「2009年12月号」をPDFで見る - Ecolink21 NPO法人 環境国際総合機構

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2009
12 月
「環境事業から福祉へのアプローチ」
花澤理事長が環境福祉学会の年次大会で提言
地域が地域を支える視点が重要
川崎市のホテルケイエスピーで 11 月 8 日に行われた環境福祉学会の年次大会で、副実行委員
長を務めたエコリンクの花澤理事長が、「環境福祉による産業と仕事の創出」のテーマで行わ
れたパネルディスカッションにパネラーとして参加、自社(三協興産)と国際環境総合機構の
活動を通し、「環境事業からの福祉へのアプローチ」テーマで環境福祉に対する提言を行った。
花澤理事長
パネルディスカッションで、花澤理事長は三
協興産の事業内容を説明した後、大要以下のよ
うに語った。
「環境保全活動を通じて社会貢献を行いたい
という思いから 2000 年に NPO 法人の環境国
際総合機構 (Ecolink21) を設立しました。環境
問題の解決は、一企業や一団体ではどうしても
限界が出てきます。大学や民間などから、知識
ではなく知恵を広く集め、融合・系統立ててい
かなければ、本当の循環型社会や環境低負荷型
社会の構築はできません。私たちはそれを『知
恵の輪』と呼んでいます。現在、環境セミナー、
環境シンポジウムの主催や関連事業の後援など
を行っています。2005 年 4 月には、茨城県の
つくば市の産業技術総合研究所と 3 年間の共同
研究を行う技術契約を結びました」
「豊かな自然環境と、それを維持・発展させ
るための技術は、日本という国を運営し、世界
のリーダーとして成らしめるためのなくてはな
らない大切な資本です。これを総称して『環境
資本』といいます。そのために『環境資本主義』
を環境国際総合機構で提唱してきました。その
環境資本が経済の活性化を生み出し、雇用を創
出するものと考えます」
環境にはグローバルとローカルの両方が必要
「環境問題にはグローバルな視野(地球的視
野)とローカルな視点(地域に根ざした視点)
の両方が必要です。それを、私たちは「グロー
カル」と呼んでいます。地域に根ざしたローカ
ルな環境対策は非常に重要です。アスベスト処
理やダイオキシン類の処理では、作業環境をど
うするかという視点が重要になってきます。作
業員がダイオキシン類に侵されたり、アスベス
トを吸っては何にもならないのです」
「反対に地球温暖化の影響で起こっていると
いわれる異常気象、台風の巨大化など、一国で
は解決のしようもないことについては、グロー
バルな視点も非常に重要なわけです。日本が、
鳩山首相が世界的に公約した 25%という数字
を実現しても、地球温暖化はとめられません。
温暖化対策は、米国や中国、インドといった世
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界中の二酸化炭素排出
量の半分以上を排出し
ている国を抜きにして
は解決できない問題な
のです。温暖化の影響で
海水温が上昇してきて
おり、それがすでに様々
な分野で障害を起こし
つつあります。四方を海
に囲まれている私たち
日本も、もちろん大きな
影響を受けてきており
ます。グローバルな視点
で提言することは、私た
ちの生活にダイレクト
にかかわってくること
なのです」
福祉は「満足な生活環境
を作る」こと
様々な提言を行ったパネルディスカッション
いか、損か得かなど、お金に換算する思考が根っ
「『福祉』というと、日本人には「弱者への支
子にあるように感じます。一方では、昨年来の
援」というイメージがありますが、本来の意味
不況で、困窮者が急増し、人間の尊厳が脅かさ
は、『満足な生活環境』のことをいいます。つ
れるような事態にまでなってきています」
まり『環境福祉』という概念は、全ての人が『満
「現在、失業率が 5・6%とされていますが、
足な生活環境を作ること』にほかならないわけ
これは約 6700 万人の就労人口を分母にした見
です。衣・食・住はもちろんのこと、生きがい
せかけの数字で、日本の総人口を考えると、実
や、やりがいなどを生み出すことが、より大事
際は倍以上の人が失業しているといわれていま
だと考えます」
す。『福祉』本来の意味の全ての人が『満足な
「我が国は、高度経済成長期に、『一億層中流
生活環境』を実現するためには、この大量に増
意識』が芽生えたように豊かになり、衣・食・
えている失業者を何とかしなければ、日本の国
