2005年10月22日 報道関係者 各位 社団法人 日本木造住宅産業協会 会 長 矢 野 龍 −10月18日「木造住宅の日」イベントキャンペーン− 小学生対象 第8回「作文コンクール」 (木の家・こんな家に住みたい) 審査結果、ならびに住宅金融公庫内の展示について 社団法人 日本木造住宅産業協会(会長 矢野 龍 住友林業株式会社 代表取締役社 長)は、木造住宅のさらなる普及と啓発のため、10月18日を「木造住宅の日」と設定し、 「木の家は森を生かす」のテーマのもと、木造住宅と木材の計画的利用が地球環境に好影響 を与えることを訴求するべく、毎年記念行事を開催いたしております。 小学生を対象に「木の家・こんな家に住みたい」をテーマとした第8回「作文コンクール」 を実施。本年も昨年に引き続いて、国土交通省・文部科学省・住宅金融公庫・朝日新聞社・ 朝日学生新聞社のご後援の他、さらに今年度から農林水産省のご後援をいただきました。 このたび、厳正な審査を行い、受賞作品が決定しましたのでお知らせいたします。 お陰さまで応募総数は、全国の小学生から昨年度の 1.5 倍強の 12,039 点と優に 1 万作品 を超えました。本協会の主要な催事として 8 年目、継続が実を結び、当初の予想をはるかに 上回る成果が示されたと自負しております。今後とも宜しくご指導ご協力のほどお願い申し あげます。 なお、ご後援をいただいている住宅金融公庫のご協力により、本作文コンクールの入選作 品 24 点の展示、ならびに表彰式のビデオ放映を、住宅金融公庫本店 1 階「すまい・るギャ ラリー」にて実施いたします。開催期間は、平成 17 年 12 月 12 日(月)から 18 年 1 月 27 日(金)までの予定です。 併せて、ご案内させていただきますので、宜しくお願い申しあげます。 以上 本ニュースリリースについてのお問い合わせ 社団法人 日本木造住宅産業協会 業務・広報部 望月 利満 まで 〒105-0001 東京都港区虎ノ門 3-6-2 第2秋山ビル2階 電話 03−5425−6266 FAX 03−5425−6260 インターネット URL http://www.mokujukyo.or.jp 第 8 回作文コンクール「木の家・こんな家に住みたい」審査結果について 小学生を対象(低学年の部 小学校1年∼3年・高学年の部 小学校4年∼6年)に、昨年に引き続き、 住んでみたい夢のあふれる「木の家」を語ってもらう作文コンクールの募集を平成17年6月15日(水) ∼平成17年9月9日(金)の期間で実施いたしました。その結果、低学年の部が4,180点、高学年 の部が7,859点、計12,039点(前年度比 153%)の作品が全国、海外の小学校より寄せられま した。また、応募学校数も、1,702校(前年度比 134%)と多数ご応募をいただきました。さらに昨 年に引き続き、海外6か国・7地域の日本人学校より39点の作品が寄せられました。 審査員による厳正な審査の結果、低学年の部・高学年の部において、各々国土交通大臣賞1名・農林水 産大臣賞 1 名・文部科学大臣奨励賞1名・(社)日本木造住宅産業協会会長賞1名・朝日小学生新聞賞1 名・審査員特別賞1名・ (社)日本木造住宅産業協会支部長賞6名計24名の作品と佳作各10名の作品が 決定いたしました。また、団体賞は、学校全体で本コンクールに取り組み、応募数の多い学校を対象に最 優秀団体賞1校、優秀団体賞2校を決定させていただきました。 なお、下記の通り、受賞者、審査選考基準、審査員、審査日、審査員講評、並びに国土交通大臣賞、農 林水産大臣賞、文部科学大臣奨励賞の作品を紹介させていただきます。 *以下、敬称略 ◎受賞者 ○低学年の部 ・国土交通大臣賞(賞状と副賞、図書券5万円相当) 江口 智之(えぐち・ともゆき) 神奈川県 洗足学園小学校1年生、男子。 題 名:「おじいちゃんの木のおうち」 受賞理由:夏休みにたずねる、おじいちゃんの木の家のよさを一生けんめい書きました。木のお うちにいると、夏休みの宿題がすぐおわり「とてもふしぎ」なんだって。「1 年生らし くてかわいく、よく書けている」。審査員の意見が一致しました。 ・農林水産大臣賞(賞状と副賞、図書券5万円相当) 新納 翔悟(にいろ・しょうご) 宮崎市立本郷小学校1年生、男子。 題 名:「しょうくんのおへやもあるよ」 受賞理由:翔悟くんの家は、病気にならないようにと、木でできています。床はヒノキ、かべと 天井はスギ。帰ってきて玄関をあけると「いいかおり。おちつくね」とお母さん。木 のよさをすなおな文章でまとめ好感がもてました。 ・文部科学大臣奨励賞(賞状と副賞、図書券5万円相当) 佐々木 望有(ささき・みゆ) 名取市立ゆりが丘小学校3年生、女子。 題 名:「丸太の家にすんでみたい大好きなおばあちゃんの家」 受賞理由:大好きなおばあちゃんの家は、百年以上もたった古い木の家。その家で一番気に入っ ている縁側で、達郎くんは考えます。「世の中にはお金で買えないものもある」 。家を 大事にして住み続けることの大切さを学びましたね。 ・(社)日本木造住宅産業協会会長賞(賞状と副賞、図書券1万円相当) 六田 億人(ろくた・おくと) 鈴鹿市立若松小学校2年生、男子。 