キャリア教育の課題と理系の魅力の発信 「大人とは、働くとは、学ぶとは」を問う、中学生へのキャリア教育 ●キャリア教育は、重要だけれど難しい 大人になれば、みな働かなければなりません。働いてみずから報酬を得、生活できるようにな ることが大人になること、とも言えるでしょう。そして、この「働く」ということは、「生きる」 ことそのものにもつながっています。 その意味で、大人への歩みを始めた中学生に、働くということや、その働くことが「学び」と つながっていること、そして今後も学び続けていくことの意味を伝え、中学生自身にも考えるよ う促すことは、大変大事なことでしょう。中学校の先生方は、今そのために、いろいろな工夫を され実践されていることかと思います。 中学生に対して、 「働くことや学ぶことを伝え、考えさせる教育」つまり「キャリア教育」をい かに展開していくかは、社会が複雑になり仕事が多様化している現在、ますます重要な課題にな ってきていると思われます。 とはいうものの、今の進学環境にあって、彼ら自身が将来の自分の仕事、あるいは仕事につな がる知識・態度を身につけるための学校選びをできるように指導することは、実は、非常に難し いのではないでしょうか。 キャリア教育の難しさの要因 ●長い学習期間と多様なルート 中学生にキャリア意識を育てようとする教育の難しさの一つに、現代社会と仕事の著しい変化 に加え、現代日本では働き始めるまでの学習期間が大変長くなっている、ということがあるよう に思えます。さらに、学習機関やルートが多様で、しかもそれらは、教育内容や仕事・社会との つながりよりも、有名かどうかといった観点で評価されたりしています。そのため、極端に言え ば、学びや勤労観・職業観を深めるより、その学習機関に入りルートに乗ることこそが大事にさ れるという現象も起きています。 ●中学生の立場、理想と現実 そもそも中学・高校生の段階で、将来の自分の仕事のイメージを明確にするのは困難です。そ の結果、有名な学校を目指す、得意教科を生かす、楽ができそう、などといったとりあえず身近 な観点から学習機関やコースを選ぶことが多くなりがちです。本来は、もう少し余裕をもって多 くのことをゆっくり学び、知識や技能や態度を高めていく方が、将来の仕事の幅・人生の幅も広 げられるでしょう。しかし、そんな学び方は、今の教育をめぐる制度の中ではできにくい、とい うのが実状でしょう。 つまり、中学生は、大人社会が作った多様で複雑な制度に翻弄されながら、自分の興味・関心 を深め、学び、能力を高めて、働くことや生きることに自分なりの意味を見出していかなければ ならないのです。 ●中学生を、社会の中での役割を担える大人へと導くために 一方、先生方には、社会全体の活動の中で多様な仕事がそれぞれ役割を担い、それによって社 会が動いていることを踏まえ、将来そういう役割を中学生が担えるよう教え導くことが大きな課 題かと拝察します。先生方は、目の前にいる中学生に、社会や教育環境の中でいずれ出合うであ 1 キャリア教育の課題と理系の魅力の発信 ろう課題を乗り越えられるような知識・技能・態度を身につけさせようとしておられるのではな いでしょうか。 そういった状況の中で、同じく中学生へのキャリア教育を非常に大切に思い、有効と思われる 情報を集め、仕掛けを考え、作ったのがこのサイトです。 高校カリキュラムの現状 ●高校では文系理系の選択が優先される 中学校を卒業し高校に入った生徒の多くは、1年もたたないうちに、大学や専門学校に行くた めの学習を効率的に行えるようにと、文系、理系に分けられます。文系とは、国語、社会、英語 を中心に学ぶコース、理系とは、数学、理科を中心に学ぶコース。これが多くの高校の現状です。 この文理分けの制度はどんな意味を持つのでしょう。あるいは、高校での学習が半ばにも満た ない低学年次、自分が何を学びたいか、どんな仕事をするかも当然十分定まっていないなか、そ の2つのコースに分かれるということには、どんな課題があるのでしょうか。 ○図表1 文理分け選択の時期 文理分け選択の時期 35 30 25 20 15 10 5 中 3・ 後 高期か 高 1・ 4ら 高 1・ 5 月 高 1・ 6 月 高 1・ 7 月 高 1・ 月 高 1・ 8 月 高 1 ・1 9 月 高 1 ・1 0 月 1 1 高 ・1 2 月 高 1・ 1月 高 1・ 2 月 1・ 月 3 高 月 2 高 ・4 高 2・ 5 月 高 2・ 6 月 高 2・ 7 月 高 2・ 月 高 2・ 8 月 高 2 ・1 9 月 高 2 ・1 0 月 2 1 高 ・1 月 2・ 2 月 1月 0 ●文理の区別は、社会ではなく学問に由来 そもそも文系・理系という分け方は、職業に対する考え方を深めるようにはなっていません。 