close

Enter

Log in using OpenID

審議会における裁定の概要

embedDownload
審議会における裁定の概要
<平成 24 年度版>
本冊子には、審査委員会審議会が審議を行い、平成 24 年度(平
成 24 年 4 月~平成 25 年 3 月)に裁定手続きが終了した事案の
概要を掲載しております。
日本共済協会
共済相談所
目
Ⅰ
契約取消もしくは契約無効確認請求関係
事案Ⅰ-1
Ⅱ
………………………………
共済金請求関係 ……………………………………………………………
その他
2
共済契約関係者変更手続きの有効性
事案Ⅱ-1
事案Ⅱ-2
事案Ⅱ-3
事案Ⅱ-4
事案Ⅱ-5
事案Ⅱ-6
事案Ⅱ-7
事案Ⅱ-8
事案Ⅱ-9
事案Ⅱ-10
事案Ⅱ-11
事案Ⅱ-12
事案Ⅱ-13
事案Ⅱ-14
Ⅲ
次
4
人身傷害共済金請求
後遺障害共済金請求
入院・通院共済金請求
後遺障害共済金請求
後遺障害共済金請求
火災共済金請求
年金共済金請求
入院・通院共済金請求
入院・通院共済金請求
後遺障害共済金請求
入院・通院共済金請求
自然災害共済金請求
死亡共済金請求
自然災害共済金請求
………………………………………………………………………
39
(該当事案なし)
Ⅳ
申立不受理
…………………………………………………………………
(該当事案なし)
1
39
Ⅰ
契約取消もしくは契約無効確認請求関係
【事案Ⅰ-1】共済契約関係者変更手続きの有効性
・ 平成 24 年 12 月 28 日
裁定終了
<事案の概要>
申立人は元妻名義の終身共済の契約者を申立人に変更する手続きをして、受
理されて完了していたが、その後、被共済者である元妻の同意に疑義が生じた
ことから共済団体は必要な調査を行い、契約者変更は被共済者である元妻の同
意を得ていたとは考えられず契約者変更の手続きは無効と判断し、解約には応
じられないとしたことを不服として申立てがあったもの。
<申立人の主張>
共済団体は申立人を契約者として認め、解約に応じること、との判断を求め
る。
(1)平成 24 年 2 月、申立人は共済団体に終身共済の解約を電話で申し出
たが、被共済者から契約者変更に対しての異議があるとのことで受け付
けを拒否された。
(2)共済団体の委託した外部機関による調査の結果として、共済団体は長
期共済関係者変更通知書の共済契約者または年金受取人氏名欄および
被共済者の同意欄に元妻の承諾を得ず申立人が記入したことを認めた
ことから長期共済関係者変更は無効であるとのことであるが、申立人は
これを認めていない。無効の理由は、誤った事実により判断がなされた
ものであり、共済団体の判断の正否について判断いただきたい。
<共済団体の主張>
申立人の請求を棄却する、との判断を求める。
(1)平成 24 年 1 月に共済掛金引落口座を元妻の父から元妻に変更したい
旨の相談があったが、平成 22 年 9 月に契約者は申立人へ変更されてお
り、共済契約者からの申込みのみ可能であることから受付できない旨の
説明をした。その後、元妻より共済契約者変更の手続きをした覚えは無
い旨の申し立てがあり被共済者の同意の有無に疑義が生じた。
(2)電話にて申立人に聴取したところ、被共済者から変更手続きの了承を
得ており、変更通知書は別人に記入してもらったと述べている。しかし
元妻の被共済者に面談確認を行なった際には、関係者変更通知に記入押
印はしておらず、筆跡は自らの字ではないこと、被共済者としての同意
2
はしていないこと、現在通院中であることから契約を継続したいこと、
解約の意思はないこと、申立人とは平成 22 年 4 月より別居中であり契
約者変更に関する話はしていないことを主張していた。このようなこと
から被共済者の同意についての疑義が払拭できず、解約申し込みにかか
る事務手続きは留保した。
(3)共済団体が委託した外部機関の調査報告書では、申立人は関係者変更
通知書の共済契約者、被共済者のサインおよび押印をした事実を認めて
おり、被共済者は自署、押印はしておらず被共済者として契約者を申立
人とする同意はしていない。また、申立人が被共済者から契約者変更に
かかる手続き依頼(同意)を受けたと主張するメールは、当該契約の特定