題 名:「木の家をまもる大黒ばしら」 1 受賞理由: 「木のうちをまもるかみさまみたい」とおじいちゃんがいう大黒柱。六田くんも、大黒 柱が家を守るように「かぞくをまもるかっこいい男になりたい」。その心意気をかい ました。お姉さんも同じ賞を高学年の部で受賞しました。 ・朝日小学生新聞賞(賞状と副賞、図書券1万円相当) 田渕 葵(たぶち・あおい) 京都府 ノートルダム学院小学校2年生、女子。 題 名:「大すきなおばあちゃんの家」 受賞理由:和室のかべで、お母さんが逆立ちをしていたおばあちゃんの家。田渕さんは、この家 が大好きで「しょうらい、おばあちゃんの家にすむぞ」といいます。おばあちゃんと の会話がさわやかで、楽しいですね。 ・審査員特別賞(賞状と副賞、図書券1万円相当) 岸 真李奈(きし・まりな) 新潟大学教育人間科学部附属長岡小学校3年生、女子。 題 名:「強いぞ!!かやぶきやねの家」 受賞理由:2004 年 10 月の新潟県中越地震で、岸さんの家の近くにあるかやぶきやねの家が被害 にあいました。でも、280 年も前にたてられたこの家が、くずれることはありません でした。かやぶきやねへの岸さんの愛着ぶりにうたれました。 ・(社)日本木造住宅産業協会東北支部長賞(賞状と副賞、図書券5千円相当) 後藤 のはら(ごとう・のはら) 秋田県 増田町立増田小学校3年生、女子。 題 名:「じいちゃんの杉の家」 受賞理由:後藤さんは、じいちゃんと木の手入れをするため山に入りました。じいちゃんの育て た木からは「ほっかほかのやさしいエネルギーがつたわってくる」といいます。ふた りの様子がほほえましい。 ・(社)日本木造住宅産業協会神奈川支部長賞(賞状と副賞、図書券5千円相当) 大倉 栞里(おおくら・しおり) 藤沢市立片瀬小学校1年生、女子。 題 名:「ほっかいどうのてづくりのいえ」 受賞理由:北海道のおじさんの家は、ユースホステル。木を使った手づくりの家で、日本中から やって来る人にやすらぎをあたえています。大倉さんもここで、思い出をつくりまし た。北の美しい大地が目にうかびました。 ・(社)日本木造住宅産業協会静岡県支部長賞(賞状と副賞、図書券5千円相当) 角田 奈穂(かくだ・なほ) 常葉学園大学教育学部附属橘小学校3年生、女子。 題 名:「木の家、こんな家にすみたい」 受賞理由:ひいおばあちゃんの家は、50 年以上も前にうら山の木をきってたてられました。花や 木がたくさんあり、虫や鳥もやってきます。この家が理想的な家だと考え夢見る、角 田さんの思いが熱い作品です。 ・(社)日本木造住宅産業協会中部支部長賞(賞状と副賞、図書券5千円相当) 高橋 菜津梅(たかはし・なつみ) 岐阜県 池田町立八幡小学校3年生、女子。 題 名:「あったらいいなこんな家」 2 受賞理由:高橋さんも理想の家を思い描きました。カレンダーがなくても季節がわかるように多 くの木をうえ、家の中は毎日たんけんできるような迷路。そして、「自ぜんの中」と 思わせる部屋。心がはずみました。 ・(社)日本木造住宅産業協会近畿支部長賞(賞状と副賞、図書券5千円相当) 小田 将広(おだ・まさひろ) 西宮市立高木小学校2年生、男子。 題 名:「木の家と森づくり」 受賞理由:小田くん夢はタイトルどおり「木の家と森づくり」。東京・奥多摩のおじさんの家で実 際にヒノキの植林を目にし、おじさんの木の家とふれあったからです。ヒノキに話し かけるやさしさが光りました。 (社)日本木造住宅産業協会九州支部長賞(賞状と副賞、図書券5千円相当) 奥平 志穂美(おくだいら・しほみ) 鹿児島市立本名小学校3年生、女子。 題 名:「木の家」 受賞理由:奥平さんのお父さんは大工さん。仕事場にある「のこくずや、かんなくずが好き」と いいます。「木のにおいと温かみが大好き」だからです。お父さんとの会話もほのぼ のとして、心いやされる作品でした。 ・佳 作(賞状と副賞、図書券3千円相当) 浅沼 春香 花巻市立矢沢小学校2年生、女子 大関 勇斗 太田市立韮川小学校3年生、男子 片貝 璃子 群馬県 中之条町立中之条小学校2年生、女子 後藤 ゆうひ 秋田県 増田町立増田小学校1年生、女子 小西 望月 大阪府 帝塚山学院小学校1年生、女子 鈴木 夢夏 松戸市立小金北小学校3年生、女子 西住 加奈子 石川県 宝達志水町立志雄小学校3年生、女子 星 千夏 福島県 会津本郷町立本郷第一小学校2年生、女子 本山 京香 京都府 ノートルダム学院小学校3年生、女子 吉田 惇貴 京都市立金閣小学校2年生、男子 ○高学年の部 ・国土交通大臣賞(賞状と副賞、図書券5万円相当) 岡部 達美(おかべ・たつみ) 千代田区立麹町小学校6年生、女子。 題 名:「生き続ける木の家」 受賞理由:2004 年 10 月、新潟県小千谷市をおそった新潟県中越地震。岡部さんはそこに住む知 人をたずね、大きな発見をしました。「木の家は、こわれても、他の家の一部として再 生できる」。現地を取材し、確かな文章でまとめ、高い評価をうけました。 ・農林水産大臣賞(賞状と副賞、図書券5万円相当) 岩間 優(いわま・ゆう) 杉並区立荻窪小学校5年生、女子。 題 名:「私が産まれた木の家の〝い∼いにおい〟」 受賞理由:「同じ木で建てられた家でも同じにおいの家はない」。岩間さんは、自分の産まれた産 院をたずね、「におい」と「木の家」のユニークな関係をまとめました。