したがって、そのコースに身を置いたからといって職業観は深まりません。現実社会との接点は、 学びが意図的に業種的・職種的に構成されていないと、生まれにくいと思われます。文系・理系 の区分は、学問つまりリベラルアーツ、「人文・社会科学」と「自然科学=理学」による区分で、 社会に依存しているものではないからです。 ●本来は全領域を学ぶはず 高校での学習内容はリベラルアーツですから、本来なら全領域を学ぶことが求められているは ずです。技術者が日本史を知らず英語に弱ければ、国際的な取引場面で決して有利に働けません。 一方、文系の人が、統計の方法や IT の原理、エネルギーや環境などについて知らなければ、この 社会がサイエンス・テクノロジーで成り立ている以上、個人的にも社会的にも、望ましくないで 2 キャリア教育の課題と理系の魅力の発信 しょう。実は、どの業職種に就いたとしても、文系が重点を置く国語も社会も、理系が重点を置 く数学も理科も必要なのです。 ●低学年化する文理分け。一生、理系知識を学ばない可能性も しかし、文理分けコースはほとんど制度化し、その選択の時期は、生徒の興味が育つのを待つ ことより、進学のための学習を有利に進めるため、低学年に設定する傾向にあります。それでも、 途中でコースを変更できるならばいい。しかし変えられるのは、多くは理系から文系へであり、 文系から理系へは変わりにくいのが実態です。理由は、数学や物理は独学をしにくい、というこ とがあるかと思われます。このことは、歴史や経済と違って、数学や物理さらに化学などは、高 校時代に学ばないと一生学べずに終わってしまう、ということも示唆しています。 職業において、理系選択者に広がる可能性 ●理系出身者は文系職業にも就ける 理系に進めば、文系出身者が多く就業するサービス業、金融業等、ほとんどの業種への従事が 可能です。しかし文系に進むと、理系の人が多く就く、エンジニアなど専門的な仕事には、ほと んど従事できません。理系の学びを経ないと就けない仕事が多くあるということです。つまり、 理系で学んだ方が、様々な場面で働くことができるようになってきているのです。 3 キャリア教育の課題と理系の魅力の発信 ○図表2 各職種の出身学部別人数の割合(数字は%) 理系 理 学 系 工 学 系 全体 雇 用 の さ れ 方 に よ る 分 類 6.3 15.3 9.0 会社員(正社員) 会社員(派遣) 5.8 15.7 12.5 自営業 4.4 3.11.3 7.4 13.1 全体 3.2 5.0 2.3 0.5 5.4 3.2 3.51.1 17.2 6.8 8.6 10.3 0.5 15.7 3.32.9 56.5 0.6 3.62.4 0.9 9.2 23.7 2.0 27.4 11.2 2.72.1 0.8 1.4 2.8 18.6 13.9 1.9 1.0 1.8 21.3 5.0 2.51.8 18.6 10.6 24.0 3.4 6.1 0.6 2.9 5.1 0.6 0.6 1.3 1.7 1.0 0.3 1.4 2.0 0.3 0.3 2.71.7 2.6 5.9 26.8 8.6 4.32.1 14.9 3.3 5.5 29.7 3.41.7 6.9 15.5 71.1 16.7 8.8 12.2 6.4 2.14.3 6.4 36.2 9.5 23.5 8.8 6.6 4.4 3.3 7.7 3.82.50.6 7.3 4.2 6.8 22.5 9.3 59.6 マーケティング・商品開発 その他 3.7 5.4 3.21.13.22.2 4.32.2 11.8 2.9 0.2 2.4 4.1 16.8 4.8 7.7 12.5 0.5 1.9 1.9 7.7 1.9 1.9 30.8 1.9 3.2 15.9 3.2 4.81.6 11.1 3.2 9.6 30.8 企画・コンサルタント・調査 17.9 2.3 5.7 1.13.41.14.51.1 57.1 技術営業・セールスエンジニア 管 事務的職種 理 系 営業・販売的職種 職 種 サービス的職種 3.8 88.5 2.6 0.7 4.6 0.7 5.2 5.9 42.3 14.8 28.1 15.4 66.7 生産管理 2.3 