に至らず、かつ、メール送信者が被共済者という明確な証拠とは認めら
れないとしている。
よって、被共済者が同意を認めていないこと、関係者変更通知書の
記載が被共済者本人のものではないこと、関係者変更の通知時期が別居
中であり契約者変更をすることが不自然であることから平成 22 年 9 月
の長期共済関係者変更通知は、被共済者の同意は無効であると考えるの
が妥当であり、共済契約者は被共済者であると判断する。
<裁定の概要>
審議会では、申立人および共済団体から提出された書面に基づき審議した結
果、下記理由により、申立人の請求は認められないとの裁定をし、裁定手続き
を終了した。
(1)本件終身共済約款第23条は(1)において、共済契約者の変更について
「共済契約者は、被共済者の同意および組合の承諾を得て、共済契約上
の一切の権利義務を他人に承継させることができます。」と定めており、
契約者の変更とは契約上の一切の権利義務を他人に承継させる効果を
もつとされることから、共済契約者の変更の法的性質は、契約上の地位
の移転であると解される。
民法には、契約上の地位の移転についての直接的規定はないが、契約
上の地位の譲渡人(被共済者)、原契約当事者の相手方(被申立人)、契約
上の地位の譲受人(申立人)の三者間の合意によって成立するのが原則
であると解されている。
本件約款では、上記の通りの規程とはなっていないが、「共済契約
者は・・・一切の権利義務を他人に承継させることができる」 との文
言から、共済契約上の地位が申立人に移転し契約者たる地位を取得する
には、元妻の被共済者に本件契約上の地位を申立人に移転する意思が存
在していたことが、契約者変更が有効になされたか否かを左右する。
3
共済団体は、被共済者に面接した上でこのような意思がなかったと
の陳述を得たと主張し、また、第三者の外部機関に調査を依頼し、同様
の結論を得たと主張する。それらは被共済者本人が自らその意思がなか
ったことを当審議会に対して直接に証明するものではないが、とくに、
申立人も同意して行われたとされる外部機関の「調査報告書」は、被共
済者が変更手続に同意していたものではないと評価できる内容である。
(2)申立人は、被共済者が契約者変更に同意していた証拠として、被共済
者から申立人宛の携帯電話のメールの存在を主張するが、「保険手続き
お願いします。」とあるのみでは、何の保険か、何の手続きかも明らか
ではなく、契約者変更に同意していた証拠とは認めがたい。
申立人は、自己が契約者となった旨の証拠として、平成23年分の課
税所得控除共済掛金払込証明書の契約者欄が申立人となっていること
をあげるが、平成22年9月に契約者変更手続がなされており、その後は、
システム上自動的に申立人に送付されるようになっていたのであるか
ら証拠とはなりえない。
(3)申立人は、「申立人は当初より、被共済者のサインについては、被共
済者本人または、申立人による代筆であると主張してきた」としている
が、「代筆」の意味を以下のとおり考える。
① 共済契約者の変更は、譲渡人は契約者たる地位を失うという法律効
果をもたらす行為であり、有効であるためには行為者本人にその意思
が存在し、本人によって当該の行為がなされたことが原則である。例
外は、代理人行為であるが、有効であるためには代理権が存在し、代
理人によってなされたことの表示(顕名)が必要である。さらなる例外
として署名の代理があるが、有効であるためには代理権のある者によ
ってなされたという客観的事情がなければならず、本人が何らかの事
情によって署名できない等である。
② 被共済者は、契約者変更書類に署名押印する際に、このような事情
が存在したとは認められず、申立人が「代筆」をしたかもしれないと
認めていることは、被共済者の変更の意思表示はなかったものと推認
される。
4
Ⅱ
共済金請求関係
【事案Ⅱ-1】人身傷害共済金請求
・ 平成 24 年 7 月 17 日
和解解決
<事案の概要>
追突事故による頚部挫傷、腰背部挫傷等により自動車共済搭乗者特約(倍額)
の部位・症状別定額支払表に照らし「背部、腰部またはでん部」の「神経の損
傷または断裂」に基づく共済金請求したところ、表の「その他」に該当すると
の理由により、請求した共済金が支払われないことを不服として申立てがあっ
