そうだ! そうだ!海沿いに 海沿いに住 いに住もう! もう! Vol.3 湘南で何をしたいのか。家づくりはそこからはじまる 【リード】 「海の近くに住む」。誰もが夢見る暮らしをすでに実践している人々がいる。シリーズ 『海沿いに住もう!』では3回に渡って人気の湘南エリアを特集します。第3回目は葉山 に拠点に家づくりを手がけるハウスビルダー『パパスホーム』の井手しのぶさんをお訪 ねしました。人が「家を建てる」という夢を実現するとき、そのパートナーとなってくれ るのがハウスビルダー。湘南ならではのオリジナリティー溢れる住宅を世に送り出して きた井手さんの家づくりとはどんなものなのか。ご自身の暮らしぶりも交えてお聞きし ました。 【スタッフクレジット1】 聞き手 高野 裕太(スルガ銀行d-laboスタッフ) 吉里 裕也(東京R不動産ディレクター) 長崎 義紹(パラグラフ代表) 語り手 井手 しのぶ (株式会社パパスホーム代表取締役) 長崎 『海沿いに住もう!』も第3回目。今日は葉山のハウスビルダーである『パパスホーム』 の井手さんに湘南で家を建てること、それとどういうふうにしたらいい家が持てるのか、その 辺の話をざっくばらんに聞いていきたいと思います。 井手 秋谷の長崎邸も『パパスホーム』でやらせてもらいましたよね。あれはおもしろかった。 高野 おもしろかったというのは、どういう意味でですか。 長崎 もちろん図面はあるんだけど、半分は現場合わせでつくっていきましたよね。 井手 うちのやりかたは、ざくっと決めて、あとは現場のノリで建てていくんです。その間の施 主さんとのやりとりがおもしろい。 長崎 家って実際に建ててみると「ここはこうじゃないぞ」という部分が必ず出てくるから。 井手 大手メーカーだとドアの把手ひとつまで施工前に全部決めちゃって、変更すると追加費 用がかかりますよっていう話になる。でも、この仕事を20年やってきて言えるのは、絶対に途 中で変わるということ。建物ができてきてキューブで見ると「ここにこういう空間があるなら こういう照明をつけたい」といったリクエストが必ず出てくる。それをできうる限り受けてあげ て、お金をかけずに満足できる形にしていくのが自分たちの仕事だと思っているんです。 吉里 最近だとどんな物件を手がけられましたか。 井手 鎌倉の七里ケ浜で中古住宅をリノベーションしました。45坪の家をほとんどスケルトン にして、それで1300万円ほど。新築で一から建てていたら2800万か3000万くらいはかかって いたと思います。 吉里 僕らもよく扱っているんですが、やはりリノベーションは多いですか。 井手 増えてきていますね。とくに多いのは鎌倉。コストパフォーマンスを考えたら新築よりお すすめです。やっぱり基礎と柱があるだけでも全然違う。浮いたお金で家具を揃えたりもでき るし、銀行もリノベーションにはもっと目を向けてほしいですね。七里ケ浜のその住宅はスルガ 銀行さんでローンを組んでいただいたんですよ。 高野 ありがとうございます。リノベーションの物件だったら比較的若い世代の方でも求めや すいでしょうし、銀行としてもお手伝いができればいいなと考えています。 長崎 リノベーションをする人たちって、自分たちがどういう暮らしをしたいかちゃんと考えて いる人たちですよね。新築を購入する人たちは「暮らしを考える」より先に「家を買う」が先行 しちゃっていたりする。 井手 新築神話がこんなに根強いのは世界でも日本だけ。新築がいちばん値打ちがあって、 けれどその新築も10年もたったら価値がなくなってしまう。これからの時代はそうじゃなくて、 もっと家を慈しんで、楽しんで、そこに肉づけをしていかなきゃと思うんです。 長崎 うちができたときに井手さんに言われましたよね。床はなるべく素足で歩くように、そ の方がいい艶が出るからって。時間をかけないと出てこない味があるんですよね。 井手 私もみなさんに今日来ていただいた長者ケ崎のこの家を建てたばかりのときはぴか ぴか過ぎてお尻が落ち着かなかった。2年くらいたってぼろんとなってきて、ようやく落ち着い た感じでした。 吉里 東京R不動産のお客さんもぴかぴかの新しいものには興味のない方が多いですね。そ れをよしとしないというか、どっちかというとぼろっとした物件に人気が集まります。 長崎 ぴかぴかの新建材の家ってほっとくとひどいことになっていくんですよね。 井手 どんどんクロスとかはがれてきますしね。うちなんか犬が3匹に猫が2匹いるので汚れ たり傷がついたりするのは当たり前。むしろそれが家の歴史になっていくんです。 吉里 ディベロッパーさんはよく営業トークで「この床はかたいから傷がつきにくいですよ」と 言ったりするけど、自分で自分の首を締めているような気がするんです。傷がつくと価値が落 ちるという考えのせいで傷のつきにくい素材を使う。そうするとちょっとの傷でもかえって目 立ってしまって、お客さんに突っ込まれたりする。家は車じゃないのに車みたいな売り方をして いるんですよ。 図面だけじゃわからない家づくり 高野 『パパスホーム』では「家を建てたい」というお客さんが来たら、具体的にはどのように 対応されているんですか。 井手 当然のことだけど、まずは時間をかけてヒアリングをします。とくに知りたいのは、湘南 に来て何がしたいのか、どんな生活を送りたいのか、ですね。その上でお客さんに合った土地 をさがす。土地が決まったら家づくり。