我が国の国際競争力強化に向けた提言 平 成 17 年 7 月 27 日 自由民主党政務調査会 国際競争力調査会 我が国は、少子高齢化の急速な進展、中国の台頭をはじめと する国際競争の激化など、大きな環境変化に直面している。こ う し た 中 、資 源 に 乏 し い 我 が 国 が 21 世 紀 に お い て も 豊 か な 生 活 を享受し続けるためには、持続的な経済成長による国富の拡大 に向けて、中長期的な観点から、イノベーションの創出を基軸 と し て 国 際 競 争 力 の 強 化 を 図 る こ と が 不 可 欠 で あ る 。こ の た め 、 イノベーションの鍵を握るシステム全体を改革し、技術を創る 研究開発、人材の育成・強化、競争力を支えるインフラ整備等 の幅広い分野で、国際競争力の強化に向けた取組を行っていく ことが必要である。 我が国には、誇るべき伝統・文化がある。勤勉、真面目で、 真摯に物事に取り組む国民性とそうした努力が報われる社会、 海外の文化・制度を受容し、日本固有のものと融合させ、新た な創造をする力、長期的な信頼関係やチームワークを大切にす る心など、長い歴史に裏付けられた総合的な文化力というべき ものを継承・発展させ、それを土台に、我が国の国際競争力を 高めていく努力をしなくてはならない。 米 国 で は 、昨 年 12 月 に イ ノ ベ ー シ ョ ン を 基 軸 と し た レ ポ ー ト 「 Innovate America」( パ ル ミ ザ ー ノ レ ポ ー ト ) が ま と め ら れ た ところであるが、本提言も、我が国が国際競争力を強化するた めにまず取り組むべき施策を包括的にとりまとめたものである。 本提言に盛り込んだ内容を早急に実施すべきであり、来年度 予算、税制改正、法律改正等で実現できるものはそこで実施に 移すべきである。加えて、今後、本提言を基礎として、政治主 導の下で、国を挙げて産学官の総力を結集し、国際競争力強化 のための国策を取りまとめるべきである。 1 1. 研 究 開 発 ( 1) 研 究 開 発 全 体 ①総合科学技術会議の司令塔機能の強化 イノベーションを創出する研究開発を戦略的、効果的に推進 し て い く こ と が 重 要 で あ り 、そ の た め の 明 確 な 全 体 戦 略 の 構 築 、 必要な研究開発投資の確保と重点的な投入が必要である。 このため、総合科学技術会議の司令塔機能を強化することが 重要である。具体的には、同会議が科学技術の総合戦略構築の 機能を有することを明確化するため、同会議のあり方の見直し を検討すべきである。また、総合科学技術会議の民間常勤議員 の数を増やすとともに、産学の意見がバランス良く反映される よう議員構成を見直すべきである。さらに、科学技術政策と他 の政策(産業、教育、医療、労働、環境等)との整合性を確保 するため、総合科学技術会議と経済財政諮問会議との緊密な連 携を確保するとともに、関係府省との連携を緊密にすべきであ る。 なお、日本学術会議について、その職務の政府からの独立性 を実質的に確保し、科学者の英知を集めたシンクタンク機能・ 政策提言機能を適切に果たすようにすべきである。 ②国の研究開発投資についての考え方 (研究開発投資規模) 研究開発に係る政府投資については、十分な規模を確保すべ き で あ り 、現 在 策 定 作 業 中 の 第 三 期 科 学 技 術 基 本 計 画 に お い て 、 第二期科学技術基本計画における規模を相当程度上回る数値目 標 ( 例 え ば 、 GDP の 1%に 相 当 す る 額 ) を 設 定 す べ き で あ る 。 (研究開発分野) 国の研究開発においては、地球観測、宇宙開発、スーパーコ ンピューター、エネルギー等、国力を象徴する重要技術分野を 推進すべきであるとともに、研究者の自由な発想に基づき多様 性を確保した基礎研究の充実が図られるべきことは言うまでも ない。基礎研究充実の観点から、国立大学法人に対する運営費 2 交 付 金 等 や 私 学 助 成 に つ い て は 、十 分 な 額 を 確 保 す る と と も に 、 それに必要な施設等の整備・充実を推進する必要がある。 さらに、我が国の国際競争力を強化していく上では、研究開 発成果を新産業や新製品の創出などの実用化に結実させていく ことが極めて重要である。このため、実用化を目指した研究開 発及び基礎研究の成果をつなげて「製品の卵」段階に持って行 くための研究開発を重点的に推進すべきである。また、異分野 融合領域がイノベーションの源であることから、先端融合分野 の研究開発を積極的に推進すべきである。さらに、研究開発を 進めるに当たって、研究開発による実現目標を明確化し、その 実現に向けて関係者間で共通のシナリオ(ロードマップ等)を 共有しながら研究開発を推進していく体制を整備することも必 要である。 (国際標準化等) 研究開発は、その成果である製品が国際市場を獲得できるよ う、国際標準化戦略と一体で推進していくべきである。あわせ て、研究開発成果を科学的・客観的に評価するための評価・計 測手法の開発・標準化及びそのための先端的な計測・分析機器 の開発を推進すべきである。 ③研究開発推進体制 (国家プロジェクト) 国が主導的立場で資金支援を行う研究開発プロジェクト(国 家プロジェクト)については、重複排除及び効率性向上の観点 から、府省連携を強力に推進するとともに、それだけでは縦割 りの弊害を除去できないことにかんがみ、総合科学技術会議が 主導して国家プロジェクトを立案・遂行すべきである。 具体的には、総合科学技術会議が国際競争力強化のために特 に取り組むべき重点的な技術課題を指定し、同会議の主導の下 で、各府省の枠組みを超えた研究開発を実施するとともに、そ の成果の実用化に向けて必要な制度・枠組みの見直し等に包括 的に取り組むべきである。 このために必要な経費を確保するため「 、国際競争力強化特別 枠」を設け、同会議が活用できるようにするとともに、必要な 3 制度・枠組みの見直し等については、総合科学技術会議が関係 府省等にその具体化を要請し、内容に応じて、規制改革・民間 開 放 推 進 本 部 、 IT 戦 略 本 部 、 BT 戦 略 会 議 等 の 関 係 組 織 と 連 携 するようにすべきである。 また、国家プロジェクトに共通する推進体制として、その効 果 的 な 遂 行 を 確 保 す る た め 、以 下 の 諸 点 を 原 則 と す べ き で あ る 。 ・ 深い見識を有し技術の融合が可能な優れたプロジェクト リ ー ダ ー を 選 定 し 、当 該 リ ー ダ ー に 対 し て 一 括 し て 資 金 を 託すること ・ プロジェクトの責任体制を明確化すること ・ 異 分 野 の 企 業 が 参 加 す る 国 家 プ ロ ジ ェ ク ト は 、学 や 官 が 連 携して、異分野企業群をまとめていくこと ・ プ ロ ジ ェ ク ト の 成 果 に つ い て 、民 間 へ の 技 術 移 転 が 適 切 に なされるようにすること 加えて、国家プロジェクトに参加する企業間の技術指導等が 税務上の贈与とみなされることのないような手当をすべきであ る。 (競争的資金) 競争的資金については、これを増額するとともに、その交付 に当たっての審査体制を抜本的に拡充すべきである。具体的に は、ピアレビュー制度を改革し、研究計画内容の徹底審査、審 査内容の応募者へのフィードバック、審査員体制の充実等を図 るべきである。 あわせて、競争的資金の交付については、多額の競争的資金 を所管する府省においては独立の資金交付機関においてなされ るよう体制を整備し、支援される研究開発プログラムが適切に 管理されるよう当該機関におけるプログラムディレクター、プ ログラムオフィサーをはじめとする人的体制を強化すべきであ る。このため、独立行政法人が当該機関を担う場合に障害とな る運営費交付金の上限制約を見直し、事業規模に応じた運営費 の割り当てを行うようにすべきである。 (旧国研のレビュー) 旧国研については、再編後の各研究機関のパフォーマンスを 4 評価し、そのベストプラクティスを抽出するとともに、それを 他の研究機関に広げる仕組みを構築すべきである。 ④民間の研究開発支援 我が国の研究開発の中で大きな役割を担う民間企業による研 究開発を促進することが重要である。このため、研究開発投資 促進税制の特例措置の充実・延長等を図るべきである。また、 優れた研究開発成果を世界に先駆けて導入する日本企業への優 遇措置については、引き続き手当を行うべきである。 ( 2) 産 学 官 連 携 我が国がフロントランナーとなった今、自らの工夫と努力に よって我が国独自の研究開発の成果を生み出すことが、競争力 の維持・向上に必須となっている。改めて基礎に立ち返ること を重視しつつ、産学官の戦略的なパートナーシップを組んでい く必要がある。 ①産学官の対話に基づく本格的な共同研究の推進 我が国企業が国内の大学と行う共同研究の費用は、海外の大 学等との共同研究等に比べて大幅に少ない。国内の大学や公的 研究機関が行う研究の成果を産業に活用していくためには、早 い段階から大学等と産業界が対話を行い、大学等における研究 に生かしていくことが重要である。 このため、我が国の国際競争力を強化する上で不可欠な将来 の技術シーズについて、産学官が研究課題設定の段階から協力 し共同で研究を進める先端融合領域拠点を大学等において形成 することを積極的に支援していくべきである。 また、基礎研究の成果を産学の連携によりイノベーションの 創出につなげるため、フィージビリティ・スタディーをシステ ム化した戦略的・組織的な大型の産学共同研究を支援していく べきである。 ②人材交流の促進 産学連携の推進にあたっては、大学・企業の組織面からのみ ならず、人材面を含めて連携、交流を行うことが重要である。 5 このため、大学のポスドク、研究者が産業界で研究することを 促すこと、企業における実務経験を有する者を大学教員に積極 的に活用すること、大学教員が企業で経験を積んだ上で、再び 大学教員として大学に戻るようにすることなど、産学間の人材 交流を促進すべきである。 ③ TLO な ど の 産 学 連 携 組 織 の 整 備 大学の研究成果の産業への円滑な移転を促進するための環境 整 備 を 行 う こ と が 重 要 で あ る 。こ の た め 、TLO な ど の 産 学 連 携 活動の実態を調査して、そのレイティングやベストプラクティ スの公表を行い、産学連携活動の質の向上を促すべきである。 これを通じて、ニーズ志向・課題解決型の技術移転や、中小企 業に対する技術移転や共同研究が一層促進されることが期待さ れる。 また、産学連携を担う大学の機能を強化するため、事務局に おける契約、法務等の知識を有する人材の育成等を推進すると ともに、各大学が知的財産戦略の助走段階にある中、自律的運 営ができるまでの間、知的財産の維持管理に対する支援を強化 すべきである。 ④科学技術駆動型の地域経済活性化 地域経済再生のため、従来の公共事業依存型から科学技術駆 動型への転換を図り、科学技術をベースとした地域クラスター を戦略的に選定し重点的に充実させるなど、地域における科学 技術駆動型の経済活性化策を推進すべきである。 ( 3) 知 的 財 産 戦 略 知 識 経 済 や 国 家 の 魅 力 を 競 う 時 代 に あ っ て 、イ ノ ベ ー シ ョ ン や コンテンツ、ブランドを経済成長の原動力とし「魅力ある日本」 を 実 現 し て い く た め に は 、知 的 創 造 活 動 を 刺 激 し 、活 性 化 す る と と も に 、そ の 成 果 を 知 的 財 産 と し て 適 切 に 保 護 し 、有 効 に 活 用 す る こ と が 必 要 で あ る 。こ の た め 、研 究 開 発 に よ っ て 創 ら れ た 高 度 な 技 術 、ノ ウ ハ ウ の 海 外 へ の 徒 な 流 出 を 防 止 す る た め に 官 民 挙 げ て 取 り 組 む と と も に 、知 的 財 産 権 の 保 護 を 充 実 さ せ る た め の 審 査 体制の強化、法曹人材の育成等を図るべきである。 6 2. 人 材 ・ 教 育 我が国の国際競争力は、ひとえに人材にかかっている。 まず、各分野を牽引する、進取の気性に富み、創造性やリー ダーシップを発揮できる優れた人材を数多く輩出していくこと が不可欠である。 加えて、子供の時から、社会の一員としてなすべきことにつ いての確固たる志と意欲を育み、それを実現できる基礎学力や コミュニケーション能力など社会で生きる人としての基礎的能 力を根付かせる必要がある。また、グローバル化が進展し、異 なる文化的な背景を持つ人々と交流する機会が増えている中で、 我が国の伝統・文化を継承・発展し、発信する能力を育成する ことも必要である。 このため、家庭、地域社会、小学校から大学・大学院までの 学 校 、企 業 が そ れ ぞ れ の 役 割 を 十 全 に 果 た す こ と が 必 要 で あ る 。 ( 1) 形 式 知 と 暗 黙 知 物質的な豊かさに囲まれた今日、多くの若年層は貧窮を知ら ず、社会、公共のために自らが何をなしうるのかを問われるこ ともなく、学ぶ意欲と目的意識を持てないまま育っていく状況 にある。 学校教育では組織的体系的に形式知を学ぶ。しかし、人が育 つには、家庭や地域の環境の中で自然に学び取っていく暗黙知 と呼ぶべきものが極めて大きな影響を与える。何よりもまず、 家庭や地域の健全な教育環境の再生に注力がなされるべきであ る。 ( 2) 初 等 中 等 教 育 ①キャリア教育の推進 社会の構成員となるための勤労観・職業観を醸成するよう、 小中高一貫して、キャリア教育の推進を図ることが必要である。 特に、中学校では、すべての学校で 1 週間程度の職場体験を実 施するよう努めるべきである。このため、教育委員会と地元産 業界等との協力関係を確立すべきである。 7 ②学校、教員の資質向上 学校選択制の普及など、学校間の競争が健全に行われるよう 促 し て い く べ き で あ る 。ま た 、優 れ た 教 員 の 確 保・育 成 に 向 け 、 専門職大学院の設置、教員採用における社会人等の多様な人材 の確保及び教員の社会体験の推進、教員免許更新制の導入、指 導力不足教員の適切な人事管理など教員評価の改善を推進す べきである。 ③理数教育、英語教育の充実強化 理数大好きモデル地域やスーパーサイエンスハイスクールの増 加策などにより、理数教育を強化すべきである。また、地域の 実 情 に 応 じ 、英 語 教 育 を 小 学 校 段 階 か ら 充 実 さ せ る べ き で あ る 。 あわせて、小・中学校の授業時間を増やすとともに少人数教育 の充実を図り、基礎学力を定着させるべきである。 ④教育投資の拡充 上記のような取組を確実に実施し、将来に向けて我が国が競 争力を保持し続けるために、義務教育に要する経費の公的な支 出を一層拡充すべきである。 ⑤子供の文化芸術体験活動の推進 子供たちが本物の文化芸術に触れ、日頃味わえない感動や刺 激を直接体験することにより、感性と創造性を育むとともに我 が国文化を継承・発展させる環境を充実させるべきである。 ( 3) 高 等 教 育 ①大学院教育の質の向上 国際競争の場で活躍できる研究者を育成するため、英語のプ レゼンテーション能力や研究プロジェクトの企画・マネジメン ト能力等も含めた幅広く高度な知識・能力が身に付く体系的な 教育課程とその組織的展開の確立を進めるべきである。 また、質の高い専門職大学院の創設・拡充を図っていくこと を通じて、専門性の高い人材の育成を行うべきである。 8 ②大学院学生に対する経済的サポートの充実 博士課程(後期)在学者等を対象とした修学上の支援策の充 実 を 図 る た め 、フ ェ ロ ー シ ッ プ 及 び TA( テ ィ ー チ ン グ ア シ ス タ ン ト ) や RA( リ サ ー チ ア シ ス タ ン ト ) と し て も 活 用 で き る 競 争的資金の拡充等を図るべきである。 ③大学教員の質の向上 大学教員について、一定期間ごとに適性や資質能力を厳正に 審査する仕組み(特に教員の教育活動についての評価を行う仕 組み)及びそれを教員給与などに反映するような仕組みを導入 すべきである。 また、 「 テ ニ ュ ア・ト ラ ッ ク 制 」や「 一 回 異 動 の 原 則 」の 導 入 の推進、若手教員に対するスタートアップ支援等の取組を行う べきである。 ④大学改革の推進 高等教育の質的向上を図るため、大学改革の努力とともに基 盤的な経費が確保されるべきである。その際、評価に基づく国 立大学法人運営費交付金の配分や私学助成の補助効果を考慮し た重点配分の推進を図るとともに、世界一流の人材の育成と先 端 研 究 を 推 進 す る 施 設 等 の 基 盤 を 強 化 す べ き で あ る 。あ わ せ て 、 国公私立を通じて競争原理に基づく資源配分を充実すべきであ る。 また、奨学金による意欲・能力のある個人に対する支援や寄 付税制の充実等を図り、多元的な財政支援システムを構築すべ きである。 ⑤大学の教育機能の強化と産学連携の推進 大学における教育機能の強化を図り、社会にとって有為な人 材を輩出するために、大学の評価制度を有効に活用するととも に、厳格な成績評価の導入などにより「出口管理」の強化を推 進し、あわせて、学生への就職サポート機能を強化させるべき である。 また、産学が人材の育成・活用に関し、建設的な協力体制を 9 構 築 し 、産 業 界 等 社 会 の ニ ー ズ を 反 映 し た カ リ キ ュ ラ ム の 改 善 、 実践的なインターンシップの実施、ものづくり分野等における 専 門 職 大 学 院 の 活 用 、 技 術 と 経 営 を 理 解 で き る MOT 人 材 の 育 成などの取組や人材交流を積極的に展開すべきである。このた め、大学と産業界との情報交換の場を設けるべきである。 ( 4) 企 業 に お け る 人 材 育 成 ・ 確 保 企業における競争力ある人材の育成・確保を促進するため、 人 材 投 資 促 進 税 制 、 も の づ く り 等 に お け る OB 人 材 の 活 用 な ど 企業における人材育成・確保に対する支援を強化していくべき である。特に、中小企業の人材育成・確保を重点的に支援して いく必要がある。 また、博士号取得者等の理数系を目指す人材の裾野を拡大す るため、企業は優れた研究者・技術者を幹部クラスで処遇する よう努めるべきである。 10 3. 競 争 力 を 支 え る イ ン フ ラ の 抜 本 的 強 化 ( 1) 総 合 交 通 ・ 物 流 ネ ッ ト ワ ー ク の 整 備 国際競争力を維持・強化するための基幹的インフラとなる 陸・海・空 に わ た る 総 合 交 通 体 系 を 実 現 す る こ と が 必 要 で あ る 。 このため、ハード・ソフトにわたる総合的な施策を講じて、国 際拠点港湾・空港の整備や管理運営の効率化、これを効果的に 連 結 す る 高 速 道 路・鉄 道 網 な ど 基 幹 的 交 通 ネ ッ ト ワ ー ク の 整 備 、 交通結節点における連携強化などを一体的に推進すべきである。 とりわけ、経済のグローバル化が進み、特にアジア地域が一 体的な経済圏となる中で、物流ニーズの高度化・多様化に適確 に対応するため、迅速・円滑・効率的な国際物流システムを実 現することが必要である。このため、新たな総合物流施策大綱 を早急に策定すべきである。 具体的には、国際拠点港湾・空港の整備・管理運営の効率化 を図るため、スーパー中枢港湾や東アジア主要港湾との航路に 対応したサプライチェーン・ゲートウェイ港湾の整備、大都市 圏拠点空港の整備を推進すべきである。また、拠点港湾・空港 へのアクセスの改善、交通渋滞の解消、国際標準のコンテナが 積み替えなしで走行可能な道路ネットワークの構築を図るため、 ボトルネック区間に対する重点的取組を推進すべきである。さ らに、拠点港湾・空港の低コスト化・サービス水準向上を図る た め 、24 時 間 オ ー プ ン 体 制 を 早 急 に 実 現 す る と と も に 、手 続 の 簡素化・標準化・電子化、コスト削減・リードタイム短縮等を 図るべきである。 ま た 、イ ン タ ー ネ ッ ト EDI、IC タ グ 等 の 標 準 化 と 普 及 を 推 進 し 、 物 流 に お け る IT 化 を 広 く 進 め て い く べ き で あ る 。 さらに、我が国の物流企業の国際物流事業の拡大・展開を促 進するため、必要な規制の見直しや輸送力の拡充のための措置 を推進すべきである。 ( 2)IT イ ン フ ラ 整 備 、利 活 用 促 進 と 次 世 代 IT 領 域 で の 優 位 性 の確立 IT イ ン フ ラ は 、概 ね 世 界 最 高 水 準 の も の と な っ た が 、利 活 用 は 未 だ 不 十 分 な 状 況 に あ る 。企 業 に お け る IT 利 活 用 は 、国 際 競 11 争力強化の重要な要素であり、その飛躍的導入が必要である。 インフラに関しては、電波について、割当制度の運用におい て 、有 効 利 用 の イ ン セ ン テ ィ ブ が 働 く 環 境 を 整 備 す る と と も に 、 今後は、電波の二次取引市場の実現、割当に代わる公共財とし ての電波利用の実現(コモンズの導入など)を目指していくべ き で あ る 。ま た 、ユ ビ キ タ ス 社 会 の 基 盤 を 支 え る 最 先 端 の 技 術 、 例 え ば PLC( 電 力 線 搬 送 通 信 )、 UWB( 超 広 域 帯 無 線 ) の 早 期 実用化を図るため、電波法関連の規制を早急に緩和すべきであ る。 IT 利 活 用 に 関 し て は 、抜 本 的 な 業 務 改 革 や 新 た な ビ ジ ネ ス モ デ ル の 導 入 を 促 進 し 、企 業 の 潜 在 力 を IT に よ り 引 き 出 す と と も に 、情 報 セ キ ュ リ テ ィ の 確 立 を 実 現 す る た め 、IT 投 資 促 進 税 制 の 充 実・延 長 等 に よ り IT 投 資 を 加 速 的 に 促 進 す べ き で あ る 。ま た、組込みソフトウェアをはじめとしてソフトウェアの規模・ 複雑さが著しく増大していることにかんがみ、ソフトウェア開 発 人 材 の 質・量 両 面 の 向 上 を 図 る と と も に 、IT 利 用 企 業 の 人 材 育成を促進すべきである。 ま た 、情 報 家 電 の ネ ッ ト ワ ー ク 化 、医 療・教 育 の IT 化 を 促 進 するとともに、個人情報の保護、情報漏洩の防止などを強化し つ つ 、 IC タ グ 、 EDI な ど 効 率 的 か つ 高 信 頼 な IT 基 盤 の 構 築 を 促進すべきである。 さ ら に 、日 本 の IT産 業 に お い て は 、現 在 の 垂 直 統 合 型 の 全 面 展 開 を 見 直 し「 選 択 と 集 中 」を 追 求 す る こ と が 必 要 で あ る 。同 時 に 、 次 世 代 を に ら ん だ 世 界 最 強 の イ ン フ ラ・プ ラ ッ ト フ ォ ー ム の 構 築 や 、国 際 優 位 を 確 保 で き る 独 自 の 技 術・素 材・デ バ イ ス シ ス テ ム の開発を産学官連携のもとに国家プロジェクトとして進めるこ と が 必 要 で あ る 。加 え て 、携 帯 ・デ ジ タ ル 家 電 ・ICタ グ 等 個 別 製 品 で の 強 み を 生 活 分 野 、ビ ジ ネ ス 、行 政 、社 会 的 課 題 等 各 分 野 の ソリューションでの強みに高めていくことが競争優位を維持す る上で緊急の課題である。 ( 3) 資 金 調 達 ・ 金 融 制 度 の 整 備 金 融 行 政 は 、こ れ ま で と も す れ ば 、金 融 機 関 の 不 良 債 権 処 理 、 検査監督の厳格化に重心が置かれてきたが、今後は、検査監督 の信頼性・効率性の向上を図りつつ、我が国金融産業・金融シ 12 ステムの国際競争力強化に重心を置くべきである。