カカオ・チョコレートニュース7号 7月17日発行

取引先さま各位
カカオ・チョコレート週刊ニュース
7号
2012/7/16 発行
株式会社 立花商店
生田 渉
お世話になります。カカオ・チョコレート関連のニュースを前週の出来毎の中から注目ニュースを 5 本
ピックアップして、発行しています。カカオやチョコレート中心に取り扱っております弊社と致しまし
ては、広く関係者の方々に読んでいただけるように、少しずつでも有益な情報をお届けできればと考え
ております。宜しくお願い致します。
1、ガーナミッドクロップ(=ライトクロップ)は前年対比60%減少(7/10)
ガーナカカオ豆の今シーズンのミッドクロップの集荷数量が昨シーズンの 107,000 トンと比較し 60%減
の 42,000 トンになるであろうとガーナココアボードに近い筋より報告された。
『ライトクロップが不作になることは正直、予測していなかったが、集荷予想数量としては 42,000 トン
前後だ』とロイターのインタビューに匿名で答えた。
(ココボードが集荷数量の発表は、市場価格に微妙な影響を与えるものとして考えている為、業界関係
者も匿名からの情報としてインタビューに応じた)
ガーナでは、1 年間を2シーズンに分けて販売を行っており、主に輸出用途とされているメインクロップ
と、主に国内加工業者向けに少し割引価格で販売されるライトクロップである。
先週金曜日に開始した Week11 のガーナの生産者からの価格は、64㎏袋当たり 205 セディ(=$105.6)
、
トン当たり 3,280 セディ(=$1,690)で前週と変化がなかったとココアボードは説明した。
また、別の情報筋では、収獲量の大幅な減少は、良くない天候が続いたことが原因とし、カカオの木が
成長するのに必要な条件が全くそろっていなかった、、と説明した。長引く乾燥した気候に、非常に多い
降雨量、それに関連し、いくつかの病害が相まって、西アフリカを代表する世界的なカカオ産地である
コートジボワール、ガーナのカカオの生産数量を抑制した。ICCO の予測によれば西アフリカの悪天候に
よりコートジはこれまでの最大収穫量となった昨シーズンの 150 万トンと比較し、2011/2012 シーズン
の生産数量は 135 万トンと減少する見込み。ガーナも昨シーズンは、理想的な天候、農業技術の向上、
多少の密輸などの要因から過去最高の 100 万トンを達成していた。
ガーナは来期 2012/2013 シーズンは、少なくとも 100 万トンの収穫量を達成したいとしている。
2、シンガポール株式市場、調査会社がぺトラフーズの株価期待数値を切り下げ(7/9)
シンガポールの CMIB リサーチ社はぺトラフーズ社の株価期待値を一株当り S$2.34 から S$2.04 へ切り
下げた。株価に対して相対的に低い業績と、今後も想定される低い加工マージンなどが課題として低く
評価された。
ぺトラフーズの株価は、ロイター社が定めている日本などのアジア諸国の食品加工業の株価上昇のイン
デックスが 2.5%上昇であるのに対して、年初からは既に 33%も高騰し、7 月 9 日現在も株価は S$2.46
で安定している。
インドネシア政府が付加価値の高い加工品の製造工場への設備投資を呼び込む狙いで、インドネシア産
カカオ豆に輸出関税を賦課した影響で、現在、インドネシア大手国内企業や世界的なカカオ関連企業が
一気に同国に工場設立の投資を進めている。
これにより、インドネシア・ココアインダストリー・アソシエーションによれば、インドネシアの摩砕
可能数量は 2012 年の新規投資により前年比43%増加し、2013 年には、更に28%伸びて、50万ト
ンになる見込みで、これにより製造能力(供給)過多になると予測されている。前述の調査会社では、
結果として、競争が激しくなり、ぺトラフーズなどのカカオ一次加工品の製造企業の各社の加工マージ
ンは削げ落とさざるを得ない状況になるだろうと分析している。
3、欧州、ココアバターの需要の高まり(7/10)
・ココアバターの需要が高まっている
・カカオ全体の不足感は、欧州の摩砕統計の発表を受けて弱まるだろう
欧州合計の第二四半期のカカオ豆磨砕数量の大幅な落ち込みを受けて、反動的に、ココアバターの需要
