自分の思いを表現できる子をめざして

自分の思いを表現できる子をめざして
~個に応じたコミュニケーション能力の育成~
大垣市立安井小学校 教諭
堀田 紀子
概要
本研究は、特別支援学級の特定の児童に焦点をあて、コミュニケーション能力の育成について実践し
たものである。障がいのある児童の教育にあたっては、児童理解に基づいた指導が大原則である。まず、
児童はどのような状態にあるのか、どのような指導を必要としているのかを把握するために、多面的な
情報収集と分析をおこなった。その上で、コミュニケーション能力育成のための指導の要素を、①体験
活動を取り入れること、②社会性を育てること、③言語に関する学習指導の3つであると捕らえ、これ
らの要素を意識して指導方法や学習の場を工夫することで、児童の言語発達を促していきたいと考え
た。そこで、体験活動を取り入れ経験を増やすために運動や遊びを導入した。社会性を育てるためには、
日常生活の指導の中に話し合いやスピーチなどの言語活動を設けたり、先生方や交流学級児童とふれあ
う学習の場を設けたりした。言語に関する学習指導では日記指導や、語彙を増やし文法の理解を深める
個別指導を児童の実態に合わせて段階的に工夫した。
1.主題設定の理由
1
(1) A児の実態から
(第1章4の2(1))
本校は特別支援学級(知的)「ふれあい学級」
児童の言語環境の整備と言語活動の充実
(1)各教科等の指導に当たっては、児童の思考力、判断力、表
に6名の児童が在籍する。その中の現在2年生に
現力等をはぐくむ視点から、基礎的・基本的な知識及び技能の
なるA児は、自己表現が乏しく、発語が少ない。
活用を図る学習活動を重視するとともに、言語に対する関心や
また、こちらからの問いかけに答えることや、活
理解を深め、言語に関する能力の育成を図る上で必要な言語環
動後の記録や観察記録などを書いて表現すること
境を整え、児童の言語活動を充実すること。
が難しい。
特別支援教育においても、言語環境を整え、教
「困っているから助けてほしい、体調が悪い、
科や日常生活において言語活動を充実させる指導
こうしたい」など、自分が今どのような状況にあ
の必要があると考え、この主題を設定した。
るのかを相手に伝えることは、将来子どもたちが
2.研究仮説
社会に出たときにも必要とされる力である。また、
細かな日常観察や多方面からの情報収集を行う
自分の思いを話したり人と会話したりすることで、 ことにより、児童の実態を的確に把握することが
対人関係も豊かになり、生活の質も向上すると思
できるであろう。把握した児童の実態から必要と
われる。
される指導の方向を見出し、指導事項や方法・学
そこで、A児に焦点を当て、個の課題を明確に
習環境を工夫することにより、児童のコミュニケ
して言語表現の力を育成することに重点を置いた。 ーション能力が育つであろう。
(2) 学習指導要領から
3.研究内容
学習指導要領第1章総則において実施上の配慮
A児のコミュニケーション能力を育成するため
事項が示されているが、
そのひとつに下記があり、
にはまず、A児の言語能力がどのくらいで、どこ
今回の改訂において、言語に関する能力の育成を
に困難さがあるのか、実態を把握することが大切
重視し、各教科等において言語活動を充実するこ
である。さらに実態から指導の方向を見出し、A
ととしている。
児に合った指導方法や学習環境の工夫をしていき
たいと考え、研究内容を次の2つとした。
1
1.A児の言語能力に関する的確な実態把握
った。「ロッカー」「廊下」など日常的に用いる
(1)日常観察
言葉の理解が難しい場面が多々あった。
6月になり、校外学習に出かけた際に一緒に遊
(2)国語科の学習の様子
(3)家庭での様子の聞き取り等
んだことをきっかけにして、学級の新1年生児童
(4)客観的捉えのための個別検査の実施
とも仲良くなると、休み時間に一緒に遊んだり、
(5)実態の把握から見出した指導の方向
給食を食べながら笑みを交わしたりする姿が見ら
2.言語に関する能力の育成を図るための指導方
れるようになった。
授業中は自信がないのか、聞かれたことにはっ
法や学習環境の工夫
(A児の実態や学習状況に応じたきめ細かな指導
きりと答えることができない。特に算数はつまず
の充実)
きが多く本人も苦手意識があり、答えがわかって
(1)個別の教育支援計画・個別の指導計画を作
いるようでも自信がなく答えられないことが多い。
授業中の発言はほとんどないが、休み時間には
成する
発語が多少みられる。「消しゴムを手から離して
(2)運動機能を高めることにより言語の発達を
ください」という指示よりも「消しゴム、ぱっぽ
促す
して」という幼児語での指示の方が理解しやすい。
(3)日常の指導で意図的に会話の機会をもつこ
(2)国語科の学習の様子
とによって聞く・話す力を育てる
(4)国語科の意図的な個別指導で語彙を増やす
