要素は? 11. 講演者自身はあまり注目して無いかもしれないが、あなたから見ると面白そうなデータは? © 2011 Tatsumi Hirata National Institute of Genetics/Department of Genetics, SOKENDAI 3 12. あなたが、講演者だったら、次にどんな実験をするか? 科学プレゼンテーションでよく見かけるタイプの質問を分類してみました。そんな時に使える例文 もつけましたので、使ってみてください。 A) わ か ら な か っ た 内 容 を 確 認 し た り 、 説 明 を 省 略 し た 部 分 に つ い て 、 詳 し い 説 明 を 求 め る 場 合 ・I could not follow how you reached that conclusion. Could you elaborate on that? ・Perhaps I have missed something from your talk. Would you please explain how you found...? ・I am not familiar with this field and would like to ask why you can assume...? ・Could you tell me a little more about...? I am not quite sure why the mutation caused.... ・You mentioned.... How did you find it? B) 既 に 行 な っ た で あ ろ う 実 験 に つ い て 、「 こ の 実 験 を し た 事 が あ る か ? 」「 こ れ に つ い て は 調 べ た か ? 」 と 確 認 す る 場 合 ・Did you do the same experiment using a different material? ・When that phenomenon happens, how long does it last? ・Did you find any difference in appearance between the two groups? ・Were there any exceptions that did not follow the rule? C) こ れ ま で に 分 か っ て い る 既 知 の 事 実 に 関 す る 質 問 。 質 問 の 背 後 に は 、 他 の 研 究 と の 関 連 性 や 、 こ の 研 究 の 新 規 性 を 問 う と い っ た 動 機 が あ る ・Is the rate constant calculated in your study similar to the estimate in previous studies? ・Is the hippocampus the only known region associated with memory and learning? ・If I remember correctly, someone has shown.... How are these results related to yours? ・Do you know...? There might be some preceding study that examined that. ・Are there any other methods that you can use to test...? D) 他 の 可 能 性 を 指 摘 し た り 、 解 釈 や 結 論 に 至 っ た 理 由 を 確 認 す る 場 合 ・Other than..., is there any other proof of your conclusion? ・I am wondering how you can be so sure that.... Could you explain the reasons to me? ・You mentioned that other conditions did not change the results. Could it be because...? ・ There seem to be other possible explanations for the results. Do you have an alternative hypothesis? E) ち ょ っ と 解 釈 が 難 し い デ ー タ に つ い て 、 講 演 者 が ど う 解 釈 し て い る の か 意 見 を 求 め る 場 合 © 2011 Tatsumi Hirata National Institute of Genetics/Department of Genetics, SOKENDAI 4 ・I noticed some low outliers in your results. What does that mean? ・There are thousands of different species. Do you have any idea how they have evolved? ・In your data, A group seemed slightly larger than B group. Is that difference significant? If so, how do you explain the difference? F) お そ ら く ま だ 実 施 し て な い 実 験 に つ い て 、 仮 想 的 な 質 問 を す る 場 合 ・If there were the same mutation in humans, what symptoms would you expect to develop? ・What do you think would happen if you did...? ・If you could reverse the conditions, what would you predict the results to be? ・Is it possible for you to test the causal relationship more directly? G) 研 究 の 新 し い 方 向 性 を 助 言 す る 場 合 ・Do you think itʼs possible that...? ・Have you considered