たもの。
<申立人の主張>
被申立人は、申立人に対し、部位・症状別定額支払表「背部、腰部またはで
ん部」の「神経の損傷または断裂」に該当する共済金 182 万円を支払えとの裁
定を求める。
(1)平成 22 年 7 月、追突される交通事故に遭う。通院治療を受け、頚部
挫傷、腰背部挫傷、外傷性椎間板障害、外傷性腰椎神経根障害と診断さ
れた。
(2)担当医の判断を基に、自動車共済搭乗者特約(倍額)の部位・症状別定
額支払表に照らし「背部、腰部またはでん部」の「神経の損傷または断
裂」に該当するものと考え、182 万円(1 事故共済金1万円 および部位・
症状別定額支払共済金 90 万円の倍額)を請求したところ、被申立人から、
受傷の部位は「背部、腰部またはでん部」、その症状を「その他」とし
て 22 万円(1 事故共済金 1 万円および部位・症状別定額支払共済金 10
万円の倍額)の支払額との回答であったが、明確な基準および医学的根
拠は示されていない。
(3)担当医は、「神経の損傷は必ずしもMRIには写らず神経根ブロック
での一時的な改善によるものが他覚的所見に当たる」、また「外傷性腰
椎神経根障害が神経の損傷に当たる」と判断しており、被申立人の回答
には不服を申し立てている。
5
<共済団体の主張>
本件申し立てを棄却する、との判断を求める。
(1) 申立人より提出された平成 23 年 5 月作成のN整形外科担当医の「治療
経過に関する意見照会」において、「神経の損傷を含めた広い意味での
神経の異常を総称する傷病名であると考えております。」との記載があ
ったので、この内容について当該担当医に面談したところ「神経の損傷
を示す他覚的所見はない。自覚症状として腰痛、両下肢の痛み、しびれ
を訴えている。」「腰部椎間板ヘルニアの傷病がある。」との回答であっ
た。
(2) 被申立人が取得した平成 23 年 3 月作成の前記担当医の「治療経過に関
する意見照会」では、「他覚的な所見の記載は一切ありません。神経根
ブロックで症状のある程度が一時的に改善している」との記載があるが、
神経の圧迫があったものと判断している。
(3) 前記担当医の診断書の傷病名には「頚部挫傷」、「腰部挫傷」、「外傷性
腰椎間板障害」、
「外傷性腰椎神経根障害」と記載されているが、神経の
損傷を示す他覚的所見がなく、特に知覚異常などの神経学的異常所見が
ない。また、平成 22 年 10 月作成の診断書には、「尚、これらの症状は
基本的には前回(平成 21 年 5 月交通事故)受傷後より継続している部分
が多いと考えられます。」との記載があり、既存障害の影響が強く考え
られる。
(4) 被申立人が取得した平成 23 年 3 月作成のS整形外科担当医の「治療経
過に関する意見照会」には、「神経の損傷または断裂は考えにくいと思
います。」記載されている。
(5) よって、今回の症状は、「部位・症状別定額支払表」の「神経の損傷ま
たは断裂」に該当せず、「その他」に該当するものと判断する。
<裁定の概要>
審議会では、申立人および共済団体から提出された書面に基づき審議を進め、
当事者双方に和解案を提示したところ、同意が得られたので、和解契約書の締
結をもって円満に解決した。
6
【事案Ⅱ-2】後遺障害共済金請求
・ 平成 24 年 5 月 1 日
裁定終了
<事案の概要>
統合失調症による精神障害について、終身常時介護を要するものとはいえな
いとの理由により、後遺障害第 1 級 9 号の後遺障害共済金が支払われないこと
を不服として申立てがあったもの。
<申立人の主張>
被申立人は、申立人に対し、養老生命共済の後遺障害共済金 1,500 万円を支
払えとの裁定を求める。
(1)主治医が、被共済者の病状を 1 年間看察した上で、同人の幻覚・妄想
状態、就労困難な状況は、いずれも回復可能性がないと診断している。
また幻覚・妄想状態等の回復可能性のないことは、すでに前主治医の診
断書においても認められており、この状態は今後も継続するとみなされ
るべきある。それ故、被共済者の症状は、約款「適用上の注意事項」に
いう「疾病が治癒する前であって」「後遺障害の状態とみなされる」の
ではなく、治癒した状態(安定した状態)であって、後遺障害の状態そ