ひらがな、かたかな、該当学年で習う漢字はす
(5)体験活動と言葉を結びつけることによって
べて覚え、書くことも読むこともできる。しかし、
漢字の正しい用法については理解が難しく、習っ
表出言語を増やす
た漢字を使おうとして当て字になることがある。
(6)意図的に場面を設定することにより、発語
また、音読は正確にできても文の内容を読み取
や会話の機会を増やす
4.研究実践
って理解することは難しい。絵本の読み聞かせも、
1.A児の言語能力に関する的確な実態把握
言葉遊びのような短いものなら楽しんで聞くこと
(1) 日常観察
ができるが、長い話になると内容が理解できてい
<1年時>
ないようで反応がなく聞くことに集中できない。
昨年度入学してきたA児はとにかくおとなしい
文章を作ることにおいても、語彙が少ないため
子という印象であった。発語は少なく、こちらか
か、何をどう書くのかを自分で考えることは難し
ら何かを尋ねても押し黙ることが多く、かすかに
い。特に、助詞を正しく用いることが難しい。語
首を振って反応することが精一杯という様子であ
彙の覚え間違い、聞き間違いがある。(「さかだ
った。
ち→さからち、はらっぱ→はだっぱ、おにぎり→
おにぎに」などの間違い)
表情も硬く、休み時間も一人遊びが多い。同じ
(3)保護者からの聞き取りによる家庭の様子
保育園からふれあい学級に入学したB児には、多
少心を開いている様子で、ときどきにっこり笑い
家庭においては、家族と話し、聞かれたことに
かけていることはある。学級の他の児童に積極的
も答える。「Aちゃんが。(じぶんでやる)」「A
に話をしたり働きかけたりすることは少ない。
ちゃんも。(したい)」「堀田先生、電話。(先
<2年時>
生に電話してお話ししたい)」「先生、上手ね。
(学校で先生にほめられた)」など単語での会話
学校では発語が少なく言葉での意思表示がほと
であるが、意志を表すことはできる。
んどないが、家庭ではよく話すとのこと。学校で
はなぜ話さないのか、学校でも比較的よく話す場
数ヶ月毎に通院している病院では、話したり医
面はどのような時であるのかを細かく観察した。
師の問いかけに答えたりすることはなく、代わり
に母親や、兄が説明する。
2年生に進級した当初は、教室も前年度と場所
学校生活はA児なりに楽しんでいる様子で、毎
が変わり、新しい環境に慣れることに時間がかか
2
朝進んで家を出る。
の差は13)、文の構成(評価点1以下、平均
家庭で話すことができて、学校では話さなくな
値との差は16)【資料2:ITPA検査結果】
~分析~
る、その要因は何であろうか。2年生の夏休みに
家庭での様子を保護者にビデオ録画してもらい、
下位検査のうち評価点平均値を大幅に下回った
分析することにした。兄弟や従兄弟らと遊ぶ様子
検査は「ことばの類推」「文の構成」である。
を見ると、単語での表現が多いが意思表示もし、
ともに、聴覚刺激から入った情報を内的操作し
会話もしている。表情も明るく心も解放された様
て音声反応として表出する能力であることから、
子である。慣れた人たちとの、大好きなゲームや
A児にとっては聴覚刺激を用いての指導支援よ
遊びの場面では発語が多いことがわかる。【資料
り、視覚刺激を用いての指導支援の方がより効
1:家庭でのA児の様子】この様にA児が生き生きと
果が得られると解釈できると思われる。
自然に会話できる姿が、学校でも見られたらよい
(5)実態の捉えから見出した指導の方向
検査の結果と日常観察や保護者から聞き取った
のにと切に願う。
家庭での様子などを言語発達の表に照らし合わせ
(4)客観的な捉えのための個別検査の実施
ると、A児の段階は2歳後半~3歳くらいであると
A児の通院する病院において、母親の希望によ
り1年生の時WISCⅢを実施したところ、結果
考えられる。
は測定不能であった。検査者との会話が成り立た
なかったためであろうか。慣れない病院ではなく、
語彙数
2歳
2歳半
3歳
50~250
400~
800~
500
1000
日常接している担任が行うのであれば、A児に個
別の検査をしても結果が出るかもしれないと考え、
品詞
保護者の了承を得て個別の検査を実施することに
名詞、動詞、形
名詞、動詞、 代名詞(あんた、お
容詞
代名詞(ボ
した。A児のコミュニケーション能力を理解する
前、ぼくの)形容詞、
ク、ワタシ) 助詞(不十分)
一助となればと思い、2年時に、言語能力に関す
文の長さ
2語文
る下記の2つの検査を実施した。
伝達の特
単語、句、簡単
『絵画語彙テスト』
徴
な文章
言語の中でも特に基本的な「語彙の理解力」の
話しこと
ボクのワタシの
やったことを知らせ
発達を測定するための検査である。検査において
ばの内容
という所有の表
る。姓名を完全に言
は言語表出も要求しないので、発語の少ないA児
と型
示。語彙や文法
う。男か女かを言う。
の力が乏しい。
できごとを話す。
75~90%
