手工芸品生産と女性の自立

バングラデシュ
手工芸品生産と女性の自立
環境・国際研究誌 2001 年 4 月号
遠藤絵理子
実際にバングラデシュの生産者と出会い、話しをした事によって手工芸品生産がもた
らす効果の新たな発見がありました。女性の自立は日本の女性にも共通する課題で
す。女性が仕事をすることで得られるものは、数字や物では計れない精神的な充実感
と成長があると考えています。
★手工芸品生産
指導 し 、日 本で 販 売す ると い う方 法を と って い
まし た が、 現在 は 現地 の生 産 団体 を介 し て輸 入
私 が 「シ ャプ ラ ニー ル= 市 民に よる 海 外協 力
の会 」で 働 き始 めて 丸 2 年経 ち まし た。その 間 、
して い ます 。生 産者 は そ れら 生 産団 体に 納 品し 、
バン グ ラデ シュ と ネパ ール の 女性 が制 作 した 手
賃金 を 受け 取る と いう 仕組 み です 。こ の 方法 を
工芸 品 の輸 入販 売 を担 当し て きて おり 、 担当 の
とる こ とに よっ て 、生 産者 は 間接 的に よ り多 く
一人 と して バン グ ラデ シュ と ネパ ール に 出張 し、
の販 路 や安 定し た 仕事 を得 る こと にな り ます 。
生産 者 の女 性に 会 う機 会に 恵 まれ まし た 。今 回
また 、 生産 者の 一 部は 生産 団 体の 生活 向 上プ ロ
は特 に バン グラ デ シュ の生 産 者と の出 会 いを 通
グラ ム のグ ルー プ メン バー で あり 、手 工 芸品 と
して 考 えた こと を この 場を お かり して 個 人の 意
賃金 の やり 取り だ けで はな く 、識 字教 育 や保 健
見として述べさせていただけたらと思います。
衛生 プ ログ ラム に も参 加し て いま す。 こ のよ う
バ ン グラ デシ ュ やネ パー ル では 教育 を 受け て
に現 地 の生 産団 体 を介 すこ と によ って 「
、 収入 向
いな い 女性 が仕 事 を得 るこ と はま だま だ 困難 な
上」 だ けで はな く 「生 活向 上 」に も貢 献 する こ
状況 に あり ます 。 また 男性 も 同様 に、 家 族を 養
とになります。
って い くた めに 必 要な 安定 し た収 入を 得 るこ と
★生産者
が難 し く、 経済 的 に貧 しく 不 安定 な状 況 で生 活
をし て いる 家族 が 多く あり ま す。 その よ うな 状
こ こ で、1 人の 生産 者の 例 を紹 介し ま す。 フ
況の 中 、シ ャプ ラ ニー ルは 約 25 年 前に バン グ
ァテ マ ・カ ジさ ん とい う女 性 で、 彼女 は バン グ
ラデ シ ュの 農村 に 住む 貧し い 女性 達の 「 収入 向
ラデ シ ュの YWCA と いう 団 体で 17 年 間仕 事
上」 を 目的 とし て 彼女 達の 作 った 手工 芸 品を 日
をしてきました。一週間に一度、自宅から
本で 販 売し 始め ま した 。そ の 後、 シャ プ ラニ ー
YWCA の 事 務 所 が あ る ダ ッ カ ま で 約 2 時 間 ほ
ルが ネ パー ルで 農 村開 発事 業 を始 めた 際 、同 国
どか け てバ スを 乗 り継 ぎ、 で きあ がっ た 商品 を
から も 手工 芸品 の 輸入 を行 な うよ うに な りま し
納め に 来て いま す 。仕 事は と ても 面白 い と思 っ
た。 現 在シ ャプ ラ ニー ル手 工 芸品 部門 の 主な 目
てやっているという事です。収入は月に平均
的は 当 初か ら基 本 的に は変 わ らず 、貧 し い女 性
3,000 タカ( 1 タ カ = 約 2.5 円 )程で すが 、村の
の「 収入 向 上」です 。輸 入販 売 を開 始し た 時は 、
公務 員 の初 任給 が 月に 約 3,000 タ カ だと いう 事
直接 シ ャプ ラニ ー ルが 女性 達 に手 工芸 品 生産 を
を考 え ると 、決 し て低 い給 料 では あり ま せん 。
1
「私 は 17 年 前か らこ の 仕事 を して きま し た 。最
くれました。
初は 近 所の 人 が YWCA から 持 って 帰っ た 仕 事
を手伝っていたのですが、7 年前からは私も
★意識の変化
YWCA と直 接 仕事 を し てい ま す。夫は 長い 間 綿
シ ャ プラ ニー ル の事 務局 ス タッ フと な った 当
工場 で 働い てい ま した が、 数 年前 にそ の 工場 が
初、私は 手 工芸 品 の販 売は 生 産者 の「 収 入向 上」
閉鎖 さ れ、 それ 以 来失 業し て いま す。 も し、 私
に貢 献 する もの だ と考 えて い まし た。 も ちろ ん
が何 の 仕事 もし て いな かっ た ら本 当に 大 変だ っ
それ は 事実 です が 、実 際に バ ング ラデ シ ュの 生
たと 思 いま す。でも 、私 が仕 事 をし てい た ので 、
産者 と 出会 い、 話 しを した 事 によ って 手 工芸 品
共倒 れ にな らず に すん でい ま す。YWCA で は 、
生産 が もた らす 効 果の 新た な 発見 があ り まし た。
私達 に 貯金 する よ うに 勧め て くれ ます の で、 数
それは、彼女達の 「意識の変化」 です。
年前 か ら貯 金を し てい ます 。 この お金 は 、仕 事
そ も そも バン グ ラデ シュ で はイ スラ ム 教や 文
が出 来 なく なっ た とき に使 お うと 思っ て いま す。