住とも一応満足した生活レベルに達しました
の基盤がなくなるわけです。この失業者をどの
が、その半面、急激に環境汚染、環境破壊が進み、 ようにステージに上げてくるか喫緊の課題で
水俣病、イタイイタイ病などの健康被害にあっ
す」
た人が多くでました。経済成長にともない、お 「環境分野、介護分野では人材の不足が指摘さ
金万能主義が台頭し、精神面の豊かさが置き去
れています。将来的には、産業としてこの分野
りにされてきたわけです。環境汚染では、工場
が拡大することが確実視されています。人間の
跡地のPCB(ポリ塩化ビフェニール)やダイ
安全保障上からも、この分野での雇用の創出が
オキシン類などの汚染土壌問題が深刻化し、都
大きなテーマであることは、論を待ちません。
市部はもちろんですが、工場が郊外や地方に広
私は、地域が地域を支える視点がなければ雇用
がったため、汚染も広域化したというのが実態
の創出はできないと考えております。事実、川
です」
崎市では地域のコミュニティを生かし、現在、
「この根底に『精神の荒廃』があることが指
ホームレスが半減したとのことです。『衣食足
摘されています。廃棄物の不法投棄問題などは、 りて礼節を知る』という言葉の通り、環境事業
自分さえ儲かればいい、正しいことをするのは
者の立場から雇用を増やし、環境福祉を実現し
損だという、ものごと全てを儲かるか儲からな
たいと考えます」
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進化する太陽電池
超薄型、超軽量はじめ画期的システム続々登場
「環境問題の行き着くところは、最終的にエ
ネルギー問題になる」とは、識者の一致した見
方。
こんな中、太陽電池(ソーラーパネルシステ
ム)が急速に進化している。太陽光という無尽
蔵の光エネルギーを電気エネルギーに変換する
装置で、地球温暖化防止の決め手の一つとも言
えるものだ。現在、急速に技術が進化し、超薄
型や発電効率の良いものが登場してきている。
太陽光という自然エネルギーを使うため、温室
効果ガス(CO2)を発生させずに発電でき、
しかも太陽電池そのものを製造するときに排出
するCO2もわずか2年で回収できるという。
この分野での有力メーカーはシャープ(本社・
大阪)だ。同社は薄膜シリコン太陽電池に力を
入れている。ガラス基板の上にシリコンを薄く
積み重ねた構造で、従来の結晶シリコン型に比
べ、シリコンの使用量を大幅な削減(100 分の 1)
を実現。生産工程も従来よりも省略化できるた
め、量産効果も加えれば、かなりのコストダウ
ンが図れるという。
高温地域での発電量が結晶シリコン型と比べ
て高く、薄型のため、屋根や窓ガラスに設置し
ても採光しながら発電できるというのが特徴。
いわゆるシースルー太陽電池として利用でき、
現在、デザイン性の高い建築物に設置されてい
る。
富士電機システムズ(本社・東京)が実用化
した「アモルファス太陽電池」は、1 ミリとい
う薄さを実現したもの。プラスチックフィルム
(耐久性 20 年以上)を使用したことで、この薄
さを実現した。このため、屋根や外壁の曲面部
分にも設置が可能。取り付け自由度が飛躍的に
アップしており、「設置する状況や用途に応じ
て最適な形で導入できる」としている。また、
美観的にも優れている上、重量もこれまでのガ
ラス基板と比べ 10 分の1と超軽量。建物への
重量負荷が少ないため、大面積への設置も可能。
加えて、ロール状にして保管できるため場所を
とらず運搬も容易、施工も少人数で行えるなど、
作業効率にも優れ、工事費・運用コストの削減
も実現できるものとなっている。
フィルム内部には、太陽光の短波長と長波長
のそれぞれに対応した電池層が形成されてい
る。これが幅広い波長の光を吸収するため、曇
り時の弱い光でも発電できるのも特徴の一つ。
結晶シリコン型に比べ、高温時での発電効率低
下が少ないのも注目される点だ。
京セミ(本社・京都)の開発した太陽電池は
画期的なもの。「太陽電池は平面型」という固
定概念を覆す球状型の太陽電池「スフェラー」
を開発している。シリコンの大きさは直径1
~ 1.5 ミリという微細なもので、球状のため直
射日光だけでなく、反射光や散乱光など、あら
ゆる方向からの光を効率良く吸収できるのが特
徴。従来の平面型太陽電池のように、安定した
電力を得るために太陽光の動きを追いかけ、電
池の角度を合わせるといった余分な動作が必要
ない。このため、発電効率は群を抜いている。
微細なシリコン球を柔軟性のあるプラスチッ