にも施行しやすいのではないかと考え、この検査
3語文
4語文
句、文が長くなる
を採用した。
会話明瞭
60~75%(構
~結果~
度
音が未熟)
・評価点1
文部省発行 「言語障害教育の手引き:年齢段階別話しことばと
・語彙年齢3歳10ヶ月
言語の発達」より抜粋
『言語学習能力診断検査ITPA』
2~3歳の発達段階は、母親や周囲の人との関
子どもの知的活動のうちコミュニケーション過
わり、模倣や遊びの中で言語を獲得していく時期
程という側面から、個人内差を測定することを目
である。このことからA児は、社会性(情緒)の
指す検査である。A児の言語発達について詳しく
発達と、模倣や遊びを通した具体的経験により、
知る手がかりとなると考え、この検査を採用した。
言語を獲得し表出させていく段階にあると考える。
~結果~
そこで、A児のコミュニケーション能力の育成
・全検査言語学習年齢3歳10ヶ月
を図る指導の要素を(A)体験活動を取り入れて
・評価点平均値16
具体的経験を増やすこと、(B)社会性を育てる
・10の下位検査のうち評価点平均値との差が著
こと、(C)言語に関する学習指導の3つである
しいもの:ことばの類推(評価点3、平均値と
と捉えて指導にあたることにした。
3
この3要素を図で表したものが下記である。
足首、つま先などの体の部分を尋ねると指差すこ
とは難しかった。身体概念が形成されていない状
コミュニケーション能力の育成のための 3 要素
態では、外界からの情報を受容することや、動作
を言葉にして表現することも難しいと思われる。
(B)社会性
言語の発達
身体運動のうち、まずは、粗大運動を取り入れ
他者との関わ
た活動を仕組むことで、運動能力と共に身体概念
を向上させたいと考えた。
・リズムランニング
(C)学習
(A)体験活動
国語科や日常生活
運動・遊び・活動経験
での言語に関わる
朝活動の学級裁量の時間を活用して「リズムラ
ンニング」
(旧東濃養護学校作成)を行った。これ
は、CDの指示と曲に合わせて様々な運動を15
指導
分程度行うものである。【資料5:リズムランニング】
A児は、ITPAの結果から視覚情報の受容が
2.言語に関する能力の育成を図るための指導方
優位と思われるので、リズムランニングを導入す
法や学習環境の工夫
るにあたって、絵と言葉で運動内容を示すカード
(A児の実態や学習状況に応じたきめ細かな指導
を作成し、始めの3、4回は黒板に貼って、A児
の充実)
が見ながら行えるようにした。慣れてくるとカー
(1) 個別の教育支援計画、個別の指導計画を作
ドは外し、CDから聞こえてくる言葉の指示(「次
は、カニさん歩きをしましょ
成する
う」等)に従って聴覚情報で
個別の教育支援計画、個別の指導計画に体験活
動く練習をした。
動を取り入れて具体的経験を増やすこと、社会性
を育てること、言語に関する学習指導の3つの要
1年時は、スキップのよう
素を位置付けて作成した。また、教科の指導計画
なリズミカルな運動が難しか
には、年間を通して書くことの指導や語彙を増や
ったが2年時にはできるようになってきた。また、
す学習を位置付けた。さらに、生活単元学習の指
片足けんけんも長続きせず、すぐに両足をついて
導計画には社会性を育てることや体験活動を取り
しまっていたが、2年2学期には15回以上続く
入れることを意図して作成した。【資料3:個別の
ほど長くできるようになった。
朝活動で「リズムランニング」を行った後は、
教育支援計画・個別の指導計画、教科等の指導計画】
頭も体もすっきりして、1時間目の授業にもすぐ
(2)運動機能を高めることにより言語の発達を
促す
に集中できた。
指導の要素(A体験活動)
(3)日常の指導で意図的に会話の機会をもつこ
「子どもの運動・感覚機能は認知能力や言語能
力の発達の基礎となる能力である」と言われてい
とによって聞く・話す力を育てる
る。
(参考文献※1)3歳児程度の発達段階にある
指導の要素(B社会性)(C学習)
①交流学習の報告をすることによって話す力を
A児にとってはまさしくそれは当てはまるであろ
育てる
う。入学当初A児は姿勢保持が困難で、椅子に座
る姿勢について何度も注意を促した。手指の巧緻
ねらい:交流学習でしてきたことを担任に話すこ
性も未発達な部分が多く、紐結びなどの細かい作
とができる。
児童が交流学習から戻ってきたときに、交流学
業が困難で、
文字は書けるが筆圧の調整が難しい。
また、身体概念の形成にも遅れが見られ、A児の
級でどのような活動を行ってきたのかを担任に報
描く絵は、顔から手が出ており、足が描かれてい
告するようにした。児童が自分の言葉で話す機会
なかった。【資料4:A児の絵画】ボディタッチでは
をもつことで、言語表現の力を育てたいと考えた。
目や口など顔の部分は指差しできるが、肘、膝、
A児にはまず、一緒に交流学習に行っているB
4
児の言葉をまねさせることから始めた。次に、A