が現在高まっている。
ブリュッセルに本部を置く、European Cocoa Association (ECA)は欧州全体の第二四半期のカカオ豆摩
砕数量が 292,551 トンとなり、事前の最も悲観的な予測数値であった 12%減少を更に大幅に下回る
17.8%減少という結果となったことを報告した。
『予測より磨砕数量が少なかったということは、市場にはココアバターも予測より在庫が少ないという
ことが言える』とあるカカオトレーダーは意見を述べた。
また、このトレーダー曰く『磨砕数量の落ち込みは木曜日(7/12)ICE 先物価格を 4.5%下落させたもの
の、皆が予測していたよりもココアバターの在庫は少ないという認識が醸成され、ココアバターの需要
が一気に高まった』
この影響を受けて、欧州の現物のココアバターのレシオは金曜日 7/13 には先週の 1.16 から 1.22 へ上昇
した。
『第二四半期の 292,551 トンという数量は、3 年前に欧州危機が始まってから最も低い数字であり、以
前懸念されていた 2011/2012 シーズンのカカオの不足感は解消されるだろう』と金融機関筋は考えてい
る。
更に別のトレーダーの視点では、欧州の製造キャパシティが市場の需要に比べて過剰なだけであり、統
計を見てもココアバターの製造数量が過剰な状態で、必ずしも需要が少ないということではないと考え
られている。
一方で、この数字の発表により欧州のカカオ豆需要へのプレッシャーは緩み、カカオ豆の安定供給は改
善されるべきだとしている。カカオ豆のプレミアムは、コートジ産が、先週より 10 ポンド上昇し、市場
価格+60 ポンド、ガーナ産は先週と変わらず市場価格+90 ポンドとなっている。
ロンドン先物市場が認定している指定の倉庫にあるカカオ豆在庫数量は、6/25 日時点での 57,420 トンか
ら 7/9 時点では 64,010 トンに増加している
4、アジア・バターは価格維持、パウダーは下降トレンドで中国勢は契約再交渉に(7/13)
アジアのバイヤーからはココアバターの価格はこれまでと同様ロンドン市場のカカオ豆のレベルとほぼ
同じレベルの価格で需要があるものの、ココアパウダーについては、豊富な在庫にも関わらず欧州を中
心として弱い需要が影響し、この先数週間で価格が下がる可能性も出てきた。
また、シンガポールのトレーダー筋によれば何社かの中国のココアパウダーのバイヤーは、この 6 カ月
で 20%以上も価格が下がったことを理由にココアパウダーの製造会社に対して、既契約の価格の再交渉
を開始しているとのこと。
このような状況は 2003-2004 シーズンに、ココアパウダーが$3000/トン以上から$1000/トン以下へ下
落した際も契約不履行が生じ、製造会社は契約を戻すこととなったという事実がある。
アジア市場のココアバターのレシオはこれまでと変わらずロンドン市場価格に対して 1.05.このレベル
でもいくつかの買い付けが入っている様子。ただこれらは短期的なカバーの需要にすぎず、その中には、
ココアパウダーが売れないため、自社の先積みのココアバターの契約を買い戻す動きがある。先物につ
いては、僅かだか、実需のポジションが残っている状態のようである。
一方欧州市場のバターのレシオは 7 月積みで 1.16、8-9 月荷渡しで 1.18 となっている。
アジア市場でのココアパウダーについては、中国のココアパウダーバイヤーの多くが買い付け契約を行
った昨年末の$5000/トン、今年年初の$4,700/トンの高値から大きく下降し、今週は$3,700-3,900/トンと
なっている。
マレーシアの製造会社筋の意見では、ユーロが弱いこの状況下、アジア産ココアパウダーは$3,900/トン
でも決して競争力のある価格とは言えないだろう。多くの企業が$3700-$3900/トンの範囲でパウダーを
売ろうとしていると思う。
また、別のマレーシア企業はココアバターの販売が引き続き低水準である為、ココアパウダーはそのコ
ストを相殺する為に$4,000/トンにて価格をオファーしたとのこと。
アジア市場での主たるココアパウダー、ココアバターの製造地はインドネシア、マレーシアであり、世
界全体のカカオ豆摩砕可能数量の約 12%を占めている。尚、アジア・ココア・アソシエーションはまだ
