情報技術(IT)の進展とネットワーク型組織

Japanese Journal of Administrative Science
Volume19, No.3, 2006, 231-241.
研究ノート
経営行動科学第19巻第 3 号, 2006, 231−241.
情報技術(IT)の進展とネットワーク型組織
名古屋学芸大学短期大学部・名古屋大学経済学研究科後期課程 大
津 洋 子
Information Technology and Internal Network Organizations
Youko OHTSU
(Nagoya University of Art and Science-Junior College and
Nagoya University, Graduate School of Economics)
Recent developments in organizations suggest that the most effective type of organization
under the turbulent environment is the one with self-managing teams in which
organizational authority is considerably delegated downward. This paper examined the
dynamics of mutual interaction between IT and the self-managing team.
The aims of this paper are 1) to re-examine the previous literature on organizational
structure and information technology, 2) to investigate the role of the self-managing team
integrated in hierarchy structure as a mechanism of organizational flexibility, 3) to prepare a
new dual structure model of organizations and 4) to analyze the case of Nissan Revival Plan
which Mr. Ghosn directed using Cross-functional teams within the corporation to prove
these propositions.
This paper analyzed the structural nature of the self-managing team in terms of the
strength of the links to the higher levels of the organizational hierarchy. It proposed to
identify three types of teams corresponding to three levels of decision making.
I would conclude that, on the one hand, IT, through the expansion of the scope of and the
increase of the speed of environmental change, has demanded the organization of the
flexibility which in turn contributed to the formation and growth of the self-managing team.
On the other hand, the self-managing team, through the need for information creation, has
put pressure on the development of IT.
Keywords: Information Technology (IT), self-managing team, inernal network structure,
innovation
係をその中に吸収し,創発性を潜在能力として保有する。
1. 問題提起
1960年代において当時の自動化という技術要因からの圧
組織理論の歴史上で技術と組織構造の関係が大きく議
論された時期がある。「社会−技術システム理論」であ
り,それはベルトコンベアを廃止し自律的作業集団を編
力が不可避的な環境下にあっても,自発性と責任をもた
せる職務デザインが可能であることを示すものである
2。
(Pasmore, 1988)
成して,科学的管理と人間能力の開発を同時に目指す挑
大量生産技術が対象であった工業化の時代には,環境
戦であった1。自律的作業集団は,インフォーマルな関
との適合を図る組織化の手法として職能制と事業部制
が編み出され,さらに複雑なマトリックス組織が開発
1 社会−技術システム理論(Socio-Technical Systems
Theory)の起源は,Emery & Tristら(1951, 1965)が率い
るタヴィストック人間関係研究所の研究である。その
原理は北欧の労働民主化の流れとなって展開され,北
米では職務再設計(job redesign)の主張となって発
展した。しかしながら,主として生産現場に起こった
職務再編成は組織全体の変更には至らず,伝統的な階
層組織の上層部による計画・組織化・指揮・統制の組
織原理が依然として効力を発揮していた。
された。これらの編成原理はいずれも企画化された製