のものであるから、本件の場合には、「適用上の注意事項」の読み替え
規定の適用はなく、第 1 級 9 号は、別表に記載された文言のまま適用さ
れるべきである。診断書等で幻覚妄想状態、思考形式の障害が記され、
日常生活における身の回りのことも多くの援助が必要である。労務でき
ない状態も 5 年経過する。
(2)主治医の診断書によれば、そのいずれにおいても、幻覚・妄想状態、
思考形式の障害が認められ、日常生活能力については、多くの援助が必
要であるとされており、この状態は、7 年間継続している上、労務は、
成年後見開始決定を受ける約 1 年前から全くできない状態にある。現主
治医作成の診断書によっても、被共済者は、幻覚・妄想状態であり、家
族の言うことを聞かず、現在就労は困難で、いずれも回復可能性は無と
なっている。発症から共済金請求日まで 11 年 11 カ月かかっており、被
共済者の症状は、後遺障害第 1 級 9 号に該当する。最低限度の身の回り
のことができること、自分で飲む炭酸飲料水などの買いもの、通院が可
能なことは、第 1 級 9 号にいう「労働能力が多少自分自身の用事を処理
することができる程度」に含まれ、同人の症状を第 1 級 9 号に該当する
と認めることを妨げるものではない。
7
(3)仮に、被共済者の症状が、
「治癒する前」であって、
「後遺障害の状態
と見なされ」、第 1 級 9 号後段の「労働能力が・・・」以下が、
「終身常
時介護を要するもの」と読み替えられるとしても、被共済者の症状は、
読み替え後の第 1 級 9 号に該当する。被共済者は、国民年金障害基礎年
金障害等級 1 級 10 号の認定を受けているが、国民年金「障害認定基準」
によれば、精神の障害のうち統合失調症についての 1 級の認定基準とし
ては、「高度の残遺状態又は高度の病状があるため高度の人格変化、思
考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験が著明なため、常時の介護が必
要なもの」が挙げられている。被共済者は、高度の残遺状態のため高度
の情意の荒廃のような精神症状にあり、常時の介護が必要なものである
から、上記読み替え後の第 1 級 9 号に該当する。
<共済団体の主張>
本件申し立てを棄却する、との判断を求める。
(1)統合失調症は、症状の急性憎悪、寛解、静穏化、再発という経過を繰
り返す疾患であるところから、医学上「治癒」の状態は想定されず、本
件被共済者は、治癒の状態には無い。そのことは、主治医の最新の診断
書の転帰欄に「治癒」の年月日の記載のないことからも推認される。し
かしながら、被申立人の共済においては、疾病が治癒する前であっても、
その症状が固定した状態であれば「後遺障害の状態と見なしうる」もの
としており、統合失調症についても、長期間にわたる病状の進行過程に
おいて、残遺状態へと向かいほぼ症状が固定したと認められる場合には、
「後遺障害の状態」と見なすことがありうる。ただ、その場合は、養老
生命共済約款別表「後遺障害等級表」の「適用上の注意事項」第 1 項に
より、同表第 1 級 9 号の後段部分は、「終身常時介護を要するもの」と
読み替えて適用すべきことになる。これは、治癒前に後遺障害の状態と
認定する場合には、治癒の場合に比して、第 1 級 9 号該当の認定を、よ
り重篤な状態に限定する趣旨である。したがって、本件の場合には、被
共済者の症状が読み替え後の第 1 級 9 号に当たるか否かが問題となるに
とどまる。
(2)本件被共済者の症状が、「適用上の注意事項」第 1 号による読み替え
後の「終身常時介護を要するもの」に該当するか否かを考えると、一般
に「終身常時介護を要するもの」とは、重度の精神障害のために生命維
持に必要な身の回りの動作につき、常に他人の介護を要するものを言い、
また高度の痴呆や情意の荒廃のような精神症状のため、常時看視を必要
とするものが、これに該当する。
(3)ところが、被共済者は、主治医の診断書等によれば、日常生活の介助
8
については「介助不要」とされ、日常生活動作については、食事・更衣
などは指示があればできる状態にあって、日常生活能力を喪失したとは
言えない。他人や家族との会話はどうにか通じ、相手の話が理解できな
