GSICS 国際公務員養成プログラム インターンシップ実施記録② 実施

GSICS 国際公務員養成プログラム
インターンシップ実施記録②
実施機関:国際連合人権高等弁務官事務所
私のインターンシップが 8 月に始まり、早くも 3 カ月が経ちました。今から振り返ると、
本当に「あっ」という間に過ぎたと感じています。今回の報告では、私の一日のだいたい
の流れ、現在の仕事内容の紹介、その他コマゴマ情報、3 か月たった感想を報告したいと思
います。
0、
所属セクションの紹介
前回の報告では、私の所属するセクションの詳しい説明をすることができなかったの
で、ここで紹介したいと思います。Peace Mission Support and Rapid Response Section
というのが私の所属するセクションの正式名称です 1 。このセクションの中には4つの機能
があります。簡単に説明すると以下のようになります。
1) Rapid Response Unit (人権侵害、人道危機及び自然災害に対する早急な対応、人権
が脅かされている事態、地域に対する早期警告及び情報支援等)
2) Humanitarian Action Unit (緊急事態におけるフィールドへのサポート、他機関と
の調整、知識基盤を進展させる、知識共有の促進等)
3) Peace Mission Support Unit (政策の立案及び履行、フィールドとの調整、平和活
動に関連する知識・情報の強化等)
4) Roster Management (Peace Mission への派遣ロスター管理等)
FOTCD にはそれぞれの国の人権状況を担当している職員がいます。この職員の方々を
デスク・オフィサーというのですが、彼らとともに、私のセクションは人権の視点から平
和維持活動のサポートや、人権調査団(Commission of Inquiry)や人権監視団等の派遣サ
ポート、他の国際機関(OCHA, UNHCR, UNICEF, ICRC 等)との調整を、人権全般に関
する知識はもちろんのこと、人道法や人道支援に関する専門知識を持った職員が日々対応
しています。
1、
インターンシップ、1 日の流れ
ほとんどの職員の方々は 9 時 15 分から 9 時 30 分の間に出勤されています。私は朝の
閑散としたオフィスの雰囲気が好きなので、毎朝だいたい 8 時から 8 時 30 分の間に出勤し
ます。まずはメールチェックをします。毎日送られてくる情報の一つに、FOTCD 2 Daily
Update が あ り ま す 。 こ れ は 私 の セ ク シ ョ ン の Rapid Response Unit の 役 割 の 一 つ に
Information Managementがあり、FOTCD Daily Updateはその業務のひとつです。これ
は職員ではなく、Information Managementを担当するオフィサーの下についているインタ
ーンが担っている仕事です。毎日、様々な情報源から送られてくる人権に関する最新情報
に目を通し、国別の人権状況についてまとめ、上司とデスク・オフィサーの確認を経て
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近日名称変更予定です。現在セクション内でどのような名称が良いか模索中です。
FOTCD (Field Operation and Technical Cooperation Division)は OHCHR に 4 つある
Division の1つで、私が所属している Division です。詳しくは前回の報告をご覧ください。
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OHCHRの職員全員に送られます。毎日約 4 カ国の人権に関する情報が掲載されています。
短い情報ですが、人権について世界で何が起きているのかについて、知ることができると
ても有益な情報です。
月曜日の朝 1 時間ほどはユニットのミーティング、火曜日のお昼 1 時間はセクション
のミーティング、そして水曜日の朝 1 時間はIASC Weekly Meeting 3 に出席します。コーヒ
ーブレイクなどの休憩は好きなときに行くことができます。私の場合は同じ部屋で仕事を
しているインターンと行ったり、ちょっとした質問をしにオフィサーの部屋に行った時が
10 時半だったり 3 時だったりすると、コーヒーを飲みながら話しましょう、ということも
あります。また所々のオフィスに湯沸かし器があるので、カフェテリアまで行かずに、オ
フィスで自分でコーヒーや紅茶を作ることもできます。
昼食は OHCHR のカフェテリアか、近くにある WIPO のカフェテリアで食べています。
私はできる限りお弁当を作って持っていっているので、カフェテリアに必ず置いてある電
子レンジに助けられています。午後も午前に続き長期プロジェクトである仕事のリサーチ
やドラフトを作ったり、急に上司やその他のオフィサーから依頼される小さな仕事をした
り、というように一日が過ぎていきます。帰宅は 6 時です。その後元気が残っているとき
はすぐ隣にあるスポーツセンターのプールに泳ぎにいったり、近くにあるジュネーブ高等
学術研究所の図書館に行ったりしています。
2、
現在の仕事内容の紹介
現在所属部署でどのようなことをしているのか、その一部を紹介したいと思います。
(IASC Weekly)
IASC (Inter-Agency Standing Committee)は 1992 年の国連総会決議 46/186 によって
設立された、複数の機関にまたがる、人道支援及び人道支援政策にかかる諸事項・任務に
ついて、各機関が協議・調整を行うフォーラムです 4 。このIASCの下にはワーキング・グル
ープ、そして様々なサブ・ワーキング・グループたタスクフォース等が存在します。IASC