2 Pasmore (1988)の社会−技術システム・アプローチに
関する調査結果によると,134社のうち53%が自律的
作業集団を導入し,チームユニットアプローチの業績
効果は80%が肯定的に回答した。そのほか導入された
ものは,テクニカルスキルの開発が40%で,これに対
し評価,賃金などの雇用管理制度は比率が低かったと
報告している。
−231−
研究ノート
経営行動科学第19巻第 3 号
品を計画的に生産するという目的に適った組織構造と
オープン・システム化に積極的に貢献していると,今井
機能をもつ。1990年代以降の環境要因の変化を一言で
は指摘する。
これらの議論からITの経営組織に及ぼす影響は以下の
いえば,状況の不確実性の増大である。そしてこの背
景にはコンピュータ技術の驚異的な進歩があることは
発展段階をたどってきたことがわかる。
確かである。ある局地的な変化が短時間のうちに世界
① データ処理(DP)段階:定型型ネットワーク+形式
中に伝播し,変化が飛び火して流行する現象がみられ
的情報 ている。通信機能を備えた大容量のマルチメディアは,
大容量のデータ処理が可能な大型コンピュータ
一方で,環境の不確実性を削減する手段でありながら,
が開発され,データ処理業務の機械化を急速に
もう一方では環境変化のスピードと範囲拡大を促進要
進めた。処理能力の格段の向上は生産,流通,
因でもある。工業化時代の編成原理と異なり,今日の
金融などの産業基盤を作り変えるきっかけとな
った。
状況が求める組織は,組織内部から変革がうまれるよ
うな動態的な組織化の原理である3。
② マイクロエレクトロニクス段階:定型型ネットワー
ク+意味的情報
本稿の目的は,継続して激動的な変化を続ける環境に
有効な企業組織を,1)IT技術と組織の相互作用の見地
手や足の反復単純作業の機械化から,コントロ
から整理し,2)組織の有効性を高めるメカニズムをネ
ールやセンサーといった視覚,頭脳の人間的な
ットワーク型組織から明らかにし,3)ケースの分析に
領域にもコンピュータが利用される。産業ロボ
よってそれを検討する,ことにある。
ットが導入され,生産現場にME化が進む。規
模の経済も依然として有効に機能している一方
2. 技術システムとしての情報技術(IT)
で,次第に情報通信のインフラストラクチャー
Nolan(1973, 1974, 1985)は,工業化時代から情報化
が形成されオンライン化が進む。IT関連のベン
チャー企業生成期である。
経済時代への移行段階をコンピュータ発展の観点から分
析した。工業化時代のコンピュータはもっぱらデータ処
③ 情報ネットワーク(IT)段階:創発型ネットワーク+意
理の段階(1960∼75)であったが,次第にマイクロエレク
味的情報
トロニクス(ME)の段階(1980∼95)を経て,ネット
産業,企業,あるいは領域を新たに連結して,
ワーク段階(1995年以降)へと移行しているとする。
異質なもの同士を結びつける戦略が主要とな
り,組織間アライアンスが促進される。それと
今井(1984)は,情報をその性格的側面から以下の2
同時に,経営組織は閉じたシステムから,組織
つに分類した。
• 形式的情報:情報処理と通信とを融合し,生産,流
外部に開いたシステムへと変貌し企業のバウン
ダリーがあいまいになっている。
通,金融などの仕事を融合する情報。
• 意味的情報:伝統的に情報といわれるもの。すなわ
Dibrell & Miller(2002)は,ITと組織構造との関連性
ち,人と人との接触,あるいは組織的な結びつきに
を調査した。その結果,ITは,まず,垂直統合による統
よって伝達される情報。
制の集権化に極めて有効には働き,官僚的な構造にうま
同様にネットワークについても,性格的側面により二
く適合した。データ集中処理型のコンピュータ利用段階
である。官僚制組織は,環境が相対的に安定した時代に
つに区別した。
• 定型型ネットワーク:標準化され,定型化された仕
有効な構造であることはよく知られている。
続いて企業規模の拡大と国際化の展開が,組織の扱う
事のネットワーク。
• 創発型ネットワーク:思いがけない連結を生むよう
情報量の増加と複雑さを増大させた。この環境下におい
てはマトリックス組織がふさわしい組織構造となった。
な創発型のネットワークである。
定型型ネットワークは,形式的情報と結びつくことに
ITの革新的な進歩は,垂直的な統制のみならず,水平的
よって,新たな情報通信のインフラストラクチャーを形
な調整をより効果的に進める情報環境を提供することを
成するとともに,自動化の推進力ともなる。創発型ネッ
可能とし,マトリックス構造の複合管理実現に貢献し
トワークは,意味的情報と結ばれて異質な境界を連結し,
た。
今日の情報時代は革新性と身軽な組織を求めるように
3 Galbraith & Lawler Ⅲ(1993)はこのような組織を称
して“fluid & transitory design”とよぶ。
なったが,多彩なソフトを搭載したパーソナルコンピュ
ータの進歩が個人の情報力を飛躍的に高め,それを可能
にしている。ITの社会システムに対する可能な貢献は二
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情報技術(IT)の進展とネットワーク型組織
間の意思決定のスピードが,集中化と分散化におけるス
つ考えられる。
① 構成メンバーである個々人の情報の質と量を格段
ピードのそれぞれと合致する地点は,全社的な意思決定
に向上させることにより,個人のエンパワーメント
はトップ経営層である中央に集中し,現場で迅速に行う
を達成する。
業務的意思決定は現場におくことであるとした。しかし
② 仮想空間におけるフィールド(場)の提供する。情報
ながら,ビジネスの進行が加速されれば,組織メンバー