うちのお客さんは「階段の手摺はパリのアパート風に」 とか「直線よりも曲線を多用して」というふうにはっきりした考えを持っているし、写真なんか の資料もたくさん見せてくれる人が多いので落とし込みは割としやすいですね。 長崎 それでもやっぱり図面だけじゃわからない。 吉里 わかりませんよね。僕らだってお金をもらってプロとして仕事をしているんだけど、じゃ あ自分でやろうとしたらパッとは決められない。箱ができても、うーんどうしようかなって悩む。 やっぱりこれだろうと途中で床をはがしたりもする。 井手 プロの人でも悩むんですよね。一般のお客さんが図面だけ見てそこに何を置こうか決 めるなんて絶対に無理。うちは空間によって天井の高さを変えたりして「こもり感」を出したり、 逆に開放感を演出したりしているんですけど、そのキューブの大きさはできてみないことには 実感できないんです。 吉里 窓があってそこに椅子を置く。椅子の高さによって外の電線が邪魔になったりならなか ったりする。これはもうできてからではないとわからない。 井手 家を建てている間って、施主さんが1週間に1回くらい見に来てくださるんですよ。それ で屋根の勾配を見て「ここに収納をつくれたりしますね」なんていう話になっていく。本当は 面倒くさいんですよ。契約して図面をつくって、そのままの家を建てるんだったらうちの監督 の仕事は今の3分の1の労力で終わる。でもそのやり方はうちのやり方ではない。施主さんがあ とで後悔したり大変な思いをしないで済むようにしてあげたいんです。 高野 『パパスホーム』さんみたいなハウスビルダーに出会えた施主さんは幸せですね。 長崎 湘南のビルダーって残念ながら東京じゃ無名なんですよ。僕もこっちに家を建てた 友人にどこかいいところはないかって聞いて紹介してもらったのが井手さんでした。 「ただ 大雑把だよ」って言われたけれど、その大雑把が逆に家づくりにおいてはいい形で作用し ましたね(笑)。 家は慈しんで育ててゆくもの 井手 湘南に暮らすって、糊代の部分がある人じゃないと駄目ですよね。忙しくて生活がギリ ギリで通勤は30分以内じゃないと無理という人が湘南に来ても楽しめない。東京みたいにコン ビニエンスな場所じゃないし、便利がすべてじゃないぞというところを楽しめる人でないと。 この家なんか台風の日は風がすごいし、夜なんか真っ暗でまわりに何もない。潮風で手摺が錆 びたりもする。裏はタヌキが出るような山です。 吉里 そのかわり眺めはすばらしいですね。海がバーンとあって正面には江の島と富士山が。 井手 夕日がすごいきれいなんです。シャンパンを飲みながら夕日を見るのは最高です。江の 島や鎌倉の花火大会もここから一望です。私は以前は鵠沼に住んでいたんですけど、ずっと葉 山に住みたいと思っていたんですよ。この家は5年くらいかけて見つけた物件です。 高野 強いて不満をあげるとしたら何でしょう。 井手 夜遊びができないことですね。逗子も葉山も遅くまでやっている店がない。鎌倉にして も9時過ぎると閉まっちゃう。これがネックですね。 長崎 僕も夜10時に東京から帰って来て、それから飲める店があったら完璧に移住しちゃんで すけどね。残念ながらそういうお店がない。 吉里 理想的なのは、家に一度帰って風呂に入って、家族で夕食を食べて、それから一杯飲み に行くといった生活ですね。 井手 なんか違う空間で自分をリセットしたいという気持ちはありますね。これって男性的な 発想かもしれないけれど。要するに何かを求めるには何かを我慢しないといけないということ なんですよね。捨てる覚悟がないと湘南には住めない。 長崎 何かを得るかわりに何かを捨てる、というのは湘南移住の一貫したテーマですね。フル スペックを求めてはいけないということ。いろんなものの基準とルールが東京とは違うんです よね。そこを誤解して東京と同じものを望んで来るなら来ない方がいい。海のそばって素敵な イメージがあるけれど、その「素敵」の裏には落とし穴がある。 井手 物が錆びたり、植物が枯れたりね(笑)。 高野 最後に、湘南で家を持つとしたら家自体に対してはどんな気持ちで臨めばいいですか。 井手 さっきも言ったけど、家を慈しんで育ててゆく、そういう気持ちが大事です。家具も全部 一気にではなく、時間をかけて揃えていく方がたぶんいい感じになるんじゃないかな。 【Information1】 パパスホーム 新築からリノベーション、店舗開発、外構工事まで、湘南をステージに家づくりを手がけ るハウスビルダー。ヒアリングから設計、建材選び、施工に至るまで施主とのコミュニ ケーションを大切にした家づくりは地元でも評判。 公式サイト http://www.papas-home.co.jp/ 【Information2】 スーパーホームローンワイド 本文中でも述べたように、湘南エリアにネットワークを持っているのがスルガ銀行。『スー パーホームローンワイド』はご融資金額最大3億円。新築や新規購入の他、リフォームや 住み替えなどにもご利用いただけます。保証料は不要で最長1年間は利息のみの支払 いもOK。「湘南に住みたい!」という皆さんの夢をサポートいたします。 詳しくはこちらから。 http://www.d-laboweb.jp/service/home_super.html 文 中野渡淳一 写真 長尾真志
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