い状態ではなく、また直ぐ怒る、大声を出すなどの行動も常時ではなく、
対人関係や協調性が失われた状態とは言えない。また申立人によれば、
毎週 2 回の通院、日に 2 回程度の外出、金銭の利用・計算を伴う買い物
などが可能とのことである。これらの事情を総合すると、被共済者は、
生命維持に必要な身の回りの動作につき、常に他人の介護を要する状態
であるとは言えず、また統合失調症により人格荒廃で常に看視を必要と
する状態でもないから、後遺障害第 1 級 9 号の「終身常時介護を要する
もの」に該当するとはいえない。
(4)なお、申立人は、被共済者が国民年金障害基礎年金障害等級 1 級 10
号に認定されたことの故をもって、その症状は、本件養老生命共済の後
遺障害第 1 級 9 号にも該当すると認定すべきであると主張する。しかし
ながら、国民年金障害基礎年金の障害等級認定は、被申立人共済の後遺
障害等級認定と連動するものではなく、それぞれの制度の趣旨にしたが
い、それぞれに認定がなされるべきものである。国民年金障害基礎年金
につきなされた障害等級の認定が、他の制度・約款に基づきなされる認
定に効力を及ぼすものではない。
<裁定の概要>
審議会では、申立人および共済団体から提出された書面に基づき審議し、次
の理由により、申立人の請求は認められないとの裁定をし、裁定手続きを終了
した。
(1)まず、本件が、約款の別表「後遺障害等級表」に付記された「適用上
の注意事項」第 1 項の読み替え規定の定める場合に該当し、読み替えが
なされるべきか否かにつき判断する。
養老生命共済約款第 2 条 3 号によれば、本約款において「後遺障害の
状態」とは、「疾病または傷害が治癒した後に残存する精神的または身
体的なき損状態であって、将来回復の見込みのないもの」と定義されて
いる。統合失調症については、医学的見地からみて、その症状にはさま
ざまな類型があるが、総じて、発症から「急性期―沈静化期―安定期」
を1つの周期として、この周期の波を 2~3 回繰り返し、さらに 5~10
年程度経過すると静穏期に達するといわれる。その後の予後は、とくに
昨今の医学・医療技術の進歩から、従来考えられていたよりは、症状の
改善する可能性が大きく、寛解ないし治癒に向かう場合もあるが、残遺
状態にとどまり、不安定な症状が継続する場合も多く、また寛解ないし
9
治癒と見られる状態に至っても、なお晩年に突然再発する可能性が残る
といわれている。そうすると、統合失調症については、一般の疾病又は
傷害についてと同じ意味で、「治癒した後に残存する精神的または身体
的なき損状態」というものは想定しがたく、それ故、
「後遺障害の状態」
そのものはなく、「後遺障害の状態と見なす」場合がありうるにとどま
ると言わざるをえない。
したがって、統合失調症については、養老生命共済約款別表「後遺障
害等級表」第 1 級 9 号は、同表「適用上の注意事項」第 1 項により、
「精
神に著しい障害を残し、終身常時介護を要するもの」と読み替えて適用
すべきことになる。
(2)そこで、次に、本件被共済者の症状が、「後遺障害等級表」第 1 級 9
号読み替え後の「精神に著しい障害を残し、終身常時介護を要するもの」
に当たるか否かであるが、以下の理由により該当しないものと判断する。
① 一般に、約款は、多数の取引の定型的内容を定めるものとして設定
されるものであるから、約款の規定の解釈に当たっては、すべての取
引当事者の公平のため、一部の当事者の個別的事情を顧慮することな
く客観的になされなければならないとともに、またすべての当事者に
つき統一的になされねばならない。そうすると、「精神に著しい障害
を残し、終身常時介護を要するもの」とは、これを字義に即して客観
的に解釈するならば、重度の精神障害のために、日常生活上必要な食
物の摂取、排せつ、衣類の着脱、起居、歩行などの身の回りの動作に
つき、常に他人の介護を要するものをいうと解される。こう解するこ
との妥当性は、養老生命共済約款上の第 1 級後遺障害共済金と趣旨を
同じくする生命保険約款上の高度障害保険金の支払要件(高度障害状
態)の1つである「精神に著しい障害を残し、終身常に介護を要する
もの」のうち、「常に介護を要するもの」の意義について、その「備