investigating...? ・Researchers in biophysics have been eagerly looking for a cell expansion technique. I think your gene might open some possibilities for that. H) 講 演 の 主 要 な 内 容 で は な い が 、 潜 在 的 に 面 白 そ う な 事 に つ い て 質 問 す る 場 合 ・This is probably not your focus, but I am interested in.... ・Well, this is just out of curiosity, but...? ・Would you tell me more about the techniques that.... I am wondering if I could use the same techniques in my research about.... 質問する時には、まずあなたが何 に つ い て 質 問 す る か を ハ ッ キ リ さ せ る ことが大切です。特に幾つも の topic が紹介された講演などの場合は、具体的な質問を投げかける前に、まず、”You mentioned ○○ ○○.” “You showed ○○○○” “I have a question about ○○○○” “About the first part of your talk” などと言って、質問したい topic を限定してから、質問に移りましょう。 質問する上で、特に気をつけなければならないのは、なぜあなたがその質問をしているのか、その「 動 機 」 を き ち ん と 伝 え る 事です。「質問」自体の意味がわかっても、なぜそれが知りたいのか分からなけ れば、相手も的確に答えることができません。実際、質疑応答が噛み合ない多くの原因がこれです。質 問の意図を酌み取ることも科学者にとって必要な力ですが、実際問題、すぐに質問の意図を理解してく れる演者もいれば、なかなか理解してくれない演者もいます。ですので、質問の前に、長々と時間をか けて「なぜそれを知りたい」のか動機を説明するのは得策ではありません。それよりも、早い段階で、 まず「質問」を投げかけておいてから、その後で質問の動機を付け加えて説明する方がうまくいきます。 そうすれば、講演者は、質問の意図が掴めた段階で、即座に、質問に答え始めることができます。また、 講演者が「あ、これが質問の意図か!!」と気づく瞬間は、ふつう周りの目にもとても明らかですので、 © 2011 Tatsumi Hirata National Institute of Genetics/Department of Genetics, SOKENDAI 5 質問者のほうも、どこで追加説明を終了すべきか簡単に判断がつくはずです。 質問はなるべく具体的にするほうが、質問された方も答えやすいものです。”How do you feel? とか”What do you think about this?”などと質問されても、何を答えてよいのか面食らってしまいます。たとえ具体的 な答えを求めている訳ではなく、単に意見を聞きたいだけであっても、”Do you have any idea why this happens?” ”Please interpret your unexpected results for us” “How can you explain the conflicting data?” などと、なるべく具体的に topic を限定するようにしましょう。 © 2011 Tatsumi Hirata National Institute of Genetics/Department of Genetics, SOKENDAI 6 その2:質問に答えよう 本単元では、 「質問」に対する答え方を考えます。あらかじめ充分準備して練習できるプレゼンテー ション本編に対して、どんな質問が飛んでくるか予測がつかない「質疑応答」では、完璧な準備は 不可能です。立ち往生する場面もよく見かけますし、苦手意識を持つ人も多いでしょう。でも、科 学プレゼンテーションは質疑応答を含めて完成です。しっかり質疑応答がこなせるように練習しま しょう。 科学者にとって「質問」の受け答えは、ものすごく重要です。学会でも、job seminar でも、研究費 の審査でも、個人を評価する際には、質疑応答に最も注目します。誰かの助けが加わっているかも しれない論文や、プレゼンテーションそのものよりも、ごまかしが効かない本人との直接的やりと りに注目するのは当然のことです。実際、質疑応答の中で、その人の能力や考え方、知識、といっ たさまざまな情報が得られます。ですから、ここ一番での「質問」の受け答えに、失敗は許されま せん。その時のために、普段から自分の研究に対するいろんな質問を想定して、答えをしっかり蓄 えておきましょう。 前の単元でも述べたように、科学プレゼンテーションの質問の多くが、質問の形をとりつつも、具 体的な答えを期待していません。特に、将来の研究の方向性や、仮想の実験に関する質問について は、答えは「まだわからない」 「今後の課題である」であって当然です。何も恥じる事はありません。 ただし気をつけなければならないのは、このような質問では、質問者は、あなたの意見や反応を知 りたいのです。 「答えがわからない」の後に、そうではあるけれども「自分はこんな予想をしている」 とか、 「次はこんな実験を計画している」などと、自分の意見を付け加える事が大切です。それを加 えて初めて、「回答」したといえます。 このような将来計画に対する質問とは対照的に、既に報告した実験結果や、これまでの研究背景な ど、既知の事実や知識を問う質問については、 「わからない」という答えは不適切です。あなたの研 究は,あなた自身が最も知っているはずです。また、その研究の周辺背景情報も、他の誰よりもよ く知っていて当然です。聴衆にとって、最も知っているべき人がきちんと質問に答えてくれないの は、 「がっかり」するものです。質疑応答で緊張して舞い上がってしまったとしても、自分の研究や その背景情報はきちんと説明できるように、充分に押さえておきましょう。 質問にきちんと答えるためのアドバイスです。 1. 質 問 の 意 味 が よ く 判 ら な い と き に は 、 ま ず 確 認 し よ う ! 質問に対して、的外れな返事をするのは、端から見ても印象が悪いものです。もしも、質問内容を 完全に理解できたという確信が無い時は、迷わずに質問内容を確認しましょう。