交換はいうに及ばず,会議機能ソフトやメーリング
に当然,時間的なプレッシャーが大きくかかる。そして,
リスト機能は,ウェブ上での相互作用を通して概念
それが耐えられないほどのレベルに達したとき成熟社会
環境としての体験学習の場(フィールド)を提供する。
はどのように対処すべきか,という議論はあまりなされ
ここで,ITのもつ負の側面について触れておく。科学
てこなかった。
今後はこうした予測外のITの負の影響に組織は対応し
的管理法がマネジメントの中核であった時代から,機械
化は作業の細分化と単純化による労働の人間疎外をもた
らしてきた。それではITにおいてはどうか。大量データ
処理時代には,特定の事務職,特に女性ワーカーに入力
作業が集中し,長時間のコンピュータ作業がもたらす労
ていかなければならないだろう。
3. 協働システムとしての自己管理型チー
ム
働の非人間性と健康障害が大きく問題視された(柴山
Burns & Stalker(1961)は環境適合の観点から,組
1988,大沢 1993)。しかし,一般にコンピュータが入力
織構造の形態は環境に依存(contingent)すること,環
作業を大量に発生させるのは,入力作業とその他のオフ
境の変化が激しい場合に適切な組織は,機械的システム
ィス管理業務とが分離している場合である。コンピュー
ではなく有機的システムであと主張した。有機的システ
タのデータ読み込み能力が格段に進み,情報の発生源で
ムは以下のような特徴がある(Narayanan & Nath 1993)。
直接データ入力される状況が増えている(例 POSシス
組織の編成原理を専門化から統合システムに転換する。
テムやスキャナーによる読み取りなど)。つまりオフィ
調整メカニズムは階層構造によらずネットワーク型の水
スや社会で一般の人々がコンピュータを不自由なく操作
平コミュニケーションによる調整が主流となる。そして
できる状態が実現すると,単純反復作業が一部の人に集
組織メンバーにとって仕事は,自己実現を可能にするも
中することは徐々になくなる (Engelsted, 1979)。
のへと変化させる。
情報の豊富さは不確実性を削減するが,そのことが
ここで本稿が対象とする自己管理型チームの定義を明
個々人の差異を拡大することにもなる。特に現場の作業
確にしておく。自己管理型チームとは,公式の意思決定
レベルでは多義性が拡大すれば,それまでは見えなかっ
階層とは独立して形成される下位のユニットであり,高
た敵対意識を顕在化するであろう。人間関係のコンフリ
い自律性を特徴とする。すなわち,直属の上司による命
クトは組織活動を阻害する要因ともなる。しかしながら
令系統を離れ,既存の制度の枠外で活動することを許さ
この原因はITにあるのではない。面識のない相手との電
れる。情報アクセスの権限,物的・人的資源および予算
子空間でのコミュニケーションは,どこまで正直に,ど
管理など幅広い権限を移譲され,結果の責任も託される
こまで詳細に相手に打ち明けるべきか,は信頼の問題で
仕組みをいう。メンバー間に序列はなく,信頼と協働に
もあり,あくまでそれを使う人間に責任が問われるべき
裏打ちされた水平関係として認識される。必要に応じミ
ことである。ITスキルの向上は皮肉にも,対人コミュニ
ッション(使命,課題)を受け,時限的なプロジェクトチ
ケーションの促進要因となる。
ームとして編成され,目的を達成すれば解消するという
組織理論との関連でITが最も関心を集めてきたのは,
身軽さが,ダイナミズムの源泉である。欧米では多くの
組織の集権化と分権化であろう。ITは,情報の集中処理
組織改革において人的資源の革新の手段として自己管理
に威力を発揮し集権的に機能してきた一方で,多岐にわ
型チームをあげる傾向が高まっている(Manz & Sims
たるソフト機能の開発や,情報のデータベース管理によ
1993, 1995)4。先行き不透明な経営環境の中で,戦略を
る組織メンバーへの開示など,分権化を推し進めるため
の不可欠なツールにもなっている。この点については,
4 Manz & Sims, Jr. (1993,1995)
ゼネラルモーターズ
ITは中立した技術であり,どちらに活用されるかは,そ
(GM)は1970∼80年代を通してチーム制導入に成功し
れを用いる組織と人間に委ねられているということで,
ている。そのほかの主要企業もチーム制の導入に積極
今日では決着をみている。
的なことを報告している。例えば,モトローラ社,フ
Simon (1979)によれば,人間のシステムよりはるかに
速いスピードで情報処理が行われる技術が開発され,人
−233−
ォード社,ボーイング社,AT&T社,ゼロックス社ほ
か多数。
研究ノート
経営行動科学第19巻第 3 号
Pasmore (1988)は,組織設計の段階で個人が参加する
立案したり,未経験の問題にも迅速に対処するために,
様々な形態のチームユニットを活用する動向は,日本で
程度が高いほど,その組織は柔軟なものになる,として
5。
もすでに一般化しているといえる(佐藤2001)
いる。つまり,計画的な組織設計が先にあるのではなく,
社会全体を見た場合,情報の生産と伝達が発展の原動
グループが生まれ,それが次第に発達していく過程で,
力となり,ネットワーク構造をもつ組織によって編成さ
組織化がなされる時,すなわち,課題遂行の手順や役割
れる社会を情報ネットワーク社会といい,情報・通信系
が明確になり,自発的に役割分担が決まっていく時に,
のITと,自律性を求める現代の価値観がそれを推進して
有効性が高まると示唆する。流動的で目的志向のチーム
いる(今井 前掲)。ネットワーク型は,共通項で括ら
ユニットでは,自らを組織化し,自己の行動を規定して
れたユニット(クラスター)が自律的に緩く連結しあう
いくチームの発展的な段階をたどるプロセスに焦点がお