考」において、「食物の摂取、排便・排尿・その後始末、衣服着脱、
起居、歩行、入浴のいずれもが自分ではできず、常に他人の介護を要
する状態をいう。」との解釈基準が定められており、判例上もそれが
そのまま肯認されていること(東京高判平成 19 年 5 月 30 日判例タイ
ムズ 1254 号 287 頁、和歌山地判平成 15 年 8 月 5 日判例タイムズ 1209
号 201 頁)に照らしても、首肯されよう(なお、上記「備考」の法律
的意義については、水戸地判平成 15 年 10 月 29 日判例タイムズ 1163
号 287 頁・判例時報 1849 号 106 頁参照)。
被共済者は、主治医の診断書によれば、幻覚・妄想状態にあり、家
族のいうことをきかず、治療薬を服用して落ち着いてはいるが、病状
10
は悪く回復の可能性はないと診断されている。しかしながら、他方で
は、被申立人からの医療照会に対する、同じ医師の 2 の回答書によれ
ば、日常生活上の介助不要とされ、また意思の疎通はとれないが、
「最
低限の身の回りの事はできるであろう。」と判断されており、そのこ
とは、日常生活動作についての質問表の回答欄からも推認できる。ま
た申立人も、その陳述書において、被共済者は、毎週 2 回病院に通院
し、外出は日に 2 回程度、飲食物などを買いに出かけ、自室を出ると
きは必ず施錠し、食事も自室で独力で摂り、さらに障害基礎年金のう
ち、障害の程度の認定変更前の金額については、被共済者がカードで
管理していることを認めている。
これらの事実からすれば、被共済者は、日常生活上必要な動作につき
常に他人の介護を要する状態にあると認めることはできず、したがっ
て、本件「後遺障害等級表」第 1 級 9 号にいう「終身常時介護を要す
るもの」には当たらないと判断せざるを得ない。
② また申立人は、被共済者が国民年金障害基礎年金障害等級 1 級 10
号に認定され、同年金の行政上の「障害認定基準」によれば、統合失
調症に係る 1 級認定基準として、「高度の残遺状態又は高度の病状が
あるため高度の人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験
が著明なため、常時の介護が必要なもの」が例示されており、これは、
「常時の介護が必要なもの」という点で、本件「後遺障害等級表」第
1 級 9 号の定めと変わりがないから、主治医の診断書で被共済者の症
状は回復可能性がないと診断されていることを読み合わせれば、本件
養老生命共済上も「終身常時介護を要するもの」に当たると認めるべ
きであると主張する。
確かに、国民年金障害基礎年金等級認定上の上記「常時の介護が必
要なもの」と本件共済約款上の後遺障害等級第 1 級 9 号の「常時介護
を要するもの」とは、その文言としては、ほぼ変わりがないといえる。
しかし、国民年金は、日本国憲法 25 条 2 項(国民の生存権保障のた
めの国の社会福祉・社会保障等の向上・増進義務)の理念に基づき、
国が、健全な国民生活の維持・向上に寄与することを目的として行う
制度(国民年金法第 1 条)であるのに対し、共済は、民間の団体が、
任意に加入する多数の契約者の拠出する掛金を共同の資金として管
理・運用し、契約者の一部の者に共済事故による損失が生じた場合に、
その共同の資金から金銭を支払って、その補填ないし補償をするもの
であるから、国民年金とは制度の趣旨を異にする。従って、金銭支払
いの要件を定める文言が同一ないし類似であっても、その意味は、そ
11
れぞれ制度の趣旨、目的に従って解釈されねばならない。
【事案Ⅱ-3】入院・通院共済金請求
・ 平成 24 年 4 月 6 日
裁定終了
<事案の概要>
規約の定める「入院」に該当しないことを理由に、病気入院共済金 51 万円
が支払われないことを不服として申立てがあったもの。
<申立人の主張>
被申立人は、共済金 51 万円を申立人に支払えと、との判断を求める。
(1)51 日間の入院期間中、共済金支払い対象日数が 13 日間しか認められ
ないとの被申立人の決定に対して不服である。
<共済団体の主張>
本件申立を棄却するとの判断を求める。
(1)入院共済金の入院に該当するためには、つぎの3要件をすべて備える