自分のしっ かりした考えが伝わり好感がもたれました。 3 ・文部科学大臣奨励賞(賞状と副賞、図書券5万円相当) 脇田 彩衣(わきた・さえ) 柏原市立旭ケ丘小学校6年生、女子。 題 名:「偉い人になれるかも?の木の家」 受賞理由:愛知県犬山市にある明治村。ここで脇田さんはいくつかの古い和風の家に出あい、学 びます。「災害に強く、風通しがよくて身体にもいい木の家」。めずらしいテーマをう まく組み立て、楽しい作品に仕上げました。 ・(社)日本木造住宅産業協会会長賞(賞状と副賞、図書券1万円相当) 六田 万愛(ろくた・まちか) 鈴鹿市立若松小学校6年生、女子。 題 名:「がんばれ!70 才の木の家」 受賞理由:六田さんの家の裏に築 70 年のもうひとつの木の家があります。古くなって、とりこ わしの話がでたとき、市が学童保育の場として使いたいといってきました。「木の家 でしっかり子供達を育てる」。胸をうつ話でした。 ・朝日小学生新聞賞(賞状と副賞、図書券1万円相当) 小森谷 匠(こもりや・たくみ) 幸手市立幸手小学校4年生、男子。 題 名:「お父さんの音」 受賞理由:すてきなタイトルです。小森谷くんのお父さんの仕事はドアなどの建具をつくること。 仕事場で「キーン、キーン」と機械の音をさせながら、木の粉だらけになり、夢中で 働く姿をみごとにえがきました。 ・審査員特別賞(賞状と副賞、図書券1万円相当) 加藤 真唯(かとう・まい) 浜松市立中川小学校6年生、女子。 題 名:「りんご夢の家とキズだらけの家」 受賞理由:「床や柱のキズはわたしたち家族の思い出。アルバムのようなもの」。すばらしいこと ばが決め手になりました。夢にみるリンゴの家と現実のキズだらけの家。ふたつを対 比しながら木の家のよさにせまりました。 ・(社)日本木造住宅産業協会東北支部長賞(賞状と副賞、図書券5千円相当) 浅川 侑子(あさかわ・ゆうこ) 会津若松市立日新小学校6年生、女子。 題 名:「心休まる木の家づくり」 受賞理由:建築士になりたい浅川さんは将来、「じょうぶであたたかく」木の特長をいかした家の 設計がしたいといいます。それが「心休まる家」です。まじめな文章できっちりと、 木の家のよさをうったえて成功しました。 ・(社)日本木造住宅産業協会神奈川支部長賞(賞状と副賞、図書券5千円相当) 吉川 裕里子(よしかわ・ゆりこ) 横浜市立本牧小学校6年生、女子。 題 名:「うるおいのある家」 受賞理由:手すりなどに使われている材料。金属と木のちがいを対比し、木が生活にあたえるう るおいをみちびきだしたのが、みごとです。その木も新しいものだけでなく、吉川さ んは、手入れされた味わいのある木にも注目しています。 ・(社)日本木造住宅産業協会静岡県支部長賞(賞状と副賞、図書券5千円相当) 4 金澤 尚子(かなざわ・なおこ) 浜松市立蒲小学校6年生、女子。 題 名:「祖父の家」 受賞理由:金澤さんのおじいさんの家では「柱から松ヤニという樹液が流れ」ているといいます。 一本の柱と「におい」から木の家のもつぬくもり、温かさを感じ、理想の家を考えま した。 ・(社)日本木造住宅産業協会中部支部長賞(賞状と副賞、図書券5千円相当) 森 沙耶香(もり・さやか) 豊橋市立玉川小学校6年生、女子。 題 名:「おじいちゃん・おばあちゃん家の誕生日」 受賞理由:古いおじいちゃん・おばあちゃんの家へ泊まりに行くと夜、「急に怖くなる」と森さん はいいます。でもあるとき、おばあちゃんから、この木の家の話を聞き、親しみをお ぼえていくようすをうまくまとめました。 ・(社)日本木造住宅産業協会近畿支部長賞(賞状と副賞、図書券5千円相当) 八木 桃子(やぎ・ももこ) 姫路市立大津小学校6年生、女子。 題 名:「安らぎを与える家」 受賞理由:入院していたおじいちゃんが退院。早く帰りたがっていた家でごろりと寝ころぶおじ いちゃん。その横で八木さんも寝ころび、おじいちゃんの嬉しい涙を発見します。家 があたえるやすらぎを、みごとにえがきました。 ・(社)日本木造住宅産業協会九州支部長賞(賞状と副賞、図書券5千円相当) 塚本 武志(つかもと・たけし) 佐世保市立大塔小学校4年生、男子。 題 名:「歴史のつまった家」 受賞理由:手入れのゆきとどいたおじいちゃんの古い木の家。みがかれた床などは「カブトムシ のはねの様にきれいだ」といいます。歴史あるこの家を「ぼくは長男だから」と、あ とをつぐ覚悟の塚本くん。がんばってね。 ・佳 作(賞状と副賞、図書券3千円相当) 浅沼 美咲 花巻市立矢沢小学校6年生、女子 今西 孝典 奈良市立大宮小学校6年生、男子 岸本 隆太朗 唐津市立北波多小学校5年生、男子 木下 茜 東京学芸大学附属竹早小学校5年生、女子 坂本 尚隆 徳島県 徳島文理小学校6年生、男子 前川 侑弥 桜井市立初瀬小学校6年生、男子 正木 明日菜 美馬市立脇町小学校4年生、女子 町田 莉奈 甲賀市立水口小学校4年生、女子 望月 梨里子 甲府市立舞鶴小学校6年生、女子 山本 達郎 大阪教育大学附属天王寺小学校4年生、男子 ○団体の部 ・最優秀団体賞(賞状と副賞、図書券5万円相当) ノートルダム学院小学校(京都府) ・優秀団体賞(賞状と副賞、図書券3万円相当) 広島市立安小学校(広島県) 春江町立春江小学校(福井県) 5 ◎審査選考基準 ・「木の家」というテーマに沿っていること ・具体的で分かりやすいこと ・発想が自由で、豊かであること ・表現力がユニークであること ・本人の考え方が良く伝わること ◎審査員 審査委員:小田 広昭(国土交通省 住宅局 木造住宅振興室長) 平松 尚樹(イラストレーター) 桜井 隆(明海大学 教授) 結城 昌子(エッセイスト) 山本 博(朝日学生新聞社 代表取締役社長) 遠藤二三男( (社)日本木造住宅産業協会 専務理事) ◎審査日 平成17年9月30日(金)13:30∼16:00 (社)日本木造住宅産業協会内会議室 ◎審査員講評 ・小田 広昭氏 : この作文コンクールの審査委員をさせていただくのは今回が三度目です。