鶏アレルギー - Phadia

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△最近の話題
:
△特異的 IgE 検査
No.3
鶏アレルギー
:
ファディア株式会社
メールニュース
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小麦などの新しいコンポーネント
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発行
(サーモフィッシャーサイエンティフィック グループ)
www.thermoscientific.com/phadia/ja
------------------------------------------------------------------------------------------------------------△ 最近の話題
:
鶏アレルギー
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鶏アレルギーでよく知られているのは、乳児の鶏卵アレルギーで、成人ではほとんど診る
ことはありません。成人において長期に鳥を飼育していた人で鶏肉や鶏卵アレルギーを発
症する Bird-egg syndrome が知られていますが、本邦ではあまり診ることはありません。
Bird-egg syndrome の病態は現在良く知られている花粉‐食物アレルギー症候群(PFS)と
同じクラス 2 食物アレルギーと考えられます 1)。すなわち、鳥の羽毛、糞などに含まれる血
清アルブミン(αリベチン:Gal d 5)に経気道的に感作され、鶏肉や卵黄中に含まれる Gal
d 5 によって食物アレルギー症状が誘発されると考えられます。
鶏肉アレルギーの頻度は多くありませんが、卵アレルギーを持たない鶏肉アレルギーに関
する報告を紹介します 2,3)。
【Case Report1】
Gonzalez-Mancebo E, Pastor C, Gonzalez-Olano D, Gandolfo-Cano M, Melendez A,
Cuesta J, Zapatero A. Identification of allergens in chicken meat. J Investig Allergol Clin
Immunol 2011; 21: 326-7.
スペインからの報告:鶏肉アレルギーでのアレルゲンの同定
20 歳の男性
鶏肉摂取 15 分後に咽頭と手掌の痒み、顔面の蕁麻疹、口唇の腫れ、嚥下困難、呼吸困難、
胸やけを訴えた。本症例は七面鳥の摂取は可能で、牛、豚、ウサギ、他の家禽の肉は摂取
していなかった。卵は摂取可能であり、鳥との接触は持っていなかった。
検査)
一般的な肉エキス、卵タンパク、羽毛ミックスで SPT 実施。すべて陰性。生、茹でた鶏肉、
七面鳥、アヒル、ウズラ、で Prick-Prick テスト実施。生のウズラ以外すべて陽性。生、茹
でた鶏肉、七面鳥、アヒル、ウズラ、ダチョウ、卵黄、卵白の抽出 SPT 実施。卵のタンパ
ク以外全て陽性。特異的 IgE 検査も鶏肉、牛、豚、羊、卵黄、卵白、オボアルブミン、オ
ボムコイドは陰性。自家系 ELISA による特異的 IgE 検査では、茹でた鶏肉、七面鳥、アヒ
ル、ウズラ、ダチョウのいずれも陽性だった。
患者はアヒル、ウズラ、ダチョウの経口負荷試験を拒否した。
本症例の血清はイムノブロッティングの検討で、茹でた鶏肉の 16KDa と 27KDa、茹でたア
ヒルの 16KDa と 28KDa、茹でた七面鳥の 16KDa に反応を示した。さらにインヒビジョン
ブロッティングによる検討でこれらの交差性を認めた。また、分析の結果 16KDa はα-パル
ブアルブミン、27KDa は MLC(ミオシン軽鎖)であることがわかった。
コメント)
αパルブアルブミンは魚類や両生類の筋肉に多く含まれ、鳥類や哺乳類ではあまり含まれ
ないと言われております。カエルや家禽類のアレルギーを除き、α-パルブアルブミンがア
レルゲンとなることはあまりありません。β-パルブアルブミンは、魚類では重要なアレル
ゲンですが、一般的にはα-パルブアルブミンとは交差反応性はないと考えられています。
従来 MLC はエビのアレルゲンとして Lit v3 が知られていますが、鶏肉のアレルゲンとして
は知られていませんでした。
α-パルブアルブミンと MLC は七面鳥とアヒルで交差性が認められており、卵に感作してい
ない鶏肉アレルギーでは、α-パルブアルブミンや MLC がアレルゲンになっているかもしれ
ません。
【Case Report 2 】
Gonzalez-de-Olano D、Bartolome B, Maroto AS, Vivanco F, Pastor-Vargas C. Asthma after
chicken consumption due to cross-reactivity between fish and chicken. J Investig Allergol
Clin Immunol 2012; 22: 227-8.
