インドネシア 通貨(ルピア)安対策に躍起

インドネシア
通貨(ルピア)安対策に躍起
シンガポール駐在員事務所
佐藤
憲彦
インドネシア中央銀行は 2015 年 3 月 31 日、同年 7 月 1 日からインドネシア国内決済におけるルピア
の使用を義務化すると発表しました。2011 年 6 月に通貨法が制定され、インドネシア国内での現金決済
はルピアの使用を義務付けていましたが、昨今のルピア安に対応し、これ以上のルピア下落を防止する
施策の一環として、7 月 1 日より現金決済のみならず非現金決済も(貿易取引などは除く)ルピアの使用
を義務付けることとしました。ルピア安の背景には、3 年連続の貿易・経常赤字に加え、中国やインドな
ど資源需要国の景気の弱含みがあると言われています。輸出が弱含むなか、政府は外貨の獲得策も打ち
出しています。インドネシアで作る製品の 3 割以上を輸出する企業に対し課税の優遇を開始し、得た利
益を地元への再投資や研究開発に回すような施策を講じています。
ルピア使用義務化により、インドネシア国内での商品販売代金回収や原材料購入代金支払、外国人へ
の給与支払もドルなどからルピアに切り替わることとなります。ルピア相場は歴史的に見ても変動幅が
大きく安定しないため、決済通貨として多くの企業がドルを使ってきました。海外からドル決済で原材
料を輸入している企業は、インドネシア国内での販売代金回収が全てルピアとなるため、為替リスクに
さらされることとなります。昨今のルピア安相場進行の局面では、現地に進出する日本の製造業でも採
算悪化が懸念されます。
新規則の下では、インドネシア国内において行われる全ての決済取引に関する契約についてルピア建
で締結する必要があり、その決済もルピアで行う必要があります。また、全ての企業はその提供する物・
サービスの見積りをルピア建で作成しなければならず、ルピア以外の外貨の併記も禁止されましたので
注意が必要です。
一連の対策に効果を疑う声もあり、今後もジリジリとルピア安が進むという見方もあります。今後
米国の利上げとなれば、更なるルピア安に繋がる懸念も抱えています。
(28.2.9 現在)201602 広告審査済