過去二回の時もそうでしたが、 小学生の皆さんの作品の一つ一つを読みながら、そこに描かれた世界に没頭するひとときは、自分の心が 楽しく素直になれるとても幸せな時間でした。木の家をテーマにした作品の中で、皆さんは木の家の素晴 らしさだけではなく、自分の夢、おじいちゃんやおばあちゃんへの愛情、お父さんやお母さんを誇りに思 う気持ち、古い家への愛着などを小学生らしい言葉で綴ってくれました。どの作品も家族を思う気持ちと ものを大切にする気持ちに溢れた素晴らしいものばかりなので、審査で順位を付けることは苦痛を伴う大 変な作業でした。 低学年の部では、江口智之君の「おじいちゃんの木のおうち」は、古い木の家の中で智之君を見守るお じいちゃんの優しそうな顔が見えるような、心が温かくなる作品でした。一年生の智之君の子供らしい素 直な文章も魅力的でした。また、佐々木望有さんの「丸太の家にすんでみたい」と新納翔悟君の「しょう くんのおへやもあるよ」は、木の家で暮らすことが心や体の健康にとても良いことを教えてくれました。 高学年の部では、昨年十月に発生した新潟県中越地震の被災地小千谷にある茅葺きの家のことを書いた 岡部達美さんの「生き続ける木の家」が印象的でした。地震で傾いた姿を目の当たりにした時の悲しさ、 傾きながら地震に耐えておじさんを守ってくれたことへの感謝、新しい家の一部として生き続けることを 知った時の喜びを通して、茅葺きの木の家に対する溢れんばかりの愛情を感じさせる作品でした。六田万 愛さんの「がんばれ!七十才の木の家」は、取り壊されるばかりになっていた築七十年のおばあちゃんの 家が、一転、町の学童保育の場として再活用されるというとってもハッピーなお話です。日本中でこの作 文に登場するような素晴らしい人達がどんどん増えてくれると良いですね。 ・平松 尚樹氏 : 沢山の星達が輝いていました。 シリウスやベガ、アルタイル、リゲル、アルクトゥールス、カペラ、カノープス・・・・・・キラキラと美し く輝いていたのです。 6 もはやどれが一等星なのか二等星なのか、ほんとに迷いの多い一日となりました。 近年、力の差がどんどんなくなるなかで、今年はどの作品も力強く鮮やかに個性豊かにきらめいて、完成 度はもちろん、作品としての香りも増し、木や木の家、自然や人に対する視線の優しさや柔らかさも、な お一層豊かになりました。その為審査も大変であったのは事実ですが、それにも増して、その成長の証に 嬉しさも、ひとしおのものがありました。 ただ、全体的に大工さんのお爺さん、お父さん、田舎のおばあさんの木の家といった状況設定が多くなっ ている傾向が見られます。 もっとも木の家を語るについて、現実に木の家での生活感を持った人と、持たぬ人とでは臨場感や描写 力に違いが出てくるのは当然で、それがそのままの作品の訴える力に、つながってくるのは無理からぬと ころです。 そんななかで、脇田彩衣さんの明治村に着目した作品や、残念ながら賞には洩れてしまったのですが、 木下茜さんの「香りの家」などは、木の家での実体験がなくても優れた作品となりうることを証明した作 品であるように思いました。 これからも木の家に対する、従来とは異なった新鮮な角度での作品が、どっと寄せられることを期待し てやみません。 ・桜井 隆氏 : 今年のコンクールには12000以上の作文が寄せられました。その中から最終選考に残ったのは、さ すがにすばらしいできばえのものばかりでした。賞をあげるにはどれかを選ばなければならないのですが、 優劣をつけるのは本当につらい作業でした。 今、受賞した作品をあらためて読んでみると、一つの傾向があるように思えます。木の家に関して何か 実際の体験をつづった文章が多い、ということです。たしかに頭で書いただけの文章は、人に感動を与え ることはできません。したがって、いなかのおじいさん・おばあさんが古い木造住宅に住んでいるとか、 おとうさんが建築関係の仕事をしているとかいう、特別な家庭環境のある子が有利になるのかもしれませ ん。 しかし、そうでない子の作文も入賞しています。木の家はどこにでもあるのですから、遠足などで見た 家を題材にすることもできるはずです。 また、入賞した作文は、単に木の家について書いているだけではありません。そこから家族の暖かさや 優しさのようなものが伝わってきます。 大切なのはやはり、テーマである「木の家」に切実な思いを込めて接することと、日常のあらゆること に優しく、みずみずしい気持ちを持ち続けることなのだと思います。 今年の入賞者の中には、昨年に続いて2度目という子もいます。