5.7 6.6 12.0 8.1 48.1 プロジェクトマネージャー 管理的職種 9.8 9.8 15.4 6.8 5.3 23.3 19.2 80.7 システムエンジニア 医師・薬剤師・看護士等保健医 そ 療従事者 の 教員 他 その他理系的職種 4.2 20.1 20.6 45.1 そ の 他 2.4 6.3 9.1 8.3 64.1 技 術 設計 関 製造 連 職 生産技術 種 品質保証・評価 22.5 15.3 13.6 14.4 教 育 系 32.7 11.4 12.3 44.1 応用研究/先行開発 技 術 関 連 管 理 系 職 種 9.3 34.4 28.7 商経経 学営済 系・・ 11.2 34.8 4.0 3.1 3.10.9 基礎研究 業 務 内 容 に よ る 分 類 15.4 10.7 19.2 3.3 2.70.52.7 法 学 系 文 学 系 5.1 3.0 3.71.0 25.7 アルバイト・パート・フリーター 1.5 1.0 2.9 5.3 0.2 33.4 会社員(契約社員) 家 科政 学・ 系生 活 5.4 3.2 3.51.1 24.9 公務員 薬 医 ・ ・ 保 歯 健 ・ 系 農 学 系 28.7 経営者・役員 文系 1.73.4 12.1 1.3 8.2 1.94.4 2.53.8 0.5 5.2 7.6 3.1 7.6 5.3 3.1 6.1 2.3 8.4 2.4 4.5 37.0 15.6 25.9 15.1 25.2 8.3 21.2 6.7 8.8 3.9 1.5 7.2 38.2 13.6 6.1 8.6 38.1 4.8 10.6 21.2 理系学部出身者比率 (全体41.8%) ●文系領域にも理系知識は効果を発揮する 現在、環境やエネルギー、医療技術の問題など、日本の産業から社会生活の隅々まで、テクノ ロジーが関係するようになってきています。IT 化も進み、サービス主体である産業も生産性の向 上こそ競争力獲得の課題とされています。そのような社会では、マネージメントをする人材も、 テクノロジーの知識を持ち、データ解析の方法や仮説・検証に基づく科学の方法等などを扱える 方が望ましいといえます。事実、本サイトで紹介する高安美佐子さんは、経済学、マーケティン グ、社会心理学が対象とする領域に物理学をもってアプローチし、分析を行い、文系の学問に変 革をもたらす勢いです。振り返ってみれば、社会工学、経営工学、人間工学、教育工学など、文 系学問が対象としていた領域を工学としてアプローチする学問は、少なくないのです。 4 キャリア教育の課題と理系の魅力の発信 ●日本の国に不可欠な科学技術 ご存知のように資源を輸入にたよる日本では、資源を付加価値の高いものに変え輸出すること で国際的な優位性を保ってきました。その付加価値を生むのは、 「モノづくり」であり、科学であ りテクノロジーです。金融バブル崩壊のなか、改めて、地道なモノづくりは注目されていますが、 その担い手の多くは理系出身の研究者であり、エンジニアです。 科学技術の進歩は、驚くべき速さです。コンピュータの処理速度も数年で倍になる勢いで開発 が進み、キロ→メガ→ギガと単位を変えてきました。今では、絶対温度 0 度近くに下げることで 実現する超伝導技術で抵抗をゼロに近づけ、さらに量子力学による、電子の一つの性質である波 で、同時に何重もの計算をさせるコンピュータも夢ではなく、研究開発が進んでいます。 この現実離れしたかのような科学技術の進展に日本がついていけないと、日本の産業は、中国 や韓国、台湾などを筆頭とした成長著しい国々に依存することにもなりかねません。 有効性が高いにもかかわらず選択されない理数系 ●理系・工学離れは大きな課題 とはいうものの、生徒にとっては、理系コースは文系よりも学習量が多い、という切実な現実 があります。また一方では、理系出身者の職業満足度は高く、多くは高いやりがいを感じている にもかかわらず、理系には、 「きつい、きたない、給与が低い、社長になれない」といった必ずし も妥当とは言えないイメージが先行していたりもします(毎日新聞社「理系白書」など多くのレポ ートは、この点から理系の課題を取り上げてきました)。 大学進学者数で、理系とりわけ工学離れが見られるのは、これと無縁ではありません。 このことは、数学・理科の知識は有効性が高いにもかかわらず選択されにくいという、ねじれ が生じていることを表しています。これは、生徒個人から見ても、社会・国家から見ても、大き な課題と言わざるを得ません。 ○図表3 7.0 入試倍率の推移 2000~2006(国公立大) 6.0 文・人文 法・政治 教育(教員養成) 理 農 家政・生活科学 芸術・体育・他 5.0 社会・国際 経済・経営・商 教育(総合科学課程) 工 医・歯・薬・保健 総合・環境・人間・情報 4.0 3.0 ※倍率=志願者/合格者 00年 01年 02年 5 学校基本調査 03年 04年 05年 06年 キャリア教育の課題と理系の魅力の発信 本サイトで提供する具体的内容 ●「仕事と社会のあり方」紹介、そして将来のコース選択を見据えて そこで本サイトでは、今の中学校で行われているキャリア教育では、どうしても手薄になって しまいがちという「仕事と社会のあり方」を、特に理系の面白さ・意外性、日ごろ中学生が触れ ることの少ない技術の卓越性・スケール感などを中心に紹介しています。さらに難しい進学先や コース選択に対しても、中学生が将来その選択の局面に立たされた際に判断のヒントとなるよう な情報を提供しています。少しでも、生徒たちが将来に向けてより豊かな決断ができるようご指 導なさっておられる先生方のお役に立てるよう、情報を集約した冊子も作成しました。 ●「やりがいとは」そして「やりがいアンケート」 具体的には、基本としての「勤労観・職業観」育成部分として、生徒が関心を持ちそうな身近 なものに注目し、それに関わった人の「やりがい」にスポットを当てました。やりがいへの注目 としては、職業人 5000 人アンケート、加えて、中学生に人気の作家あさのあつこさんに協力を いただいて、 「やりがいとは何か」の検討もしてあります。このアンケートの結果を見ると、さき にあげたような理系の出身者の暗いイメージは必ずしも当たっていないことがわかります。 ○図表4 職業人 5000 人アンケートより 【今の自分の仕事は、多くの達成感を得られる仕事だと思いますか。】 そう思う ややそう思う あまりそう思わない そう思わない 21.9 全体 49.2 22.3 6.6 理系 25.7 51.6 18.0 工(理工)学系 24.7 52.7 19.0 21.1 理学系 56.1 37.5 薬学系 27.3 保健・看護・医療系 29.4 25.0 教育学系 24.4 8.1 13.4 25.8 49.6 16.0 経営・商学系 7.3 25.6 38.1 18.5 経済学系 25.0 25.0 50.6 22.7 法学系 9.1 5.9 47.8 16.9 文学系 6.3 18.2 64.7 19.3 文系 7.0 18.8 45.5 25.0 家政・生活科学系 3.7 15.8 37.5 農学系 4.8 27.7 4.2 28.0 50.0 48.6 34.3 6.0 17.1 【今の仕事の給料に満足していますか。】 そう思う ややそう思う あまりそう思わない そう思わない 全体 6.3 29.0 理系 6.1 工(理工)学系 4.7 31.3 理学系 3.5 35.1 農学系 18.8 薬学系 13.6 保健・看護・医療系 5.9 家政・生活科学系 12.5 文系 6.9 文学系 5.2 経済学系 5.0 経営・商学系 教育学系 30.9 8.0 5.7 22.6 43.4 19.5 44.7 19.3 38.6 21.9 22.8 40.6 31.8 18.8 31.8 23.5 22.7 58.8 40.5 27.3 26.8 22.7 41.3 6 41.2 37.1 12.5 24.7 22.7 26.8 46.2 33.0 11.8 25.0 50.0 27.9 8.7 法学系 42.1 26.1 34.0 34.3 25.0 22.9 キャリア教育の課題と理系の魅力の発信 【余暇、家庭生活などプライベートは充実していると思いますか。】 そう思う ややそう思う あまりそう思わない そう思わない 全体 理系 17.9 46.5 15.0 工(理工)学系 14.3 理学系 8.8 農学系 28.1 薬学系 27.3 保健・看護・医療系 11.8 家政・生活科学系 12.5 46.0 32.7 40.6 経済学系 16.0 経営・商学系 20.0 教育学系 31.4 7.0 5.3 18.8 12.5 50.0 18.2 52.9 4.5 35.3 75.0 12.5 45.5 27.9 45.9 15.5 法学系 6.8 36.8 22.1 文学系 6.7 30.9 49.1 19.7 文系 28.9 47.3 6.9 27.3 40.2 4.7 32.0 46.2 12.4 33.6 51.0 4.2 22.0 40.0 7.0 17.1 11.4 【大学(高専)の学生生活において、学業は充実していましたか。】 