状態をイメージしている 6。ネットワーク理論は本来,
かれる。
市場環境において活動する組織間関係の状況を説明する
以下では,自己管理型チームの発展プロセスを,形成
ものであるが,組織内に自己管理型チームが緩くリンク
段階から次第に課題追求活動が活発になる計画化段階,
している組織を,本稿では「ネットワーク型組織」とよ
続いて計画を全社的な活動とする推進段階,そして課題
ぶこととする。組織内部のチームユニットの増殖現象は,
が完了しチームの手から離れて活動を終息するまでの段
自然科学,経済学,社会学の規範を融合するネットワー
階に分けて考察する。
ク科学の分野が,有力な理論基盤を提供する。
チームユニットの発展に伴うチームの変化
(Buchanan 2002)
。
① 形成段階:変化自体を包含する弾力的なチーム形成
Galbraith & Lawler(1993)は,ITと動態的な組織の
には,構成メンバーの関係性構築がその後の活動を
連携は,下記の二側面から強固になりつつあると分析し
規定する意味で,開始段階は極めて重要である。リ
ている。一つは,情報豊かな組織(information rich
ーダー的な個人が名乗りをあげて目標を公表しメン
organization)への転換である。動態的な組織化の条件は
バーを募る場合と,経営陣からの任命で編成される
情報が組織の隅々まで滞りなく流通させうるか否かにか
場合が考えられる。メンバー間の相互作用はお互い
かっているといえる。個人が情報の高速手段を手に入れ
の気心がまだ分からないため,探索が中心となる。
たことにより,これまでより何倍もの多様な情報が容易
各々が保有する外部とのリンクを通じて,情報が豊
富に持ち込まれる。
に安価で交換する条件は整っている。
もう一つは,知識創造のフィールド(場)におけるITの
② 計画化段階:抽象概念的な目標を具体的な計画目標へ
貢献である。個人の持ち込む情報,知識(言明された),
とおろしていく。次に計画目標をロードマップに構成
行為,行動の相互作用は,各メンバーの視角と選択肢の
する。期間と順序性が考慮された綿密な実施計画とと
拡張を可能とする。そして,このような相互作用はコミ
もに,役割や手順が明らかになるが,職務分担は流動
ュニケーション経路と同時に,対面接触のフィールド
的である。メンバーの相互作用は極めて活発で接触は
(場)を必要とする。
濃密である。課題の進行を通して,メンバー間の相互
理解(得意領域,価値志向,パーソナリティ,など)
5 佐藤 (2001)は,現存する大企業の機能部門制組織を検
も深まる。この段階で内と外の区別が鮮明に意識され,
メンバーの連帯意識は最高になる。
証した結果,そこで遂行される仕事を,創造的特徴を
多く持つ部門と定型的特徴を多くもつ部門に分類でき
③ 推進段階:活動の後半は計画実施の段階に入る。役
ることを確認している。創造的部門の仕事の特徴は,
割と個々の課題が明確になるので,メンバーの相互
複数のテーマに関わること,プロジェクトチームユニ
作用の必要性は前段階に比べて低下する。チームは
ットなどの動態的な作業組織の編成が活発なこと,働
戦略計画の提案や問題解決策を発案するが,実行段
き方に自由裁量を多く付与されていることが確認さ
階は全社や部門横断的活動になると考えられる。従
れ,創造的な仕事を遂行している部門の業績は一般に
って,組織の中で影響力のある人との交渉が重要と
高いことも確認されている。
なるであろう。上位システムの取り込みは,必然的
にチームの境界を不鮮明にする。
6 複雑系とはミクロの個々のランダムな行動が全体とし
てマクロ的に一定の秩序をもつ現象。クラスターは価
④ 終息段階:チームの使命は,新しい戦略計画が目的
値,考え方,志向,目的など何らかの共通項で任意の
であればその実行プログラムへ昇格させ,組織変革
個人が結びついた構造(分子)で緩い絆で結びついて
であれば統合システムの構造改革,ルールの変更,
いる(岸田1998)
。
プロセス変革などの成果となって終了し,チームは
−234−
情報技術(IT)の進展とネットワーク型組織
る。
解消する。
チームユニットの存続期間
リンク元は意思決定の3つの階層で分類することがで
前述のようにチームが発展段階により変化すること,
7。第1に,業務的意思決定レベルと
きる(Simon, 1977)
そして,多くが終了期限が設定されるプロジェクトチー
リンクしていれば,チームの目的は作業レベルの範囲内
ムであることから,存続期間の長さには関心が寄せられ
での問題解決である。職場内での作業組織でチーム編成
ている。Katz (1982)は,チームユニット存続の期間の長
が行われる(例えばQCサークル)。課題は作業の例外処
さが,プロジェクトの成果や内部のコミュニケーション,
理やトラブル解消などである。
組織的なコミュニケーション,外部組織から得られる専
第2に,管理的意思決定とのリンクであれば,機能部
門的な情報交換のそれぞれと,どのような関係があるか
門横断的な課題(例えば生産プロセスの設計,リエンジ
を検証した。その結果,プロジェクトの業績は4年以上
ニアリングや商品開発が考えられる。Davenport(1993)
を経過したチームユニットでは急激に低下していたと報
は,チームユニットは,業務遂行の過程にプロセス横断
告している。組織内コミュニケーション並びに組織外部
的な思考を取り込む手段として有効であると指摘する。
からの情報交換がともに2.5~3.5年目のチームユニット
専門性で分化する職能制組織では,各システム部門のイ
でピークに達しているのは,この期間が探索期間にあた
ンプットは前工程のアウトプットによって規定される
るためである。チーム内コミュニケーションが最も高く
(Thompson, 1967のいう逐次的依存性)。自由度が低く緩
なるのは4年前後で,それ以降は急激に下降する。以上