選考は、過去の受賞者に対して特別な 配慮をしているわけではありません。連続入賞というのは、まさに実力です。 入賞者はみんな作文が上手なのですが、これから先、単に文がうまいだけの人にはならないでほしいと 思っています。感動を与えるのは、言葉の技術ではなく、書く人の心の豊かさなのです。 ・結城 昌子氏 : 今回も例年に違わず接戦の選考となりました。応募者数が一段と増えた今回、最終選考に残った作品は、 どれもつぶぞろいでささやかな差が賞の違いにつながったようです。 低学年の部のえぐちともゆき君の「おじいちゃんの木のおうち」は、一年生らしいおおらかさが高く評 価されました。佐々木望有さんの「丸太の家にすんでみたい」は、ログハウスの体験をいきいきと伝えて 好感が持てました。新納翔悟君の「しょうくんのおへやもあるよ。 」は、木の家の思い出に注目したり、年 月によって木の色が変わっていくところなど、着眼点がいいと思いました。こちらも一年生。今回は一年 生の活躍が印象に残りました。 7 高学年の部では、岡部達美さんの「生き続ける木の家」が、毎年のことながら強くこころに訴えかけま した。地震後の新潟県小千谷市を訪れた時の取材をもとに臨場感豊かな文章でした。「小千谷じゃ、山が動 いた。 」「大根が、上に向かって飛ぶんだよ。」という会話が衝撃的に伝わってきました。脇田彩衣さんの「偉 い人になれるかも?の木の家」は、夏休みに訪れた明治村での体験がベースに書かれていますが、仲良し の家族の光景がほのぼのと伝わってきました。岩間優さんの「私の産まれた木の家の"い∼いにおい"」は、 産まれた家の木のにおいを中心に展開して楽しませてくれました。 個人的には、小森谷匠さんの「お父さんの音」が心に残りました。目の玉の動かないおじいちゃんとお とうさんのかっこよさが伝わってきました。集中して現場の緊張感に耳と目をそばだてている感じが好き です。今回は、六田家の兄弟受賞も話題になりました。全く違うテーマが描かれ、そろって力をみせてく れました。来年も多くの夢ある作品を期待しています。 ・山本 博氏 : 「床や柱のキズはわたしたち家族の思い出。アルバムのようなものです」「これが、木のいいところだよ。 おもいでになるんだ」「かべや廊下や天井の木の古くなった色は、家族と家の歴史」――ことしはいくつか の作品に木の家のキズについての記述がありました。 お母さんはキズをつけないでと、おこることがあってもお父さん、おじいちゃんは思い出になるからと、 おおらかです。新築の木の家でキズをつけたとき、「ぬれたタオルを置いておくと木が水分でふくれて直 る」といった大工さんのウラワザも紹介されていました。 これまで、木の家のぬくもりや温かさ、やさしさなどが強調された作品が目立ちましたが、木に歴史を きざむ。その家に住みつづけているからこそキズもつくという作品には生活感があって、好感をもちまし た。たとえば、犬を飼っていてその犬が家具や床にキズをつけるケースは多くあります。これも犬と楽し く暮らしている「あかし」とみれば、そのキズもほほえましく見えるというものです。 もうひとつの特長は、実体験。実際に木の家に住んでいる人の作品は、実感があり、うったえかける力 があります。このため、おじいちゃん・おばあちゃんの家などで、大黒柱、天井の模様などにふれ、それ らをまとめた作品が数多く入賞しています。一方で、木の家の体験を通しながら、夢の家への思いを描い た力作もありました。大いに想像力をはたらかせ、夢の家を語る作品がもっとふえてもいいのでないかと、 思いました。 ・遠藤 二三男 : 第8回「木の家 こんな家に住みたい」作文コンクールには12000点以上の応募作品が寄せられま したが、この膨大な数の作品数のみならず、夫々の作品の質が大変に高いものであるため、主催関係者の 一人としては、このことは実に喜ばしいものでありましたが、また、一方、審査員として入選作品を選ぶ ことが極めて困難な作業となり、はなはだ、辛い思いをさせられました。すなわち、最終選考に残った作 文は、いずれも甲乙を付けがたく、どの作品が入賞してもおかしくないものでした。 また、木造住宅を建設することが、山の良好な管理にも資することで環境問題に貢献すること、さらに、 木造住宅は快適で健康な住み心地を提供するが、大事に住み続けることにより長い年月にわたって居住者 と共に歴史を刻んで行くことができることについて、応募者の皆さんが深く勉強し、理解されていること が充分に伺われて、非常に嬉しいことでありました。 昨年の10月23日、作文コンクールの受賞者の表彰式を無事に終了した時、まさにその時に、大地震 が中越を襲い、東京でも、その激しい振動を感じました。そして被災地は未だ再建途上にあるわけですが、 この地震と木造住宅をテーマとした作品がよせられ入賞したものもあり、真に感無量であります。 8 各大臣賞・奨励賞の作文紹介 ―国土交通大臣賞― ◎低学年の部 江口 智之(えぐち・ともゆき) 洗足学園小学校1年生、男子。 題 名:「おじいちゃんの木のおうち」 資料NO.1参照 ◎高学年の部 岡部 達美(おかべ・たつみ) 千代田区立麹町小学校6年生、女子。 題 名:「生き続ける木の家」 資料NO.2参照 ―農林水産大臣賞― ◎低学年の部 新納 翔悟(にいろ・しょうご) 宮崎市立本郷小学校1年生、男子。 