Overview 概 説 - World Urban Parks ジャパン

Overview
概 説
『グッドプラクティス事例集』 について
Ⅰ 背景 ― 浜松宣言と行動指針
『グッドプラクティス事例集』 は、 200 4年に開催された 「公園レクリエーション世界大会 in 浜松」 (第20回 IFPRA 世界大会)で
採択された浜松宣言 (以下、「宣言」 という。) の趣旨を普及し具体的な行動に結びつけるため作成された 「優良実践事例集」 です。
編集は、 「浜松宣言」 推進委員会による監修のもと IFPRA ジャパンが行いました。
宣言は、 今こそ “みどりのルネッサンス” の視点をもち、 新たなみどり ・ 公園 ・ レクリエーションの可能性 1 ) を考える必要性が
あると認識した上で、 その可能性の実現に至る道筋となる 3 つの行動指針 2) (表-1) を掲げています。
表-1 浜松宣言 行動指針
行動指針 1
私たちは、 緑や公園資源の多面的な価値を積極的に活用し、 長期的かつ世界的な視野から
持続的で住みよいまちづくりを推進します。
そのために人と自然の共生を基調とした環境創造を共通の責務とします。
表-2 3 つの行動指針と 9 つの方向性
■ 行動指針1 キーワード
緑を活用した持続的で住みよいまちづくり/人と自然の共生
【方向性1】 緑や公園資源の多面的な価値を積極的に活用し、 長期的かつ世界的な視野から持続的で住みよいまちづくりを
推進します。
地球環境や都市環境への関心の高まる今日、 緑や公園資源の多面的な機能や価値に着目し、 それを持続的で住みよい
まちづくりやコミュニティ形成に活用していく必要があります。 例えばオーストラリアのパークス ・ ビクトリア (No.2) は、 健康に
資する緑の機能に着目し、 「健康な公園、 健康な人々」 を組織の哲学として取り入れ、 公園など 「緑の多い自然」 を提供す
ることが身体的 ・ 精神的 ・ 社会的健康にとって重要と位置づけて様々な活動を行っています。 また、 日本の多摩平の森
(No.5) では団地の建替事業において既存の樹木の保全 ・ 活用を行い、 次世代への継承を図っています。 さらに、 緑地の所
有者が安心して土地を保有し続けられる 「横浜市みどり税」 (No.6) のような制度も導入されています。
【方向性2】 人と自然の共生を基調とした環境創造を共通の責務とします。
行動指針 2
私たちは、新たなる共通の活動の場 (プラットフォーム) の構築に向けて積極的に取り組みます。
そのために地域住民 ・ 行政 ・ 企業 ・ 関連分野とのパートナーシップの確立、 能動的で魅力あ
る運営計画の実践、 および持続的で汎用性のある技術の開発を推進します。
行動指針 3
私たちは、 意欲的で質の高いパークマネジメントの実現に向けて、 有能な人材の育成を含む
戦略的な仕組みづくりを目指します。
そのために緑や公園の価値の再評価を行い、 新たな公園像を構築します。
IFPRA ジャパンでは宣言の趣旨にそった優良な実践事例(グッドプラクティス) を分かりやすく紹介するという編集方針のもと、
インターネットやリーフレットを通じて広く事例を募集しました 3)。 また IFPRA の機関誌 『Ifpra World』 等に紹介記事を書き、
IFPRA の世界大会や支部大会の開催時に応募を呼びかけました。 応募のあったグッドプラクティスの事例は計43 件 4)。 内訳は、
日本 32 件、 イギリス 6 件、 オーストラリア 3 件、 ニュージーランド 1 件、 さらにオーストラリア ・ ニュージーランド ・ 英国の国際交
流に係る事例 1 件です。
本書の編集にあたっては宣言に掲げられた行動指針ごとに事例を示しました (一覧表 〔後出〕 参照)。 基本的には応募時の
文章とタイトルを掲載していますが、 編集の一貫性を保つために分量などの微調整を行った事例もあります。 使用言語は英語及
び日本語です。
Ⅱ 新たな可能性を実現する方向性
宣言では、 地球環境や身近な都市環境への関心が高まり、 ライフスタイルが変化する現代をダイナミックな転換の時代と捉え、