第二四半期のカカオ豆磨砕数量の発表をしていない。
5、インドネシア・カカオ農家への調査結果=生産拡大プログラムは失敗が浮き彫りに
(7/10) *インタビュー記事
・調査結果は、新たなカカオの苗木の 74%が枯れたか、問題がある状態
・7,000 万本のカカオの苗木がインドネシアのカカオ農家に配布された
・カカオ生産者はより効率的な換金作物であるパームへ転作をし始めている
新しく植えた苗木の多くが死んでしまったことで深刻な生産数量の停滞期に入っているインドネシアの
カカオ産業は 350 百万ドル(約 280 億円)のプログラムで復活を目指しているが、この度の調査で多く
のカカオ農家がオイルパームへの転作を進めている問題が判明した。
インドネシアは世界第 3 位のカカオ生産国であるが、病気や多様な気候の影響でこの数年十分な供給量
に到達するのに悪影響を及ぼしている。
カカオの主要産地であるスラウェシ島にある Hasanuddin 大学が政府のプログラムにより古いカカオ木
の植え替えを行い、農園の再生を目指している 60 のカカオ農家に対して調査を行った。
調査結果は生産性が高く、病害への抵抗力も高い新しい品種を植えてきた苗木の 74%は既に枯れている
か、倒れてしまって使い物にならない状態になっていることが判明した。また、残った苗木の68%も
Vasculer-streak Dieback(VSD)や cacao pod borer 等の病気に感染していた模様。
『これは克服しなければならない大変深刻な問題であり、政府はこの事実を静観したり、無視したりす
ることは出来ない』と同大学の Centre for Research and Development on Natural Resources のセンタ
ー長である Sikstus Gusli 教授は述べた。私たちは政府にこの様な苗木の問題が発生していることを十分
に認識してもらいたい。
政府は 2009 年よりカカオの生産量を 4-5 年の間に、飛躍的に増加させ、60 万トン以上の生産量にする
計画を開始し進めてきた。スラウェシ島はインドネシア全体の 65%を占める主要な産地であり、国全体
では 2012 年シーズンは、2011 年より 10%程増加した 47.5 万トンの生産数量になる見込み。
この政府主導のプログラムでは 2009 年より 7000 万本のカカオの苗木がスラウェシ島*、フローレス島*
や各地域に配布され、その範囲は、国全体で 100 万ヘクタールあるとされているカカオ栽培地域の 10%
程度だと言われている。
前述の、Gusli 教授によれば、
『政府レベル、地方行政レベル、地区レベルに聞けば、関係者は皆、プロ
グラムは上手くいっているという報告しかしない。皆、其々にプログラムが上手くいっていると見せて、
上司からの報酬を受けたいのでしょう。
』
同氏によれば、既にこのプログラムで苗木を支給された中で 5%のカカオ農家は、既にカカオ生産を放棄
し、手間がかからず、収益性の高いパーム等を育て始めている。
『カカオ生産者は既にカカオ生産に前向きではなくなってきている。もちろん他のカカオ生産者はいる
が、彼らの農園のカカオはまだ生産性が高くなっていないし、今後、周りの農家のようにカカオ生産を
やめてしまう可能性もある』
インドネシアでは国の 90%は小規模農家の生産に依存しており、残りは地方や企業が所有する大規模農
園となっている。
今回の調査では、スラウェシ島を中心に大よそ 100 万世帯がカカオ生産によって生計を立てており、カ
カオが枯れて生産性が悪くなるという課題の解決は緊急の課題として必要としていることも報告されて
いる。
Gusli 氏は『スラウェシ島の人々はカカオを愛している。ただ問題が改善されずに継続され続ければ、彼
らも今のように生産は続けていけないだろう。彼らも安定して生活していかなければならないのだから』
と警報を鳴らした。
≪インドネシア・カカオ産地の場所について≫
*スラウェシ島・・・下記赤線で囲まれた島
*フローレス島・・・下記の黄色部分
*出典ウィキペディア
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