みがない階層型システムは現業には効率的だが,変異や
から,3年くらいまでは成果をあげるまでには至らない
例外に対しては余裕がなく,トラブル発生のたびに対症
ことや,4年前後が活動のピークであるが,それ以上経
療法的な対応に追われる。また,各部門の自律性を抑え
つと急速に退潮していくことが明らかにされている。
るように作用し自己革新は生まれにくい。このような理
チームユニット存続の長期化は,内部に以下のような
変化を迫るであろう。第1に,不確実性への対処として,
由から,革新的な課題については機能横断型のプロジェ
クトチームが編成される。
チームが編成される (Thompson, 1967; Pheffer, 1981) が,
第3に,トップ経営層にリンクし,戦略的意思決定に
長期化は逆にルーティン的な仕事を増加させ,これへの
関わるミッションやプロジェクトを任命されるチームで
対応をメンバーに強いる。第2に,コミュニケーション
ある。先行き不透明な経営環境の中で,戦略を提案した
の必要性が低減し,行動は次第に慣行的になる。第3に,
り,全社的な未経験の問題に速やかに対処する場合があ
人は同意しやすい相手との接触を好む傾向があることか
る。扱われる問題の多くが複雑で非線形的(非構造的)
ら,チームユニットの同質化が進行し,その結果,活動
である。それ故に,このタイプにとって革新性や創発性
は安定化し,変化への抵抗が表れ始める。こうして,チ
はチームユニットの存在意義を左右する根幹機能といっ
ームの長期化はメンバーに新しいことを吸収しようとす
てよい。構成メンバーはトップから指名されるか,ある
る意欲を薄れさせ,チームユニットとしての革新性を退
いは自己申告によるケースもありうる。人的,財政的資
化させる。
源の権限移譲を受けて高い自律性を保有する。以上を表
チームユニットを性格づけるリンク(連結)
1に簡単にまとめて示した。
創発性の源泉が,サブシステムとの関係やユニット内
次に,システム間をつなぐリンクの強度は,当該チー
の関係性として内在しているとすれば,あるチームユニ
ットとその外部システムとを繋ぐ「リンクの性質並びに
7 Simon (1977)は,3つのレベルに対応したトップの戦
強度」は,システム間の関係性を記述する中核の変数で
略的意思決定,ミドルの管理的意思決定,作業層の業
ある。そこで関係の状態を記述するために,リンクする
務的意思決定のそれぞれ異なる意思決定特性をあげて
システム(リンク元)がどの意思決定レベルかを識別す
いる。
表1 意思決定の三層と自己管理型チームの類型
−235−
研究ノート
経営行動科学第19巻第 3 号
ムの自律性を測る代替変数とみなすことができる。言い
(Galbraith & Lawler Ⅲ 1993; Kilduff & Tsai, 2003)12の登
換えれば,重要な情報源へのアクセス,資源調達,意思
場は,組織の形態がむしろフラット化の傾向を強めてい
決定,結果の責任における,上位システムとチームユニ
る証である。
ット間の権限比率を問題とする。特定のサブシステム
これまで述べてきたように本稿が提案するのは,経済
(機能部門)もしくはトップ経営層とのリンクが強いチ
合理性の原則に依拠する階層構造と,革新性を目的とす
ームはそうでないチームに比べて,自律性は低いと判断
るネットワーク型の両形態を組織内部に併置した構造と
しうる。組織の内外にアクセスをもつチームは,情報が
して,二重構造を持つ組織内ネットワークである。この
豊富に流入するという理由で創造性に長ける。
見解と類似の先行研究に就いて,本稿の主張との関係を
ネットワーク科学の領域からのウイークタイ理論で
以下に述べておきたい。
は,メンバーのランダムな行動を奨励する8。チームメ
高木(1995)の提示する,ピラミッド組織を保った中
ンバー同士の強い連帯(タイズ)は同質化を進め,個々
にネットワーク組織が二重に存在する構造と,本稿の提
のメンバーが多角的な視点と多様なアプローチを持ち込
示した組織の概念とは極めて近い。高木の二重構造組織
む自由を奪うようになる(Perry-Smith & Shalley, 2003)
は,自律的なユニットが主体性を持つエージェントして
9。逆に言えば,メンバーの連帯は弱い方がチームの異
活動の権限を移譲されている形態である。エージェント
質性保持に適している。対象とするシステムを包括的な
の自律性が統合され全体システムにまとまるには,各エ
統合システムとしてみるネットワーク理論は組織理論と
ージェントが全体システムを状況認知して内部モデルに
異なり,構造よりも形態に注目する10。
保持し,これを規範とするからであると説明する。本稿
はITの技術の進化がもたらす情報化との関連に注目し,
4. 二重構造のネットワーク型組織
組織理論としてネットワーク理論の援用を試みている。
伝統的には組織管理は階層による調整により統合化を
また,チームは特定ユニットとして扱い,高木のいう個
図ってきた。しかしITの革新的な進歩とネットワーク環
人の差異に言及したエージェンシー理論の内部モデルに
境の整備によってコミュニケーションコストの大幅な軽
は踏み込んでいない。
減が実現した今日11,階層の付加が絶対条件でない。知
Galbraith & Lawler Ⅲ(1993)の流動的,一時的な組
識労働化(Lewin & Volberda, 2000)による分散型組織
織デザイン(fluid & transitory design)は,脱階層的でフ
ラット化の進んだ組織によって応答性を与え,変化はチ
8 Kilduff & Tsai (2003)は,ウィークタイ理論はバランス
理論(Heider)を基盤にしており,メンバー間をつな
ぐリーダーは個々のメンバーと弱い連結を保てば,情
報フローが促されると仮定する。グラフ理論から説明
される。p. 41.
