欧州印刷業界 NEWS 4 号(2010 年冬) - powered by drupa 2010 も間もなく終わろうとしています。ヨーロッパの印刷業界にとって、かなり厳しい年ではありましたが、部 分的に(例えば、KBA の受注など)事情の改善が見えて来ました。2011 年も業界の見通し、イベント、 業績についての情報を送らせていただきたいと思います。 この「欧州印刷業界 NEWS」4 号の後半のテーマは、「デジタル」が一つのキーワードになります。例え ば、 ※ 印刷業界トレンドとして、デジタル分野の成長性が期待される包装印刷やプリンテッド・エレクトロニク スとメディアのデジタル化に関する最新例、 ※ 企業 NEWS として、欧州の経済回復の背景に、印刷機械メーカーのデジタル印刷機械メーカーとの 提携、 ※ メッセ情報として、来年開催される digimedia と CEBIT の情報 です。どうぞ、お楽しみ下さい!! 第 1 部:欧州の印刷トレンド トレント 1:包装印刷に成長の見込み、特にデジタル印刷が成長 包装業界全体が不調の中、成長し続ける分野として包装印刷が挙げられます。コンサルティング会社 PIRA の調査によりますと、包装印刷がドイツの印刷市場の 30.5%を占めるとしています。印刷機械メー カーがその動向に対応していることが、今年の春バーミングハムで開催された IPEX でも顕著に現われてい ました。この見本市で Kodak 社が展示した Flexcel ダイレクト・システムは数多い中の一つの事例に過ぎ ません。また、11 月南ドイツのニュルンベルグで開催された包装機械展 Fachpack にも包装印刷が主な テーマで、規模の小さい見本市にも関わらず、包装印刷関連する出展者数が2桁台を示しています。 注目を集めたソリューションは、英国のドミノ社が開発したサーモインクジェットプリンターの「G」シリーズで す。特徴は速乾性のインキで、例えばバターの包装にデータ・マトリクス・コードを問題なく印刷でき、製品 であるバター一個一個のトレーサビリティーが保障されています。 また、両方の見本市では、包装印刷の分野に次のようなトレンドが目立ちました:パッケージの高級感が ますます重要視され、メタリックなラッカーが使用されたり肌合いの良い面をもつ容器・素材に関心が集ま りました。これは印刷機械メーカーの更なるチャレンジだと思われます。 包装印刷の分野では、デジタル印刷は成長性があると思われます。ドイツの包装専門誌によると、デジ タル印刷が世界の包装印刷市場の中に占める割合は、現在わずかの 1 パーセントだそうですが、これか ら急激に増えると予想されています。その理由として、デジタル印刷の技術の発達、それに容器と製品の トレービリティーに関する消費者と食品や薬品メーカーから要求の増大などが挙げられます。 Fachpack で話題を集めたものは、ベルギーのパンチ・グラフィクス社(www.punchgraphix.com)が出展し たブランド名「Xeikon」と言うソリューションでした。それは医薬品、化粧品、菓子菓メーカーをターゲット に、小ロットの最終単位の一箱まで生産を可能にし、QA-I トーナを利用してバーコードを印刷、製品の トレーサビリティーを確保、そのうえバーコードが中身である食品と接触しても健康に傷害を与えないという 素晴らしいソリューションです。食料品の包装と言いますと、日本の富士フィリム社が開発した低マイグレ ーション・ラッカーを使用した「スナック・ボックス」も大人気でした。応用サンプルとしてクロワッサンを入れて 配布されていました。 (テキストの出典:Druck&Medien、Food Technology 4/2010、IPEX ウェブサイトと訪問、Packaging Journal 08/2010、PrePress – World of Print 6/2010 と著者のアンバラージュ展、Fachpack 展の訪問から作成) トレント 2:プリンテッド・エレクトロニクス ドイツのヘッセン州経済大臣が去年提出したレポートによりますと、オーガニックとプリンテッド・エレクトロニ クス市場は 14 億ドル規模(2007 年)から 2014 年までに 300 億ドル以上の規模へ成長するとされていま す。