そう思う ややそう思う あまりそう思わない そう思わない 全体 14.2 41.5 13.2 理系 工(理工)学系 10.3 理学系 12.3 35.7 46.8 31.8 48.7 40.4 25.0 18.2 59.1 保健・看護・医療系 17.6 58.8 25.0 文系 13.8 文学系 15.1 14.4 法学系 10.1 経済学系 6.3 18.2 4.5 23.5 25.0 50.0 39.6 43.6 9.4 34.3 26.8 7.0 41.2 37.0 17.5 43.7 37.0 9.2 44.0 20.0 教育学系 14.0 37.5 37.3 13.0 経営・商学系 8.0 33.3 薬学系 家政・生活科学系 8.2 33.0 31.3 農学系 8.6 37.1 6.0 34.3 8.6 【自分の仕事で、中学や高校で学んだことは役立っていますか。】 そう思う ややそう思う あまりそう思わない そう思わない 全体 11.9 理系 13.2 工(理工)学系 12.7 理学系 12.3 農学系 15.6 薬学系 18.2 保健・看護・医療系 11.8 家政・生活科学系 12.5 文系 文学系 10.9 5.8 法学系 12.4 経済学系 11.8 経営・商学系 13.0 教育学系 22.9 42.1 10.3 35.7 48.4 6.8 31.6 47.3 6.0 34.0 57.9 8.8 21.1 50.0 6.3 28.1 40.9 13.6 27.3 47.1 41.2 37.5 25.0 39.0 37.7 25.0 12.4 39.0 39.5 38.1 29.9 46.2 15.7 19.6 8.4 33.6 34.0 7.0 46.0 51.4 20.0 7 5.7 キャリア教育の課題と理系の魅力の発信 ●エンジニア紹介の意図 現在多くの中学校で職場見学・体験が行われていますが、どうしても地元とつながりのあるス ーパーなど、サービス業が対象になりがちです。そこで、産業の付加価値を生んでいるエンジニ アの紹介などでは、生徒が興味をもちそうな人やモノを多く提供しています。エンジニアなど直 接モノづくりに関わる人の言葉は、数学・理科など理系のコアとなる教科の意味を理解する上で も、将来、文理のコース分けに直面したとき問題意識を持って考えられるようになるためにも、 意味があると考えます。 ●社会を構成する役割分担とそれぞれのやりがい さらに、今の社会はどのような仕事=役割で構成され、それぞれがどのようなやりがいを持ち、 意識にあるかも調べ、それに基づいた情報も紹介しました。そこでは、先に述べた文系・理系分 けに関わる職種を抽出し、現状を映してみました。勤労観・職業観育成も大事ですが、一方、日 本経済の中で、仕事がどう分業され位置づけられ、社会が回っているかをある程度理解すること も重要です。その分業化された役割とそこで働く人のやりがいの言葉を通して、社会で働く仕事 そのものも映し出しました。 ●学習期間中に迫られる「選択」の例を垣間見る さらに、仕事につくまでのプロセスとしての学び=教育機関やコースも「見える」ように工夫 してあります。先に述べた長期化し複雑化している仕事に至るまでの学習期間を少しでも垣間見 て、それを知っておくことは、将来、その選択の局面に出会った際に、その選択の意味を理解で きることにつながると思われます。 大人が作り出した制度の中でも、子供たちが自分にピッタリの「選択」をできるよう 現実には、キャリア教育が目指すような理想の考え方が当てはまらない場面も多く、何が問題 なのか、誰の問題なのかも、見えにくくなってしまっているように思われます。ただ、その多く は大人の問題のはずです。その是正に向けた検討は、大人がしなければならない問題にもかかわ らず、その理想と現実の矛盾の中で、選択をしていかなければならないのは、子供たちなのです。 そういう子供たちの活動の場面に日々接し、最前線でその矛盾に向かっておられるのが、先生 方です。そういう先生方のご努力の一助となりますよう、このサイトもさらに検討発展させるよ う、努めてまいりたいと思います。 8
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