9 Perry-Smith & Shalley (2003), pp. 89-106. ウイークタ
イ理論では,構成要素間の連帯が弱い,即ち凝集性の
弱いグループは,強いグループよりも仕事における創
造性が高いとする。また,周辺参加のメンバーがグル
ープの外にリンクをもっているグループは相対的に,
創造性に優れているという生産デザイナーのケースが
報告されている(Sutton & Hargadon, 1993)
。
10 Buchanan (2003)は,物理学の例を引いて,ネットワ
ークにも表面的には無秩序なランダムにみえるが,巧
妙な仕組みの設計図が隠されているという。p. 111.
11 Malone (2003)は実態調査の結果,ITとコントロールの
集権化・分権化との関係に関して以下のことを発見し
た。1)通信コストが高い時期は,分権的,独立的な意
思決定が望ましい,2)通信コストが低下すると,集権
的な意思決定がより望ましい,3)さらにコストが低下
すると,多くの状況で分権的な意思決定が望ましくな
る。意思決定のための情報は,一方で現場に近いとこ
ろにあるべきとする,その一方で,遠隔地の意思決定
と統制及び監視を有効に行うためでもある。これらの
ーム内部やチーム間のインフォーマルな関係の中に埋め
込まれているとする。マクロレベルの意思決定を反映す
る公式組織と,環境変化や顧客のニーズに迅速に応答す
る日常の相互作用を行う組織とを区別することは,前述
の意思決定レベルを分類するSimonの説明と軌を一にす
る。しかしながら,著者らの関心は主として情報化がも
たらす変化の加速にあり,局所に密着した意思決定を現
場に移譲することにより迅速な応答を組織化の目的に置
くため,相対的に現場チームの革新性への考慮は少な
い。
本稿の提唱する二重構造組織は,トップと現場の二層
に分類した組織ではない。定型的で大量の情報処理は経
済合理性のルールが支配する領域で行い,革新性を求め
意味するところは,集権化を増進する一方で分権化を
も促進することになる。すなわち中央で下されるべき
重要決定と,ローカルな地点の現場の意思決定者のた
めの決定の,混合システムが望まれるとする。
12 Distributed organizationは,責任を分散化した組織で
ある。Kilduff & Tsai (2003)は,意思決定の権限が低い
レベルへと移行し,階層数の減少した小規模な組織へ
進むとしている。
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情報技術(IT)の進展とネットワーク型組織
る非定型的な情報処理は自己管理型チームを活用した領
ITは,もっぱら知識創造の支援ツールとして活躍する。
域で取り扱う。それは顧客に近い現場のみを念頭におい
すでに述べたように,複数のチームユニットは階層構造
ているわけではない。そして,革新や成長が組織目標で
と個別に緩くリンクしており,リンク元がどの意思決定
あり,その達成のためにチームの自律性(もしくは外部
レベルかによりチームの目標や職務内容の性格が異なる
システムとのリンクの性質)を最重要課題とする。
と想定される。ショップ型チームは,最下層の作業チー
河合(1999)は,構成要素に分解しても説明の出来な
ムを想定した。
二つの構造の領域間および階層構造に描いた下方向の
い全体システムの構造や行動が観察された時,このよう
な包括的な性質を創発性と呼んだ。「複雑適応型モデル」
矢印は,活動の流れがサイクルになっていることを表わ
では,階層性のあるシステムを対象とした自己組織化モ
す。自己管理型チームによって提案された戦略案や政策,
デルに創発性の解明を求める。そして,経営戦略を実現
企画は,階層構造において組織化・実施・統制される。
するためのインフラとして組織を変革するのでなく,そ
しかし時とともに新たな課題が生じ既存の制度やルール
のようなインフラが経営戦略に先立つ条件として組み込
にそぐわない状況が生じると,別の自己管理型チームが
まれることが,創発プロセスの土壌となると主張する。
再び編成される。
河合の論点は,こうした組織を統率する強力なリーダー
企業価値を増大する能力は,今や組織における知識の
シップに向けられている。一方,本稿が示すのは,究極
蓄積とその活用にかかっているといえよう。経営側にで
的には「自己管理型チーム」にとって強力なリーダーは
きることは,コミュニケーション経路と対面接触のフィ
むしろ弊害であり,階層のない水平型コーディネーショ
ールド(場)を提供することである。これまでの議論を踏
ンを重視する。リーダーシップは,活動の過程でメンバ
まえれば,このようなフィールド(場)を自己管理型チー
ーの中から,その貢献度によって自然に生まれることを
ムとすることに異論はないであろう。
技術と人間の接点におけるシナジー的な関係も,チー
想定している。
ムユニットにおいてより顕著にみられる。チーム作業を
図1に,二重構造組織の概念図を示した。
図1の経済合理性の原則が支配的に機能する階層型で
促進するITの進化のひとつに,「グループウエア」と呼
は,プログラム化の可能な問題を扱う。ITは,自動化を
ばれるソフトウエアがある。Davenport (1993)の調査結
進め,情報処理の生産性を高めるツールとして活用され
果は,1)会議の回数の低減,2)コミュニケーションの
る。一方,革新性が求められる領域のネットワーク型で