スペインからの報告:魚―鶏間の交差反応性
23 歳女性
鶏肉摂取直後、胸部圧迫感と喘鳴を主訴に受診。他の肉類や卵で症状はない。また、鳥と
の接触歴を持っていない。アレルギー歴は、9 歳の時に魚摂取により胸部圧迫感、喘鳴、顔
面の血管性浮腫あり。それ以降、魚とその加工品を除去してきた。
検査)
鶏、豚、羊、牛の肉、卵白、卵黄、オボアルブミン、オボムコイド、羽毛ミックスで SPT
を実施。鶏肉で陽性。その他は陰性。幼少期に、SPT 後にアナフィラキシーを経験したた
め、魚、アニサキスの SPT は拒否された。
特異的 IgE 検査の結果、鶏、サケ、メルルーサ、イワシは陽性、豚は疑陽性。アニサキス
は陰性だった。本症例の血清はイムノブロッティングの検討で調理済みチキンエキスでは
13、16、55KDa、メルルーサでは 13、37、50、55KDa に反応を示した。
RAST 抑制試験の結果、チキンエキスとメルルーサエキスには交差反応性があり、さらに分
析した結果、鶏の 16KDa はα-パルブアルブミン、メルルーサ 13KDa はβ-パルブアルブミ
ンと判明した。
コメント)
パルブアルブミンは多くの魚種間の交差反応性の一因として広く知られていますが、本症
例は、αおよびβパルブアルブミン間の交差反応性によって魚アレルギーがある症例が鶏
肉アレルギーを発症したケースと考えられました。パルブアルブミンのような広範な食品
に含まれるパンアレルゲンによる臨床的な交差反応にも日常診療の場で注意を払う必要が
あるかもしれません。
鶏(Gallus domesticus)
Gal d 1
オボムコイド:トリプシンインヒビター (卵白)
Gal d 2
オボアルブミン (卵白)
Gal d 3
オボトランスフェリン:コンアルブミン (卵白)
Gal d 4
リゾチーム
Gal d 5
αリベチン:血清アルブミン (卵白、卵黄、羽毛)
Gal d 6
Vitellogenin, YGP42(卵黄)
Gal d ApoⅠ
ApovitelleninⅠ
(卵白、卵黄)
Gal d ApoⅥ
ApovitelleninⅥ
(卵白、卵黄)
Gal d GPI
グルコース-6-リン酸イソメラーゼ (筋肉)
Gal d HG
ヘモグロビン (筋肉)
Gal d IgY
免役グロブリン (卵白)
Gal d L-PGDS
リポカリン様プロスタグランジン D 合成酵素(羽毛)
Gal d Ovomutin
オボムチン
Gal d Phosvitin
カゼインキナーゼ
Gal d PRVB
パルブアルブミン:カルシウム結合蛋白 (筋肉)
(卵白)
(卵白)
監修)福冨 友馬 先生
国立病院機構相模原病院
(卵白、卵黄)
臨床研究センター
1) Mandallaz MM, de Weck AL, Dahinden CA. Bird-egg syndrome. Cross-reactivity
between bird antigens and egg yolk livetins in IgE-mediated hypersensitivity. Int
Arch Allergy Appl Immunol 1988; 87: 148-50.
2) Gonzalez-Mancebo E, Pastor C, Gonzalez-Olano D, Gandolfo-Cano M, Melendez A,
Cuesta J, Zapatero A. Identification of allergens in chicken meat. J Investig Allergol
Clin Immunol 2011; 21: 326-7.
3) Gonzalez-de-Olano D、Bartolome B, Maroto AS, Vivanco F, Pastor-Vargas C.
Asthma after chicken consumption due to cross-reactivity between fish and chicken.
J Investig Allergol Clin Immunol 2012; 22: 227-8.
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特異的 IgE 検査
:
新発売コンポーネント
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この度弊社では研究用試薬である ImmunoCAP®アレルゲンコンポーネントの新規項目を発売
いたしました。
アレルゲンコード
製品名
由来
t227
nOle e 7 LTP,Olieve
オリーブ
t240
rOle e 9,Olieve
オリーブ
f440
nCor a 9,Hazel nut
ヘーゼルナッツ
f439
rCor a 14,Hasel nut
へーゼルナッツ
f434
rMal d 1 PR-10,Apple
リンゴ
f435
rMal d 3 LTP,Apple
リンゴ
f433
rTri a 14 LTP,Wheat
小麦
f98
Gliadin
グリアジン
全身症状に関連することが多いとされる貯蔵タンパクおよび LTP を中心に 8 項目のアレルゲン
コンポーネントです。アレルギーの臨床研究にお役立てください。
(田中 昭 サーモフィッシ
ャーサイエンティフィック株式会社)
アレルゲンコンポーネントの受託測定サービス「アッセイサポート」を実施しております。詳し
くはこちらをご覧ください。
論文等について、お問い合わせなどございましたら、下記までお気軽にご連絡下さい。
末筆ながら、皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
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ファディア株式会社
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