化粧品と肌の関係

化粧品と肌の関係
Ⅰ
概要
私たちは化粧品の肌への影響に興味を持ち、資生堂の協力の下、肌の基本的な知識から化
粧品業界の最先端技術まで、見学・講義を通して学びました。
Ⅱ
はじめに
「美肌」とは人類の永遠のテーマであり、人々は美しい肌を求めるため様々な試みをして
きました。化粧品はその過程で生まれ、今や私たちにかかせないものとなっています。そこ
で今回は化粧品の「スキンケア」に注目し、化粧品の果たす役割や肌の基礎知識、外部から
の刺激から身体を守る構造などについて、実験や調査を行いました。
Ⅲ
Ⅳ
1
日程
5月12日
資生堂リサーチセンター見学
6月
講義「紫外線について」
9日
6月16日
講義「化粧品の安全性について」
6月23日
講義「肌の基礎知識について」
活動内容
紫外線
地球上には、太陽光線(電磁波)が降り注いでいます。太陽光線は波長の長さにより、
赤外線(750nm以上)、可視光線(780∼400nm)、紫外線(400∼200nm)、放射線(200
nm以下)に分けられます。紫外線は、日焼け、シミ、ソバカスの原因となるほか肌の老
化を早める要因として、皮膚にとっては敵と考えられています。また、最近では体全体の
免疫力を退化させることもわかっています。紫外線はさらに、UV-A(400∼320nm)、UV-B
(320∼280nm)、UV-C(280∼200nm)に分けられます。
UV−A:日常紫外線と呼ばれます。
真皮まで達して、メラノサイトを刺激してシミの原因をつくり、ハリや弾力を
担うコラーゲンやエラスチンの働きを破壊するため、しわ・たるみの原因にも
なります。窓ガラス、雲も通します。
UV−B:レジャー紫外線と呼ばれます。
海水浴やスキーなどのアウトドアスポーツやレジャーシーズンの日焼けの主な
原因となります。表皮に影響を与え、肌は、炎症を起こし、しみ・ソバカス・
乾燥の原因になります。また、遺伝子レベルにまでダメージを与えることがあ
ります。
UV−C:大気に阻まれ、地球上には届きませんが、オゾン層が破壊されると地球上に
も届いてしまいます。非常に有害です。
紫外線は、晴れている日だけ降り注いでいるわけではありません。曇りの日は晴れの日
の約 65%、雨の日は約 20%降り注いでいます。また、空気のきれいなところほど紫外線
は強いです。
☆紫外線の実験
美白剤にはアルブチンとビタミン C が含まれていて、それぞれの働きは異なります。
この働きについて、実験を行いました。結果はチロシンの中にアルブチンを入れると、
チロシナーゼの発生を阻害し、ドーパ、メラニンにならないのでそれ以上黒くなるの
を防ぐことができ、すでにメラニンが生成されてしまった後でビタミン C を入れると、
黒くなったものがもとに戻りました。
紫外線は、日焼けや皮膚がんを引き起こすだけでなく、白内障や免疫低下の原因に
もなります。そのため、外出時には十分な紫外線対策が必要です。
☆紫外線対策
◎ 帽子をかぶる
帽子はつばが 7cm以上のものが良く、顔に浴びる紫外の 60%をカットすることが
できます。
◎ サングラスをかける
サングラスは目の保護ができるため、真夏の外出や冬のスキーなど特に紫外線の強
い日には必要です。
◎ 日焼け止めを使う
日焼け止めは、粉による反射で紫外線の吸収を防ぐ散乱剤と人間に紫外線を吸収さ
せずに日焼け止め自身が紫外線を吸収する吸収剤によって作られていて、UVB をカッ
トする「SPF(Sun Protection
Factor)」と UVA をカットする「PA(Protection Grade of
UVA)」の強さや、男性用、女性用、幼児用などで種類が分けられます。参考としては、
日常生活や散歩、買い物のときは SPF10、PA+のもの、屋外での軽いスポーツやレジ
ャーなどのときは SPF20∼30、PA++のもの、海や山でのスポーツ、レジャー、また
炎天下のときは SPF40∼50、PA+++のものを使うと効果的です。しかし汗をかいた
り水で洗ったりすると効果が落ちてしまったり、また SPF の効果が持続する時間は SPF
の値×20 分(日本人が日焼けする標準時間)のため、こまめに塗り直す必要があります。
◎ 濃い色の、厚い服を着る
夏は薄手の洋服を着ることが多くなりますが、紫外線を防ぐためにはなるべく色の
濃い、厚手の洋服を着るほうが効果的です。
☆紫外線の強さ
対策も紫外線の強さによって決める必要があります。まず季節の面から見ると、晴
れた日の UVB が春から夏にかけて強くなります。わたしたちは気温の上昇とともに紫
外線も強くなって、一番紫外線が強くなるのは 8 月だと思っていますが、紫外線は夏
より一足早く訪れ、6 月には冬の 4 倍以上の強さになるため外出時には特に注意が必
要です。また場所の面から見ると、芝生は 1%、コンクリートは 5%、砂浜は 15∼20%、