だからこそ人と自然の共生を目標にみどりや公園資源を大切にし、 その多面的な価値を積極的に活用して多様な主体によって持
続可能な住みやすいコミュニティを創造することが必要としています。 このような認識のもとで、 宣言は、 敢えてみどり ・ 公園 ・ レ
クリエーションを専門とするプロフェッショナルに主なターゲットを当てて行動を呼びかけています。 これは、 専門家自身の能力向
上はもとより、 専門性のあるプロが核となって、 多種多様な関係者や組織とパートナーシップの確立を図りながらの展開が必要だ
という考え方に基づいています。 掲載された事例は、 宣言の行動指針にうたわれた方向性に向けて新たな可能性が芽生えつつ
あることを示しています。 以下に、 これら 3 つの行動計画と 9 つの方向性について事例を挙げながら、 その内容を説明します (表
-2。 行動指針についてはキーワードを示しています。 文中の No. は事例番号です。)
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「環境の時代」 における環境創造の基調となるコンセプトは 「人と自然の共生」 であり、 みどりや公園に係る者は、 その具
現化に力を注がなければなりません。 例えば浜松市(No.1)では「花と緑のまち・浜松」を目標に掲げて都市がつくられています。
国営昭和記念公園の 「こもれびの丘」 (国営昭和記念公園) (No.8) は人為的に盛土を施し木を植えてつくられました。 植樹
にはボランティアが参加しました。 「人と自然の共生」 には多様な形態があります。 都市スケールから個々の空間スケール、 自
然保全を目的とした計画、 修景的な設計など様々な観点を包含したかたちで 「人と自然の共生」 を基調とした環境創造のあり
方について思考を深めていくことが必要です。
■ 行動指針2 キーワード
プラットフォームの構築/パートナーシップの確立/
魅力のある運営計画/技術開発
【方向性3】 新たな共通の活動の場 (プラットフォーム) の構築に向けて積極的に取り組みます。
共通の活動の場 (プラットフォーム) を確立すれば、そこに知識・経験を共有し情報交換・意見交換を行いやすい状況が生じ、
新たな活力が生まれます。 例えば札幌市近郊花ネットワーク協議会 (No.11) では、 北海道の花観光の向上を図るために、
花施設をテーマに共通の活動の場をつくり、 札幌近郊にある花施設のネットワーク化などによるフラワーツーリズムの啓発と花
観光の振興に取り組み、 成果を挙げています。 また、 松戸市 (No.13) では 「緑の基本計画」 を受けて市民 ・ 有識者 ・ 緑
関係団体代表者から成る緑推進委員会を設置し、行政への提案だけでなく、実現可能なものについては試行し、さらに自立的・
継続的な活動に発展させています。
【方向性4】 地域住民 ・ 行政 ・ 企業 ・ 関連分野とのパードナーシップを確立します。
多くの組織や人々と協働関係、 パートナーシップを確立することによって、 より豊かさと親しみのある質の高いみどりや公園
がつくられるという考え方が普及しつつあります。 例えばイギリスの非営利団体 「バンクサイド ・ オープンスペース ・ トラスト」
(BOST) (No.14) では、 コミュニティの公共庭園や公園の整備 ・ 管理運営に際して地域住民を取り込む機会をつくり、 公園の
再生に繋げています。 また、 横浜市の舞岡公園では、 舞岡公園田園 ・ 小谷戸の里管理委員会 (No.17) が自然体験施設の
指定管理者となり、農作業、雑木林の維持作業、炭焼き・わら細工など魅力ある管理運営と生態系の保全に取り組んでいます。
また、 舞岡公園憲章を制定し、 ボランティアなど関係者が公園の考え方を共通に認識しています。
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Overview
概 説
【方向性 5】 能動的で魅力のある運営計画の実践を推進します。
魅力ある運営計画の実践は人々の心を惹きつけ、 活気をもたらすとともに、 多くの方々が公園への関心を持続的に持つ要
