ふれあいインタビュー

I N T E R V I E W No.194
リース設備の引き上げを覚悟したことも
客先の要望に徹底して対応
東海アヅミテクノ株式会社 代表取締役 日 高 良 昭 さん
プロフィール●日高 良昭(ひだか・よしあき)
1955(昭和30)年5月29日、島根県邑智郡瑞穂町に生まれる。佐賀大理工学部機械工学科を卒業。
'79(昭和54)年、中堅工具メーカーに就職。設計、研究、開発部門に勤務。自動車メーカーのFF
方式導入にともなって、営業技術部門に転出。勤務先の工具メーカーが東海アヅミテクノを設立した
際に出向、後に転籍。取締役工場長を経て、'96(平成8)年社長に就任。家族はかおり夫人と2女。
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中堅工具メーカーの子会社として誕生したものの、
れた仕事をこなすために工場内の機械の下にダンボ
バブル崩壊の影響で倒産の危機に瀕した事もある。
ールを敷いて、泊まり込むこともありました。
徹底した顧客サービスの追求で持ち直し、現在は集
しかし、設立当初、設備などは十分に揃っていた
中する注文をこなすのに腐心している日高さんに話
のですが、使いこなすだけの技術が育っていません
を聞きました。
でした。仕事ができるようになったら、不況により
―大変に厳しい時を乗り越えてこられましたね。
仕事量が激減してしまい、銀行や親会社からも事業
日高 はい。'88(昭和63)年5月に組織が立ち上
の取り止めが話題になってきていました。そこで、
がり、当初の事業計画では、3年で軌道に乗せるは
親会社から独立して事業展開を図る事になりました。
ずでした。しかし、バブルの崩壊で5年が経過して
一方で、客先を固定、徹底して顧客の要望に応える
も赤字のままで、リースの設備を引き上げる相談が
ための体制を敷いて事業に取り組みました。取り扱
聞こえてくるほどにまで業績が悪化。覚悟を決めた
っている製品はプラスチック製品を作るための金型
時もありました。
の入れ子と呼ばれるものです。これらは精密な部品で、
―日高さんはすでに経営陣に加わっていたのですか。
既存のメーカーによっては、図面の指示どおりに取
日高 その頃は技術系の第一線の課長として営業
り組んでも発注先の要望を満たす事ができないケー
部門との連携役を務めていました。時には、与えら
スもありました。こうした事例に対して、当社は納
会社概要
東海アヅ ミテクノ株式会社
◇事業内容/精密プラスチック金型用部品製作、
3Dモデリング・マシニングセンタ用
データ作成
◇年間売上高/2億5,000万円
◇資本金/3,000万円
◇住所/久居市中村町578
◇TEL/059−252−1100
◇FAX/059−252−1178
期も含めて、顧客の希望をかなえるために力を注ぎ
えています。携帯電話などはマグネシウムを使った
ました。こうした努力に対して客先の信頼を得て仕
完成品が出てきており、このための金型については
事が増えてきました。
専用金型が必要になっています。また、光ケーブル
'94(平成6)年頃から業績が好転・累損を一掃して、
が普及する中で専用のコネクタにはこれまで以上の
さらに半導体向けの超精密金型部品の製造に経験を
精度が要求されてきます。こうした変化を先取りす
積んできました。また、ビデオカメラやプリンター
るぐらいのつもりで技術の研究と開発を進めていき
用などの機能・機構部分用金型向けにも部品を製造
ます。製品サイクルが短くなっていますので、技術
して供給してきました。最近はメーカーが海外に生
進化に遅れることなく取り組むつもりです。
産拠点を展開して、パーツを現地に届けるだけでは
―海外への事業展開についてどのように考えてい
簡単にメンテナンスなどができない状況も生まれて
ますか。
います。これを解決するために、部品の互換性を高
日高 仕向け先から進出の誘いはありますが、す
めるためにメーカー側の図面がより高度な指示を伴
ぐに行くつもりはありません。もっとも、客先の意
っている場合があります。こうした製品でもこなし
向を考え、中国人技術者を採用、育成し始めました。
ていく技術の蓄積と設備を持って対応しています。
大手メーカーが中国市場をにらんで進出しています
―今後の展開についてはどのようにお考えですか。
ので、中国に置いた工場での生産に対応できるよう
日高 企業規模については、大幅な拡大は計画し
にしたものです。メーカー側も基本的には国内に金
ていません。従業員数は30人程度をめどにしています。
型を残して、生産に関する技術や方式を確立してい
売上高は2年後に4億円を目指しています。設備に
く方向を探っているようです。これからも、独自の
ついては十分な体制を敷いていきます。すでに、こ
技術と苦しい時を乗り越えた経験を最大限に活用して、
の3年間で一定程度の導入は終わっています。今は
国内でトップの地位を目指していくつもりです。
これらを使いこなす人材の確保が課題になっています。
大都市に比べると技術系の人材を手当てする面では
不利な場合があります。特に若い技術者で都会の喧
燥で育った人には慣れるのに時間が掛かるかもしれ
ません。しかし、豊かな自然に囲まれた生活にあこ
がれている人には最高の条件が揃っています。これ
までに、大阪などからも採用への応募がありました。
優秀な人材については積極的に採用していきます。
さらに、教育面でも本人の意欲やセンスに対し充分
な待遇で応えていきます。
一方、客先が取り組んでいる最終製品に使われて
いる素材の変化にも目配りしていく必要があると考
半導体関係 超精密金型部品
過去の『ふれあいインタビュー』は三重県産業支援センターのホームページURL http://www.miesc.or.jp/mic/mienet/fureai.htm および http://www.miesc.or.
jp/mic/infonet/fureai.htm で見ることができます。
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