Weeklyはその名のとおり週 1 回、人道、人権、開発に関する国際機関や国際NGOの職員が
集まり、情報および知識の共有を行うためにジュネーブ及びニューヨークでそれぞれ開か
れます。ミーティングの内容は、人道支援評価から気候変動、リプロダクティブ・ヘルス
や資金調達など多岐にわたります。私の仕事はこのミーティングにOHCHRとして出席する
ことです。他の国際機関および国際NGOが人権、人道に関わる分野でどのようなことをし
ているのか、それを知ることはOHCHRの仕事をする上で重要です。つまり、OHCHR内で
の情報共有の一部を担っています。毎回のミーティングの内容に従い、OHCHR内でその内
容に関わる仕事をしているオフィサーに情報を回し、ミーティング後はその内容をまとめ、
IASC Weekly Meeting については次のセクションで詳しく説明します。
詳しくは、IASCのホームページをご覧くださ
い。http://www.humanitarianinfo.org/iasc/pageloader.aspx
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メールで送ります。「A4 一枚の紙を最大限に使って何かを相手に伝える」ということは大
学院の演習の中で学んだことですが、ミーティングの内容をまとめる際も同じことが言え
ます。ただ議事録を書くだけでは何も伝わりません。相手にわかりやすく、重要な点を簡
潔にまとめる、今後の仕事に役立つような情報をしっかりと盛り込んだ文書にすることを
心がけています。
(人道活動関連事項についての Q&A、How-To、Factsheet 作成)
10 月の初旬に所属部署が今後の 2 年間にどのようなことをするのか、という議論が行
われました(このことについては少しだけ詳しく次のセクションで説明しています)。その
中で OHCHR 内での知識・情報共有の一部として、人道・人権に関する専門的な用語や知
っておくべき枠組み、問題などについて Q&A、How-To 文書や Factsheet を作り、人道支
援に人権担当として関わっていくだろうすべてのオフィサーに提供する、という業務が盛
り込まれました。人道関係について知識が豊富なオフィサーはやはり限られています。し
かし突然人道危機や大規模な自然災害が起こった場合は国連において人権を担当する機関
として、早急に対応しなければなりません。そのためには、既にある枠組み等について知
っておかなければ、効率的及び効果的な業務を行うことができません。OHCHR としてど
のように人道支援に関わるのかを常に頭に入れ、重要なトピックについて文書を作るのが
私の仕事です。まず重要なトピックを厳選し、それを上司に提出しました。以前任されて
いた仕事は人道支援に関する重要な文書について、それぞれその文書を説明する短い文章
を書く、ということだったので、その仕事をする中で様々な人道支援に関する多くの知識
を得ることができました。そのため、この仕事もスムーズに始めることができました。現
在の人道支援の枠組みである、クラスター・アプローチ Cluster Approach についての Q&A
をまず最初に作成することになりました。すでに存在する Q&A を参考にすればすぐにでき
るだろう、と思っていたのですが、OHCHR の職員にとって有益な部分があまりないこと
がわかりました。そこで OHCHR と Cluster Approach の関わりや、現在どのようなことを
OHCHR の職員がフィールドで行っているのかなどを調べなおすことから始めました。何
度も何度も書き直し、そして上司である 2 人のオフィサーしコメントを貰う、というプロ
セスを経てようやく今 1 つの Q&A が完成しそうです。
(ワークショップ準備)
12 月上旬に Workshop on Humanitarian Planning and Financing というワークショ
ップを私の所属するユニットが開くことになりました。OHCHR のフィールドで働くオフ
ィサー、ジュネーブ本部で働くオフィサー約 30 名ほどが参加し、人道支援における人権関
係のプロジェクト立案やファンドへのアクセスなどについて学ぶ、3 日間のワークショップ
です。このテーマは人道支援を担当しているオフィサー以外にあまり身近ではない、とい
うのが現状なのですが、OHCHR が全体としてより効果的に人道支援に関わる上でとても
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重要な事項です。このワークショップを組み立てる最初の段階からミーティングに参加す
ることができました。また様々な場面で仕事を頼まれることがあるので、とても忙しいで
すが、文書を作成したり、ノートをまとめたり、という仕事とはまた一味違う感覚の仕事
なので、毎日いろいろ学びながらこなしています。
(先住民族および少数者ユニットの職員の方とのプロジェクト)
私の研究は先住民族の権利と深く関係しているため、以前、生物多様性条約事務局
(CBD 事務局)でインターンをしていた先輩を通じて、CBD 事務局で先住民族の伝統的知
識について担当しているオフィサーと連絡を取っていました。その方に OHCHR でインタ
ーンシップをすることが決まったと伝えると、OHCHR にいる知り合いのオフィサーを紹
介してくださいました。インターンシップが始まってすぐにそのオフィサーに挨拶をしに
いきましたが、ちょうど先住民関係の会合が立て込んでいた時期だったため、ちょっとし
た挨拶程度の会話しかすることができませんでした。やはり先住民族関連の仕事をするこ
とは無理なのかな、と思っていたところ、連絡があり、2007 年に国連総会で採択された「国
連先住民族権利宣言」のハンドブックを作るプロジェクトを手伝わせてもらえることにな
りました。初めての「実践!ネットワーキング!」が実った瞬間でした。どのような内容
