第15回 企業年金の歴史(その3)

2008年
(平成20年)
12月26日
〈金曜日〉
読んでナットク!
The
年金比較
日本と中国の
Daily
NNA
【中国総合版】
第3118号
[12]
年金コンサルティング部 位田周平
E-mail:[email protected]
<筆者プロフィール>
第 15 回 企業年金の歴史(その3) 1.日本の企業年金
(4)
確定拠出年金制度
日本で導入が求められていたもう一つのタイプの年
金制度は、米国の401(k)プランに代表される確定拠出
型制度です。日本では、確定拠出年金制度という名称
で2001年に導入されました。
401(k)プランは、従業員拠出の掛金がベースとな
り、会社も上乗せ拠出
(マッチング拠出という)
できる
制度ですが、年金制度というよりは一時金の積立制度
というものです。これに対し、日本の確定拠出年金制
度は年金制度として導入されており、この点は、401
(k)プランとは大きく異なります。
日本の確定拠出年金制度は、個人型と企業型があり、
各々のポイントは次の通りです。
①企業型確定拠出年金
企業の従業員を対象に、事業主が掛金を拠出する制度
で、適年、厚生年金基金、退職金制度から移行する場合、
(年金)資産の確定拠出年金への持込みも可能
②個人型確定拠出年金
主に自営業者を対象としていますが、企業年金を持たな
い企業の従業員は加入可能。
企業型確定拠出年金を持つ企業から同制度を持たない企
業に転職した場合、それまでの残高は、原則として、個人
型確定拠出年金に移換する
現在、適年を実施している企業は、2012年3月末の
適年廃止に伴い他制度への移行を進める必要があり、
その場合の選択肢は下図の通りです。
適年を解約する場合、年金資産は従業員と受給者に
分配しなければなりませんが、2012年3月末までであ
れば、下図の退職金制度を除く4制度へは適年の資産
を移換することができます。退職金制度に戻る場合
は、適年の資産は従業員に分配されます。
<適年 廃止に伴う制度の選択>
確定給付企業年金
適 格退職年金
確定拠出年金
( 2 0 1 2年 3 月
末廃止)
厚生年金基金
中小企業退職金共済
年金数理人、日本アクチュアリー会副理事長、
海外職業訓練協会(OVTA)国際アドバイザー
2.中国の企業年金
(4)
中国の企業年金の特徴
中国の企業年金は、資産を会社あるいは制度単位で
一括運用する確定拠出型制度であり、日本の確定給付
企業年金や企業型確定拠出年金と比較した場合、以下
の類似点と相違点を有しています。
①日本の確定拠出年金との比較
《類似点》
・給付は、拠出された掛金を運用し、その運用実績に基づ
く元利合計によって決まるという点。
⇒確定拠出型制度の最大のポイント
《相違点》
・掛金拠出の方法は、日本の企業型確定拠出年金は事業主
拠出の制度で従業員の拠出はできないが、中国の企業年金
は、労使拠出が原則。
⇒日本の企業型確定拠出年金で個人拠出が認められない理
由は、日本の制度は個人の貯蓄制度ではなく、老後保障の
ための年金制度であるためと説明されている。
・日本の確定拠出年金は、従業員が運用商品の選択を行
い、それに伴う運用成果はすべて従業員に帰属するため、
会社は従業員に対する投資教育の義務を負っているのに対
し、中国の企業年金では、従業員は運用の個別指図はせ
ず、従って、従業員への投資教育は不要。
②日本の確定給付企業年金との比較
《類似点》
・資産運用は、制度全体で一括して運用する点。
⇒中国の企業年金は確定拠出型だが、資産運用は従業員の
個別指図は原則せず、制度全体で一括運用。
《相違点》
・日本の確定給付企業年金は、運用利回りの低下により
発生する不足金は事業主負担で償却するが、中国の企業
年金は、事業主は運用リスクを負わず、従業員に帰属す
る。
以上の通り、中国の企業年金においては、事業主は運
用リスクを負わず、従業員への投資教育も不要であり、
全体として、シンプルな運営が可能になっている点が、
中国の企業年金の特徴と言えると思います。
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