題 名:「しょうくんのおへやもあるよ」 資料NO.3参照 ◎高学年の部 岩間 優(いわま・ゆう) 杉並区立荻窪小学校5年生、女子。 題 名:「私が産まれた木の家の〝い∼いにおい〟」 資料NO.4参照 ―文部科学大臣奨励賞― ◎低学年の部 佐々木 望有(ささき・みゆ) 名取市立ゆりが丘小学校3年生、女子。 題 名:「丸太の家にすんでみたい大好きなおばあちゃんの家」 資料NO.5参照 ◎高学年の部 脇田 彩衣(わきた・さえ) 柏原市立旭ケ丘小学校6年生、女子。 題 名:「偉い人になれるかも?の木の家」 9 資料NO.6参照 資料NO.1 ―国土交通大臣賞作文紹介― ◎低学年の部 江口 智之(えぐち・ともゆき) 洗足学園小学校1年生、男子。 題 名:「おじいちゃんの木のおうち」 ぼくはなつやすみ、おじいちゃんのすむいなかにきています。 おじいちゃんのおうちのまわりには、木がいっぱいはえています。おじいちゃんが、三十ねんまえにう えたさくらの木は、ぼくのすむとうきょうのマンションくらいせがたかくて、ぼくがいくと、いつもゆっ さゆっさとゆれて、 「おかえり。」 といってくれます。 おうちは木でできたふるいおうちです。おにわにあるたくさんの木が、おうちのなかの木といつもおは なしをしているこえがきこえます。 ぼくが、おうちのなかでいちばんすきなところは、てんじょうにあるふとくてくろいはりというはしら にぶらさがっているしろいハンモックです。はじめてのったときは、はしらが、おっこちてこないかどき どきしたけどふとくてしっかりしたはりなので、だいじょうぶだとわかりました。ハンモックにねている と、もりのなかでうかんでいるみたいできもちがいいです。 おじいちゃんが、 「むかしのだいくさんは、いえをたてるまえに木をみただけで、この木は、いえのどこにつかうかをすぐ にかんがえたんだぞ。」 とおしえてくれました。だいくさんたちが、いっしょうけんめいにつくってくれたからかな、木がいっし ょうけんめいにいきているからかな。おじいちゃんの木のおうちにいるといつもげんきになります。なつ やすみのしゅくだいも、パッパッパッとはやくやってしまえます。とてもふしぎです。 ぼくが、大きくなったらすみたいおうちはおじいちゃんの木のおうちです。ぼくがそういうと、おじい ちゃんは、 「そうか、そうか。」 とよろこびます。 そしてこの木のおうちに、大きな木のテーブルをおいて、おいしいおりょうりをつくってたくさんおと もだちをよびたいです。ハンモックにもみんなをねかせてあげたいな。木のゆかでおひるねすると、木の かおりがするんだよってみんなにおしえてあげたいです。あそびにきたひとはみんなきっと、いっぱいげ んきになるとおもいます。かんがえていたらうれしくなってきました。 もうすぐ、なつやすみがおわります。にわでは、 「リーン、リーン」 とすずむしがないています。さようならしたくないなぁ。ずっといたいのに、おじいちゃんの木のおうち。 ありがとう。また、おしょうがつにくるからね。 10 資料NO.2 ―国土交通大臣賞作文紹介― ◎高学年の部 岡部 達美(おかべ・たつみ) 千代田区立麹町小学校6年生、女子。 題 名:「生き続ける木の家」 昨年十月、新潟県小千谷市は、震度六の地震に見まわれました。私の知り合いの片岡さんのお宅は、小 千谷でも、最も被害の大きかった山古志村のすぐ近くに立っていました。築百年をこえた、かやぶきの大 きな木の家でした。 私は、その家を、今年の夏、家族といっしょに訪ねました。片岡さんは、着くまで、いろいろな話をし てくださいました。 「地震は、地面が揺れるものだと思っていたよ。ところが、小千谷じゃ、山が動いた。動いた山の下には、 家も道もあったんだよ。」 「大根が、上に向かって飛ぶんだよ。地震で。」 山道を少しのぼると、こわれた錦鯉の池がありました。そして、さらに行くと、 「おじさん。これが、かやぶきの家。」 「そうだよ。これは、築百五十年のかやの家。地震で全くこわれなかった木の家もあるんだ。」 百五十年の木の家が、立派に立っていました。 さらにのぼると、片岡さんの家につきました。お母さんは、傾いた家を見るなり、泣き出しました。よ く見ると、お父さんの目からも涙が出ていました。お兄さんも私もです。家の中に入りました。大きな階 段が見えます。 「おじさん、二階にいけますか。」と、お兄さんが聞きました。 「静かにだったら、大丈夫だ。でも、危険だから、すぐ降りてくるんだよ。 」 「はい。でも、昔の木の家って、地震で家が傾いても、柱は立派に立っているんですね。 」 「そうさ。だから、くやしいんだ。」 おじさんも、つらそうです。 「一階も二階も、書院は残っていますね。それに、らん間は最高だ。」と父が言いました。おじさんは、さ らに苦しそうです。 「おじさん、この家は、どうなるの。 」 私は、思いきってきいてみました。 「この家は、こわすよ。でも、大黒柱もらん間も、こわれていないし、戸しょうじも残った。これらは、 残らず、他の家に行くんだよ。」 「他の木の家として、再出発するのね。」 「いや、マンションになるんだよ。」 私はは横須賀で見た、部屋が木でできたマンションを思い出しました。外はマンション。でも、中は、木 の柱、しょうじ、戸、それに書院もありました。