平成 26 年 3 月 17 日 No.451 月極駐車場収入と消費税 ~免税事業者の場合~ 平成 26 年 4 月 1 日から、消費税と地方消費税の合計税率が 8%に引上げられます。また、平成 27 年 10 月 1 日か らは 10%に引上げる予定となっています。今後、超高齢化社会が進み、社会保障の費用が毎年 1 兆円ずつ増加すること や、国の財政状態は破たん寸前の状況にあることから、さらに消費税の税率は引上げられることが予想されます。 そこで、今般の消費税率の引上げに伴う対応策については、今後も継続して消費税率の引上げが行われることを前提に 対応策を講じておかなければなりません。そこで、アパート等の賃貸経営をしている個人事業主が、消費税の免税事業者 である場合を例にとって、その対応策を考えてみました。 1. アパート等の賃貸経営をしている個人事業主の場合 アパート等の賃貸業を営む個人オーナーは、消費税の非課税売上げである「住宅家賃」が大半を占め、基準期間の課税 売上高が 1,000 万円以下で、消費税法上の「免税事業者」となっている人が多いと思われます。しかし、アパート・マ ンションの居住者のための専用駐車場も備えていて、住宅家賃とは別に駐車場料金を受取るなど消費税法上の課税売上げ もあるはずです。 今般の消費税率の引上げに伴い、課税事業者の人にとっては、消費税を価格転嫁する必要があります。しかし、免税事 業者の人は消費税の納税義務がないから、消費税の価格転嫁が必要でないとはいえません。 なぜなら、新たに店舗や事務所ビルなどを取得する場合には、消費税の課税事業者であれば店舗や事務所ビルの建物の 消費税の控除を受ける(建物に係る消費税の還付を受ける)ことができるため、 「消費税課税事業者選択届出書」を提出し て課税事業者になることが考えられます。また、所有するアパート・マンションを、相続対策などを目的に、家族が主宰 する「不動産管理会社」へ時価で譲渡すると、その建物の譲渡収入は消費税法上課税売上げとされることから、基準期間 の課税売上高が 1,000 万円を超えることになると、 「課税事業者」になってしまうかもしれません。 だから、消費税の税率引上げのタイミングで価格転嫁を実行しておかないと、将来、課税事業者に該当することとなっ たときに、現在の消費税率 5%と改正後の消費税率との差額に相当する価格を転嫁することが困難となり、消費税のアッ プした分だけ自己負担(収入減)となってしまいます。 2. 賃料改定の方法 そこで、今回の消費税の引上げに伴い、以下のような賃料改定が必要と考えます。現在は、免税事業者で月極駐車場料 金については、税込価格で表示しているため、まず、税抜き価格(駐車場料金×105÷100)を求めます。次に、税抜 き価格に 8%の消費税を加算した価格が、平成 26 年 4 月からの改定価格となります。 (以下の表を参照) 今回の価格改定の際に、月額駐車場料金の「税抜き価格」を明確にしておけば、平成 27 年 10 月 1 日に消費税率が 10%に引上げられても、税抜き価格×10%を新改定価格として通知することで、スムーズな価格転嫁が期待できます。 月額駐車場料金 ① 税抜き価格 ② 消費税(5%)③ 消費税(8%)④ 改定価格(税込) (現行料金・税込価格) (①÷105×100) (②×5%) (②×8%) (②+④) 5,000 円 4,762 円 238 円 380 円 5,142 円 10,000 円 9,524 円 476 円 761 円 10,285 円 12,000 円 15,000 円 11,429 円 14,286 円 571 円 714 円 914 円 1,142 円 12,343 円 15,428 円 3. 消費税の新税率 8%が適用される時期 消費税率引上げに伴う資産の譲渡等の適用税率に関するQ&A(平成 26 年1月:国税庁消費税室)によると、不動産 賃貸の賃借料に係る適用税率は、平成 26 年4月分の賃貸料を、3 月 31 日以前に受領しても、新税率8%が適用される としています。反面、平成 26 年3月分の賃貸料の支払期日を4月としている場合には、4 月 1 日以後に賃料の支払いを 受けても税率は5%が適用されます。 実務では、賃貸契約において前家賃(例えば、4 月分賃料は 3 月 31 日までに支払う)とするものが多いと思いますの で、賃料改定の案内は早急な対応が必要です。 (担当:山本 和義)
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