レイアウト 1 - 平成22年度木のまち整備促進事業

採択事例
補助種別
9
木 質 化
提案の
概要
プロジェクト名
港区立港南四丁目公益施設
(仮称)
新築工事
提案者
(事業者)
港区長 武井雅昭
設計者
株式会社日本設計
施工者
ナカノフドー・坪井・菱重エステート建設共同企業体
建設地
東京都港区港南四丁目2番-1、ほか
A.プロジェクト全体の概要
港区における環境に配慮した施設整備、特に木材利用を推奨した施設整備の一環として計画されてい
る保育園・子ども中高生プラザ・区民協働スペース(地域コミュニティ施設)の3施設が入る、地域
の中核的な複合公益施設。
B.提案する木造化・木質化の取り組み内容
①準不燃・不燃木材の利用による法規制に順応した積極的な木質化 ②ムク材の多様化 ③木材使用
量以上の視覚的効果を獲得する木加工の採用 ④木の持つ強度的の弱点を克服したプラスチック含浸
木フローリングの採用 ⑤環境配慮型木フローリングの採用 ⑥木の特有の反り、割れ、ささくれ等
を克服した樹脂含浸処理積層木デッキ材を採用。
C.提案のアピールポイント
木質化による法的制約や性能上の課題を技術的に解決することで、子どもから高齢者まで幅広い年齢
層が利用する本施設において、木の温かみを感じ、人と環境にやさしい木質化空間を実現する。
内部の木質化との連続性を図る外観。ピロティ部へ樹脂含浸処理積層木材を使用
評価の
ポイント
港区における環境に配慮した施設整備の一環として計画されている複合公益施設。準不
燃・不燃処理を施した内装部材を、法規による制限範囲の限界近くまで積極的に使用し
ている。一般の目に触れる機会が多く、都心部における建築物の木質化のモデルとなる
ことが期待される。
(仮称)
港区立港南四丁目公益施設新築工事—1
58
計画の
概要
港区の新たな生活拠点となっているJR品川駅東側の臨海地区に建設される、保育園・子ど
も中高生プラザ・区民協働スペース(地域コミュニティ施設)の3施設が入る複合施設。周
辺には超高層住宅が次々とつくられ、港南小学校、港南幼稚園、港南中学校が配置された新
たな文教拠点地区となっており、本計画はこの街区最後の建設工事となる。地域の中核的な
公益施設として機能を持ち、港区の先導的施設として注目されている施設である。
●環境負荷低減と木質化の推奨
港区では現在、区の方針として、
ライフサイクルコストやライフサイ
クルCO 2 の削減や環境負荷の低減、
地域の特性を生かした施設計画など、
環境面に配慮した計画を推進してお
り、木質化(特に多摩産材の利用)
については特に推奨し、積極的な利
用を図ることで、施設計画のリーデ
ィングプロジェクトとなることを目
高断熱仕様
バルコニー設置・環境負荷低減ルーバー
屋上緑化・壁面緑化
LOW-Eペアガラス
クールヒートトレンチ
機
械
設
備
環
境
負
荷
低
減
項
目
ソーラーチムニーによる自然換気
デシカント外調機+高顕熱パッケージヒートポンプ
地中熱利用ヒートポンプ
熱源ポンプのインバーター化
全熱交換ユニット
自然換気による換気機器動力削減
電気室の空調・換気設備取りやめ
電化厨房による空調・換気負荷の削減
REMS
太陽光発電
電
気
設
備
指す。
●外装デザイン
長寿命・高効率照明器具
初期照度補正
トップランナー変圧器
ハイブリッド外灯
REMS
設 給 個別給湯システム(配管長最小化・自動水栓など)
備水排 電化厨房
外装では、テラスにウッドデッキ
を、室内から連続するピロティ部の
床面・壁面・軒天部分の一部に樹脂
含浸処理積層木材を利用しており、
内部の木質化との連続性を図るとと
もに、港区の公共施設として、外部
の木質化のアピールを積極的に図る。
ムク材フローリング(一般部)
床
循環型供給システムに則った環境配慮型木フローリング(床暖房用)
プラスチック含浸木フローリング(エントランス部)
木
質
化
採
用
項
目
壁
都産材杉板張り
天
井
都産材杉板張り
都産材杉ルーバー天井
装外 樹脂含浸処理積層木デッキ材(外部)
木突板または木挽板家具
そ
の
他
●内装デザイン
木製建具
木製手摺
木製巾木
木製カーテンボックス
内装では、来館者が最も多く利用
する共用部や多目的室を中心に、床・壁・天井の仕上材から家具や建具、衝突防止ガード、手すり