雪面は 80∼95%の反射率があり、その分紫外線も強くなります。そのため、冬にスキ
ーをするときには十分注意が必要です。また 1 日の中だけで見ると、午前 10 時∼午後
2 時の間に 1 日の半分紫外線が注いでいます。
☆紫外線の実験
美白剤にはアルブチンとビタミン C が含まれていて、それぞれの働きは異なります。
この働きについて、実験を行いました。結果はチロシンの中にアルブチンを入れると、
チロシナーゼの発生を阻害し、ドーパ、メラニンにならないのでそれ以上黒くなるの
を防ぐことができ、すでにメラニンが生成されてしまった後でビタミン C を入れると、
黒くなったものがもとに戻りました。
2
化粧品の安全性
(1)安全性保証
・化粧品における原料の精製度合いや処理法、配合量は、すべて企業に委ねられている。
・化粧品の安全性は化粧品メーカーにとって最も重要なテーマである。
どのようにして化粧品の安全性を保証しているのか。
1)徹底した研究
2)厳しい安全性テスト
安全性保証の流れ
原
料
開
発
製
開
発
製品の安全性保証
安 全 性 評 価 法
約80 も の テ ス ト
検証・改善
安全性保証
市場導入
消費者の情報
よりよい製品
より高い安全性
フィードバック
原料の安全性保証
品
(2)消費者が気にしている原料
○ 「安全性に問題がある」と聞いたことがある成分
①防
腐
②香
料
③鉱
物
剤
60.5%
51.1%
油
39.5%
④ 界面活性剤
34.8%
⑤ アルコール
33.9%
⑥色
素
26.6%
⑦ 紫外線吸収剤
12.9%
(肌トラブルを経験している一般消費者対象)
○ 各成分の使用目的と安全性
① 防腐剤
目的)化粧品を製造する際や使用する際に微生物が混入することによって成分が
変質するのを防ぐ
安全性)少ない防腐剤量で適切な防腐力を確保しているので、化粧品に用いられる
防腐剤は安全性が高い(但し、人によっては例外有り)。
② 香
料
目的)・使用者に心地よさを与え、使用者本人の魅力を引き出す
・原料固有のにおいをマスキングする
・使用者自身の心や体に心理面、生理面で有用な働きかけをする
(アロマコロジー)
安全性)香料の国際研究機関RIFMの情報や皮膚科医からの情報、安全性テスト
結果をもとに安全性に優れた香料のみを使用しているため、安全性は高い。
③
鉱
物
油
目的)*ミネラルオイルの場合*
・角層になじんで水分が逃げないように保護し、柔軟な肌に整える
*ワセリンの場合*
・肌や唇を保護し、水分の蒸発を防ぐ
・クリームや乳液の感触を調整する
安全性)肌トラブルを起こすのは鉱物油に含まれている不純物であり、それ自体は
安全。またこのことは戦後間もない頃の話であり、現在では十分精製し、
厳しく安全性を確認したものを使用しているため、安全性は高い。
④
海面活性剤
目的)肌に必要な水分と油分を同時に補う
安全性)多くの種類の界面活性剤を検討し、数多くのテストを実施し安全性の評価
を行ったり、乳化力や可溶化力などといった性能の評価を行い、厳選した
ものを安全な濃度で使用しているため、安全性は高い。
⑤
アルコール
目的)・化粧品を配合することによって肌の上で水の玉になりにくくし、なじ
み易くする
・防腐剤無しで微生物による成分の変質を防ぐ
・成分の溶解を助ける
・ヒヤッとしたクール感、さっぱり感を与え、肌を引き締める
安全性)商品の種類、使用部位、使用目的、肌質ごとに安全性や機能などを十分に
理解した上で配合しているため、安全性は高い。
⑥ 紫外線吸収剤
*作用*紫外線を吸収して熱などのエネルギーにして放出する
*特徴*透明性に優れ、白くならない
目的)UVカット
安全性)最適な配合濃度や基剤との組み合わせを研究し、安全性を高めている。
※UV効果を持つものは、紫外線吸収剤以外に紫外線散乱剤というものがある。
*作用*光を反射する粉末を利用して皮膚表面で紫外線を反射する
*特徴*可視光まで散乱させるため、白くなることがある
3
香料研究
香料研究は化粧品開発にとってなくてはならないものです。
ほとんど伝承によるもので正統な裏付けが無かった香りの効果や用法は、近年科学的に
も立証されました。天然香気原料から真に効果のある成分も解明されています。
例えば、同じ重さのものであってもレモンの香りのものは軽く感じられ、オークモスの
香りのものは重く感じられます。また、同じクリームを塗ったとしても、ミントの香りの
ものはサラサラするよう感じ、バニラの香りのものはしっとり感じます。
このように香りは重量感・使用感などに影響します。それは化粧品のイメージにとても
重要な影響をもたらすのです。
疲れているとき肌が荒れる、楽しいときは化粧のりもいい。このように肌と心の間には
密接な関係があります。
ストレスを緩和することにより肌状態を改善させようという研究が行われています。そ