もちろん畳でした。 私は、わかりました。木の家も、地震には、勝てないこともある。でも、木の家は、こわれても、他の 家の一部として再生できるということが。木の家は、こわれても、いつまでも生き続けるということが。 だから、やっぱり、私は木の家に住みたい。そう思いました。 平成十六年十月二十三日。小千谷は、大きく揺れました。しかし、木の家は、踏んばった。木の家は、 命をかけて大地に踏んばったのです。壁が落ち、傾いた家。しかし、その中で生き残った木の家の一部が また、今年、芽ぶいていきます。 11 資料NO.3 ―農林水産大臣賞作文紹介― ◎低学年の部 新納 翔悟(にいろ・しょうご) 宮崎市立本郷小学校1年生、男子。 題 名:「しょうくんのおへやもあるよ」 「しょうくんのおへやもあるよ」 とおかあさんがいいました。ぼくが、ほいくえんのねんちゅうさんのときに、おおきなおうちができまし た。おとうさんとおかあさんは、ふたりでそうだんして、木のおうちにしました。 ぼくは、おはなのちょうしがわるいときがあります。おいしゃさんは、ふくびくうえんとアレルギーせ いびえんだといいます。いもうとは、よくちゅうじえんになります。おかあさんは、シックハウスという びょうきだといっていました。だから、ぼくのおうちは、びょうきをわるくしないように、木のいえにし ました。 いえのなかにつかっている木は、さくらとひのきとすぎだとおとうさんがはなしてくれました。いえの てんじょうやかべやゆかは、ほとんど木です。1かいだけは、かべにしょくいというざいりょうをつかっ ています。ぼくのおへやは、2かいにあるのだけれど、ゆかはひのきで、かべとてんじょうはすぎです。 そとからかえってきて、げんかんをあけると、木のかおりがしてきます。おかあさんはそのにおいがす ると、 「いいかおり。おちつくね。」 といいます。 リビングに、木のベンチしゅうのうもだいくさんにつくってもらいました。いろんなたなも木でつくっ てもらいました。ぼくといもうとがあばれたり、おもちゃをおとしたりすると、木にきずがついて、おか あさんはおこるときがあるけれど、おとうさんは、 「これが、木のいいところだよ。おもいでになるんだ。」 といいます。 ぼくのいえの木は、たてたときからもうすぐ2ねんになるけれど、だんだんいろがかわってきました。 まえは、しろっぽかったけど、いまは、すこしちゃいろです。ぼくがおおきくなるように、木もおおきく なっているのかなとおもいます。 ぼくといもうととおかあさんは、びょうきがあまりわるくならないようになりました。木のいえをたて てよかったとおもいます。 このまえ、ぼくはおとうさんといっしょに木のいすをつくりました。この木のいえにあうように、木で できたものをいっぱいつくってみたいです。 12 資料NO.4 ―農林水産大臣賞作文紹介― ◎高学年の部 岩間 優(いわま・ゆう) 杉並区立荻窪小学校5年生、女子。 題 名:「私が産まれた木の家の〝い∼いにおい〟」 私は、二分の一成人式を迎えた十才の誕生日に、私が生まれた産院に行ってみました。そこは木のにお いがするふつうの家です。病院ではないので、薬や消毒のにおいではなく、まるで森のなかにいるような 気分になるところです。私は、ここで産まれたのかと思いながら、部屋を見回してみました。 お母さんは私を産むときに、大きな木の柱につかまってみたり、もうすぐ産まれてくる私のことを待ち ながら、天井の木目をひとつひとつ数えていたそうです。その木目は笑った顔にも見えたりして、お母さ んはずいぶんと気持ちが安らいだものだと話をしてくれました。そして、その木の家のいいにおいに包ま れて、私を産んだのです。産まれたての私は、元気に産声を上げて、木の家にその声は響き渡りました。 そして、お父さんがへその緒をきってくれたのです。 この間、テレビを見ていたら、鮭は川で産まれ、育って、海に出て、成長したらまた川にもどってくる 話がありました。そして、鮭が産まれた川にもどってくることができるのは、川のにおいを鮭が覚えてい るからだということを知りました。川はひとつとして同じにおいの川はないのだそうです。木の家もまた、 たとえ同じ木で建てられた家でも同じにおいの家はないと思います。私が生まれて十年後に再びこの家に もどった時も、とてもなつかしくて気持ちのいいにおいがしました。それはきっと産まれたばかりの赤ち ゃんだった私がしっかりとこの木の家のにおいを覚えていたからだと思いました。木の家には大人になっ ても、違う場所で住むことになっても一生忘れないにおいがあるのだと気が付きました。そして、こんな 記憶に残るにおいがする木の家で、私もまた子供を産んで、やさしい木のにおいに包まれながら、笑顔で いっぱいの家庭を将来築いていきたいと思っています。 13 資料NO.5 ―文部科学大臣奨励賞作文紹介― ◎低学年の部 佐々木 望有(ささき・みゆ) 名取市立ゆりが丘小学校3年生、女子。 題 名:「丸太の家にすんでみたい大好きなおばあちゃんの家」 わたしの家族はよくロッジにとまります。多くのロッジは大きな丸太を組み合わせてできたログハウス というものでした。夏はあつい外から帰ってくると思わず「すずしーい」と言ってしまいます。冬はスキ ーから帰ってくるとやはり「あたたかーい」といってしまいます。