正確度の増加,3)効果的な時間の管理,4)情報フロー
は,非構造的で抽象的,予測不能な問題を扱う。ここで
の加速,5)意思決定の迅速化,というグループウエア
図1 階層型とネットワーク型の二重構造組織モデル
−237−
研究ノート
経営行動科学第19巻第 3 号
の効用が報告されている13。
縮減,などを骨子としたコスト低減,③ブランドアイデ
5. ケース分析による例証(ニッサン再建
計画=Nissan Revival Plan)
上記のモデルの適用例として,自己管理型チームを導
ンティティとグローバルブランドイメージの構築など長
期的な成長機会への投資,の3点から成り,2000年4月か
ら実行に移された。その結果,ニッサンは3年間で立ち
直り成功に向かった。
以上を本稿の主旨に沿って考察する。成功要因の第1
入して組織再生を果たしたニッサン社のゴーン改革をと
に,中間管理職を中心としたCFTの活用をあげることが
りあげて分析する。
業績が悪化していたニッサンの問題は,グローバルな
できる。ニッサンの将来を左右する再建計画の骨子をま
視点の欠如,並びに中核的な戦略の欠如にあった。ルノ
とめるという,重大で緊急性を伴うプロジェクトに,機
ー社との提携によってニッサンの社長に就任したゴーン
能横断的なチーム編成を活用した点,である。
の方針は,まず社員の士気を低下させず,社内の人材を
第2に,会社の救済策を生え抜きの社員に求め,全幅
徹底して活用することであった。この方針のもと社内の
の信頼を寄せた点である。これまでのトップダウン方式
ほぼすべての中間管理職を,10人前後で構成される9つ
は,全社的な計画立案を上層部が行い,その計画に沿っ
の機能横断型チーム(cross functional team=CFT)に再編
て下部組織が具体的な実施を行うという図式である。ゴ
した。チームの任務は,ニッサン再生計画を提案するこ
ーン社長は,顧客に近い現場こそがニーズを掴んでいる
と,具体的には,今抱えている全社レベルの問題の特定
と信じ,自分たちの会社の再建を自らが考える権限を社
化と解決策の提案であった。そして,①特定テーマには
員に移譲したのである。それはゴーン社長が外国人で,
責任をもってあたること,②再建方法の特定化のための
日本人消費者の志向は日本人が一番よく知っていると考
自由な創造力の発揮,③提案を判定する経営委員会が承
えたこともある。しかし,フランス流の非情なリストラ
認していること,④所属部署の境界を越えて協調するこ
を断行するであろうとの大方の予測を裏切り,彼が断行
と,を理解させた。与えられた期限は3ヶ月である。
したのは,社員に大役を果たさせる仕組みづくりであっ
ルノー社とニッサンの組織風土の違いにも考慮がなさ
れた。ルノー社はトップの計画や方針が重視される社風
た。ちなみに社内の人事にはほとんど手をつけずに変革
が達成されている。
第3に,参加型のチームに必要なのは職務の細分化と
があり,ニッサンでは機能部門のエンジニアリングが重
視されている。経営幹部の役割は,CFTとは距離を置き,
役割分担でなく,ニッサンに貢献できることは何か,と
いったんCFTの提案が採用されたときには全社にそれを
いった抽象的なビジョンに答えを見出す課題であった。
伝播することであるとした。各チームにはパイロットと
課題が抽象的であるほど,メンバー間の活発なコミュニ
呼ばれるリーダーが配置され,所属する特定部門の意見
ケーションが自主的に行われ,積極参加を導くようにな
に偏らないようモニターの任務を負っていた。
る。
かつての中間管理職に求められていたのは,トップの
最後に,3ヶ月という短期の期限は社内の危機感の共
指示に応答し,現状を維持することであり,変化を主導
有化に有効のみならず,異質な意見の接触を促したと思
し提案することではなかった。そのため開始段階は,戸
われる。部門を交差するメンバーによる編成は,お互い
惑いが大きく緊迫感もみられなかった。しかし,次第に
に知り合うための一定期間が必要であるため,開始段階
目的は浸透していき,1ヶ月を過ぎるころには,ブレー
では進行が緩慢にみえるが,活発な相互作用が始まれば
ンストーミングが順調になされ,アイディアが提案され
その後の活動は円滑に行われるようになる。前述したよ
るようになる。提案は時には保守的過ぎるとの理由から
うに,もし期限が長期にわたるようなことがあれば,メ
差し戻されるときも多くあった。
ンバーの相互理解が一層進み,やがてコミュニケーショ
3ヶ月間でまとめられた再建計画の内容は,①3年間で
ンの必要性は低下傾向をみせ,同質化が進行しただろう。
の1兆円の負債削減,②サプライヤーの半数減や世界規
創造的で意表をつくアイディアは,異質なものの接点で
模での人員の2万千人削減,国内の組立工場を7から4に
生まれるというのが,革新性原理である。このニッサン
の例からは,革新性は自己管理型チームを導入したネッ
13 Davenport(1993)グループウエアの利用が商品開発
トワーク型組織によって生起することが確認できる。
期間を30%縮減したBalcor社(不動産業)の報告もあ
なお,ゴーン改革では,中間管理職で編成されたCFT
る。これらのケースは,プロセスの再構成により,オ
が承認と決定の権限は経営委員会の上層部にゆだねられ
ートメーション化が今後も進むことを示唆している。
た。最終権限は経営委員会にあることから,半自律的な
p. 103.