クフィルム基板上に並べて接続することで、形
状も平面はもちろん立体型など、自由自在に作
れる。直・並列の接続が自由で、曲面上の太陽
電池やドーム型モジュールなど、多様な形状の
製品が作れる。平面型太陽電池を付けると、視
界が遮られて困る場合でも、一定の透明性を確
保しつつ〝発電する窓ガラス〟を実現でき、デ
ザイン性の高い太陽電池を作ることが可能。
フィルム基盤の太陽電池パネル
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金融機関と
環境問題
動き始めた責任投資原則
意外と思われるが、金融機関でも「持続可能な社会
の実現に貢献する」ことを表明しているところが増えて
いる。
「物を生産する」ということがない金融機関だが、
環境保全に取り組む企業に対する低金利融資はもちろ
んのこと、SRI(社会的責任投資)の促進、CO2(二
酸化炭素)排出権取引の信託採用など、ファイナンス
面からの環境配慮へのアプローチなどを手がけ始めて
いる。環境低負荷型企業や事業を評価し、金融の視
点でサポートするもので、いわば、
「環境と企業の仲介
役」になろうというものだ。
「責任投資原則」という言葉がある。環境上の問題
などが投資パフォーマンスに影響を与えるとの原則に立
ち、大手の年金基金や資産運用会社が投資先を選定
する際に、環境や社会、ガバナンス問題も考慮するこ
とを世界的に取り決めたものだ。2006 年 5 月に国連事
務総長のイニシアチブで行われたもので、この責任投
資原則の署名に各国の主要金融運用機関が賛同、日
本では三菱UFJ信託銀行や損保ジャパンなどが、真っ
先に賛意を表明し、現在ではみずほコーポレート銀行、
三井住友銀行、日本政策投資銀行、三菱東京UFJ
銀行などが続いている。
方法で、条件にもよるが、トラック輸送と比較してCO
2の排出量を最大で 72%削減できるといわれている。
環境保全をバックアップする姿勢を見せている各金
融機関だが、自らの環境負荷低減に対する取り組みは
どうか─。
全国銀行協会は、2010 年度の電力使用量を 2000
年比で 12%削減することを打ち出している。2000 年
度は 15 億 7248 万キロワット/時間の電力使用量だっ
たが、これを 2010 年度には 13 億 8378 万キロワット
/時間にまで削減するというものだ。また、同協会は
循環型社会の形成に向けて再生紙の購入率もアップさ
せることを決めている。
2010 年度までに70%以上にもっ
ていきたいという。また、紙の再利用率を 85%にする
ことも目標に掲げている。
リーマンショック以来、元気のなかった金融業界だ
が、今期は各銀行とも一部を除いては大幅な黒字にな
るらしい。預け入れるときは安い金利で、貸し付ける
ときは高い金利で……。貸し渋り、貸しはがし、果た
して本当に社会貢献できるのか─。
理事
花澤 義和 (代表理事、三協興産株式会社・代表取締役)
中谷 延幸 (京都府再資源化事業協同組合・理事長)
澁谷 吉久 (株式会社明輪・会長)
梶原 拓治 (有限会社エムティー企画・代表取締役)
清水 博
(株式会社リバックス建築環境計画・会長)
宇都宮秀雄 (宇都宮工業株式会社・代表取締役)
小川 一夫 (栄大産業株式会社・代表取締役)
須藤 由彦 (株式会社環境保全事業・代表取締役)
笹舘 博
(国際芸術書画院・理事)
清水 昭
(株式会社共立エステート・代表取締役)
竹原 文子 (三協興産株式会社東京支店・経営管理室室長)
監事
環境負荷低減に対する取り組み
日本政策投資銀行は、京都議定書に定められたCO
2削減に取り組む企業に低金利で融資する制度を行っ
ている。
「京都議定書目標達成融資」というもので、
2006 年から実施しているもので、年々伸びているとい
う。この融資の第1号になったのが日本通運(本社・
東京)。狙いは、日通が推進するモーダルシフトを後押
しするこというもの。
モーダルシフトは、環境負荷の高い自動車貨物輸送
から、鉄道や海上輸送を活用した複合輸送に転換す
る方法で、環境問題がクローズアップされ始めた 1990
年代から提言されたもの。輸送分野の温室効果ガス
削減に対する有力な手段として再び脚光を集めている
花澤 登實雄(花澤税理士事務所)
2009年12月発行
発行所
環境 NPO
Ecolink21環境国際総合機構
(内閣府認証)
東京都中央区日本橋3-3-5
新日東ビル4F(〒103-0027)
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