で決めている。
児の話したいことを聞き出し、それをどのように
今年度は、意見を発表するとき、なぜそのめあ
言葉にしたらよいのか話し方を教えた。段階を追
てにするとよいと思うのか、根拠を話すようにし
って指導した結果、交流学級で活動してきたこと
た。
『~がいいと思います。わけは~だからです。』
とその感想を自分で話すことができるようになっ
という話型を提示して指導した。
た。【資料6:交流学習の報告】
必ず全員が意見を出すこととしたので、A児も
②朝の会の健康観察で自分の状態を表現する力
みんなが話すのをまねて、わけを話した。まねる
を育てる
段階から、パターンを覚えてそこから引き出して
ねらい:体調を表す言葉があることを知り、自分
くる段階へ、さらに、自分で考えて話す段階へと
の状態に応じた表現をすることができる。
A児の変容が見られた。また、委員会から呼びか
健康観察では「○○さん、元気ですか」と係の
けられているめあてや、その日の学習内容に即し
児童が尋ね「はい、元気です」と答えるのが定番
た意見を言うことができるようになった。A児の
のようになっていた。その日の気分や体調を表現
発言が学級の児童に影響を及ぼしたり、A児が学
する方法もあることを教えたいと思い、体調カー
級の児童の意見をよく聞いて自分の意見を再度見
ドを用いての健康観察を行った。『元気・お腹が
直したりするまでに成長した。昨年度はそれぞれ
すいた・咳が出る・疲れた・
がめあてを提案するだけであったが、今年度は話
眠い』など、主要な表現を
し合って一つのめあてを作り上げていくこともで
示した体調カードを児童一
きるようになりつつあり、6 人の学級集団として
人一人に持たせ、児童が返
の高まりも見られるようになった【資料8:めあて
事をするときに同時にそれ
決めの記録】
を黒板に貼るようにした。【資料7:健康観察の様子】
④朝の会、帰りの会で一人一人が話す場面を設け
ることによって話す力を育てる
A児の体調は安定しており、いつも元気に登校
してくるが、風邪をひいたときには『咳が出る』
ねらい:他の児童の前で話すことで、相手を意
カードを用いたり、他の児童が「歩いてきて疲れ
識して話すことができる。
ました」と『疲れた』カードを使うのを見て、自
質問に答えることができる。
ア)日直のスピーチ
分も「歩いて疲れました」と言って『疲れた』カ
日直になった児童が、朝の会でスピーチをし、
ードを用いたりすることもできるようになった。
他の児童が質問をする活動である。
時には、「朝ごはんを食べてきたけど、もうお腹
がすきました」という子のまねをして「食べたけ
1年生の1学期、スピーチはA児にとってはと
どお腹がすきました」と『お腹がすいた』カード
ても難しいことであった。そこで、A児に日直が
を用いることもあった。「元気」だけでない自分
回る際には事前に家庭に連絡し、何について話す
の状態を表す表現もあることを学ぶことができた。 のか話し合ってもらうか、あるいは、家庭で何を
したのかを連絡帳に書いてもらうことにした。担
③今日のめあてを全員で決めることによって聞
任が連絡帳を見て、A児の言葉になおして、一語
く・話す力を育てる
一語、口伝えでスピーチするようにした。
ねらい:生活のめあてを決めるときに、訳も話す
2年生になると、朝ご飯の話は文法の間違いは
ことができる。
友達の意見と同じか違うかを考えながら聞くこ
多少あるものの自分で考えてできるようになった。
とができる。
A:「朝のご飯のことを話します。パンでした。
牛乳でした。おいしかったです」
毎日の朝の会で、学級児童がその日留意して生
活すべき「めあて」を決めている。「トイレのス
2学期の半ばになると、スピ
リッパをそろえよう」「廊下を歩こう」「配膳を
ーチの話題が朝ご飯の話だけで
早くしよう」など、一人一人が意見を出し多数決
なく、家庭で経験したことにも
5
広がってきた。【資料9:スピーチの記録】
態度が非常に気になった。担任が一文ずつ「~を
イ)帰りの会での振り返り
~しました。と書こうか」と助言すれば書くこと
昨年度は帰りの会での振り返りで「よいこと見
ができるが、自分から取り組むことが難しいので
つけ」をしてきた。しかし、人のよさを見つける
ある。
ということは難しく、ある程度社会性の育ってい
このことから、A児には文章を作ることに関し
る児童にしか話すことができなかった。担任が、
て丁寧に指導する必要があると感じた。
そこで
「学
「Aさん、□□さんから消しゴムをかしてもらっ
校で経験したことをお母さんに知らせようね」と
たでしょう、その事をお話しして」などと提示し
目的を持たせ、『ママ日記』とA児に親しみやす
なくては話すことができず、A児が自分で考えて
い名前を付けて学校で日記を書くことにした。そ
話すことは難しかった。
の際、短期目標カードを用い、めざす児童の姿と
また、A児は、日記を書くときも、交流学習の