特性をもつ。このことが表1の機能横断型のタイプであ
−238−
情報技術(IT)の進展とネットワーク型組織
Information Technology, Harvard Business School
りながら,ミッション型の課題遂行チームに分類される
Press
理由にあげられる。言い換えれば,CFTは戦略型チーム
Davis, Louis E. & James C. Tayler (eds.) 1979 Design of
による参加型経営とみなしうる。
Jobs (2nd ed.), Goodyear Publishing Co. Ltd.
6. まとめ
Dessler, Gary 2001 Management (2nd ed.) : International
Edition, Prentice-Hall.
先進諸国の多くの企業にとって,今日の課題は組織の
革新と価値創造となっている。それに伴って,経営組織
Dibrell, C.Clay & Thomas R. Miller 2002, “Organization
の有効性の鍵が知識ベースの議論に移行しつつあること
Design: the Continuing Influence of Information
も,先行研究によって明らかである。いうまでもなく,
Technology”, Management Decision, Vol. 40, No.6.
知識の源泉は個人の中に潜在する。このような理由から,
620-627.
構成要素である人間と最小単位のシステムとしての自己
Trist, E.L. & K.W. Bamforth 1951 “Some Social and
Psychological Consequences of the Longwall
管理型チームが注目されているといえよう。
Method of Coal Getting”, Human Relations, Vol. 4.
どれほど科学の解明が進もうとも,革新と価値創造は
今後も人間の手に委ねられるであろう。ITの革新的進歩
Engelsted, Per H. 1979, “Socio-technical Approach to
は,組織に変化をもたらしている要因であるが,それと
Problems of Process Control”, in Davis & Taylor
同時に新たな情報価値創造の領域で人間を支援し,ITを
(eds.) Design of Jobs
媒介して組織が主体的に環境を変化させる側面のあるこ
Emery, Fred E. & E.L. Trist 1965, “The Causal Texture
of Organizational Environment”, Human Relations,
とを示した。
Vol. 18, 21-32.
環境が求める組織の柔軟性は,下位システムが上位シ
ステムから自立して,自律的に行動しうる力を持った時
二村敏子1982「10章人的資源アプローチと職務充実」
二村敏子編『組織の中の人間行動』有斐閣
最大に発揮される。ネットワーク科学の理論を援用すれ
ば,そのような自己管理型のチーム特性は,双方を結ぶ
藤井義弘(編著) 1999「日本企業の情報化戦略」東洋経済
新報社 リンクの強さによって自律性の程度として測ることがで
きる。また,リンク元の意思決定レベルによって,ショ
Galbraih, Jay R., Edmond E. Lawler Ⅲ and Associates
ップ型,機能横断型,ミッション型の3つに識別しうる
(eds.) 1993 Organizing for The Future: The New
ことを報告した。
Logic for Managing Complex Organizations,
Jossey-Bass Publishers.
なお,コンピュータ端末が連結しあうネットワーク社
会になればなるほど,人間関係の信頼という意味がます
Hackman, J & G. Oldham 1980, Work Redesign, Addison
Wesley.
ます重要視されてくることを強調しておきたい。人は見
知らぬ人より,面識があったり以前に一緒に何かをした
日置弘一郎 1982「11章社会−技術システム・アプロー
チと新しい組織」二村敏子編『組織の中の人間行動』
人を信用する傾向がある。さらに,何度か取引や交渉を
有斐閣
行う中で,相手が信用の置ける人物かどうかを判断する。
つまり,コンピュータ・ネットワークは,それを操作す
今井賢一 1984『情報ネットワーク社会』岩波新書
る人間の社会的ネットワークに裏打ちされて,はじめて
加護野忠男 1988『組織認識論』千倉書房 意味のある関係性が構築されることを物語っている。
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(平成17年10月12日受稿,平成18年 5 月 5 日受理)
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