ドイツの印刷機械メーカーは、この分野に更に力を入れて行くとが明らかになりました。例えば、大手 の ハ イ デ ル ベ ル グ 社 は 2007 年 に ダ ル ム シ ュ タ ッ ト 工 科 大 学 の 印 刷 機 械 ・ 印 刷 技 術 研 究 所 (www.idd.tu-darmstadt.de、英語のパンフがこちらでダウンロード可)と共同開発プロジェクトを更に 2012 年まで延長するように決定しています。このプロジェクトは、化学・医薬品メーカーであるメルク社、自動車 部品・家電・包装機械メーカーであるボッシュ社など、それぞれの産業に属する 16 社の企業と 11 の一流 研究機関が構築するクラスター「Forum Organic Electronics」に加盟しています。ドイツ連邦教育・研 究省は、このフォーラムに 4000 万ユーロ(約 435 億円に相当)の支援金を出しています。 ドイツの研究機構フラウンホーファーもプリテッド・エレクトロニクスと密接に関わっています。メッセ・デュッセル ドルフ・ジャパンが今年の 7 月に開催したセミナーで発表し、高評を博したバウマン教授(プレゼンテーショ ンは、こちらからご覧になれます)が 2011 年 6 月にドイツで開催される予定のラージ・エリア・オーガニック・ プリテッドエレクトロニクス会議 LOPE-C の学術実行委員会の委員長を勤めるようになりました。会議の 詳細はこちら。 (テキストの出典:Hessen-Nanotech-NEWS-2-2009、http://www.lope-c.com、 http://www.idd.tu-darmstadt.de、packmag.ch のウェブサイトから作成) トレント3:デジタル・メディア速報 ヨーロッパのマルチ産業企業グループ「ヴァージン」の経営者リチャード・ブランソンは、完全にデジタル化し ている雑誌をアプリとして 2010 年 12 月 20 日に販売開始しました。「Project Magazine」という題でライフ スタイル雑誌として開発して来たもので、利用料金は 2.99 ドルです。米国・オーストラリアのメディア盟主 マードックは同じくアプリのみで、2011 年から新聞「Daily(毎日)」の販売開始をする計画を公表しまし た。報道によりますと、一年間の予算は 3000 万ドルで、150 名の特派員が稼働するそうです。1 週間の アクセス料金は 99 セントと予定されています。 (テキストの出典:2010 年 11 月 25 日の Handelsblatt 誌、2010 年12月 22 日の Kölner Stadtanzeiger 誌、 http://itunes.apple.com/us/app/project/id404942717?mt=8 から作成) 第 2 部:産業・企業ニュース 欧州の経済回復:差が明確に 欧州経済の回復状況は国によって速度やまた経済環境によって傾向も随分違っています。ドイツの有 力な経済誌「Handelsblatt」の記事によれば、欧州の大手 600 社のデーターに基づいた予測では、2010 年は企業別、国別にかなりのばらつきがでるとしています。下の表でも分かるように、ドイツの企業の回復 は一番速く、2010 年の純利益が 2009 年に比べて平均 42%増加します。アイルランドの企業は平均で 利益を 31%増やしました。それに対して、ポルトガル、スペインやベルギーの企業は利益の増加がわずか (4~1%)で、ギリシャの企業は事情が更に悪化させ、利益が去年に比較して 40%減少する見込みで す。その原因の一つは、ドイツの企業は輸出がもっとも強力で、売上の 3 分の 2 程度は外国で稼いでい ます。それに対して、経済回復が遅い南ヨーロッパの企業は主に国内の市場をターゲットしていると言えま す。 (テキストの出典:2010 年 11 月 24 日の Handelsblatt 誌から作成) 図1:欧州企業の利益率増加(2009年度との比較、単位は%) 純利益の増加率(%) 50 42 40 31 30 18 10 4 1 1 スペイン 13 10 ベルギー 20 ギリシャ イタリ オランダ フランス ポルトガル -20 アイルランド -10 ドイツ 0 -30 -40 -40 -50 出典:2010 年 11 月 24 日の経済誌「Handelsblatt」 ドイツの印刷機械メーカー:リストラが継続する方向 ドイツの印刷産業の平均は上に述べた一般的な経済状態のようには回復していないのでしょうか、企業 によっては受注と利益がかなり異っています。 * KBA 社は 2010 年の 1 月~9 月にかけて受注額は、昨年の同期間に比べ 46.7%増加し、約 10 億ユーロ(12 月 24 日の時点で 1087 億円に相当)になり、また連結の売上が 4.7%増加し、7 億 7200 万ユーロ(839 億円に相当)となりました。営業力増強、販売実績高揚とコスト削減対策の効果として、 今年の第三四半期(6 月~9 月)の税引前利益が 1530 万ユーロ(16 億円以上に相当)を計上してい ます。同社はこれ以上の人材削減を計画していないとしています。 * ハイデルベルグ社は 2012 年までに毎年 4 億 8000 万ユーロ(522 億円に相当)程度のコスト削減を 実行すると公表しました。同社が中国の市場をさらに開拓するために、上海の近郊の工場を拡張し、将 来は印刷機械を中国から海外に輸出する計画も立てています。 * マンロランド社は、リストラを継続し、現時点の 7300 名の従業員数を 2012 年の年末までに 6000 人に削減する計画を公表しました。同社は将来的に生産を 3 つの拠点に集中させ、14 億ユーロの受注 額を見込んでいます。この金額は、記録的であった 2007 年の数字のほぼ 70%に相当します。以前話題 になりました、他の印刷機械メーカーとの合併をあきらめ、自力でビジネスを継続するとしています。 (出典:2010 年 9 月 18 日の FAZ 誌、2011 年 1 月 1 日の ManagerMagazin 雑誌、 2010 年 11 月 15 日・12月 15 日の www.print.de、Handelsblatt 誌から作成) ドイツの印刷機械メーカー:デジタル印刷メーカーと提携 「印刷市場全体のデジタル印刷が占める割合は、今後も増える。」と言う予想は否定できないでしょう。 2011 年 1 月号の経済誌「Manager Magazin」が発表しているデータによりますと、2000 年の時点で印刷 全体で 80%あったオフセット印刷のシェアーが、2020 年までには 29%まで減り、以前 5%しか占めていな かったデジタル印刷のシェアーが 39%まで増加すると見込んでいます。ドイツの印刷機械メーカーはその変 化を分析して、それぞれ対策を取っています。マンロランド社はキャノングループに属する OCE と提携する ことになりました。両者は共同にデジタル印刷機械を開発・販売することを目指すようです。以前デジタル 印刷分野も持っていたハイデルベルグ社は、すでに報道されていたように、デジタル印刷企業と提携する 計画を立て、2011 年 3 月の月末までに提携先の企業名などを公表するとしています。同年の 4 月 7 日 からデュッセルドルフにて開催される、デジタル・コンテンツ、技術、ビジネスをテーマとする専門見本市 「digi:media」に、同社がすでに出展申込を済ませています。出展の内容が期待されます! (出典:2010 年 9 月 18 日の FAZ 誌、2011 年 1 月 1 日の ManagerMagazin 雑誌、2010 年 11 月 15 日、2010 年 12 月 10 日の www.print.de から作成) 欧州の紙製造:大規模な合併 紙は印刷にとって最も重要な素材ですが、欧州の製紙業界は紙の価格の急激な下落で苦心を強いら れています。昨年の夏には、欧州での新聞用紙の価格は 25 年ぶりの最低レベルに達しました。製紙企 業がメディアに対して値上げを求めながらも、産業構成の変革の試みています。