Pre-Resume For After Abstract Expressionism

Erika Namiki, Sawa Tamaki, Hiroko Takagi, Yuta Komaguchi Presents
>>>Pre-Resume For After Abstract Expressionism
>>> ATTENTION
今回私たち第 2 週目発表班はクレメント・グリーンバーグ氏の論文「抽象表現主義以後」を扱い
ます。既に文献に目を通した方はお分かりかもしれませんが、今回のテキストには抽象的な比喩
や人名等が多く若干読みにくい文章であると思います。そこでプレレジュメにおいてはテキストに
おける要点の整理、及び作者等についての解説を掲載します。
なお、今回宿題については特に用意しない予定です。そのぶん文献の理解などに努めてくださ
い。
追記:以下に要約を掲載していますが、人名の①などの番号は8~11ページの作品画像に対応
しています。それを参照しながら見てください。
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>>> テキスト要約
1.抽象表現主義
●1930 年代後半~1940 代前半
【キュビズムの束縛】
⇒抽象芸術は「総合的キュビズム」の規律に束縛されていた
=ニューヨークにおける「苦境」、パリの後見から離れた絵画制作の困難さの原因
※総合的キュビズムの規律=はっきりとした輪郭線、閉じられた規則的な形態、平面的な色彩
●1943 年 10 月、1944 年3月
【ポロック①、ホフマン②による打開】
⇒ポロック、ホフマンの個展がニューヨークで開かれる
⇒彼らの絵画は成熟しきった方法として印象に残る「絵画的(マーレリッシュ)」な抽象絵画だっ
た。
=グリーンバーグ氏はこれを「抽象表現主義」の絵画の重要な特徴とした。
"もしも「抽象表現主義」という用語が証明し得るような何かを意味するとすれば、それは「絵画的で
あること(ペインタリネス)」の謂である。" P54 上 L14-16
※マーレリッシュ=「絵画的であること(ペインタリネス)」と同義の言葉。具体的には輪郭が曖昧で
開放的な形態、形態よりも色彩の力の重視、素早く、ダイナミックなタッチの多用、色むらの効果
的な利用、といった特徴を有する絵画のこと。
【抽象表現主義へ】
⇒ポロック、ホフマンが示した方向性は「抽象表現主義」への移行を示す
=開放的で絵画的な手法への移行
=西洋芸術における「線的(リニアー)」で幾何学的な抽象芸術、いわゆる「非絵画的なもの(ノン
ペインタリー)」から「絵画的なもの(ペインタリー)」への移行
【絵画的抽象の性質】
=「三次元的なものの具象」ではなく「三次元空間のイリュージョン」を含んでいる
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※「三次元空間のイリュージョン」 (モダニズムの絵画より抜粋)
“過去の巨匠たちは、人がその中へと歩いて入っていく自分自身を想像し得るような空間のイリュー
ジョンを創りだしたのだったが、一方モダニストが創りだすイリュージョンは、眼によってのみ、人がそ
の中を覗きみることができ、そこを通っていくことのできるような空間のイリュージョンなのである。”
⇔グリーンバーグ氏によると絵画的抽象は質を「高める」ためのものではなく、「維持するため」の
唯一の手段だったとしている。
●1950 年代以降
【「帰する場所なき再現性」】
⇒絵画的抽象が固定的となる。
⇔ただしそれがいえるのはデ・クーニング③による『女』(1952-1955)についてである
=このような絵画を「帰する場所なき再現性」と呼ぶ
※「帰する場所なき再現性」
⇒抽象的目的のために使用されるが、再現的な目的を示唆する絵画
=(再解釈)具体的に何を書いているかわからないが、何かが描写されているような空気を漂わ
せる絵画
⇒このような絵画の良し悪しはともかくとして、結果的にはマンネリズムに陥ることになる
【ディーベンコーン④とジャスパー・ジョーンズ⑤の出現】
=「帰する場所なき再現性」の絵画の時期における救世主的存在
<ディーベンコーン>
⇒デ・クーニングの筆致を用いつつ、実際は独自のものを制作している
=デ・クーニングの筆致にとっての「帰する場所」を見出した
<ジャスパー・ジョーンズ>
⇒帰する場所の有無に関わらず「弁証法」的に抽象表現主義が再現性に到ったことを示す作品を
制作
※ここにおける「弁証法」が示す内容とは?
=「現実に複製され得る平面的で人工的な形状を再現する」こと
=「画面の有する平面性が、実際に再現するもの全てを十分に再現している」こと
⇒しかし、彼らの絵は「帰する場所なき再現性」の最期を示しているに過ぎなかった
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2.分析的キュビズムに対する抽象表現主義の優位
●抽象表現主義の展開
総合的キュビズム(1912-14)
分析的キュビズム(1910-12)
単純化された形で対象の全体像は回復
対象が解体され、識別不能
※この変化は「後退」であるとした
⇔しかし、ポロックやデ・クーニングの絵画における分析的キュビズムとの違いは、自然界にある
モデルに支配されていないことである
⇒抽象表現主義は芸術だけを追求することで、自然の領域へと立ち返った
⇒ポロックが創り出すような漠然とした空間は、常に「抽象的」な空間として機能するわけではなく、
「イリュージョン」としても機能し得る。(彼の作品『女』シリーズは、総合的キュビズムから分析的キ
ュビズムへの真の移行を跡付けるものだった。)
●絵画的・非-絵画的なものの関係
⇒分析的キュビズムは、帰する場所なき再現性のほかに、「絵画的なもの」と「非-絵画的なもの」
の総合を具現化していた
↓
総合的キュビズムによる総合の取り消し
抽象表現主義による反発
↓
⇒1950 年直前に、絵画的なものと非-絵画的なものの新しい総合の出現
=(絵画的なものと線的なものの総合)
EX.)ゴットリーブ⑥…絵画的、非-絵画的なものの間で揺れ動きつつ、見事な作品を制作
⇔しかし、色彩に対する才能が発揮できていないのでは?