前の単元でも述べ たように、 「質問」の背後の動機というものは、なかなか他人には酌み取り難いものです。遠慮する © 2011 Tatsumi Hirata National Institute of Genetics/Department of Genetics, SOKENDAI 7 必要はありません。質問が全くわからなかった時には、例えば次のように説明して、質問を繰り返 してもらいましょう。 ・I am not sure I understand your question. Could you please rephrase your question? ・I am afraid I didnʼt quite catch what youʼre asking. ある程度内容が想像できた場合には、質問を自分の言葉に言い換え(paraphrase)て、質問者に確 認するほうが効果的です。聞き慣れない言い回しをただ繰り返されるよりも、そのほうが間違いが ありませんし、手慣れた印象をみんなに与えます。 ・Youʼre asking about「paraphrase」? ・Youʼd like to know「paraphrase」? 2. 答 え る の に 時 間 が 必 要 な 時 に は 、 そ う 伝 え よ う ! 質問を聞いた後で、しばらく黙り込んでしまう人を時々見かけます。講演者の持ち時間はふつう限 られていますから、なるべく早く考えをまとめて答えられるように訓練する事が必要です。でも、 慣れない質疑応答で、予想もしなかった質問をされて,答えを考えるのに多少時間がかかるのは仕 方ありません。ですが、考え込むその前に、 「質問は理解できたので、もう少し時間が欲しい」のメ ッセージだけは発しましょう。質問した後、何も反応無いままに黙り込まれると、 「質問が分からな いのだろうか?」と質問者だけでなく、聴衆みんなが心配します。そして、沈黙が長く続けば続く ほど、会場全体に居たたまれない雰囲気が漂います。そうなる前に,必ず次のような一言を添えま しょう。 ・Thatʼs a really difficult question to answer. Let me think about that for a second. ・I hadnʼt actually thought of that before. Iʼm going to need a minute to think about that. 3. 聴 衆 が 質 問 を 理 解 し て い な い 時 に は 、 解 説 を 加 え よ う ! これは、少し上級科学者向けのアドバイスです。科学プレゼンテーションの質疑応答で、非常に近 い研究分野の人が専門的な質問をして、聴衆の多くはその質問の意味を理解できない時があります。 そして、質問の意味を理解できた講演者と質問者の間で、専門用語をふんだんつかった1対1の議 論が展開され、周囲の聴衆は蚊帳の外・・という状況が最悪のシナリオです。質疑応答は会場みん なのものです。聴衆が理解できない質問を受けたら、その内容をいったん平易な言葉に言い換えて、 聴衆全員に解説しましょう。 例えば、“Osmotic regulation of saltwater frog in Philippines”というタイトルの研究発表を聞いて、誰 かが次のように質問したとします。 Q. You showed the membrane expansion allowed the Philippines saltwater to survive in fresh water. Is the same true for “Rana muscavora”? この Rana muscavora はプレゼンテーションには登場しなかった専門用語です。カエルの種類だと 予測がつく人はいるでしょうが、ほとんどの聴衆は質問の意図はわかりません。そんな場合は次の ように、まず解説を付け加えてから、実際の返答を始めるとよいでしょう。 © 2011 Tatsumi Hirata National Institute of Genetics/Department of Genetics, SOKENDAI 8 A. Thatʼs an interesting question. Rana muscavora is another frog species that lives in saltwater in Africa. It lives in a salt level similar to the Philippines saltwater, but it isnʼt an osmoconformer and uses a totally different mechanism to adapt to the salty environment. Although we havenʼt examined Rana muscavora, we believe that …, because … そうすれば、聴衆みんなが質問の意味を理解でき、質疑応答に参加することができます。上級科学 者らしい振る舞いに感謝する人も多いでしょう。 4. ま ず 手 短 に 答 え を ま と め て か ら 、 詳 細 に つ い て 説 明 し よ う ! プレゼンテーションを組み立てるときには「結論をまず述べる」というやり方が有効です。同じ戦 略は質問に対する答えでも使えます。即興で話さなければならない受け答えでは、準備した speech よりもさらに筋がわかりにくくなるものです。長々と返答を聞いている間に、結局答えが何だった のかわからなくなったり、途中で話が逆転してしまったり、ということが本当によくあります。そ れを防ぐ為には、まず、質問に対する自分の答えを、大まかにはっきりとまとめましょう。そして その後で、詳しく説明を付け加えましょう。 Yes や No で答えられる質問に対してまず短くストレートに、 ・Yes, it is possible. ・Thatʼs right. ・No, unfortunately that is not known. などと答えましょう。そして、それからその理由や詳細の説明を始めましょう。 実際には、Yes か No ではっきり答えられるほど、答えが単純でないことはよくあるものです。例え ば、ほとんどのデータは”Yes”を指示しているのだけども、微妙なデータもあるし、まだもう少し実 験しないと結果がハッキリしないとしましょう。そういう時には、 ・The short answer to your question is “yes”. のような答えから始めると良いでしょう。