手だてを明確にして取り組んだ。【資料12:短期
報告の際にも、必ず「楽しかったです」で締めく
目標カード「ママ日記」】
はじめは、宿題でしていた方法を変えないよう
くるので、「楽しい」以外の気持ちの表現もある
にして、何について書きたいかを尋ね、文を教え
ことを学ばせたいと思った。
上記の2点から、帰りの会の振り返りに「今日
た。学校で日記を書くことに慣れてくると、支援
がんばったこと」と「残念だったこと」(残念と
は題を確認するだけにとどめ、時間がかかっても
いう言葉が理解しづらいA児には「嫌だったこと」
自分で書くように促した。また、文や単語の間違
とした)を一人一人が話す機会を設けた。
い、助詞の間違いがあっても、書いている途中に
A:「今日、給食を全部食べれました。嫌だった
直させることはやめて、まず、自分で書くことが
ことは、算数で、あめが難しかったです」
できたことをほめるようにした。表記に間違いが
T:「お買い物ごっこで、あめを買うことが難し
あった場合には『ことばのべんきょう』として、
かったね。でも、Aさん、よく考えて足し算がで
正しい語句や文章を練習するコーナーを設けた。
きたね。明日も、がんばろうね」
【資料11:ママ日記(ことばのべんきょう)】本人が
書いたものを赤で消すと、否定された感情が残り、
一日の終わりに負の感情
書くことへの意欲をそぐと考えたからである。
について話させても、担任
からのコメントで、必ず明
自分で書けたときに、ほめてもらえるのがうれ
日への意欲をもたせて終わ
しいのか、6月末ごろからは自分で書くことが出
るようにした。
来るようになった。徐々に、A児が書くことので
(4)国語科の意図的な個別指導で語彙を増やす
きる文章が増え、11月には3文程度の内容から、
4文、5文と書くことができるようになってきた。
指導の要素(C学習)
また、母親に日記を読んだ後にコメントを書い
①ママ日記
1年生の10月から日記を家庭学習でしてくる
ていただくようお願いした。A児にとっては母親
ように指示した。2年生になり、毎日1ページ程
からのコメントがうれしくもあり、母親は「ママ
度書いてくるが、学校での観察記録や学習記録な
日記」の内容を手がかりにA児に学校での出来事
どは、自分で書くことが難しい。【資料 10:家庭で
を尋ね、
家庭でのA児との会話の時間を楽しんだ。
書いた日記と学校で書いた活動記録カード】
また、夏休みには1学期学校でしていたとおりに、
保護者に連絡をとり、どのように日記を書いて
まずA児に書かせ、その後で間違いを直す、とい
いるか尋ねた。「A児と一緒に題を決め、『じゃ
う方法を取り入れて毎日日記を書かせた。このよ
あ、○○しました。と書こうか』と文章を教えな
うな家庭の協力もあり、A児は意欲をもって日記
がら進めてきた。5月ごろからは少し自分で書く
を書くことに取り組むことができた。
ことができるようになった」(母親の話より)
②語彙を増やす指導
A児は、ママ日記を書く際や、交流学習の後の
学校では、文章を書くときのA児の受け身的な
6
報告の際、1学期は「楽しかったです」で必ず締
たカードと感情を記したカードを組み合わせて文
めくくり、2学期は「楽しかった」に代わる言葉
を作る学習を行った。ゲームを通して、感情表現
「うれしかったです」
を覚え、
そればかり使った。
の言葉を習得することをねらいとして取り組んだ。
気持ちや様子を表す形容詞への理解を深めたいと
指導の方法は以下の通りである。
思い、次の2つの取り組みをした。
1. 具体的場面を提示する。
ねらい:お話の登場人物の気持ちや、具体的場
2.感情カードを数枚提示し、その中から児童が
具体的場面にあった感情を選ぶ。
面での気持ちや様子を表す言葉について学ぶこ
とで、表現の幅を広げることができる。
※Ⅰ・Ⅱ2つのタイプの教材を作成し活用した。
ア)紙芝居カルタで気もちや様子を表現す言葉に
『かなしい・こわい・くやしい・きもちがいい』
ついて学ぶ
などの様々な感情表現について学んだ。また、具
2年生の国語(上)の教科書の巻末に「思った
体的場面は一つでも、いくつも当てはまる言い方
ことやかんじたことをあらわす言葉」について学
があることにも触れさせた。さらに、感情カード
習するページがある。そこには、様々な形容詞が
の選択肢を「楽しい」と「うれしい」の二つに絞
書かれてあるが、A児にとってはどんなときにど
り、この場面にはどちらがふさわしいのかを考え
の言葉を使うのかを考えることは難しい。その言
させる時間も設けた。【資料14:感情あてクイズ】
葉はどのような状況で用いるのか、具体的な例や
③文法の指導
ITPAの結果からA児は文の構成(文法)に
絵があれば理解しやすいのではないかと考えた。
ついての習得が遅れていることが明らかになった。
そこで、『紙芝居カルタ』を活用して、登場人
物の気持ちやそのときの様子を表す言葉を考える