にいたるまで木質化を積極的に行い、子どもから高齢者まで幅広く利用する本施設において、だれ
もが木材の温かみを身近に感じ、再生産可能な循環資源である木材と触れ合うことで、地球環境に
ついて考えることのできる施設づくりを行う。
←
都産材杉板張り
↓
都産材ルーバー天井
木製建具
↓
ムク材フローリング
↓
↑
木製建家具
床・壁・天井の仕上材から家具や建具、衝突防止ガード、手すりにいたるまで木質化を徹底した内部
(仮称)
港区立港南四丁目公益施設新築工事—2
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このプロジェクトの
先端性
先進性
このプロジェクトの
波及性
普及性
●準不燃・不燃木材の利用による法規制に順応した積極的な木質化。
●ムク材の多様化による本物の質感をもつ空間の実現。
●木材使用量以上の視覚的効果を生み出す木加工(ルーバー化)の導入。
●ヒール跡の抑制など木の持つ強度上の弱点を克服したプラスチック含浸木フローリングの
採用。
●高強度と共に木材の循環型供給システムに則った環境配慮型木フローリングの採用。
●木の特有の反り、割れ、ささくれ等を克服した、子どもたちにやさしい樹脂含浸処理積層
木デッキ材を採用。
●あらゆる世代が利用する複合施設であることによる波及効果。
●公共施設が先導となった国産材(特に多摩産材)利用推奨による地産地消の積極的な推進。
●森林認証材の取得や都産材使用量・産地マップなどをわかりやすく表記したサインの設
置、情報の公開による木質化への取り組みの積極的な視覚化。
先導的木造化アピールポイント
●木材の準不燃化・不燃化による木質化空間の実現
現行の建築基準法では、内装の準不燃化・不燃化
など大規模建築物に課せられる制約が大きい現状が
ある。本計画では、木材に準不燃・不燃処理を施し
た材料を使用することで、法規的な制約を乗り越え
た木質化の実現を図る。
準不燃認定
書の例
●都産材・ムク材の多様化による木質感のある本物
の空間の実現
木質材料の大部分で、ムク材を積極的に利用する。
床材にはクリを、壁材・天井材には多摩産材のスギ
を利用し、地域の特性を生かし、木そのものの持つ
質感を実感できる空間づくりを行う。
●視覚的効果を生かした木加工技術の導入
不燃化処理を施した木材は、通常の木材に比べ非
常に高価な材料となる。天井部分においては、狭い
空間には木材の面張りを、広い空間には視覚的効果
を生かした木ルーバーを採用するなど、加工方法の
工夫により、効果的に木材を利用することで、材料
ルーバー天井のイメージ
使用量を抑えながら、木質化範囲を広げる工夫を行
っている。
●プラスチック含浸木フローリングの採用
エントランス部分には、木質材料の弱点である集
中荷重(ヒール跡やキャスター跡など)やスクラッ
チ傷を克服したプラスチック含浸と基材強化層をも
つフローリングを採用。これにより、維持メンテナ
ンス性の観点から、通常では木質材料の採用が見送
られがちなエントランスホールの床への木質材料の
使用を実現する。
木板張りのイメージ
プラスチック含浸のしくみ(上)と基材強化フローリング(下)
(仮称)
港区立港南四丁目公益施設新築工事—3
60
●循環型供給システムに則った環境配慮型木フロー
リングの採用
床暖房導入部には、循環型森林資源材として選ば
れたラジアータパインに、100%天然澱粉の含浸に
よるウッドハードニング処理を施した、循環型供給
システムに則ったフローリング材を採用する。人が
直に触れる部分には、特に人にやさしく、自然にや
さしい材料を選定し、木質のやさしさを利用者が実
感できる空間づくりを行う。
循環型供給システムイメージ
(メーカーカタログより)
ウッドハードニング処理イメージ(メーカーカタログより)
●人にやさしく、安全な樹脂含浸処理積層木デッキ
材を採用
外部デッキ部や仕上材には、木特有の反りや割れ
を極力抑制した材料を選定。通常では再生木を利用
して、これらの克服を図ることが多いが、木質感が
損なわれる欠点があった。樹脂含浸積層材は、木そ
のものの質感を損なわず、ささくれやとげによる怪
我をしないよう、子どもたちの安全性とメンテナン
ス性を両立した、サステナブルデザインを実現する。
樹脂含浸処理積層木デッキの例