そうすれば、聴衆は,当然のごとく、話の後半部には but がきて、その後で例外的なデータ紹介があると期待するでしょう。その期待感を、そっくり そのまま利用できるのですから、みんな迷わず話についてきてくれます。逆に、もしも、ハッキリ しない例外的な言い訳のほうから紹介されてしまうと、みんなが混乱してしまうのは目に見えてい ます。 その他に、やはり Yes や No ではっきり答えられない時には、 ・I cannot provide a simple answer to your question. ・Well, yes and no. などが使えます。こういった表現は、たいした情報を含んでいないようでありながら、実は、とて も重要な“topic sentence”としてはたらき、答え全体の枠組みを作ります。聴衆にとっては、まず「話 は単純ではないらしい」という心づもりができるだけでも、残りのややこしい話を聞く負担がずい ぶん軽減されるものです。 © 2011 Tatsumi Hirata National Institute of Genetics/Department of Genetics, SOKENDAI 9 5. 答 え が わ か ら な い 時 は 、「 わ か ら な い 」 と 正 直 に 答 え よ う ! 質問の答えがわからない時は、素直に認めましょう。何度も言いますが、多くの質問は必ずしも明 確な答えを期待していません。ですから、答えがわからないからといって、申し訳なく感じる必要 はありません。質問の意図は判った事を示してから、答えは「わからない」と正直に答えましょう。 この時、可能ならば、なぜその質問に答えられないのかを付け加えるとよいでしょう。 ・Thatʼs a good question, but this point we donʼt have enough data to conclusively answer that. ・Thatʼs a big question. As far as I know, nobody has answered it yet. ・I wish I knew the answer, but a major obstacle to answering that is.... 6. 決 定 的 な 答 え は な く て も 、 意 見 が あ る な ら 、 そ れ を 聴 衆 に 伝 え よ う ! 多くの質問は明確な答えを期待していません。質問者は、その質問に対する講演者の意見を聞きた いだけなのです。そんな時に、 「わからない」というだけでは、質問者の質問の動機に答えた事には なりません。こんな時こそ、あなたの考えを伝えるチャンスです。講演本編とは違って、多少推測 が混じっても構いません。 「わからない」の後に、次のような表現を使って、自分の意見を付け加え て述べましょう。 ・If I had to offer an educated guess, I would say that.... ・I donʼt have any experimental data to support this, so itʼs just my opinion, but.... ・The most likely possibility in my mind is .... ・Among many potential scenarios, my favorite is .... 7. 質 問 者 の 質 問 の 動 機 が わ か っ た ら 、 そ れ に 返 答 を 合 わ せ よ う ! 前単元で学んだように、質問の裏には、質問者の「なぜそれが知りたいか」という動機が隠されて います。質問の時に、きちんと動機まで説明してくれる質問者もいれば、あまり多くを語らない質 問者もいます。でも、いずれの場合でも、質問に答えるあなたは質問者の「動機」を汲取っている はずです。返答の際には、質問者の「動機」を理解したという反応を見せましょう。そういう時に は,次のような表現が便利です。 ・Thatʼs a really good question. ・Thatʼs exactly what I would like to know next. ・I hadnʼt thought about that possibility, but thank you, that seems very important. また、質問に対して答える際にも、狭義の答えを機械的に返すのではなく、サービス精神を働かせ て、質問の「動機」に合わせた状況提供をするように心がけましょう。そのためには、 「聞き手に合 わせた情報提供」という考え方が役に立ちます。 例えば、講演者が、マウスの天敵の尿の中から、マウスを怯えさせ忌避させる匂い物質を見つけた とします。そのプレゼンテーションを聞いて、誰かが次のように質問しました。 Q. Do you know the threshold concentration of this substance that is needed to induce the avoidance behavior in mice? この質問に対する狭義で正確な答えは、次のような感じでしょう。 © 2011 Tatsumi Hirata National Institute of Genetics/Department of Genetics, SOKENDAI 10 A1. Yes, the threshold concentration is about 10 pM. でも、もしかすると、この質問の背後に隠された本当の動機は、 「実際の尿において、この物質はど のぐらい効果的なのだろう?尿はどのぐらい離れたところまで効果を及ぼすのだろう?」かもしれ ません。そして、もしも講演者が、なんらかの理由で、この「動機」をきちんと察知できたならば、 次のように答えるでしょう。 A2. Yes, the threshold concentration is about 10 pM. On the other hand, the predatorʼs urine contains a concentration of this substance more than 1000 times higher than this detection threshold. So, mice are able to detect and avoid the smell of predator urine from pretty long distances, as you are probably wondering. このように、質問の動機を推し量り、それに合わせて答えを提供することは、とても大切です。