ことが必要である。
① 医師による治療の必要性
② 自宅、通院による治療の困難性
③ 常に医師の管理下において治療に専念すること
(2)一般にヘモグロビンA1cの値が 8.0%以上、空腹時血糖 160mg/
dl・食後 2 時間後 220mg/dl以上になると一定の入院が必要とさ
れているが、申立人の入院直前と入院開始時点におけるヘモグロビンA
1c、血糖の値は高いとはいえない。
(3)申立人は糖尿病に罹患しているため、医師の治療の必要性自体は否定
できないが、今回入院時の症状は重篤ではなく、血糖コントロールのた
めの入院であったと思われる。入院中の治療においても病院食の欠食が
見受けられ、食事療法に専念していないことが伺え、入院中一度も低血
糖状態になっていない。
(4)内服療法による血糖コントロールを主とした治療内容であるから、外
来治療が可能と考えられ、医師が血糖コントロールのために、入院を認
めたことを最大限考慮しても、最初の外泊が認められた時点で入院の必
要はなくなったといわざるを得ない。
12
<裁定の概要>
審議会では、申立人および共済団体から提出された書面に基づき審議し、次
の理由により、申立人の請求は認められないとの裁定をし、裁定手続きを終了
した。
(1)共済規約において支払いの対象となる入院に該当するか否かは、単に
入院した事実があるか否かだけではなく、医師による治療が必要であり、
かつ、自宅での治療が困難なため病院又は診療所に入り、常に医師の管
理下で治療に専念する必要があったかを判断する必要がある。
(2)申立人は、糖尿病歴が明らかであるものの、その値は治療中断状態に
おける値であるので、即入院の適応があるとはいえない。通常は外来で
の治療、および経過観察で十分である。
(3)本件の内服薬を検討すると、使われた薬剤は、導入にあたって入院を
必要とするレベルのものではなかった。
(4)末梢神経障害で入院適応となるのは、ひとつは、あまりの高血糖状態
のために(HbA1c10%以上など)感覚神経のみならず、運動神経の
障害を来して片足が麻痺するなどの重篤な障害を来したとき、あるいは、
糖尿病性末梢神経障害が原因で足壊疽を呈してきたような場合である。
本件の場合は、これらには該当しない。
【事案Ⅱ-4】後遺障害共済金請求
・ 平成 24 年 5 月 10 日
裁定終了
<事案の概要>
申立人が駅構内エスカレーターで転倒し右手・腕を負傷し、交通災害通院共
済金を受け取ったが、負傷した右腕の痛みが取れず災害障害共済金を請求した
ところ、被申立人が事故を直接の原因とした後遺障害と認定できないとの理由
により支払いを認めなかったことを不服とした申立てがあったもの。
<申立人の主張>
被申立人は、申立人が転倒事故により「右肩関節拘縮」の障害に該当するた
め、所定の災害障害共済金を支払え、との判断を求める。
平成 22 年 1 月に申立人がエスカレーターから転倒し、右手と腕を負傷した。
被申立人に対して平成 22 年 7 月に通院共済金を請求し、24 日分の共済金が振
り込まれた。負傷した箇所の痛みがとれず、自費で通院をした。医師からこれ
以上の回復は難しいと言われ、症状固定として平成 22 年 12 月に災害障害共済
13
金の請求をした。被申立人より、
「右肩関節拘縮」は加齢が原因で平成 22 年 1
月の事故を直接の原因とした後遺障害とは認定できないとの決定通知が来た。
その決定に対して平成 23 年 5 月に異議申立をしたが、後に決定に変更がない
との通知が来た。
事故以前は痛みもなく一度も通院したことがない。医師からは事故が原因で
ある可能性が高いが事故が原因であるとの医学的証明はできないと言われた。
しかし、他の保険会社は後遺障害を認定してくれた。事故前後の背景を鑑みず
加齢を理由に判断している事は納得できない。
<共済団体の主張>
本件申し立てを棄却する、との判断を求める。
(1)申立人は、事故日から 2 ヶ月後の平成 22 年 3 月に Y 接骨院に初診し、
その後通院していた。平成 22 年 6 月に S 病院で「右肩挫傷」の診断を
受け、平成 22 年 9 月に K 病院に受診し、右肩関節回旋腱板損傷による
「右肩関節拘縮」により平成 22 年 11 月に症状固定したとして災害障害