化的 慣 習か ら、 女 性が 外に 出 るこ とが 少 ない と
子ど も がい ない の で、 自分 の ため にし っ かり 働
いう 風 潮が あり ま す。 ここ 数 年は 縫製 産 業が 盛
かな い とね 。日 本 の人 への メ ッセ ージ ? 私達 に
んに な り、 女性 の 雇用 を生 み 出し てい ま すが 、
注文 を くだ さい 。 仕事 があ れ ば、 もっ と 収入 を
その 機 会も 都市 に 集中 する も のに とど ま って い
上げ る 事が でき ま す。」とフ ァ テマ さん は 語っ て
ます 。2000 年世 界子 供 白書 に よる と 1995 年 の
2
バ ン グ ラ デ シ ュ 成 人 識 字 率 は 男 性 が 49% で あ
品を 作 る女 性の 姿 は、 販売 す る側 の私 に 次の よ
るの に 対し 、女 性は 26%に と どま って い ます 。
うに 言 って いる よ うで した 「
。 私た ち はこ うや っ
この 数 字を みて も 、ま だま だ 女性 が弱 い 立場 に
て注 文 に応 じて 確 実に 仕事 を して いま す 。あ な
置か れ てい るこ と が読 み取 れ ます 。教 育 を受 け
たは 日 本で 確実 に 販売 して く ださ い」 と 。一 方
てい な い女 性の 場 合、 特に 農 村部 では 仕 事を 得
的に 物 や知 識を 与 える トッ プ ダウ ンの 援 助で は
るこ と が困 難で あ り、 家計 を 夫の 収入 に 頼ら ざ
なく 、 また 、か わ いそ うだ か らと 同情 し て手 を
るを 得 ませ ん。 そ の夫 の収 入 さえ 、不 安 定で 少
差し 伸 べる チャ リ ティ ー的 な アプ ロー チ でも な
ない 額 だと いう 事 が多 いの で す。 とこ ろ が、 手
く、 生 産し た商 品 に対 し、 そ の完 成度 や 手間 、
工芸 品 の仕 事に よ って 収入 を 得ら れる よ うに な
量等 に よっ て適 正 な賃 金を 支 払う 関係 が そこ に
ると 、 女性 の状 況 が変 化し て いき ます 。 例え ば
はあ り ます 。間 に 現地 生産 団 体を 介し て いま す
手工 芸 品の 生産 に よる 収入 が 加わ るこ と によ っ
が、生産 者 と私 は生 産 と 販売 と いう 仕事 を 通じ 、
て、 子 ども が学 校 に通 える よ うに なっ た り、 家
パー ト ナー とし て 存在 しう る とい うこ と を実 感
の修 理 をし たり と いっ たこ と に計 画的 に お金 を
しました。
も ち ろん 、パ ート ナ ー とし て 存在 する た めに 、
使う こ とが でき る よう にな り ます 。ま た 、夫 が
失業 し た際 も女 性 が仕 事を し てい る事 で 共倒 れ
双方 と もま だま だ 問題 や課 題 があ るこ と は否 め
にな る 事を 避け る 事が でき 、 また その 使 い道 に
ない 事 実で す。 お 互い の意 識 を高 めあ う こと が
つい て 女性 が意 見 を言 える よ うに なる と いっ た
必要 で すし 、現 地の 生 産 団体 を 介し てい る 以上 、
変化 で す。 仕事 を 始め る前 は 、家 族に 意 見を 聞
それ ら の団 体の 信 頼性 も常 に 問う べき ポ イン ト
いて も らう 事は な かな か無 か った とい う 場合 も、
です 。 信頼 性を 追 求す る我 々 の関 わり 方 も重 要
収入 を 得る よう に なっ て、 自 分の 意見 に 家族 が
です 。 また 、手 工 芸品 の生 産 とい う仕 事 だけ で
耳を か して くれ る よう にな っ たと 言う 女 性達 は
はい ず れ飽 和状 態 に達 して し まう とい う 事。 ま
多く い ます 。こ の よう な変 化 は自 分の 生 活に 自
た、 収 入が 上が る 事だ けで 生 活が 豊か に なる と
分の 考 えを 反映 さ せ、 自分 の 人生 に主 体 的に 関
は限 ら ない とい う 点で す。 た だ、 個々 の レベ ル
わっ て いく とい う 実感 を伴 っ た変 化だ と 考え て
から 考 える と、 女 性の 自立 や 意識 の変 化 とい う
います。
点で 、 双方 にと っ て効 果が あ る試 みだ と いう こ
とを改めてここに述べたいと思います。
★パートナー
女 性 の自 立は 日 本の 女性 に も共 通す る 課題 で
生 産 者の 女性 た ちが 仕事 を して いる 姿 は、 真
す。 女 性が 仕事 を する こと で 得ら れる も のは 、
剣そ の もの です 。 特に 出来 高 払い の場 合 は、 少
数字 や 物で は計 れ ない 精神 的 な充 実感 と 成長 が
ない 時 間で 多く の 商品 を作 る 努力 をす る ので な
ある と 考え てい ま す。 バン グ ラデ シュ の 女性 が
おさ ら です 。た だ 、そ こで は 、単 にお 金 を得 る
働く 姿 を見 る事 で、
「 仕 事」が人 間 の意 識 に与 え
ため に 働く だけ で はな く、 働 くこ とに よ って 生
る影 響 を改 めて 発 見し 、日 本 で働 く自 分 自身 へ
じる 責 任を 感じ 、 同時 に充 実 感を 得て い ると い
の課題と励ましを得ることができました。
う印 象 が残 りま し た。 仕事 と して 真剣 に 手工 芸
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