そんなロッジのげんかんを開けると深 こきゅうしたくなります。何となく気持ちがホッとするのです。 さいしょ自分のはなから入ってくる木のにおいで気もちがいいのだと思っていたのですが、それだけで はないことがだんだんわかってきました。丸太の家は木目がそのまま見えます。それを見ていてあきるこ とはありません。それに光をやさしくはんしゃしてくれます。手でさわると、コンクリートのようにつめ たくはなく、じわーっとひろがるあたたかさがつたわってきます。手ざわりはざらざらでもつるつるでも なく、しっとりとしてくる感じがあります。みんなと話していても、声がひびきすぎることもなくやわら かくつたわってきます。このように自分の目、耳、はな、手すべてにやわらかく気もちがよいことに気づ きました。 家は、人にとって、もっとも大切なものだと思います。家が気もちのいい空間かどうかで心のけんこう が決まってくると思います。家に帰っておちつくことができないなら、びょう気になってしまうのではな いでしょうか。ホッとできること、ゆっくりねむれることでつぎの日に元気になってがんばることができ るのだと思います。そんな力をじゅうでんしてくれるのが木の家だと思います。 ロッジに行ったときに、「どうして丸太の家は冬でも夏でもかいてきなの。」とお父さんに聞いてみまし た。そうしたら、「木はざい木になっても、こきゅうしているからだよ。」と教えてくれました。雨がふ ってジメジメするときはしっけをすってくれるし、空気がかわいてくると、すった水を少しずつはき出す のだそうです。それといっしょにのびちぢみもするのだそうです。また、あたたかい空気やつめたい空気 も同じように中にためることができるのだと聞きました。切られた木がそんなふうになるなんて、とても ふしぎな気がしました。切られてしんだと思っていた木が根っこはなくてもこきゅうしているというので、 頭がこんがらがってしまいましたが、とくべつな力があることはわかりました。 わたしはときどき家族とロッジに行って、「じゅうでん」をしてきたいと思います。わたしの家にも木 のぶ分はいっぱいあるけれど、からだぜんぶを木でつつんで、とてもよい気分になりたいのです。大きく なったら、丸太の家を家族みんなでつくってみたいなぁ。 14 資料NO.6 ―文部科学大臣奨励賞作文紹介― ◎高学年の部 脇田 彩衣(わきた・さえ) 柏原市立旭ケ丘小学校6年生、女子。 題 名:「偉い人になれるかも?の木の家」 この夏休み、私は愛知県犬山市にある明治村というところに家族で遊びに行きました。明治42年に建 てられたという第八高等学校の赤いレンガづくりのりっぱな門を通り抜けると、そこにはすばらしい建物 たちが私たちを待っていました。 一歩中に入るだけで背中がしゃんとしそうな千早赤阪小学校講堂は、私の住む大阪にあったものなので、 不思議な出会いだなと思いました。小泉八雲避暑の家では楽しい駄菓子を売っていて、奥の部屋に上がっ てたんすの引き出しを開けて八雲の家族写真を見たりしました。とても天井の低い部屋で、昔の日本人は 小柄だったのかな、と思いました。安田銀行会津支店はとてもしっかりとした建物ですが、今の銀行の雰 囲気よりは親しみやすい感じがしました。その他、どれもが新しい時代を迎えた日本を支えてきた見事な 建築物ばかりでしたが、私がとても好きになった「木の家」がありました。幸田露伴住宅「蝸牛 庵」と、西園寺公望別邸「坐漁荘」です。 私たちが明治村に行った日は気温が34度もある日でしたが、この二つの木の家の玄関先に立つだけど 汗がすっと引いてしまうのです。気持ちのいい風が入り口から奥のほうに吹き抜け、木の香りまで漂って いるのです。 「『坐漁荘』は1920年、『蝸牛庵』は1868年に建てられたらしい。昔の木の家はいい木を使ってい るからかな、とても丈夫なのだね」 と、父も、驚いたようにいろいろと見学していました。私もそれを聞 いてびっくりしました。そんなに古い家なのに、今この家が町にあって人が住んでいてもちっともおかし くないと思ったからです。デザインもすてきです。私は「蝸牛庵」の書斎に上がって、文机の前に座って みました。とても落ち着いた気分になり、まるで自分が前からこの家にすんでいたような気持ちになりま した。「こういう懐かしい和風の家っていいわね、エアコンもいらないわね」,と母も感心していました。 私は、日本が台風や地震などの災害の多い国だと聞いたことがあります。この木の家たちは、何度それら に耐えてきたのでしょう。私は、日本人が住む風土に合わせて作り上げてきた木の家が、本当によく考え られた傑作だと思いました。「私の勉強部屋もこんな部屋だといいな」と私が言うと、「家は人をつくる、 というから、そうすれば偉い人になれるかもしれないな」と父も冗談を言いました。「うちも木造だから、 少しは効果があるかもね」と姉が笑いました。木の家とふれあえたことで、みんな、とてもすがすがしい 気持ちになりました。 災害に強く、風通しがよくて身体にもいい木の家。そんな木の家の文化を私はとても誇りに思います。 これからも、時代にそって、木の家は私たちを守り、暮らしを支え続けていってくれると思います。 15
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