すなわち、 新たな金融商品・金融手法の開発による金融イノベーションに 向けた金融機関の取組の促進、リスクを市場で流通・吸収させ る貸出債権の流通市場の整備など新たな金融・資本市場の発展 拡大の促進、金融機関の海外展開の円滑化など金融機関の国際 競争力強化のための環境整備を重視するとともに、金融機関自 らも国際競争力強化のための取組を強化していくべきである。 また、投資サービス法制については、投資家保護の適正化とリ スクマネー供給の拡大のバランスを確保しながら、具体的な制 度設計を進めるべきである。 また、我が国のイノベーションを担う企業に対する資金供給 を円滑化するための制度・仕組み作りを進めることが必要であ る。具体的には、動産担保融資の促進や融資先企業の技術や将 来性等に着目して担保に過度に依存しない融資の促進、電子債 権法制の整備等、企業の資金調達手法の多様化が可能になる環 境を整備するとともに、エンジェル税制の活用拡大、エンジェ ル投資家と企業を結びつけるネットワークの充実等のベンチャ ー企業へのリスクマネー供給の円滑化を図るべきである。加え て、留保金課税を廃止するなど、企業の自己資本充実等による 財務基盤の強化を促進すべきである。 加えて、我が国産業の国際的な事業展開を金融面から支援す るため、アジア諸国等との経済連携協定や投資協定等の交渉に おいて、現地国内の金融サービス、資金移動に係る規制等の見 直しを働きかけるとともに、アジア債券市場の育成や貿易・投 資円滑化支援等の地域金融協力を一体的・戦略的に進めるべき である。 ( 4) 政 府 調 達 の 活 用 政府調達をベンチャー企業等の新規事業の初期市場を確保す る た め に 活 用 す る こ と が 重 要 で あ る 。こ の た め 、WTO 協 定 上 随 意契約が認められる場合には、各府省は、透明性及び説明責任 の確保を前提に、随意契約を積極的に活用し、ベンチャー企業 等から優先的に調達するよう努めるべきである。また、競争入 札を行う場合にも、ベンチャー企業等が不当に不利な扱いを受 けることのないよう、企業規模、営業実績等の入札参加要件の 13 緩和を検討すべきである。 情報システムの政府調達については、各府省において民間コ ンサルタントの積極的な活用を図るなど、効率的な調達体制を 強化すべきである。さらに、情報システムの効率性・信頼性の 一層の向上を図るため、オープンソースソフトウェアを積極的 に活用すべきであり、そのための指針を早急にとりまとめるべ きである。 ( 5) 頭 脳 流 入 の 円 滑 化 海外から優秀な研究者や留学生などの高度人材を確保するこ とは、我が国の国際競争力強化にとって重要な課題であり、海 外からの高度人材確保のための環境を早急に整備すべきである。 このため、魅力ある研究環境の整備、高度人材に係る在留資 格や短期滞在要件の緩和、在留期間の延長(技術者・研究者や 優秀な留学生の永住権取得条件の緩和、留学生の就職活動目的 での在留期間の延長、技術者・研究者の実務経験年数の短縮な ど)を実施すべきである。 また、産学官共同のプロジェクトにより、海外からの人材の 発 掘・活 用 、留 学 生 の 日 本 で の 就 職 支 援 等 を 実 施 す る と と も に 、 居住環境の整備や子弟の教育の場の確保等、生活環境の整備を 進めるべきである。 ( 6) 雇 用 関 連 法 制 の 見 直 し 雇 用 関 連 法 制 に つ い て 、我 が 国 の 国 際 競 争 力 強 化 の 観 点 か ら 、 必要な見直しを行うべきである。 具体的には、大学や企業の研究者、技術者など創造的・専門 的能力を発揮し自律的な働き方をする人材については、労働時 間規制の対象から除外すべきである。 ( 7) 対 外 経 済 政 策 の 強 化 我が国は、貿易、投資に関して相互依存関係の深いアジア等 との経済連携協定等を一層促進し、我が国からの主要輸出品目 の例外無き関税撤廃を通じた製品輸出拡大を実現するとともに、 投資・サービスの高度な自由化及び海外事業環境整備を通じた 我が国企業の海外事業円滑化及びそれによる投資収益の拡大を 14 図るべきである。これらを実現するとともに、我が国の低生産 性部門の生産性向上を図るためにも、経済連携協定の中におい て、我が国市場の積極的な開放を行うべきである。 また、経済連携強化に資する産業人材育成、中小企業振興、 IT 関 連 分 野 や 、 資 源 ・ エ ネ ル ギ ー 分 野 な ど で 、 ODA を は じ め とする対外政策ツールを戦略的に活用すべきである。 さらに、総理を始めとする政府要人が外国を訪問する際に産 業界要人が同行するなどの戦略的・効果的なトップセールスを 実 施 す る こ と や 、 在 外 公 館 が 日 本 貿 易 振 興 機 構 ( JETRO) 等 と も連携しながら本邦企業支援のために現地政府への働きかけを 強化するなど、海外市場拡大等のために官民一体となった取組 及び体制整備を推進すべきである。 ( 8) そ の 他 の 経 済 環 境 の 整 備 上記のほか、我が国が国際競争力を維持・強化するため、以 下に掲げるインフラ、経済環境を整備すべきである。 ① 企 業 が 経 営 資 源 の 機 動 的 か つ 有 効 な 活 用 を 図 り 、「 選 択 と 集 中 」に 主 体 的 に 取 り 組 む こ と が で き る よ う 、企 業 法 制 の 充 実 、 企業結合規制の見直しなど独占禁止法の見直しを行うべきで ある。 ②産業競争力強化に向けて研究開発・人材・設備投資を促進す るための税制措置(研究開発促進税制、人材投資促進税制、 IT 投 資 促 進 税 制 の 充 実 等 、留 保 金 課 税 の 廃 止 、減 価 償 却 制 度 の見直し等)を講じるべきである。 ③中国等アジア地域におけるエネルギー需要の拡大等を踏まえ、 資源エネルギーの低廉かつ安定的な供給を確保するため、省 エネルギー・新エネルギー対策、原子力の推進、天然ガスシ フトや、石油・天然ガス権益の確保などの総合的な資源戦略 を推進すべきである。 ④環境問題については、環境ルールについての国際標準化を主 導して我が国企業の国際競争力強化につなげる取組を促進す 15 るとともに、地球温暖化対策を始めとする環境対策を進める にあたっては「環境と経済の両立」を大原則とし、諸外国と 比較して我が国産業の国際競争力が著しく損なわれることが ないよう留意すべきである。 16 4. 産 業 の 国 際 競 争 力 強 化 ( 1) 新 産 業 創 造 、 も の づ く り (新産業創造戦略) 我が国の伝統・文化に裏打ちされた真摯な「ものづくり」の 姿 勢 や き め 細 か な「 も て な し の 心 」、お 互 い の 信 頼 関 係 に 基 づ い た「擦り合わせ」など、我が国産業の持つ「強み」を更に伸ば し、新産業の創造を目指す「新産業創造戦略」を着実に推進し ていくべきである。 同戦略にある燃料電池、情報家電、ロボット、コンテンツと いった高付加価値型の先端産業群と健康・福祉、環境・エネル ギー、ビジネス支援サービスといった社会ニーズの拡がりに対 応した産業群等を戦略分野とし、政策資源を重点的に投入して その育成を図るべきである。 また、同戦略の施策の更なる具体化を図ろうとする「新産業 創 造 戦 略 2005」を 推 進 し 、我 が 国 産 業 の 強 み の 源 泉 で あ る「 高 度部材産業集積」とこれを支える基盤技術を有する匠の中小企 業群の強化に重点的に取り組むべきである。あわせて、我が国 産業の強みを支える基礎となる人材の育成や技術の革新等を更 に進めるとともに、これらの知的資産の重要性が経営や市場で 適切に認識・評価されるための開示及び評価の指針を策定する 等の環境整備を行うべきである。 (コンテンツ) 特 に 、コ ン テ ン ツ に つ い て は 、我 が 国 文 化 芸 術 を 世 界 に 広 め る と い う 意 義 に も か ん が み 、積 極 的 に 国 際 競 争 力 強 化 に 取 り 組 む こ とが必要である。 