適応的背景変更による食材の領域と色の抽出 - 美濃研究室

適応的背景変更による食材の領域と色の抽出
Region and Color Extraction for Food Product by Background Image Control
川西 康友*1 山肩 洋子*2 角所 考*3 美濃 導彦*3
Yasutomo Kawanishi Yoko Yamakata Koh Kakusho Michihiko Minoh
*1
2
3
京都大学工学部情報学科 * 京都大学大学院情報学研究科 * 京都大学学術情報メディアセンター
*1
School of Informatics and Mathematical Science, Faculty of Engineering, Kyoto University
1.緒論
我々は調理の状況に従い、レシピに基づいて調理を支援
するシステムの実現を目指している。そこで、調理台をカメ
ラで撮影して調理者が扱っている食材を、リアルタイムに
認識する必要がある。このためにはまずカメラ画像から食
材領域を抽出する必要があるが、調理台上で行なわれる作
業は切る・混ぜる・整形するなど対象食材を変形させ、複
雑な形状になる場合が多いため、そのような複雑な食材領
域を正確に抽出できる必要がある。
調理者や調理器具によるオクルージョンを避けるため、
調理台を調理台の上方からカメラで撮影するものとする
と、前景の食材を抽出するには背景差分を用いるのが一般
的である。しかし手や食材の影が調理台の天板に映るため、
背景差分の閾値を大きく設定しなければ影の領域も食材領
域とみなされてしまう。しかし、背景差分の閾値が大きいと
逆に食材領域が欠損し、正確な抽出を妨げる。また、食材と
背景の関係によっては、背景色が食材に映りこんでしまい、
食材の色とは異なる色が観測されてしまう。
そこで、本研究では食材の特徴に応じて背景色を変更す
ることにより正確な食材の領域と色を得ることを目指す。
2.背面ディスプレイによる食材観測システム
本研究では、前景の食材に応じて背景の色をコントロー
ルするため、図 1 のようなシステムを用いる。
調理台の上方にカメラを設置し、調理台全体を観測する。
調理台の天板には液晶ディスプレイを埋め込む。埋め込ん
だディスプレイを背面ディスプレイと呼ぶ。このようなシ
ステムでは、ディスプレイに表示する映像の輝度によって
普通なら天板に生じる影をキャンセルできる。この下で、カ
メラで撮影した画像より前景の食材を領域抽出部で抽出す
る一方、その結果に基づき各食材ごとに適切な色の背景領
域を背景生成部によって生成し、ディスプレイに表示し、そ
の画像から再び領域抽出部によって食材の領域を抽出す
る。
図 1 背面ディスプレイによる食材観測システム
背面ディスプレイを用いると、ディスプレイに入力した
色データと、ディスプレイをカメラで撮影した画像中の色
データは一致しないという問題が生じる。撮影画像で背景
差分を行なうためには、ディスプレイへの入力データがカ
メラ画像中でどんな色データになるのかを正確にわからな
ければならない。そこで、あらかじめさまざまな色を表示し
たものをカメラで撮影しておくことで、ディスプレイへの
入力値と観測画像中の色との関係と、その表現できる色空
間の対応関係を計測し、対応表を作成しておく。その表に従
い観測画像中に表示したい色を逆引きすることにより、デ
ィスプレイへの入力値を決定する。
3.食材に応じた背景画像変更による特徴抽出
3.1 食材の特徴抽出に適した背景色
食材領域を抽出するには、食材の色が背景色と明確に異
なることが望ましい。特に輪郭部分の色が背景色と大きく
異なると輪郭がより正確に抽出できる。さらに食材に光沢
がある場合には背景の映り込みが生じるので、食材の輪郭
部分を正確に抽出するには背景色の明度も重要となる。こ
れらのことから、背景色としてクロマキー合成でよく用い
られる青色の固定背景を用いるだけでは不十分であり、観
測画像中で食材ごとにその色相の補色で、かつできるだけ
大きな明度差になるような色を背景にすることが望まし
い。
さらに、抽出された領域の画素値に基づいて、食材色を抽
出する場合、背景が暗いと食材周辺は影になり、背景が明る
いと食材に映り込みが発生するため、ディスプレイの輝度
が暗すぎても明るすぎても食材全体の色が正確に抽出でき
ない。これについては、背景の輝度を変化させて撮影した画
像から抽出した食材色を比較したところ、背景を食材の領
域のヒストグラム分散が最も小さくなるような明度にした
とき、最も広い領域で食材の反射特性に忠実な色を抽出で
きることがわかった。
3.2 アルゴリズム
以上の議論に基づいて食材の正確な領域および色を次の
ようなアルゴリズムで抽出する。
全体が青色の食材は存在しないことから、ディスプレイ
全面に青色を表示し、青色以外を抜き出すことよっておお
まかな食材領域 X を得る。得られた各食材領域 X に対し、観
測画像中で、食材領域 X を囲む領域 Y を設定し、Y がその X
の中心色の補色となるように Y の色を設定して、表示する。
この領域Yを背景とする背景差分によって正確な食材領域
X’を得る。
得られた正確な食材領域 X’に対し、X’内の明度分散が最
小となるよう、3.1 の分析に基づいて領域 X'を囲む領域 Y’
の色を変えていく。X’の明度分散が最小となったときの X’
の色を食材の色として抽出する。
4.まとめと今後の課題
食材ごとに背景色を切り替えることにより食材の領域と
色を正しく得る方法を提案した。今後の課題は、本手法によ
って抽出した特徴量を用いた食材認識システムの実現であ
る。