因になります。 例えば浜松市の茶室 「松韻亭」 (No.25) では茶道文化活動や日本伝統文化を学び体験するユニークな運営
を実践し、 多数の利用者が楽しんでいます。 横浜市緑の協会 (No.26) では山手西洋館等の歴史的建造物群を 「積極的に
利活用を図りながら保存する」 というテーマのもと、 行政 ・ 地域住民 ・ 利用者 ・ ボランティア、 学校、 商店会、 企業、 NPO 団
体等と連携して協働事業を実施し、 好評です。
【方向性 6】 持続的で汎用性のある技術の開発を推進します。
みどりの技術はハード面 ・ ソフト面の広範囲にわたっており、 高度化する時代に応えて、 みどりの技術開発を行うことは、
とても重要です。 例えばコンピュータ化された潅水システム (気象データにもとづき潅水必要量を予測) の使用によって大幅な
節水を可能とする技術開発 (オーストラリア) (No.27) や、 IT 機器を活用して公園利用者からの情報をリアルタイムに把握で
きる技術開発 (No.28) の事例が示されています。
■ 行動指針3 キーワード
質の高いパークマネジメント/人材の育成を含む戦略的な仕組みづくり/
新たな公園像の構築
【方向性7】 意欲的で質の高いパークマネジメントの実現に向けての評価手法を確立します。
緑や公園の価値を高めるうえで重要な要点は、 質の高いパークマネジメントを実現し、 また、 その評価手法を確立すること
です。 オーストラリアのパークス ・ ビクトリアがレクリエーションと観光に関連して開発してきた、 資源配分の優先順位付けと投
資の意思決定の支援ツール 「サービス水準の枠組み」 (LOS) (No.29) などの事例が示されています。 日本からは、 静岡県
において 「指定管理期間 (5 年間 ) での公園管理が公園の設置目的 (理念) に即しているのか」 を利用者の視点から評価す
る制度として導入された外部評価制度 (No.31) が示されています。
【方向性8】 有能な人材の育成を含む戦略的な仕組みづくりを目指します。
質の高いパークマネジメントの実現を求めるならば、 戦略的なシステムの視点をもたなければなりません。 なかでも有能な
若者が入りやすい仕組みや人材育成は大事な視点であり、能力のある人材を育て、次世代に伝えていくことが肝要です。例えば、
公益財団法人東京都公園協会では、 重要文化財や特別名勝などに指定された江戸時代の大名庭園をはじめとする都立庭園
の魅力をより多くの人に伝えるため、 庭園ガイドボランティア (No.37) を養成しています。 財団法人公園緑地管理財団では、
公園の管理運営における 「実務的な知識 ・ 経験及び管理運営の実行能力」 を持つ人材育成を目的として 「公園管理運営士
認定制度」 (No.36) を創設しました。 【方向性9】 緑や公園の価値の再評価を行い、 新たな公園像を構築します。
緑や公園の価値を再評価することを通じて、 新たな時代にふさわしい新たな公園像を構築していくことが可能になります。 例
えばロンドンのマイルエンド公園 (No.42) などは人も遠のく荒廃した公園だったところ、 関係者によるパートナーシップが結成
されて公園再活性化が図られ、 安全で親しまれる公園に生まれ変わりました。 この他にコミュニティの参加やソフトプログラム
を重視したイギリスのコールショー ・ グリーン ・ パーク (No.41) およびリスター公園 (No.43) などの事例が示されています。
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Ⅲ まとめ
宣言の行動指針全体を通した文脈 (コンテクスト) について述べると、 行動指針1では目標として人と自然の共生を基調とした
持続的で住みよいまちづくりを挙げ、 そのための方法として行動指針 2 で特にプラットフォームの構築やパートナーシップの確立を
挙げ、 併せて技術開発の必要性にも言及しています。 さらに行動指針 3 として、 活き活きとしたみどり ・ 公園 ・ レクリエーションに
は質の高いパークマネジメントを実現するとともに、次世代の育成にも配慮した戦略的な仕組みが必要であることをうたい、最後に、
