5因子性格は占い志向に影響を及ぼすのか A93170 永冨萌子 【背景・目的】 私たちの日常生活において、雑誌やテレビなどで取り上げられる占いを目にする機会は多く、エンター テイメント性の高さから人々の占いへの興味や関心は高いとされる。しかし、占いの機能はエンターテイ メント性だけでなく、不安の低減や人生の指針、気休めなどの役割を持っている。これまで占いへの信仰 心を取り上げた研究はなされていたが、占いとそこへ向かう性格の関連性についての研究はあまりなされ ていない。そこで、占いを志向する心と5因子性格特性についての調査を行った。 【仮説】 仮説1:女性の方が占いに触れる機会が多いため、男性と女性では女性の方が占い志向性が高い。 仮説2 :自己統制的でない人ほど占いの結果に関わらず占い行動を多くとるため、統制性因子が低い ほど行動・信仰因子が高い。 仮説3:なんらかの不安を持つ人ほど不安から回避するために占いに頼ろうとする傾向があるため、情動 性因子が高いほど興味・関心因子が高い。 仮説4:占いがエンターテイメント的要素を含むことから、遊戯性因子が高い人ほど占い志向性が高い。 以上の4つの仮説を検証した。 【調査】 千葉県内私立大学生 226 名(男子 82 名、女子 140 名、不明4名、平均年齢 20.6 歳)を対象に質問紙によ る集団実施を行った。使用尺度は、河戸(2002) により作成された「占い行動へと向かう心」を対象とし た尺度である占い志向尺度と辻ら(2005)の性格特性を情動性・外向性・愛着性・統制性・遊戯性の5つに 分類するための尺度である5因子性格検査短縮版(FFPQ-50)。その他フェイスシート(年齢、性別、学年、 学科)を含む全47項目である。 【結果】 仮説1を検証するために、性別と占い志向尺度、占い志向尺度の下位尺度である興味・関心因子と行動・ 信仰因子のT検定を行ったところ、興味・関心因子で t=2.99,p<0.01、行動・信仰因子で t=4.86, p<0.001、 二つの合計である占い志向尺度で t=3.87, p<0.001 といずれも有意差が見られたため、仮説1は支持され た。 仮説2を検証するために、FFPQ-50 の統制性因子と占い志向尺度の行動・信仰因子の相関分析を行っ た。その結果、男性は 0.157 、女性は-0.093 の相関係数となり相関は見られなかったため仮説2は支持 されなかった。 仮説3を検証するため、 FFPQ-50 の情動性因子と占い志向尺度の興味・関心因子の相関分析を行った。 その結果、男性では情動性因子と興味・関心因子の相関係数が 0.094、女性は 0.139 であった。男性と女 性のどちらも情動性因子と興味・関心因子の相関は見られなかったため仮説3は支持されなかった。 仮説4を検証するため、FFPQ-50 の遊戯性因子と占い志向尺度の相関分析を行った。男性では、遊戯 性因子と占い志向尺度で r=0.445,p<0.05 の正の相関が見られたが女性の遊戯性と占い志向尺度の相関係 数は 0.038 と相関関係は見られなかったため、仮説4は一部支持された。 表 2. 占い志向尺度と FFPQ-50 の相関分析表(男性) 情動性 外向性 統制性 興味・関心因子 0.094 0.537*** 0.061 0.197 0.448** 行動・信仰因子 0.064 0.498*** 0.157 0.400* 0.374* 占い志向尺度 0.089 0.555*** 0.103 0.289** 0.445* N=82 愛着性 遊戯性 *:P<0.05,**:P<0.01,***:P<0.001 表 3. 占い志向尺度と FFPQ-50 の相関分析表(女性) 情動性 外向性 統制性 愛着性 遊戯性 興味・関心因子 0.139 0.124 0.051 0.057 0.027 行動・信仰因子 0.123 0.173* -0.093 -0.030 0.048 占い志向尺度 0.145 0.153 0.030 0.038 0.001 N=140 *:P<0.05,**:P<0.01,***:P<0.001 【考察】 仮説1の検証を通して、従来の研究でも述べられていた通り男性よりも女性のほうが占いに対する興味 や関心が深く、実際に占いをよく行うということが明らかとなった。占い志向尺度と FFPQ-50 のそれぞ れの下位尺度の相関分析を行った結果、男性においては外向性、愛着性、遊戯性において相関関係が見ら れ、5因子性格による性格の差は占い志向性に影響を与えていると言える。しかし、女性においては男性 よりも占い指向性が高いにも関わらず外向性を有する人が占い行動を積極的に行うという事以外に明ら かな差が見られなかったことを踏まえ、女性の場合は性別そのものが占い志向性に影響を与える重要な変 数となっており、個人の特性よりも性別の影響が大きいと考えられる。 【参考文献】 河戸裕美 2002 超常現象を信じる心について~個人内要因より検討~ 辻平治郎 1998 5因子性格検査の理論と実際‐こころをはかる5つのものさし‐ 北大路書房 福田茉莉 2007 占い情報の受容と信用度の関連
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