また、視覚刺激の受容の方が優位と思われるため、
学習を行うことにした。『紙芝居カルタ』は、複
(前述、研究実践1-(4)より)単語の意味を
数の昔話がカルタになったものであり、絵札が紙
絵で示し、文の構成が視覚的に学べる、文作りカ
芝居になっている。国語や生活科の学習で学級児
ードを作成して指導した。
童と何回もこのカルタで遊んだことがあり、A児
ねらい:カードを並べることを通して、文の構
にとって親しみ深いものである。しかし、A児は
成や助詞の使い方を理解することができる。
話の内容をつかむことが難しいので(前述、研究
児童に身近な人物の顔写真と名前を記したカー
実践1-(2)読み聞かせの場面より)同じカル
ド、は
タを家庭でも活用し、紙芝居を保護者が読み聞か
カード、場所の写真と名前を記したカード、はし
せたりA児が音読したりすることと、カルタで遊
る
ぶことをお願いした。
ード、色を表した絵カード等を数枚用意した。
『紙芝居カルタ』を用いての指導の方法は下記
を
およぐ
が
で
うたう
へ
に
のなどの助詞の
などの動作を記した絵カ
文を作る指導
の通りである。
①誰が何をする、誰がどこで何をする、など主語・
1, 絵札の紙芝居を教師が読み聞かせる。
修飾語・述語の整った文になるようにカードを並
2, 一場面毎に人物の気持ちや様子を考える
べる。
(国語の教科書巻末の形容詞を手がかりにする)
※ A児一人ではなかなか文章を作るのが難しかっ
3, 絵札をコピーしたものをノートに貼り、その
たので、1 年生の時には学級で行った。児童が順
下に気持ちや様子を表す言葉を書く。
番にカードを並べて文を作り、一人が作った文
【資料13:紙芝居カルタを用いての学習ノート】
を他の児童みんながノートに書く、という方法
イ)クイズで感情や様子を表
で文つくりゲームを行った。
す言葉の表現について知る
※ 2 年生になると、国語の教科書の「かん字のひろ
「~は(具体的場面)、~
ば」という小単元で、習った漢字を使って文を
だ(感情)」の文が正しくな
作る際にも活用した。
るように、具体的場面を記し
7
助詞の用法についての指導
貼るようにし、下段を
①「どこで何をするのかな」
作文用紙にした。ます
文作りカードを用いた、動作をするのはどこかを答えるクイズ
目の大きさや文字数に
例:
よって 5 種類の用紙を
手を洗うのはプール
教室
手洗い場のどれかな?
作り、児童はその中から選んで記事を書く。
手洗い場を選び、手洗い場で手を洗う。の文をノートに書く。
この題材でも写真を用いて、画像を見ることに
②「誰のかな」
学級の児童の持ち物を見せ、OOさんの~、とノートに書く。
よってそのときの様子や出来事を想起できるよう
③「何色のかな」
にし、伝えたいことを明確にもてるようにしてい
文房具をいくつか見せ、~色の~、とノートに書く。
る。また、それぞれの実態に応じて身
④「いつに何をしたかな」
につけたい言語事項や表現方法を意図
その日の活動を思い起こし、いつに何をした。の文を書く。
的に指導している。児童にも意識でき
言葉の意味や文の構成を視覚的に捉え、カード
るように、各自の学習のめあてとして
を並べる作業を通して、文を作ることや助詞の用
ミニホワイトボードに明記し、机上に
法について学ぶことができた。
置いて取り組んでいる。
この場合も「ママ日記」と同じく、まずA児が
【資料15:文作りカードを用いての指導】
一人で書くようにし、その後間違いがあれば指導
(5)体験活動と言葉を結びつけることによって
して別の用紙に清書するという方法をとった。
表出言語を増やす
A児は2年生の12月には、教師の手助けなし
指導の要素(A体験活動)(C学習)
語彙が少なくあまり話さないA児にとって、活
に、記事を書くことができるようになった。その
動したことや体験したことをことばで表現すこと
ことはA児自身も喜びと感じており、帰りの会の
は、動作とことばの意味を繋ぎ、より具体的に言
振り返りのとき、「がんばったことは、ニュース
語を理解することにつながると考え、次のような
を一人で書けました(書けたことです)」と話し
学習の場を設けた。
ていた。
ねらい:活動記録を書くことにより、経験を表
【資料16:今月のニュースの指導案とA児の作品】
記する語彙を増やすことができる。
③わくわく作文
「今月のニュース」は月末にその月にあった出
①生活単元学習の活動記録
来事の中から記事にしたいものを選んで書くので、
1 年生の時は、活動記録を書くときに教師が文
を提示していたが、2 年生では自分で記述するこ
活動と文章作成までに時間が経っている。
すると、
とに重点をおいて取り組んだ。その際、活動の写
細かな部分などは忘れてしまっていることもあっ
真をデジタルカメラで撮影
た。そこで、「わくわく作文」として、活動後間
しておき、画像を見せるこ
とで活動を想起させたり、
デジカメの画像を見
