よく知っていただくために

GIST
消化管間質腫瘍
を
よく知って い ただくために
〜スーテント® で治療を受ける方へ〜
監修 : 富山大学大学院医学薬学研究部・医学部内科学第三講座 教授 杉山 敏郎 先生
はじめに
がんは珍しくない病気になりましたが、「GIST」あるいは「消化管
間質腫瘍」という病名は、多くの方にとって聞きなれない病名ではな
いでしょうか。医師から病名を聞かされてもピンとこない、どんな病
気かわからないからとても不安、という方も少なくありません。適切
な治療を受けるためには、まず病気を知ることからはじめましょう。
「がん」って何?
GIST(gastrointestinal stromal tumor; 消化管間質腫瘍)は、
悪性腫瘍、つまり
「がん」の仲間です。がんという言葉は日々あちこち
で目にするようになりましたが、いったいどのようなものなのでしょうか。
私たちの身体を作り、その働きを支えているのは、60 兆個もの細
胞たち。これらの細胞は一定のサイクルで新旧入れ替わりながら、生
命の維持に必要な役割を果たしています。がん細胞は、こうした正常
な細胞の遺伝子に傷がつくことがきっかけとなって発生します。その
後、生活習慣や環境汚染などさまざまな要因が作用しながら、長い期
間をかけて性質(たち)の悪いがん細胞へと変わっていくのです。
細胞ががん化すると、周囲の状況を無視して自分勝手な行動をとる
ようになります。正常な細胞は身体に合わせて分裂が制御されていま
すが、がん細胞はこの制御を無視してどんどん増え続け、周りの正常
な組織に侵入していきます
(浸潤)。さらに、血管やリンパ管を通って
体のあちこちに移動し、そこで増殖(転移)
をはじめることもあります。
こうした無法者ぶりこそが、がんが恐れられる本当の理由といえるで
しょう。
GIST はどんな病気?
GIST は、胃や腸(消化管)の壁に発生する腫瘍です。消化管の壁
の筋肉の層にある、特殊な細胞(カハール介在細胞)が異常に増殖し、
腫瘍を形成します。消化管であればどこの臓器でも発生する可能性
がありますが、胃あるいは小腸で発見されるケースが多くを占めてい
ます。
胃がんや大腸がんなどといった、いわゆる普通の消化器がんは消化
管の粘膜から発生するのに対し、GISTは粘膜の下にある筋肉の層か
ら発生するという大きな違いがあります。そのため、同じ消化管内の
悪性腫瘍でも、消化器がんとGISTでは性質が異なっています。
なぜGISTになるの?
GIST は、腫瘍細胞の細胞膜にあるKIT、あるいは PDGFR-αと
いうたんぱくの異常が主な原因で発生することがわかっています。通
常このたんぱくは、必要に応じて特定の物質の刺激を受けたときにだ
け細胞の増殖を促しますが、異常が起こると刺激がなくても増殖の
合図を出し続けます。これを放置しておくと、腫瘍がどんどん成長し
てしまうことになるわけです
また GIST は胃がんや大腸がんなどの普通の消化器がんに比べる
と、周囲の組織への浸潤があまり見られない傾向があり、本人や家
族が「おかしい」と気づくような明らかな症状は現われにくいもので
す。そのため診断が遅れ、病気が進んでから発見されることも少な
くありません。
GISTはどうやって治療するの?
GIST の最も有効な治療法は、外科手術による病巣の切除です。
ただし、再発・転移した場合や、手術ができない場合は、薬による治
療を行います。
現在、GISTに対する効果が高い薬として、通常の抗がん剤とは違
う働きをもつ「分子標的薬」が用いられています。これまでの抗がん
剤は、がん細胞を殺す能力に重点が置かれてきたため、がん細胞と
正常細胞を区別する力が乏しく、多くの副作用が生じていました。し
かし、分子標的薬はがんの増殖にかかわっている分子だけを攻撃す
るため、正常な細胞に大きなダメージを与えにくい特徴があります。
その結果、副作用を少なくできるという大きな長所があります。
再発・転移した場合や、手術ができない GIST の治療に有効とされ
ている薬は、グリベック ®*
(イマチニブ)です。また、グリベック ® 抵
抗性の GISTには、スーテント ®**
(スニチニブ)が有効とされていま
す。両薬剤とも分子標的薬と呼ばれ、がん細胞の増殖過程における
指令系統を分子レベルで阻止します。
* グリベック ® はノバルティス ファーマの登録商標です。
** スーテント ® の正式な効能・効果は「イマチニブ抵抗性の消化管間質腫瘍」です。
SUT578003A
2008 年 6 月作成