今こそ緑や公園の価値を再評価し、 新たな公園像を築くことが重要として全体をまとめています。
もとより、 みどり ・ 公園 ・ レクリエーションはホリスティック (総体的) な存在であり、 以上の文脈は大筋の流れを示したものと
理解した方がよいと思われます。 また、 個々の事例も様々な側面を持つものであり、 その内容は、 一つの行動指針だけでなく他
の行動指針にも関係しています。
個々の事例を読み込むにつれて、 公園再生計画の進め方、 計画当初からの地域住民の意見の反映方法、 コミュニティとの連
携方法、 各種の財源 (助成金、 寄附、 宝くじなど) の確保など実践事例ならではの話が出てきて参考になります。 総じて、 この
事例集に集められたグッドプラクティスは、 みどり ・ 公園 ・ レクリエーションの新たな可能性が着実に実現化しつつあることを示し
ています。
末尾ながら、 この事例集の編集にあたりご協力いただいた各種の活動組織やグループ、 団体、 NPO、 自治体、 さらに国外か
ら事例を提供してくださったパークス ・ ビクトリア (オーストラリア)、 グリーンスペース (英国)、 国際的なネットワークを通じた募集
に多大なご協力をいただいたIFPRA本部およびチーフ・エクゼクティブのアラン・スミス氏、 賛同の言葉やメッセージを寄せてくださっ
たIFPRA会長のトルゲ ・ ソレンセン氏、 前会長のロブ ・ スモール氏などお世話になった多くの方々に厚く感謝の意を表します。
注1) 浜松宣言の副題では、 「可能性」 (展開)、 (英語では capability) という言葉が使われています。 イギリス風景式庭
園の造園家で、 代表作に ストウの庭園改 造やブレニ ムの庭などがあるランスロット ・ ブラウン (Lancelot Brown,
1716-83) は、 依頼主から相談された時、 「可能性がある」 と答えるのが常だったので、 “Capability Brown” の愛称で
呼ばれていました。 宣言での 「可能性」 という言い方は、 この造園の先人に敬意を表しつつ、 新たな可能性を創造す
る決意を込めた表現なのです。 【参考文献】 岡崎文彬 (1982):造園の歴史Ⅱ、 同朋舎出版 .
2) 浜松宣言の3つの行動指針は、 基本的には英文 ・ 和文ともに同様の内容をうたっていますが、 表現において若干の
相違があります。 この事例集については、 和文版の文章を用いています。 なお、 行動指針の原文では漢字の 「緑」
が使われていますが、 その後の時代的な変化に呼応して、 本稿の解説部分では、 ひらがなの 「みどり」 (歴史文化な
ど精神的、 心理的な意味も含めた広い概念を表す言葉) を用いています。
3) 公表された募集概要は次の通りです。
・ 応募内容 : みどりや公園 ・ レクリエーションの管理運営等に関する事例で、 「浜松宣言」 の 3 つの行動指針
の趣旨に沿うもの
・ 応募資格:みどりや公園・レクリエーションの管理運営に係る活動をしている団体であれば、 自治体・管理団体・
指定管理者 ・ NPO ・ ボランティア団体 ・ 学校 ・ 企業等どなたでも応募可能です。
・ 応募の方法 : IFPRA ジャパンホームページ (http://ifpra.jp) からご応募ください。 みなさまの活動内容 (600
字程度)、 団体名、 連絡先、 写真、 参考資料等をお送りください。 「浜松宣言」 行動宣言に基づき部門を設
けています。 応募要領等の詳細はホームページをご覧ください。
なお、 応募された事例は IFPRA ジャパンホームページで紹介されました。
4) 国外からの応募はパークス・ビクトリア (オーストラリア) からの 5 事例 (No.2、No.27、No.29、No.30、No.33) およびグリー
ンスペース (英国) からの 6 事例 (No.14、 No.15、 No.16、 No.41、 No.42、 No.43) で、 計 11 事例です。
(文責 : IFPRA ジャパン)
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