質 問者にとっては、きちんと自分の質問の意図を汲取って、それにストレートに答えてもらえるのは、 とても嬉しいものです。また、聴衆の中には、やり取りを解説してもらって、ようやく質疑応答の 意図を理解できる人もいるでしょう。動機を含めた「大きな質問」に返答して、初めて、質問に的 確に答えたという満足感が得られます。 8.も し 結 論 を 裏 付 け る 別 の 証 拠 が あ る な ら 、 つ け 加 え て 結 論 を 補 強 し よ う ! 質問の多くが、講演者の提唱する結論や解釈に挑むために行われます。論理的な飛躍や穴を追求し たり、他の可能性を指摘したり、そんな攻撃的な質問に上手く対処するのは相当に熟練した技が必 要です。必勝攻略法のようなものはありません。ただひとつアドバイスできるのは、もしも主張を 裏付ける別の証拠があるなら、出し惜しみしないで早めに追加提供してしまう事です。質問者の質 問に対して、逐一真面目に狭義の答えを提供しているだけでは、大きな議論を展開できません。も し、他にも提供できるデータや事実があるならば、たとえそれについて直接質問された訳でなくて も、周辺情報として自らすすんで提供しましょう。講演自体には組み込めなかった予備的な実験結 果や、他のグループによる研究成果、それから、一見したところ何の関係も無いようだけど視点を 変えれば「もしかすると関連性があるかも・・」と思える観察など、自分の主張を形作る元になっ た証拠を説明しましょう。質問者の質問の「動機」は、あなたの主張にチャレンジする事なのです から、理にかなった対応といえます。具体的には、次のような言い回しで、情報を付け加える事が できます。 ・These ideas are also supported by data from a study by.... ・We actually did another experiment to test..., and got preliminary results showing that.... ・Actually, other groups show similar results, using different materials.... ・There is another line of evidence from clinical studies.... 9. 質 問 者 が デ ー タ を 見 落 と し て い た り 、 間 違 っ て い た ら 、 説 明 し 直 そ う ! 質問者が何かを勘違いしていたり、見落としている時は、おそらく他の聴衆も誤解している可能性 が高いでしょう。なにか説明にわかり難い点があったのかもしれません。丁寧に間違いを指摘して、 誤解を解きましょう。データの読み間違いは、スライドを再提示する事ができれば、すぐに誤解が とけるでしょう。また、説明も、ただ前回の文言を繰り返すのでなく、言い換え(paraphrase)て © 2011 Tatsumi Hirata National Institute of Genetics/Department of Genetics, SOKENDAI 11 伝える事が大切です。そうでないと、同じ間違いが繰り返される心配があります。 ・I am sorry. I think my original explanation was too confusing. Let me try to explain that again. ・I think you may have misunderstood me when I said…. ・Let me show the data once again. Although it may appear insignificant at first glance, these results actually indicate that…. 10.仮 想 的 な 議 論 を 展 開 す る 時 に は 、 聴 衆 が 事 実 と 誤 解 し な い よ う に 気 を つ け よ う ! 質問の返答には、仮想的な議論を展開しなければならない事がしばしばあります。こういう時に、 しばしば出会う問題が、講演者が「仮想的」な話をしているのか、 「事実」を話しているのか、わか らなくなってしまうことです。重要なのは、仮想的であることを指示する表現(signpost)を使って、 「事実」を話していると誤解されないように、充分に注意しながら、議論を展開することです。 ・If we used Rana muscavora in our experiment, I would predict that they would survive at a higher rate. ・One potential outcome is that the rats might fall asleep instantaneously. 11.そ の 場 で 質 問 に 答 え た く な い 時 に は 、 ち ょ っ と 待 っ て も ら お う ! 限られた質疑応答の時間なのに、非常に専門的な込み入った質問をされる場合があります。また、 プレゼンテーションの本題から外れて、実験手技の細かな説明を求められたりする場合もあります。 非常に個人的な質問であり、その質問に詳細に答えることが、聴衆みんなの興味では無いと思われ る場合には、思い切って、後回しにしてもらうのがよいでしょう。例えば次のように言うことがで きます。 ・I think that question deserves a very detailed answer. Would it be OK to discuss it with you after the presentation? ・ Unfortunately, I donʼt have the information I need to answer that right now, but if you give me your contact information after this session, Iʼd be happy to send it to you. © 2011 Tatsumi Hirata National Institute of Genetics/Department of Genetics, SOKENDAI
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