近年、我が国の映画やアニメといったメディア芸術などのコ ンテンツは、諸外国で高く評価されるとともに、一層の関心が 寄せられている。この分野に重点投資を行うことにより、多様 で良質なコンテンツの創造を図るとともに、これを海外に発信 していくべきである。このため、産学官連携による人材育成、 国際的な共同制作や人材交流などを通じた国際展開の促進、権 利処理の円滑化などを通じたインターネット配信環境の更なる 整備等を積極的に進めるべきである。 17 ( 2) 農 林 水 産 業 (農業) 農業が競争力ある産業として自立・発展できるようにするた め、経営マインド・経営能力のある担い手農業者(法人経営・ 大規模家族経営等)が活動しやすい環境の整備を更に推進すべ きである。 また、生産資材や物流に係るコストの低減を図るため、農協 の意識改革・事業改革を推進するとともに、産地から量販店・ 食品メーカー・外食産業への直接販売を推進すべきである。 さらに、地域の農業・食品関連産業の連携によるクラスター 形成やそれを円滑化するコーディネート人材の育成等により地 域ブランドの育成・確立を促進すべきである。 また、東アジア経済圏の経済発展等の中で、農業の輸出産業 化を本格的に進めるため、輸出ニーズに対応した産地作りや、 在 外 公 館 、JETRO や 商 社 等 の 機 能 も 活 用 し た 海 外 市 場 の 開 拓 を 積極的に進めるべきである。 (水産業) 水産業について、最新の科学技術を活用して養殖振興や水産 資源管理を行うとともに、価格が産地で安く消費地で高いとい われる国産水産物の流通システムを抜本的に見直すべきである。 (森林・林業) 京都議定書を踏まえた地球温暖化防止を図る上でも重要な森 林・林業については、川下のニーズを十分考慮した上で輸入品 より優位な国産材の生産・流通・加工システムを構築すべきで ある。 ( 3) 医 薬 ・ 医 療 我が国医薬品産業の国際競争力強化を図る上で、新薬に係る 治験や審査の体制が大きな障害になっている。このため、治験 の円滑な実施について抜本的改善を図るため、ナショナルセン タ ー に 集 中 的 に 治 験 を 実 施 す る 施 設 を 設 置 す べ き で あ る 。ま た 、 迅速な審査を実現するため、新薬に係る審査体制を抜本的に強 18 化すべきである。さらに、臨床研究基盤を早期に整備するとと もに、基礎研究成果の臨床応用、実用化に直結する研究を強化 すべきである。 電 子 カ ル テ な ど 医 療 に お け る IT の 活 用 や そ の 相 互 運 用 性 確 保により効率的な医療システムの構築を図るとともに、地域に おける多様な主体の連携強化や医療機関等による民間手法を活 用した経営革新を促進すべきである。 ( 4) 観 光 日本の観光資源の国際的な魅力を高め、積極的に対外発信す ること等を通じて、観光の国際競争力を抜本的に強化する必要 がある。 我が国には、独特の観光資源の魅力(海山などの景勝地や文 化遺産が近接して存在し、それらが南北に長い国土に多彩に点 在していること、また、世界最先端の研究施設や高効率なもの づくり工場などの産業観光資源に恵まれていることなど)や、 諸外国に比べての治安の良さがある。加えて、地域で継承され てきた文化財や伝統芸能、新たな文化芸術活動などの地域の文 化資産も世界の人々を魅了する源泉となりうる。観光資源の魅 力を高める観点からも、これら地域の文化資産の形成・充実を 総合的に支援すべきである。 こうした我が国の観光資源の魅力を海外に発信するため、観 光ガイドブックや映像媒体を作成し外国の有力な書籍出版・販 売事業者や放送事業者に提供することによって、外国の一般市 民に積極的に紹介するとともに、外国人による訪日観光に対す るニーズ把握をきめ細かに行うべきである。このため、政府に おける対外情報発信・収集体制を強化し、様々な海外ネットワ ークを活用しながら積極的に取り組むべきである。 また、外国人観光客のニーズを踏まえ、我が国の持つ観光資 源を活かした魅力的な旅行企画を行う旅行業者や地域の関係者 による積極的な取組を促すべきである。さらに、それが出来る 人材が必要であり、海外で日本人観光客招致のために働きノウ ハウを有する日本人や、日本にも通じ企画に経験豊富な外国人 等の活用を促進するとともに、訪日観光に関する企画ノウハウ を有する人材を育成すべきである。あわせて、観光統計の体系 19 的整備、査証免除対象国・地域の拡大や在外公館における査証 発給手続きの簡素化・迅速化・透明化などに取り組むべきであ る。 20 我が国の国際競争力強化に向けた提言 21世紀における豊かな生活の実現 世界最速で進む 少子高齢化 世界最先端の 技術を創る 直面する環境変化 中国の台頭を始め 激化する国際競争 イノベーション創出を基軸とする国際競争力強化 ∼3つの鍵∼ ★研究開発に係る十分な政府投資規 模の数値目標を設定する。 ★総合科学技術会議主導で国家プロジェ クトを推進する。 ★競争的資金の審査体制を抜本的に 強化する。 ★産学連携の本格的な共同研究を推 進する。 産学官の力を結集し、 国際競争力強化のための 国策をまとめる 競争力を支える インフラを整える ★物流・交通ネットワークの一体的な整備を推進する。 ★金融行政の重心を国際競争力強化に置く。 ★総理外遊に産業界が同行するトップセールスなど海外 市場拡大のための官民一体の取組を推進する。 世界一の 人材を育てる ★基礎学力の充実、教員の質の向上を 図る。 ★研究・企画・経営の能力を身につけた 「強いドクター」を育成する。 ★小学校から大学・大学院まで、教育に おける産学連携を推進する。 ★企業における人材育成・確保、技術 系人材の処遇改善を促進する。 ★頭脳流入の円滑化のための環境整備を行う。 ★ITインフラ整備・利活用促進と次世代領域での優位性確立。 ★政府調達を新規産業の初期市場創出に活用する。 ★雇用関連法制を国際競争力強化の観点から見直す。 重点産業の国際競争力を強化する 新産業創造・ものづくり 農林水産業 医薬・医療 観光 (参考資料) Ⅰ.我が国が置かれた状況 (1)国際競争力の現状 各国の国際競争力について毎年調査を行っている国際経営開発研究所(IMD)の調 査によると、 ①我が国の国際競争力の総合順位は91年の1位から、04年には23位(60ヶ国中) へと低下(ただし、この2年間は改善。)。 ②アジア諸国の中での相対的な順位も低下。中国をかろうじて上回っている状況。 【アジア諸国における順位】 【主要国における順位】 0 91年 92年 93年 94年 95年 96年 97年 98年 99年 00年 01年 02年 03年 04年 1 2 3 1 2 1 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 3 4 5 0 5 5 1 2 2 3 2 2 4 2 2 12 11 12 13 14 15 20 12 13 15 15 16 16 16 17 18 20 19 20 19 22 25 19 19 20 20 21 22 22 23 24 22 23 23 25 25 21 22 23 米国 ドイツ イギリス フランス 日本 26 30 15 17 18 19 20 21 23 15 16 14 17 17 18 10 12 15 4 8 9 13 14 2 3 10 6 10 2 4 5 14 10 2 4 23 27 21 16 24 28 29 24 26 17 20 21 23 26 28 24 27 28 16 21 25 23 24 29 34 40 日本 中国 韓国 台湾 シンガポール タイ インドネシア マレーシア フィリピン 27 30 30 35 50 60 (注)00∼03のデータは04年の新調査方法を元に再算出しており、それ以前の順位との 厳密な経年変化を表すものではない。 91年 92年 93年 94年 95年 96年 97年 98年 99年 00年 01年 02年 03年 04年 (参考)国際競争力調査について 実施主体:国際経営開発研究所(IMD:International Institute for Management Development) )。