(メーカーカタログより)
樹脂含浸処理積層木デッキ製造過程イメージ(メーカーカタログより)
●公共施設の特性と“見える化”が実現する波及効
果
港区では、環境に配慮した施設計画の一環として、
木材利用を推奨しており、特に多摩産材など地産地
消を積極的に推進している。あらゆる世代が利用す
る公共の複合施設であることからその波及効果を考
慮し、森林認証材の取得や都産材使用量・産地マッ
プなどをわかりやすく表記したサインの設置など、
木質化への取り組みを積極的に視覚化することで、
施設計画のリーディングプロジェクトとなることを
目指す。
●区民への情報発信
港区では、身近な区政実現のため、総合支所制度
を採用している。総合支所では、地域住民に対して
地域情報誌を発行しており、本プロジェクトの木質
化についても、積極的に情報を発信することで、普
及啓発や技術などの公開を行う。
(仮称)
港区立港南四丁目公益施設新築工事—4
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港区白金台幼稚園に設置した木質化サインの例
2階平面図
1階平面図
平面計画
中庭を取り囲む平面構
成で、中庭に向かって東
側に子ども中高生プラザ、
西側に保育園、北側に区
民協働スペース(地域コ
ミュニティ施設)を配置。
1階には保育園、子ど
も中高生プラザ、2階に
は保育園、子ども中高生
プラザ、区民協働スペー
ス(地域コミュニティ施
設)、3階には子ども中高
生プラザを配置している。
各階には、屋上庭園や
バルコニーなどの外部空
間を積極的に設けている。
木質仕上材の使用状況
(仮称)
港区立港南四丁目公益施設新築工事—5
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3階平面図
エントランスホールイメージ
ミニホールイメージ
木のぬくもりが感じられるアリーナ
図書ラウンジイメージ
(仮称)
港区立港南四丁目公益施設新築工事—6
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プロジェクト
データ
提案者(事業者・建築主)、設計者・施工者、建設地は
事業の実施体制
58頁参照
建物の名称:(仮称)港区立港南四丁目公益施設
主要用途:保育所、児童福祉施設、地域コミュニティ施
設等
主要構造:□木造( □軸組構法 □枠組壁工法 □丸
太組構法 □その他 ) □鉄骨造 ■鉄筋コ
ンクリート造 □鉄骨鉄筋コンクリート造
□その他
防火地域等の区分:■防火地域 □準防火地域 □法22
条区域 □その他の区域
耐火建築物等の要件:■耐火建築物 □準耐火建築物
(60分耐火) □準耐火建築物(45分耐火)
□その他の建築物
敷地面積:4,788.28㎡
建築面積:2,771.99㎡
延べ面積:6,934.98㎡
軒 高:17.7m
最高の高さ:19.6m
階 数:地上3階
事業期間:平成22年度〜24年度
補助対象事業費:853,491千円
補助金額:42,674千円
(うち平成22年度分8千円)
事業スケジュール
平成24年
平成21年
平成22年
平成23年
7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 1112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
港南中学校
基本設計
建設地
実施設計
港南幼稚園
港南小学校
品川駅
既存解体工事
施工期間
竣工
着工
東京海洋大学
立面計画
日射抑制ルーバーや壁面緑化、壁面太陽光パネルの導入など環境負荷低
減技術を多用した立面計画となっている。各機能ごとに異なる仕上げを
施したボリュームに分割することで、周辺環境への圧迫感を低減してい
る。外装では、テラスにウッドデッキを、室内から連続するピロティー
部の床面・壁面・軒天部分の一部に樹脂含浸処理積層木材を利用。内部
の木質化との連続性を図るとともに、港区の公共施設として外部への木
質化利用のアピールを積極的に図る。
(仮称)
港区立港南四丁目公益施設新築工事—7
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