もない時期に、活動したことを記述する学習を設
ながら活動記録を書
けた。2 年生の国語(下)の教科書に「おもちゃ
ことばを当てはめたりして
の作り方」という作文教材があるので、その発展
文を作る手がかりとした。
として取り組んだ。
題材は、手順がはっきりしており、したことの
②今月のニュース
普段の教科指導は個の発達に合わせた学習内容
順に文章に表しやすい生活単元学習の調理活動と
で、個別に取り組むことが多い。しかし、6人の
した。あらかじめ、活動の際に手順ごとに写真を
児童が共通のテーマで個別の目標にむかって一緒
撮影しておき、それを見ながら活動したことの順
に学習する機会も意図的に設けている。
に文章に表現していくようにした。その際「はじ
めに」「つぎに」「それから」などの順序を表す
「今月のニュース」という題材を設定し、年間
ことばを用いることとした。
を通して、毎月心に残った出来事を書き残す学習
この学習は学級児童全員で行ったので、他の子
活動をしている。記事を書く用紙の上段は写真を
8
が「~したよね」など
どの先生に誰が渡すかを 6 人の児童で分担した。
と話すのを聞きながら、
「交流の担任の先生だから」「委員会の先生だか
A児も作文を完成させ
ら」など、みなそれぞれにつながりのある先生に
ることができた。
渡したいと分担する中、A児は「お兄ちゃんの先
おもちゃの作り方・味噌汁の作り方・サツマイ
生だから」と兄の担任の先生に渡すことを引き受
モ蒸しパンの作り方と3つの題材で作文を書いた。 けた。
自分から挙手し、
意思表示できたのである。
3つめの蒸しパンの作り方では、蒸しパン作りの
A児は「僕たちが作ったサツマイモのおかしで
作業を2回行ったということもあり、A児一人で
す、食べてください」と事前に何度も練習して、
書くことが可能であろうと考え、他の児童とは別
先生方に渡すことができた。交流学級担任のとこ
に作文を書く時間を設けてみたが、A児一人で書
ろへは付き添いなしで行き、用件を話してくるこ
くことは難しかった。そこで、他の 6 人と共に学
とができた。このことは、本人にとっても大きな
習する機会を設けたところ、他の児童と競い合う
自信につながった。
ようにして文章を作ろうとしていた。【資料17:
上記2つの実践では決められた台詞を自分から
わくわく作文のコピー】
話すことができた。それ以外のことを相手の先生
(6)意図的に場面を設定することにより、発語
から尋ねられると、
答えることはまだ難しかった。
や会話の機会を増やす
ウ)ふれあいおもちゃ広場
①生活単元学習で先生方や交流学級児童と交流
1、2年生の生活科で手作りおもちゃを作って
することによって会話の機会を持つ
保育園の子を招待する単元がある。この経験をも
指導の要素(B社会性)
とに、ふれあい学級でも一人一人がおもちゃを作
ねらい:周囲の人と関わりをもつ設定された場
って「ふれあいおもちゃ広場」を開き、保護者や
面において、定型的な会話ができる。
交流学級の児童を招待した。
障がいのある児童にとって、繰り返し行うこと
ア)先生と仲よし
毎年 1 学期には校内の先生方の顔と名前を覚え
によってその経験が蓄積され、自信をもって行え
るために、先生方に自己紹介してくる単元を設け
るようになると考え、招待する回数が複数になる
ている。先生方に学級の児童を知っていただく目
【資料19:ふれあい
よう単元指導計画を工夫した。
的もあってこの単元を設けた。あらかじめ先生方
おもちゃ広場】
交流学級の児童を招待した
には趣旨を伝え、名刺を書いていただくよう依頼
際には、4日間に分けて学級
した。【資料18:先生となかよし】
の児童全員を招待した。A児
全部で40名ほどの先生方の所へ伺い自己紹介
し名刺を交換した。A児も
はボウリングのコーナーを担
緊張したようすではあった
当した。お客さんがきたら「2回投げられます」
が、回を重ねる度に自分の
と言い、1回投げたら「もう一回投げてください」
名前と好きな食べ物を自信
と、ボールを拾って渡し、1投目と2投目で倒れ
をもって話すことができる
たピンの数を数え「○本です」と言い、景品の入
ようになった。
った箱を出し「一つあげます」と言う。1日目は、
イ)先生方に蒸しパンをプレゼントしよう
担任がついて言葉を教えたが、その後はA児に任
2 年生の 2 学期には、学級菜園で栽培したサツ
せてみた。自分で考えて小さい声ではあったが決
マイモを用いて、蒸しパンを作って先生方一人一
まった台詞を話すことができた。4日目には、み
人にプレゼントするという活動を設けた。これま
んなが教室に戻るときに「バイバーイ、また来て
でも、調理活動をしたときにはできたものを校長
ね」と自分から大きな声で言うことができた。こ
先生や職員室の先生方にプレゼントしてきたが、
れはあらかじめ指導した定型語句ではなく、A児
全校の先生方に渡すのははじめてである。
まずは、
