北朝鮮政府、および世界の指導者へ 核兵器の完全放棄を求めます 北

北朝鮮政府、および世界の指導者へ
核兵器の完全放棄を求めます
北朝鮮の核実験に抗議します
去る10月9日、北朝鮮政府は核実験を実施したことを発表し、米国、韓国に続き、同
27日に日本政府も核実験を事実上認定するとの見解を発表しました。北朝鮮政府は各国か
らの抗議や外交交渉によって一時的に再度の実験を行わない意思を表明していると報道
されています。しかし私たち日本カトリック正義と平和協議会は北朝鮮政府に対して、今
回強行された核実験に強く抗議するとともに、再実験を行わないだけでなく、核兵器の完
全放棄を強く求めます。
世界の指導者に求めます
核を保有することがあたかも自国を守る最大の武器であるという誤った論理が広がり
つつある中で、今回の核実験は東アジアのみならず、世界に対して平和を脅かす深刻な緊
張を与えました。国際社会は、核兵器が戦争の抑止になるというような考え方とは決別す
べきです。抑止の理由であらゆる国が核を保持し始めれば、人類は自ら破滅に至る道筋を
作っていくことになるからです。現在、すでに核保有国によって、あの広島、長崎に投下
された恐るべき原爆とは比べものにならない規模の核兵器が量産されています。たとえ
「自国を守るため」という理由であっても、もし、本当に相互に核兵器を使用する事態が
起こるとするなら、それは当事国のみならず、世界が決定的に破壊される時でもあるので
す。この世界からあらゆる種類の核兵器を無くしていくために、今後いかなる国も核開発
をしないことと、すでに保有している国々が歩調をあわせて核の完全廃絶に向けて歩みだ
すよう求めるものです。
広島、長崎に目を留めてください
今一度、広島、長崎での原爆の地獄の有様にもう一度目を向けてください。この悲惨さ
は、事象の残酷さだけではなく、人間を無差別に、しかも一瞬のうちに大量に殺すことを
目的として核兵器が開発され、同じ人間が実行したという残酷さがあります。この原爆投
下は、第二次世界大戦で日本をはじめ、さまざまな国が行った無差別戦略爆撃の思想とも
通ずるものであり、その最悪の結果でもありました。
国際社会は、戦争がもたらすこのような悲劇を二度と繰り返さないようにと国際法を定
め、またEU共同体のように集団安全保障を具体化するなどの対策を採ってきました。その
一つ、国際人道法とも呼ばれるジュネーブ条約では、やむを得ず武力行使にいたった場合
でも、戦闘員と民間人を区別しなければならないと定めています。核兵器の使用は、はじ
めから無差別に大量に人を殺戮することを意味し、この国際人道法の考えとも根本的に矛
盾します。
日本政府に求めます
今回の北朝鮮の核実験への難しい対応が迫られる中、閣僚によって核保有論が相次いで
出されたことに強く抗議します。
「論議は自由」との安倍首相の見解ですが、この時期に、
しかも閣僚から出されることの意味は重大で看過できません。北朝鮮のみならず、世界に
核拡散の危険性が出てきたこの時期における閣僚の発言は、世界に対して日本も核保有は
ありうるとのメッセージを投げかけたことになるからです。
日本は唯一の被爆国として、また侵略戦争を起こした責任を負う国として平和憲法の精
神を活かし、むしろ非核三原則をゆるぎないものとして掲げることで、世界における核兵
器廃絶と平和のために全力を尽くす役割こそ大切なことです。
私たち人間は、互いを愛し合い、心から平和に暮らしたいと望んでおり、この思いは国
境を越えた願いでもあります。この人間としての当然の思いが踏みにじられ、尊厳を奪わ
れたすべての戦争被害者に償うためには過ちをくり返さないことは最低の責任です。どん
な理由をつけても、無差別、大量殺戮兵器の頂点とも言うべき核兵器を持つことなど、許
されるはずはありません。
従って私たちは、北朝鮮のみならず、すでに核を保有する国、核開発を試みようとする
すべての国に対して、一切の核開発と保有を放棄するよう強く求めます。
2006年11月1日
日本カトリック正義と平和協議会
会長 松浦悟郎