⇒ニューマン、ロスコ、スティールの登場(絵画的であることを放棄し、色彩の優位性を重視)
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3.開放性と構想―スティール、ロスコ、ニューマン
●絵画的なものの目的のひとつ「開放性(オープンネス)」
⇔しかしながら絵具をがむしゃらに用いることは、絵画の表面をぎっしり詰まったごった返し(ジャ
ングル)の中へと詰め込む。
⇒スティール⑦、ニューマン⑧、ロスコ⑨は抽象表現主義の絵具的な手法から顔を背ける
⇒彼らの芸術は、絵画的と非絵画的の間の差異を超越した
●クリフォード・スティール
モダニズムの芸術の偉大な革新者の一人であり、色彩の強調に関する主導者であり開拓者。
明暗対比反対⇒色彩には純粋な色相対比を通じて発揮される力がある
●ニューマン、ロスコ
⇒明暗対比を抑制、新しい種類の開放性(新しい発展性)に役立った
⇒絵画は色彩の区域、領域、場へと分割される
⇒それを定着する役目を担ったのがニューマンとロスコである
⇒この二人の気質は、スティールよりもずっと絵画的だという印象を与えがち
⇔しかし、直線的な形体を用いることで、自らに多量の解毒剤を処方
⇒彼らもスティールと同じく慎重に考え抜いたものを提示しようとする
⇒今や絵筆やペインティング・ナイフの素早い取り扱いから離れられなくなってしまっているマンネ
リズムを彼らが拒絶する実証?
⇒二人は触覚性と細かいドローイングを避けることで、もっと積極的な開放性と色彩のもっと鋭い
効果であると筆者に見受けられるものに到達している
●色彩とサイズ
・色彩は位置を定めて表示する役割から解放される⇒より自律的になる
・領域や面を特定したりその中を満たしたりするのではなく、形体・距離の限定を解消し、色彩自
身のために語る
・サイズは漠とした空間を示唆するために必要とされる色相の鮮明さと同じくらい、色相の純粋さ
を保証
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●スティール、ニューマン、ロスコの芸術
⇒この三人の芸術によって達成された効果は色彩の強度以上のものと筆者は考える。
=それは創造のただ中にあり、色彩を包み込んで同化
=開放性の効果
“この三人
この三人の
三人の絵画における
絵画における新
における新しい開
しい開かれた性質
かれた性質が
性質が将来の
将来の高度な
高度な絵画芸術の
絵画芸術の唯一の
唯一の道といえる”
といえる”
⇒ニューマン、ロスコ、スティールは…モダニズムの絵画の自己-批判をその元来の方向で継承
⇒そうすることによりそれを新しい方向へと変えた
【Q.】彼らの芸術において問われる問題⇒良い芸術をそれ自体として構成するものは何か?
【A.】技量でも訓練でもなく、唯一構想(コンセプション)のみ(技量[器用さ]では、もはや質を生み出
せない)
構想(
構想(インスピレーション)
インスピレーション)だけは個人
だけは個人に
個人に属する
●ニューマンの芸術
【インスピレーションの例】
⇒ニューマンの絵を真似て描くこと出来ても、着想・創案することはできない
=メディウムなどの正確な選択がその模倣の結果を左右する
⇔しかし、それの選択はインスピレーションに頼らざるを得ない
⇒ニューマンの隣に置くと大抵の現代絵画は凝りすぎたものに見える
⇒アメリカの抽象芸術の賞賛はとりわけニューマンに注がれる
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4.ネオ・ダダの否定
●アメリカの抽象芸術におけるニューマンなどへの称賛
ニューマン、ロスコ、スティール
3 人の画家からの直接的な影響は芸術の中で大きな力を発揮している。
●安全な趣味が終わるところ
【抽象表現主義の余波に関する問題の核心】
⇒安全な趣味が終わるところ
=ニューマン、ロスコ、スティールを追随する画家が抽象表現主義の変形への不満や苛立ち、ま
たは単なる失望を抱くこと。
●ネオ・ダダの否定
⇒「ネオ・ダダ」の芸術家やコラージュを手法とする芸術家は以上に述べた安全な趣味の支配を
脱していない。
(理由)=彼らは色彩やデザインに関する冒険をしてこなかった。
※しかしジャスパー・ジョーンズは例外
⇒いずれの場合も、因習的でキュビズム的なこぎれいさを有する。
=「抽象表現主義以後」という見出しのもとで議論されるに値しない。
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①ポロック(Pollock)
《青(白鯨)》(c.1943)
《熱の中の眼》(1946)
《ナンバー8》部分図(1949)
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②ホフマン(Hofmann)
《風》(c.1942)
③デ・クーニング(de Kooning)
《女と自転車》(1952-53)
《コンポジション》(1955)
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④ディーベンコーン(Diebenkorn)
《オーシャン・パーク No.49》(1972)
⑤ジョーンズ(Johns)
《旗》(1954-55)
《塗られたブロンズ》(1960)
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⑥スティール(Still)
《1948》(1948)
《1951-N》(1951)
⑦ゴットリーブ(Gottlieb)
《青》(1962)
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⑧ニューマン(Newman)
《ディオニュシオス》(1949)
⑨ロスコ(Rothko)
《No. 10》(1950)