にするのか、まだ手探りの状態ですが、既に存在するハンドブックなどを参考に今後相談
しながら、担当する分野についてのドラフトを書く予定です。
3、
その他コマゴマ情報
(Mid-Year Review and Biennium Planning)
10 月の上旬に所属するセクションのこの半年間のレビュー(Mid-Year Review)及び次
の 2 年間で何をするを決めるミーティングが開かれました。この時期にインターンシップ
を実施できたことはとても幸運だったと思います。職員の方たちが何を問題に感じ、どの
ようにそれを解決していくのかについてや、仕事内容のプログラミングなど、身近で多く
のことを吸収することができました。
(インターンネットワーク)
OHCHR には現在約 30 人ほどのインターンが働いています。普段は Palais Wilson と私
が仕事をしている Motta に分かれているのですが、頻繁に仕事後や週末に集まったりして
います。また、在ジュネーブの国際機関のインターンのネットワークもあり、お昼をどこ
かひとつの機関のカフェテリアに集まって食べることを企画したり、仕事後に集まったり、
ということも頻繁にあります。
(ジュネーブ高等学術研究所での公開授業)
ジュネーブに人道、人権を専門とする国際機関が多く本部を構えているためか、ジュネ
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ーブ高等学術研究所(The Graduate Institute of International Studies: HEI)から派生し
した、人道法及び人権法を専門に学ぶ、Geneva Academy of International Humanitarian
Law and Human Rights:ADH という日本でいう、大学院があります。現在、ADH では
公開講義を行っており、
それぞれの講義は 2011 年に出版する予定である Oxford Handbook
of International Law in Armed Conflict にまとめられ、掲載される予定です。時間帯も仕
事後なので、毎回参加しています。欧米の教授陣の独特な講義の進め方に毎回、魅了され
ています。
(様々な図書館の活用)
こちらでは、私は主に 3 つの図書館を利用しています。まずは OHCHR の図書館。幸い
この図書館は私が仕事をする Motta にあります。人権、人道、開発など主要文献や資料が
揃っています。欧州国連本部(Palais des Nation)の図書館も頻繁に利用しています。実
際に行くこともできるのですが、国連内の図書館ネットワークを利用して、インターネッ
トで予約をすれば、次の日にはオフィスに届けてくれます。3 つ目の図書館はジュネーブ高
等学術研究所の図書館です。この図書館も幸いなことに私の事務所の近くにあります。ま
た平日は 22 時まで開館しているので、非常に助かっています。
(職員へのインタビュー大作戦)
私のセクションには FOTCD Daily Update を担当するアメリカ人のインターンと私の 2
人が所属しています。職員はアシスタントを含め 16 人が働いています。もう一人のインタ
ーンと一緒にセクション内のすべての職員にキャリアのことなどを聞くためにランチに誘
い、色々話を聞くというのを始めました。インターンをしていると今後のキャリアのこと
について考える時間がとても多くなりました。率直な意見をたくさん聞きだそうと 2 人で
はりきっています。
3 ヶ月たった感想
4、
早くもインターンシップに半分が過ぎてしまいました。自分にとって新しい分野での
インターンシップなのでとても不安でしたが、やはり毎日の小さな積み重ね(毎日、様々
な所から送られてくるメールを短時間でとりあえず何でも読んでみる、少しでも関係する
文書があれば読んでみる、ちょっとでも分からない事があれば時間があるときにリサーチ
する等)が重要だと感じています。また研究でも同じだと思いますが、何か文書を読むと
きは何を目的に読むかをしっかり頭に入れ読むということはとても大切です。できるだけ
短時間で効率よく読み、簡潔にまとめ、報告する、という流れは、インターンシップにも
研究にも共通するとても基本的な作業です。
大学院での演習や海外実習での経験が活かされている、と感じることが多々あります。
海外実習の内容は必ずしも私が研究している内容ではなかったのですが、一からそのテー
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マについて調べ、様々な資料を事前に読み、実際の実習では毎日集中してメモをとってい
ました。また大学院での演習では他の学生が研究しているテーマについての論文を読んだ
り、また修士論文の中間報告を聞いたりすることがあるのですが、これについても、たと
え自分が研究する分野ではなくてもとりあえず読んでみて、聞いてみて、どう考えるのか、
問題点は何なのか、について考えなければなりません。人権といってもとても多くの分野
があります。自分が今まで触れたことのない内容に関するミーティングに行って、その内
容を上司やその他のオフィサーに報告しなければならない、ということが多くあります。
これは実際に職員として働くことになっても多くあることだと思います。このようなこと
に対応するための能力を養うチャンスは身近なところにあるのだと感じました。
段々慣れてきたとはいえ、より上達させる余地はたくさんあります。自分の仕事の精
度を上げ、さらに多くの業務に関わっていきたいと思います。「ぼやっ」としているとすぐ
に過ぎてしまうので、与えていただいたチャンスを最大限に使えるよう、一日一日を大切
に、過ごしていきたいと思います。
以上
上田はるか
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