IT統制を突きつけられる 技術者の眠れない夜 京都大学学術情報メディアセンター NPO情報セキュリティ研究所 上原哲太郎 [email protected] 社会がますますITに依存する中で・・・ ITは社会インフラ・企業の命綱・・・もはや不可欠 プログラムはそれ自体が 巨大かつ極めて複雑なシステムである 「たった100kBのプログラム」も機械語にすれば数万語 プログラムの動作が回路上の0/1に置き換わるまでを リアルに想像できる人は滅多にいない あらゆる場所に誤りが入る余地や脆弱性の存在する 可能性がある すなわち、バグやセキュリティホールは 存在することが大前提 1 そこにIT統制がやってくる 内部統制体制の構築が業務に過度の負担にならないよう にするにはITの利用が必須 財務報告の信頼性を担保するために、ITの統制が必要 ITの統制目標 例:有効性及び効率性、準拠性、信頼性、可用性、機密性 ITに係る全般統制:業務処理統制の有効性を保証 開発&保守、運用、アクセス管理、安全性検査&対応、外部委託 管理etc… ITに係る業務処理統制:業務がITに反映されることを確保 入力エラー処理と例外処理、データ維持管理、アクセス管理 システム管理者の負担の増大 心配するときりがない 疑い始めるときりがない まずシステムの開発と運用だけでも・・・ 可用性が失われると業務へのインパクトが大きい 基幹システムを正しく動かし続けるのは重労働 たとえば負荷の見積もりひとつとっても難しい 次に外部の脅威に対応するが・・・ 比較的対処法がある分野だが、やることは多く完全はない 最後に内部の脅威に対応しようとしても・・・ きりがない、やることが多すぎる 業務効率とのバランスが非常にとりにくい 「組織的犯罪」がないことを本当に客観的に示せるか? ITは善人にも悪人にも平等・・・個人に大きな力 オープン化とネットワークの登場は敵を無限に増やした これじゃどこまでやればいいのかわからない 2 例えば・・・ 不正防止に 操作履歴を じゃあ どうすれば? タイムスタンプ局 を使おう ログをとろう 1からログを 作り直されたら? ログの真正性は どうする? 電子署名を 使おう ログサーバを インターネットに つなぎたくない ログを途中だけ 消されたら? ログ同士の署名を 連鎖させよう (ヒステリシス署名) ITという技術の特殊性 ITは経営合理化に不可欠な道具だが 同時に今までなかった危機も持ち込む 主に情報セキュリティ上の危機 ITは複雑な技術:評価が難しい 必要性も費用対効果も即断は困難 セキュリティに万全はないが「じゃあどれだけ安全?」という 強度指標はない(暗号除く) ITによるインシデントは発生確率が激変する 脆弱性の発見、攻撃法の流行・・・ 脆弱性の混入は避けられない 攻撃力は「資金」や「マンパワー」ではなく 純粋に「技術」で決まる 3 システム管理者の持つべき常識 ITによる業務効率化は危機も呼び込むことになる しかし「2倍の効率化」は必ずしも「2倍危険」を意味しない 的確な技術の投入があれば危険を増加させないが 誤った技術を投入すると危険は1000倍にもなる 昔と違ってコンピュータはブラックボックスではない 敵の数は無数になった 業者は甘言しか口にしない・言えない そして危機には責任を負わない・負えない 事故の発生確率は0にできない だからこそ事故の予防策だけではなく事後対策が重要 ここでデジタルフォレンジックの出番だ! 一技術屋として・・・ ITの社会的責任も企業経営上の重要性も 格段に上昇している 「現場の判断で」動くことは許されなくなってきた だが経営陣/責任者に技術的判断が取れるか? 経営者には 「最低限の経営判断がつく程度のITリテラシ」 技術者には 「経営判断がつく程度に技術を噛み砕いて説明する能力」 が、ホントに今すぐ必要 でも、どこで教えてくれるんでしょうね? 後者は特に「MOTの反対語」が欲しい 4
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