こで注目されるのもまた、香りの効果です。香りをかぐことによってもたらされる心理的・
生理的効果でストレスを緩和し、肌状態を改善する。それがアロマコロジーの考え方です。
天然由来の香気の中から、気持ちを落ち着かせたり高揚させる効果を持った成分を抽出。
それらの成分を効果的に用いて、香りによるストレス緩和、そして肌の改善を期待します。
それらは主にフレグランスを中心に利用されてきましたが、今では肌との関連性に着目し
たスキンケア商品にも応用されています。
4
肌の基礎知識
ターンオーバーの働き
ケラチノサイト(表皮細胞)という細胞がターンオーバーによって、形・成分・働
きを変えていきます。
ケラチノサイトは基底層で生まれ、体内から栄養を補給して 2 個の細胞に分裂し、
このうち 1 個は基底層にとどまって次の細胞分裂に備えます。もう 1 個の細胞は有棘
細胞→顆粒細胞→角質細胞となって角質層にとどまり、やがてフケやアカとしてはが
れ落ちます。
メラノサイト(色素細胞)は、紫外線から身体を守り、ケラチノサイトに取り込ま
れて変化しながら角質層まで上がっていきます。この働きは、色々な外界の刺激から
身体の内部を守っているのです。
☝肌がきれいだと角質細胞も
大きさが整っている。
皮膚表面の pH は4.5∼6.5の弱酸性です。この pH 領域では最近の活動が抑えら
れるので、皮膚についた細菌が繁殖し、トラブルを起こすのを防いでいます。皮膚の
pH は入浴などで一時的に中性に傾きます。しかし、健康な皮膚にはもとの pH に戻そ
うとする働きがあります。これを皮膚の緩衝能といいます。
一般的に中性に傾いた肌は、刺激を受けやすく、デリケートな状態になっています。
肌荒れや敏感肌の状態では、pH のバランスを保つ働きが弱いため、外からの影響を受
けやすく、皮膚トラブルを起こしやすいと言われています。
Ⅴ
今後の課題
・外用である化粧品を、外用していてさらに内側(心)へ働きかけて肌を改善できるものにす
るには、香りなどの効果のほかにどんなアプローチができるか考えてみたい。
・メーキャップ製品の質による肌への影響を調べてみたい。
・肌を美しく保つための十代からのスキンケアについて調べてみたい。
Ⅵ
感想
今回最も印象に残ったのは、 Creative Integration という言葉でした。ひとつの化粧品に
は、ありとあらゆる専門知識と技術が凝縮されており、その細かなひとつひとつが、大きな
結晶である最終製品をつくっていました。そしてそこには、たずさわった多くの人々の情熱
と愛がこもっていました。これは化粧品に限ったことではありません。私も、素晴らしい成
果のひとつの成分となって貢献できるようになりたいと思います。
今回の活動を通して、「紫外線について」や「対策について」学び、紫外線がいかに人体
に悪影響を及ぼしているか、また強い日差しの中で対策をしないと皮膚ガンになる可能性あ
ることなど、今後生活していくなかで役立つ知識を得ることができました。今まであまり意
識して対策してこなかったので、年をとってもシミやしわの少ない肌を保てるように、これ
から気をつけていきたいと思います。
今回、資生堂の方の講義を受けたり、研究所への見学などを通して、化粧品と肌との関係
について学ぶことが出来たと同時に、科学と化粧品との深いつながりをも知ることが出来ま
した。今回の活動により、科学に対する関心がより一層深まることが出来、今回の貴重な経
験をどこかで生かしていきたいと思います。
私は今まで、化粧品は外見を美しくみせる道具としか考えていませんでしたが、この研究
を通して化粧品がスキンケアの分野でも大きな役割を果たしていることを学ぶことができ
ました。また施設見学などでは、化粧品作りに携わる人々の熱意や情熱を直に感じ、私たち
にとって肌がいかに重要であるのかを改めて考えさせられました。更に広がるであろう美肌
への無限の可能性をこれからも追い続けていきたいです。
肌を美しい状態にするというのは私たちにも身近なテーマだけれど、一つの化粧品は様々
な人の様々な分野の研究の集大成であり、最先端の技術がつまったものだと知りました。今
回は何よりも、研究所に足を踏み入れることができたのが感激でした。
肌や化粧品(シャンプーなどのスキンケアも含めて)に関わることで、将来だけでなく今
から使えそうなことや、知っていて役に立つことを知れたことがうれしかったです。リサー
チセンターはすごく綺麗なところで、研究所に対するイメージが変わり、また、女性の研究
者がたくさんいらして、楽しそうに働いていらっしゃるのが、印象的でした。お世話になっ
た資生堂さんに感謝したいと思います。ありがとうございました。
☆参考
http://www2.health.ne.jp/library/uv/index.html
☆協力
資生堂