スイスのローザンヌに本拠を置くヨーロッ パ有数の独立非営利研究機関。 評価対象:60ヶ国・地域(2004年版) 実施方法:各種の統計数値、評価対象国の企業人(経営幹部)に対するアンケート調査。1989年以来毎年1回実施。 評価内容:統計数値、アンケート結果を基に、各国の「経済状況」、「政府の効率性」、「ビジネスの効率性」、「ビジネスインフラ」を評価。こ れらを基に、総合順位を算出。 2 (2)少子高齢化の進展 ○今後我が国は、世界最速で少子高齢化が進展。 ○2020年には、65歳以上は人口の約3割に達するとの推計。 【高齢化率(65歳以上の人口割合)の推移】 【出生率の推移】 7.00 40.0 日本 韓国 イギリス ドイツ フランス アメリカ 中国 6.00 5.00 4.00 日本 韓国 イギリス ドイツ フランス アメリカ 中国 35.0 30.0 25.0 20.0 15.0 3.00 10.0 2.00 5.0 1.00 1950 ∼55 1955 ∼60 1960 ∼65 1965 ∼70 1970 ∼75 1975 ∼80 1980 ∼85 1985 ∼90 1990 ∼95 1995 ∼00 0.0 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 (出典)日本:総務省統計局「国勢調査報告」及び国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(2002年1月推計)」 その他の国:UN「World Population Prospects The 2004 Revision」 高齢化率の推計は中位推計。 3 2050 Ⅱ.国際競争力強化に向けた取組の必要性 1.研究開発 (1)科学技術力 ○我が国の科学技術力は世界第2位で、研究開発投資、特許取得数などが強みで ある一方、教育、産学連携に課題がある。 科学技術力 (主要項目を抜粋) 研究開発投資 研究開発従事者数 基礎研究 教育内容 特許取得件数(自国) 特許取得件数(海外) 知的財産権の保護 産学連携 (出典)IMDレポート2004 日本 米国 ドイツ 韓国 中国 2 1 3 19 17 2 2 9 25 1 2 7 23 1 1 9 2 1 2 4 3 4 18 33 5 3 1 20 7 7 14 44 3 12 14 42 6 3 11 53 9 32 15 46 4 (2)主要国の政府研究開発投資 ○政府負担研究費の対GDP比については、依然欧米に比べ低い状況。 【主要国における政府負担研究費の対国内総生産(GDP)比の推移】 ( %) 1. 4 日本 米国 ドイツ 1. 2 フランス 英国 フランス 0. 90% 1. 0 米国 0. 80% 0. 8 ドイツ 0. 80% 日本 0. 69% 0. 6 英国 0. 50% 0. 4 1980 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 01 02(年度) 注)1.国際比較を行うため、各国とも人文・社会科学を含めている。 2.日本は、1996年度及び2001年度に調査対象産業が追加され ている。 3.米国は、暦年の値で、2001年以降は暫定値である。 4.フランスの2002年度は暫定値である。 出典) 2003年度科学技術の振興に関する年次報告 資料) 日 本:総務省統計局「科学技術研究調査報告」 米 国:国立科学財団「National Patterns of R&D Resources」 ドイツ:連邦教育研究省「Bundesbericht Forschung」 フランス:「予算法案付属書」 英 国:国家統計局「Gross Domestic Expenditure on Research and Development」 ただし、1983年以前はOECD「MAIN SCIENCE AND TECHNOLOGY INDICATORS」。 5 (3)我が国の大学に対する民間企業の研究資金の支出状況 ○大学の研究費に占める企業からの資金の割合は欧米と比べて低い。 ○我が国の民間企業は国内大学に比べて海外の研究機関に研究費を多く支出する傾向。 大 学 研 究 費 に 占 め る 産 業 界 資 金 の 比 率 (%) 大学研究費における企業からの資金の割合 大学研究費における企業からの資金の割合 民間企業の研究費支出先の状況 民間企業の研究費支出先の状況 各国大学の研究費(総額)における企業からの資金の割合 民間企業の研究費支出先(2003年度実績 ) ・国内大学 : 約 834億円 ・海外研究機関 : 約 1,985億円 14 12 10 日本 (億円) 米国 20 00 1985 ドイツ 国内大学 イギリス 8 15 00 814 1431 1181 937 894 10 00 1557 1570 1348 海外研究機関 6 4 1519 1433 795 791 834 2 778 551 0 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 年 注:日本の「研究費」は総務省「科学技術研究調査報告」における「内部使用研究費」を指す。 出典:日本:総務省「科学技術研究調査報告」(産業界には、公庫・公団等を含む。) 米国:NSF,“National Patterns of R&D Resources 2002 Data Update” (年度) ドイツ、フランス:OECD,“Basic Science and Technology Statistics 2002/2” イギリス:OECD,“Basic Science and Technology Statistics 2002/2”。 2001年からはONS,“Gross domestic expenditure on research and development 2002” 5 00 430 558 452 492 564 577 531 564 604 594 619 675 720 384 0 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 出典:総務省「2003年度 科学技術研究調査報告」 6 2.人材・教育 (1)子どもたちの学力等の現状(国際比較調査の概要) 生徒の学習到達度調査(PISA)平成15年(2003年)調査 (OECD(経済協力開発機構)実施) ○我が国の学力は、全体として国際的に見て上位であるが、 読解力など低下傾向にあり、世界トップレベルとは言えなくなってしまった。 国 際 数 学 ・ 理 科 教 育 動 向 調 査 ( TIMSS2003) ( 国 際 教 育 到 達 度 評 価 学 会 ( IEA) 実 施 ) ○我が国の児童生徒の学力は、国際的に見て上位であるが、小学校 理科、中学校数学は前回より得点が低下。 (小4、中2を対象) ○テレビやビデオを見る時間が長く、家の手伝いをする時間が短い。 ○また、学ぶ意欲や学習習慣が国際平均よりも低い。 (1) 我 が 国 の 成 績 ① 算 数 ・ 数 学 の 成 績 小 平均得点の国際比較 ( 4 0 カ 国 ・ 地 域 参 加 ) 1位グループ/香港 、フィンランド 、韓 国 、オ ラ ン ダ 、 リ ヒ テ ン シ ュ タ イ ン 、日本(6位) 数学的活用能力 (前回1位) 読解力 校 中 学 校 実 施 し て い な い 2 位 / 1 2 国 昭 和 5 6 年 ( 第 2 回 ) 実 施 し て い な い 1 位 / 2 0 国 3 位 / 2 6 国 3 位 / 4 1 国 平 成 1 1 年( 第 3 回 追 調 査 ) 実 施 し て い な い 5 位 / 3 8 国 平 成 1 5 年 ( 第 4 回 ) 5 位 / 4 6 国 平 成 OECD平均と同程度(14位) 学 昭 和 3 9 年 ( 第 1 回 ) 7 年 ( 第 3 回 ) 3 位 / 2 5 国 (前回8位) 科学的活用能力 1 位 グ ル ー プ / フ ィ ン ラ ン ド 、日本 ( 2 位 ) 、 香港、韓国 (前回2位) 問題解決能力 (今回から実施) ② 理 科 の 成 績 小 1位グループ/ 韓 国 、 香 港 、 フ ィ ン ラ ン ド 、 日本 ( 4 位 ) 学習への興味・関心(PISA2003・高校1年) 学習への興味・関心(PISA2003・高校1年) 学 校 中 学 校 昭 和 4 5 年 ( 第 1 回 ) 1 位 / 1 6 国 1 位 / 1 8 国 昭 和 5 8 年 ( 第 2 回 ) 1 位 / 1 9 国 2 位 / 2 6 国 平 成 2 位 / 2 6 国 3 位 / 4 1 国 平 成 1 1 年( 第 3 回 追 調 査 ) 実 施 し て い な い 4 位 / 3 8 国 平 成 1 5 年 ( 第 4 回 ) 6 位 / 4 6 国 7 年 ( 第 3 回 ) 3 位 / 2 5 国 学校外での一日の時間の過ごし方(TIMSS2003・中学校2年) 学校外での一日の時間の過ごし方(TIMSS2003・中学校2年) 70.0% 3.0 60.0% 国際平均値, 53.1% 50.0% 40.0% 日本, 32.5% 30.0% 20.0% 10.0% 0.0% 一 日 当 た り の 平 均 時 間 2.5 2.7 (最長) 日本 国際平均値 2.0 1.9 1.7 1.5 1.0 1.3 1.0 (最短) 0.6 0.5 0.0 数学で学ぶ内容に興味がある生徒の割合 宿題をする テレビやビデオを見る 家の仕事(手伝い)をする 7 (2)大学教育 ○大学進学率では中国を上回るものの、中国の方が大学進学者の数は多い。 ○中国と比較して我が国の大学生(文系)の理系知識は低い水準にあり、また、国際 的に見て大学教育は経済ニーズに十分に対応していないとの指摘がある。 60 50 【大学進学率(%)(2002年)】 100 【小中学校レベルの数学テストにおいて満点 9 5 .6 5 を取った大学生(文系)の割合(%)】 49 80 40 60 45 30 40 20 2 2 .9 2 14 20 10 4 .7 1 .8 9 0 0 日本 中国トップ 校 中国 (資料)文部科学省「教育指標の国際比較(2003年度版)」、中国教育部 8 日本【国立】トップ 校A 日本【国立】トップ 校B 日本【私立】トップ 校a 日本【私立】トップ 校b (出所)日本のトップの大学の文系学生の数学力・学力調査(慶大・戸瀬信之教授と京大・西 村和雄教授の共同研究)(1999年度) 【大学教育が経済のニーズに応えている度合い】 10位 26位 6 28位 41位 46位 58位 4 2 0 米国 フランス 台湾 英国 中国 日本 (出典)IMD レポート 2004 8 (3)大学院教育 ○我が国の大学院学生の数は近年増加しているものの、人口千人当たりの比率は欧米 諸国には及ばない状況。 【大学院在学者数の推移】 [人] 250,000 231,489 【人口千人当たりの大学院学生数】 10年間で約2倍 200,000 150,000 122,360 日本 米国 フランス 英国 1.62 3.86 100,000 50,000 0 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 3.70 2.72 出典:文部科学省「教育指標の国際比較」を参考に作成2000年の データ 出典:文部科学省「学校基本調査」 9 3.インフラ (1)交通・物流 ○ここ20年間で我が国の港湾・空港の世界での地位は下落。 【世界の主要空港の国際貨物取扱量】 【世界の主要港湾のコンテナ貨物量】 1980年 順位 港 名 1990年 2004年 取扱量 順位 港 名 順 位 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 取扱量 1 ニューヨーク/ニュージャージー 1,947 1(1) 香港 21,932 2 ロッテルダム 1,901 2(2) シンガポール 20,600 3 香港 1,465 3(3) 上海 14,557 4 神戸 1,456 4(4) 深圳 13,650 5 高雄 979 5(5) 釜山 11,430 6 シンガポール 917 6(6) 高雄 9,710 7 サンファン 852 7(8) ロッテルダム 8,300 8 ロングビーチ 825 8(7) ロサンゼルス 7,321 9 ハンブルク 783 9(9) ハンブルク 7,003 10 オークランド ⋮ 782 10(11) ドゥバイ ⋮ 722 2003年 ・ ・ 20(17) 東京 632 29(27) 横浜 3,580 ⋮ 18 東京 634 ⋮ ⋮ 16 釜山 2,577 ・ 注1) ※(31) 名古屋 ⋮ ・ 2,074 ・ 注1) ・ 46 名古屋 ※(32) 神戸 206 新東京国際空港(成田) フランクフルト・マイン ニューヨーク/J.F.ケネディ 香港/香港 ロンドン/ヒースロー マイアミ シンガポール/チャンギ パリ/シャルル・ド・ゴール アムステルダム/スキポール ソウル/キンポ 取扱量 千トン 1,341 1,035 945 802 710 633 621 605 592 576 6,429 ・ 12 横浜 空 港 名 2,046 ※は、31位以下のため、具体的順位は 不明 ( )内は2003年の順位 出典:CONTAINRISATION INTERNATIONAL YEARBOOK (1980年及び2005年) March 2005 Containersation International 注1)名古屋港、神戸港のコンテナ取扱量は、2003年の数字 順 位 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 空 港 名 香港/香港インターナショナル 新東京国際空港(成田) アンカレジインターナショナル シンガポール/チャンギ フランクフルト・マイン マイアミインターナショナル アムステルダム/スキポール 台北/チャンカイセキ ロンドン/ヒースロー ソウル/仁川 取扱量 千トン 2,046 1,622 1,609 1,507 1,424 1,220 1,183 1,178 1,174 1,168 出所:ICAO,Civil Aviation Statistics of the World,Digest of Statistics,Airport Traffic 10 ○我が国の港湾・空港の諸料金は世界的にみて高水準。 【世界の空港における着陸料】 B-747-400型(395トン) 【港湾諸料金の国際比較と費用内訳】 (40フィートコンテナ1個当たり) (指数) Ratio 250 223 1,303 ニューヨーク・J・F・K 1,004 東京・成田 191 200 959 関西空港 150 680 アムステルダム・スキポール バリ・シャルル・ド・ゴール 657 フランクフルト・マイン 654 100 100 92 65 64 高雄 Kaoshiung 釜山 Busan 64 50 621 上海・浦東国際 0 475 香港・チェクラップッコック 東京 Tokyo 412 ソウル・仁川 365 台北・中正 288 シドニー 236 シンガポール・チャンギ 191 ロンドン・ヒースロー 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 (thousand yen) 出所:IATA“AIRPORT & AIR NAVIGATION CHARGES MANUAL”成田空港ハンドブック2004 香港 シンガポールロッテルダムロサンゼルス HongKong Singapore Rotterdam LA 注1:コンテナ取扱料金は、CTオペレーター、利用船社に対 する ヒアリング(1999年、2000年)結果による。 注2:コンテナ取扱料金とは、以下の諸費用の合計である。 