最近の事例は、12 月中 旬で公表された合併です。欧州の No.2 であるフィンランドの「UPM」(売上 77 億ユーロ、8391 億円相 当、年間生産能力 100 億トン)は、ヨーロッパの 9 番目のメーカー「Myllykoski(ミリコスキー)」社(売上 12 億ユーロ、1308 億円相当、年間生産能力 28 億トン)を買収することを発表しました。ミリコスキー社 に属するドイツの Rhein Papier 社も UPM グループに入ることになります。 (テキストの出典:2010 年 12 月 22 日の FAZ 誌、同日の Handelsblatt 誌から作成) 第 3 部欧:メッセ情報 デジタル・コンテンツ、技術、ビジネスを一ヵ所に:digi:media 2011 年 4 月 7 日から9日にかけてデュッセルドルフにてデジタル・コンテンツ、技術、ビジネスをテーマとする 専門見本市「digi:media」が開催されます。この見本市の開催の目的は、印刷業界をはじめメディア業 界が、これから経験するデジタル化への対応を発表することです。その背景は、デジタル技術によりプロセ スチェーンの変化です。デジタルプリントでは、プリプレスやポストプレスの他に、CRM、コンテンツソリューショ ン、IT ストラクチャーが重要なバリューチェーンの構成要素となっていることで、これらを「デジタルプリント・ソ リューション」としてまとめた専門見本市が必要となってきています。メディア融合の時代の中で目的を絞っ て、多様な情報をワークショップ、講演、シンポジウム等を通して提示する事がより重要になっています。 digi:media は、デジタルコミュニケショーンやメディア融合の時代の中で、印刷をベースとするネットワーク 化、マーケティングの新しいプラットフォームとなるでしょう。詳細の情報(プレゼンテーション)は、ここからダウ ンロード可。メールのお問合せは担当ユングまでお願いします。 (テキストはメッセ・デュッセルドルフの資料から作成) CEBIT は印刷業界にアプローチ ZDNET のニュースによりますと、来年の CEBIT は印刷業界に呼びかけ、業界のプラットフォームを提供し ようと準備を始めています。特に「アウトプット・マネジメント」の分野で様々なイベントの開催を予定してい るようです。しかし、業界からの反応はあまり芳しくないように思われます。:ドイツのメディアによりますと、 京セラも Xerox も参加しないこと、キャノンと HP はコメントをひかえています。Brother、Oki とコニカミノルタ も単独出品はせずに、提携先のスタンドで展示発表することになるそうです。 (テキス出典:2010 年 12 月 6 日の ZDNET 資料から作成) drupa の準備は順調 2012 年 5 月 3 日からデュッセルドルフで開催される世界最大印刷機器展 drupa の準備は順調に進ん でいます。日本から直接出展する企業には、ホリゾン社、小森社、宮腰社、リョウビ社、桜井社などの従 来からの出展者が多く、新規の出展者には、日本電子精機株式会社、株式会社ジェイテック、有限会 社パシフィック化学など、革新的な技術を持っている企業が顔を見せています。出展申込の受け付けは 既に終了していて、現時点からの申込はウェーティング・リストとなりますが、出展にご関心がある方はまず は担当者のユングまでご連絡ください。 欧州印刷業界 NEWS4号お楽しみいただけましたでしょうか?ご意見やご希望をお聞かせいただけました ら幸いです。 【発 行】㈱メッセ・デュッセルドルフ・ジャパン 【編集 担当】メルケ 【メッセ担当】ユング [email protected] www.messe-dus.co.jp 「欧州印刷 NEWS」ご不要の方は恐れ入りますが、上記アドレスへ「送信不要」とご連絡お願い致しま す。本メールの掲載情報はメール発行日現在のものであり、予告なく変更される場合がございます。あら かじめご了承ください。
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