カイロ3号線向け 地下鉄電車 (PDF:200KB/3pages)

カイロ3号線向け 地下鉄電車
●カイロ地下鉄公団殿
新製品紹介
で1編成を構成する。車両長 18000 mm、車体幅 2600 mm
1. はじめに
で、各車とも片側 4か所 の 外 吊り式ドアを 装 備してい る。
カイロ市内の公共交通環境を改善するため、カイロ地下
ーとグリーンの2色にイエローの帯を配した外部塗色になっ
鉄3号線が新たに建設され、2011年 10月の第一期開業を目
てい る。営 業 最 高 速 度 は 80 k m / hで、安 全 監 視、ド ア 操
指し、準備が進 んでいる。3 号 線計画は市 東部に位置する
作などを乗 務員が 担当し、自動列車制御装置(ATO)にて
カイロ国際空港から、ナイル川を横 切り、市西部をつなぐ
有 人 自 動 運 転 を 行 う。 集 電 方 式 は 第 三 軌 条 か ら の
総 延 長 約 30 k m の 一 部 地 上 区 間を含む 地下 鉄 線である。
D C750 Vとなっている。カイロ地下鉄としては初めて客室
これによりカイロ地下 鉄1号 線、同 2 号 線 の市 内 南 北を 結
用エアコンを装備し、快 適性を向上させるとともに、客室
ぶ路線に東西を結ぶ路線が接続することになり、カイロ市
内煙監視装置を搭載するなど安全面に配慮している。
運転室先頭部は丸みを帯びた流線形となっており、シルバ
の地下鉄ネットワークの拡充が期待される。
このたび、第 一 期 営 業 用 車 両として40 両 を 製 作した の
で、その特徴を述べる。
3. 車体
客室関 係では 各車 両の車 端寄りの 低 屋根部に埋 込 式 の
2. 概要
エアコンを 2 台搭 載し、天 井部 の ダクト−グリルより客室
運転室付電動車
(M)
、中間電動車
(N1)
、中間付随車
(T)
、
車両 2 か所(先頭車は1か所)の腰 掛下に消火器箱を備えて
簡易運転台付電 動車(N2)を1ユニットとし、2 ユニット 8 両
いる。
に冷風を送り、乗客の快適性を向上させている。また、各
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New P r oduct
妻部
運転台全景
前頭部は流線形とし、前面窓は耐衝
撃 性 能を有 する2 次 元 の曲 面ガラス、
先頭寄りの側引戸上部カバー端部は滑
らかな形状、乗務員室側引戸は車体コ
ンタに沿わせた 形 状とした。また、行
先表示器はアラビア語と英語を交互に
表示するL E D を採用している。前灯・
尾灯もL E D を採用し、プロジェクタラ
イトと一 体 に なった ライトユ ニットを
備えている。
火災など非常時にも十分避難できる
ように床構造は AST M(米国材料試験
協会)の 30 分耐火試 験に合格した耐火
客室全景
性能を有し、各車両妻開き戸にはポー
タブル式の非常梯子を1組設置している。
床 下の 大 型機 器は 車体側の取付け 金 の上に固 定される
セーフティハンガー方 式で、機 器重 量 が 取付けボルトにか
4. ぎ装
からないように車両に搭載されている。
主制御はI G BTによるV V V Fインバータ、ブレーキは電
配置を踏襲しながら、OBISディスプレイを含め、機器を最
力回生ブレーキと空 気ブレーキの2 系 統で、滑走防止を含
新のものに置き換えるようにしている。室内は、妻部の機
め、要求された性能を満足している。
器ロッカーのほか、エアコン制御器など用にシート下を機
補助電源装置として静止型インバータ2台をT 車に搭載し
器スペースとしている。
乗務員に対する配慮から、運転室の操作機器は 2 号線の
ており、エアコンへのAC220 V 給電を行うほか、D C100 V
に変換し制御電源として使用している。
煙 監 視 装 置は、客室 天 井に配 置した 煙 感 知 器により煙 発
5. 台車
生を 乗 務員に自動 通 報するもので、乗 務員は 車 両 情 報 装
台車は 2 号 線で実績のあるダイレクトマウント式ボルス
置からの警告のほか、表示灯とブザーにより状況を把握で
タ付 台車を 踏襲してい る。軸 箱 支 持 装 置は円 筒 積 層ゴム
きるようになっている。
およびコイルばね併用とし、また車体支持装置には空気ば
近畿車輌技報 第 17号 2011.03
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新製品紹介
カイロ地下鉄3号線 主要諸元
形式
定員 座席/計(人)
M
N1
T
N2
24/214
32/227
32/227
32/227
最大寸法
自重(t)
36.5
34.0
32.0
34.5
車体長(mm)
17410
16910
16910
16910
車体長連結面間(mm)
17960
17310
17310
17310
車体幅(mm)
2690
屋根高さ(mm)
3570
床面高さ(mm)
1130
構体材料
耐候性圧延鋼板
電気方式・軌間(mm)
DC750V第三軌条方式・1435
電車性能
最高運転速度80km/h 加速度09m/s2 減速度1.1m/s2
駆動方式
並行カルダン駆動 歯車比 125:17=7.35
制御方式
IGBT-VVVFインバータ制御
ブレーキ方式
回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ
保安装置
ATP/ATO・VACMA
台車中心間距離
11500
台 車
方式
ダイレクトマウント方式ボルスタ付
形式
KD317
KD317
KD317A
軸距(mm)
KD317
2100
車輪径(mm)
860
主電動機
三相かご形誘導電動機 115kw×4/両
補助電源装置
静止形インバータ AC220V3φ/120kVA×2 50Hz,DC100V
冷房装置
客室:18000kcal/h×2 運転室:4000kcal/h×1
戸閉装置
制御方式:電磁空気式 動作方式:単気筒複動式 ラック・ピニオン
⇦ インババ
M
カイロ国際空港 ⇨
N1
T
N2
N2
T
N1
M
凡 例
P31を参照
ね、左右動ダンパを装備している。台車枠および枕はりは
今 後 の増 備が予定されているほか、3 号 線車 両をベースと
耐候 性 鋼 板の 溶 接 構 造で、すべての 電 動 台車 同 士で 交 換
した2号線用車両の増備も計画されており、当社にとって、
可能なように取付け金を統一している。
カイロ 地下 鉄との 関 係 はま す ま す 重 要 な も のとなって い
ブレーキ 装置はばね 式 駐車ブレーキを組 込 んだ 踏 面ユ
る。ようやく3 号線車両が陽の目を見ることができたのも、
ニットブレーキを全車に装備し、T 車のみディスクブレーキ
関係各所のご尽力、ご協力の賜物であり、感謝申し上げる
を併用している。集電装置は台車枠の側はり下部に、先頭
とともに、今後とも関係を密に、お客様の満足を目指し団
車の前位台車には AT P/ATO用アンテナとセンサーを、後
結して案件を進めていけるよう、お願いする次第である。
位台車には塗油器を設置している。
6. おわりに
村田 和実 車両事業本部 車両設計部
今回の40両を皮切りに、エジプト国内での製造も含め、
山中 崇司 車両事業本部 車両設計部
三浦 吉彦 車両事業本部 車両設計部
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