リース料、係留施設料、オフィス労働者人件費、港湾労 働者人件費、荷役機械償却費、荷役機械メンテナンス費、 電力費、オフドックコンテナ料、トン税、入港料、各使 用料(パイロット、進路警戒船、タグボート)、網取放 作業量、その他 出所:「海事レポート2003年版」(国土交通省海事局) 11 (2)資金・金融 (企業の資金調達) ○諸外国と比べて我が国企業の資金調達は、直接金融(株式・出資金)の比率が低く、 間接金融(借入)の比率が高い。 【各国企業の負債構成(2001年末、日本のみ2003年度末)】 借入 0.30 カナダ (兆カナダドル) その他 0.58 債券 0.32 借入 0.67 イタリア (兆ユーロ) その他 0.70 借入 4.00 米国 (兆ドル) その他 6.01 0% 20% 株式・出資金 1.80 債券 0.24 債券 2.86 40% 債券 113 3.6兆ユーロ (422兆円) 28.6兆ドル (3769兆円) 株式・出資金 15.73 その他 256 2.1兆ユーロ (246兆円) 2.7兆ポンド (518兆円) 株式・出資金 1.62 借入 437 日本 (兆円) 債券 0.07 2.0兆カナダドル (166兆円) 5.0兆ユーロ (587兆円) 株式・出資金 3.05 その他 0.43 その他 0.14 借入 0.70 イギリス (兆ポンド) 株式・出資金 1.07 債券 0.30 借入 1.33 ドイツ (兆ユーロ) 債券 0.04 その他 0.32 借入 1.00 フランス (兆ユーロ) 株式・出資金 0.80 株式・出資金 440 60% 資料:日銀「資金循環統計の国際比較」(2003年12月)、「資金循環統計」(2004年9月) 80% 1256兆円 100% 12 (家計の金融資産の状況) ○我が国における家計が保有するリスク金融資産(株式・出資金、投信、債券の合計)の比率 は14%にとどまり、諸外国(例えば、米は56%、独は37%)に比べて非常に低い水準となっている。 【各国の家計金融資産内訳】 カナダ 27.1 イタリア 27.1 3.00.0 ドイツ 2.2 11.3 1.3 4.6 10.2 20% 現金・預金 26.4 11.7 14.1 1.3 3.1 29.4 投資信託 2.6 投資信託 資料:日銀「資金循環統計の国際比較」(2003年) 日本のみ2003年度末の数値。 債券 3.3 60% 株式・ 出資金 株式・ 出資金 8.1 0.6 3.7 28.4 33.8 40% 債券 13.9 54.1 現金・預金 54.7 0% 22.2 13.5 12.4 日本 1.1 29.2 10.7 23.4 米国 15.0 9.3 33.8 イギリス 40.8 21.2 29.2 フランス 27.9 2.9 保険・ 年金準備金 27.0 その他 4.3 80% 保険・ 年金準備金 100% その他 13 (3)頭脳流入 ○我が国の留学生の受け入れは、増加傾向にあるものの、諸外国には及ばない状況。 ○他方、海外からの技術・研究職の人材流入は減少傾向。 【留学生受け入れ人数の推移】 (人) 【在留資格ごとの外国人新規入国者数】 (人) 700,000 6,000 600,000 586,323 技術 教授 研究 5,000 500,000 人材の流入量は 減少傾向 アメリカ 4,000 400,000 3,000 300,000 イギリス 200,000 2,000 227,026 180,418 フランス 100,000 242,755 1,000 136,252 ドイツ 117,302 ロシア連邦 日本 0 0 オーストラリア H10 11 12 13 14 98 99 00 01 02 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 (年) (出典)アメリカ:「OPEN DOORS」(1994年∼2002年) 出典:法務省出入国管理局統計を基に作成 イギリス: HESA 「STUDENTS in Higher Education Institutions」(1997年から2001年) フランス:フランス国民教育省(1998年∼2002年) オーストラリア: AEI 「Overseas Student Statistics 2001」(1998年∼2003年) 日本:文部科学省学生支援課調べ(1983年∼2003年)、(独)日本学生支援機構調べ(2004年) 上記以外:ユネスコ文化統計年鑑 14 4.産業 (1)新産業創造戦略(2004年5月)の骨格 【戦略7分野】 ①日本の将来の発展を支える戦略分野 ②国民ニーズが強く内需主導の成長に貢献する分野 ③我が国の産業集積の強みが活かせる分野 ④官民一体の総合的政策展開が必要な分野 7分野合計で、約300兆円の 生産額が期待 (2010年) 【先端的な新産業分野】 【市場ニーズの拡がりに 対応する新産業分野】 燃料電池 1兆円 官民での壮大な シナリオづくり 情報家電 18兆円 川下家電産業の 競争力強化 ロボット 2兆円 先行用途の開発促進 コンテンツ 17兆円 国際展開の促進 健康・福祉・機器・ サービス 75兆円 総合的な育成 (含む食品産業) 環境・エネルギー・機器・ サービス 78兆円 研究開発 の促進 ビジネス支援 サービス 107兆円 人材育成 7分野ごとに、具体的 な市場規模、目標年限 を明示した政策のアク ションプラン等を明示 【地域再生の産業分野】 先端産業 (IT、バイオなど) 産学官ネット ワーク強化 横断的重点施策 1.産業人材の強化 ○企業による人材投資の促進 ○優秀な人材を育てるための顕 彰制度の充実 ○ものづくり教育の充実 ものづくり産業 高度部材集積 の活用 地域サービス産業 (集客交流サービス) 地域の魅力の 再認識と発信 食品産業 地域ブランドの発信 革新技術(ナノテク、バイオ、IT、環境)と伝統技術(からくり、技法等) 2.知的財産の保護強化 ○営業秘密を含む知的財産の 保護を強化 ○技術流出防止の徹底 3.研究開発の重点化 ○研究開発の思い切った戦略分 野への重点化 など14項目 15 (2)コンテンツ ○日本のコンテンツは、世界各地で高い評価。(北野武監督「座頭市」ベネチア国際映画祭銀獅子賞 受賞(2003年)、 宮崎駿監督「ハウルの動く城」ベネチア国際映画祭オゼッラ賞(技術貢献賞)受賞(2004年)など) ○コンテンツ産業は、製造業等他産業に高い波及効果を持つとともに、文化への理解、 国家ブランド価値の増大に寄与。 ○しかしながら、日本のコンテンツ産業のGDPに対する割合は、世界平均及び米国に及 ばない状況。 【コンテンツの経済効果】 【我が国のコンテンツ産業と世界市場】 (ポケモンの例) ゲーム機 (売上1000 億円) カードゲーム (売上1200億 円) ゲームソフト (売上930億円) VTR/DV D (売上30億 円) 映画 (興行収入 294億円) テレビアニメ (4-12歳児平 均視聴率、 40%以上) ポケモン ジェット (売上3億 円) [ポケモンの海外進出] テレビアニメ:68カ国、25言 語で放映、映画:海外興行 収入2億8400万米ドル、 ゲームボーイ:世界を含める と1億台出荷、関連商品、 海外30,000アイテム、ライ センシー500社・・・ ポケモン関連商品 4,000アイテム (2000年) コンテンツ規模 GDP うち海外売上 コンテンツ / GDP 海外/コンテンツ 規模 7,000億円 漫画 単行本 ゲーム攻略 本(売上154 億円) 日本 玩具 漫画雑誌 月間120万 部発行) 1,091億ドル 4.9兆ドル 2% 食品 教育用品、 文房具 子供用 衣料 2% 2% 31億ドル 3% 855億ドル 17% 5% 5% アメリカ 5,068億ドル 9.8兆ドル 5% 世界 30.9兆ドル 3% ・・・ 直接効果:1兆円 1次・2次波及効果を加算すると、 波及効果合計:2兆3千億円 1兆ドル (「Copyright Industry in The U.S. Economy」2002報告書、経済産業省資料、 内閣府「海外経済データ」(平成15年7月)、浜野保樹「表現のビジネス」) 更に、海外市場規模2兆円 16
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