自身の心からの言葉である。
9
②遊びの場を設定することによって発語を増や
あった。
す
5.成果と課題
指導の要素(A体験活動)
研究実践1-(3)家庭の様子より、A児がリ
<A児の変容と考察>
ラックスして遊んでいるときに発語が多いことか
入学当初は、表情が硬くほとんど自己表現しな
ら、学校でも緊張を和らげる遊びの場を意図的に
【資
いA児であったが、少しずつ変容が見られた。
設けた。
料20:A児の変容】2年生の2学期が始まったと
ねらい:遊びの要素を取り入れ、心を開放する
きには表情も明るくなり、担任が尋ねたことに言
ことによって、友達と自然に会話することがで
葉で答えられるようになった。
2学期中ごろには、
きる。
持久走の練習に行くときに「行きたくない。えら
ア)学習の中に遊びの要素を取り入れる
いもん」と、
走ることが疲れるから行きたくない、
という気持ちを自分から話せるようにもなった。
算数の授業の導入に、ボウリングや輪投げなど
全員で行う数や計算に親しむゲームを取り入れた。 2学期終わりごろにはA児か
しかし、計算が苦手なA児にとって得点を計算す
ら担任や学級の仲間に話しか
ることに自信がなく、発語が増えることにはつな
けることも増え、生き生きと
がらなかった。
活動する姿も多く見られるよ
イ)学力に関係なく遊べる場の設定
うになった。特に、2学期末
の「2学期がんばったね会」
学力に関係なく遊べる環境として、朝の登校後
から朝活動開始までの時間、持ち物の片づけが済
では、歌の係を引き受け楽しそうに指揮をした。
んだ児童から自由に遊んでよいこととした。その
会の中で2学期間がんばったことを話す際には、
際、A児が家庭で親しんでいるトランプやウノな
手助けなしに自分で内容を一生懸命考えて話すこ
どのゲームを自由に使えるようにした。すると、
【資料21:がんばったことスピーチ】 こ
とができた。
学級の仲間が誘い合って遊ぶようになり、2 年生
れらの変容は遅ればせながらのA児の発達の段階
の2学期後半には、A児も慣
なのか、あるいは本研究の手立てにあったのか、
れてきて「えー、ずるい」
「い
厳密に境を定めることはできないが、これまでの
いなあ」「すっげー」などの
実践の成果と課題を考察した。
言葉を自然に発する姿が見ら
○多方面からの児童理解の手法を取り入れ、児童
れるようになった。
の実態を的確かつ分析的に把握することにより、
ウ)A児の家庭での経験を生かした場の設定
指導の方向を具体的に見出すことができた。
○家庭との連携を密にして保護者と教師が同一歩
2年生の11月にふれあい学級単独で校外学習
で大垣城と郷土館に出かけた際に、
調で児童の指導に当たることで、より効果的な
大垣公園で遊ぶ時間を設けた。大
指導ができた。
垣公園へは保護者とよく出かけて
○他者と関わりをもち、コミュニケーションを図
いるとのことから、学級の仲間と
る機会を与えることで、自ら話そうとする意欲
出かけても、普段の自分が出せる
を高めることができた。また、体験活動を取り
のではないかと考えたためである。その際のA児
入れ経験を増やすことで、自信がもてるように
は実に生き生きと遊んでおり、他の児童がしてい
なり、自己表現ができるようになった。
る遊びを見て「ねえ、どうやって?どうやって?
△国語科の学習で言葉のつまずきに応じた個別の
(そこへ行ったの)」と大声で聞き、自分も同じ
指導を工夫し、言語能力を高める指導を試みた
ように遊べたときには「ねえ、見て、Aちゃんも
が、学習した時は理解できても、忘れてしまう
(できたよ)こうやって、こうやって(するんだ
ことも多く、実際の生活の中で児童自らが生か
よ)」とアピールしていた。それまで教室ではあ
すことは難しかった。繰り返しの指導・形態を
まり見られなかったA児の心が開放された様子で
変えての指導の必要がある。
10
《参考文献》
・「言語障害教育の手引き」文部省 1973
・「ITPAによる学習能力障害の診断と治療」
S.A.カーク・W.D.カーク著
三木安正ほか訳 1974
・
「心理テスト法入門-基礎知識と技能習得のため
に-」松原達哉 1976
・
「乳幼児と障害児の発達指導ステップガイド -
ムーブメント教育・MEPA実践の手引き-」
小林芳文
1986
※1
・
「軽度発達障害の心理アセスメント-WISCⅢ
の上手な利用と事例-」上野一彦 他
2005
・「現場で役立つ特別支援教育ハンドブック」
下司昌一 他 2005
・
「高機能自閉症・アスペルガー障害・ADHD・
LDの子のSSTの進め方」
田中和代 他 2008
※3
・「小学校学習指導要領」文部科学省 2009
・
「視覚シンボルで楽々コミュニケーション 障害
者の暮らしに役立つシンボル1000」
ドロップレット・プロジェクト 2010
※2
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