共済金の請求があったが、被申立人が調査をしたところ、検査所見とし
て外傷・損傷等が認められなかった。
(2)事業規約で災害障害共済金は、「不慮の事故等を直接の原因として身
体障害の状態になった場合に支払う」と規定し、身体障害とは「病気ま
たは傷害が治癒したときに残存する生物学的器質的変化を原因とし、将
来において回復が困難と見込まれる精神的または身体的き損状態」と規
定している。
(3)右肩関節回旋腱板損傷は確定診断でないこと、生物学的器質的変化(レ
ントゲンなど医学的検査で判明する損傷)が認められないことから障害
認定はできない。また右肩関節周囲炎は加齢変性が原因で一般的に五十
肩による拘縮との医学的所見に基づく調査結果であり、必要な調査をし
て判断したものであり、単に加齢を理由に判断したものではない。
<裁定の概要>
審議会では、申立人および共済団体から提出された書面に基づき審議し、次
の理由により、申立人の請求は認められないとの裁定をし、裁定手続きを終了
した。
本件の争点は、①申立人の障害の有無②その障害と本件事故の因果関係の有
無である。
申立人は事故後に Y 接骨院・N 病院・K 病院に通院した。そのうち N 病院・
K 病院の診断書及び医療照会回答書を検討すると、医療機関の診断において、
少なくとも右肩関節周囲炎の障害が存在することが認められるが、その原因に
14
ついては、加齢変性による五十肩症状もしくは不詳であるとされている。
そして、申立人の通院記録をみると Y 接骨院には、事故後約 2 箇月経過し
た後に通院を始め、同月に 4 回通院し、その後 3 箇月以上通院していない。後
遺障害の診断を求めた K 病院の初診は事故後 8 箇月半後であった。
医療関係の証拠及び申立人の通院状況その他の全証拠から総合的に判断す
ると、申立人の右肩に障害が存し、それまで申立人が右肩や腕に関して治療
歴・痛みがなかったこと、日常生活に支障がなかったこと、更に接骨院に通院
せず 2 箇月間以上安静にしていたとの事情などを考慮しても、その障害が直接
本件事故に起因するという因果関係を認めることは困難である。
従って、申立人の障害は、災害障害共済金の支払要件を充たさないものとい
うべきであるから、もう1つの争点である身体障害の有無程度の判断をするま
でもなく、申立人の本請求は認めることができない。
【事案Ⅱ-5】後遺障害共済金請求
・ 平成 24 年 6 月 25 日
裁定終了
<事案の概要>
申立人の配偶者である被共済者が、転倒により寝たきり状態に陥るという重
度の後遺障害を負ったが、被申立人は非常に低位の身体障害として認定し支払
割合 10%の共済金しか支払わないことを不服として申立てがあったもの。
<申立人の主張>
被申立人は、被共済者が身体障害者等級別支払割合表の第 6 級 4「せき柱に
著しい変形又は運動障害を残すもの」(支払割合 60%)及び第 12 級 5「鎖骨、胸
骨、ろく骨、肩こう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの」
(支払割合 10%)に
該当するため、併合により 5 級(支払割合 70%)となるので、300 万円(災害
障害共済金 350 万円から既払分 50 万円を引いた残額)を支払えとの判断を求め
る。
(1)申立人の配偶者である被共済者が平成 21 年 12 月に自宅敷地内玄関先
で転倒、M 整形外科に約 4 カ月半入院し、その後の通院治療もおもわ
しくなく O 整形外科に転院治療を受けるも回復せず回復の見込みなし
との診断を受けた。毎日が寝たきり老人の姿で天井を眺めている状態で
ある。
(2)後遺障害診断書を取得し 23 年 2 月に被申立人に請求したが、被申立
人より 3 月に 12 級の 12 の神経系統の障害に該当するため身体障害支払
15
割合 10%の 50 万円が支払われた。
(3)5 月 O 病院 M 医師に痛みの原因について聞いたところ「せき柱に著
しい変形または運動障害を残すもので痛みがあり、診断書にも骨盤骨折
後の偽関節としており、12 級の 12 の判断は誤りであり 6 級の 4 に適合
するのではないか。」との説明を聞いた。この内容、CD-ROMおよび
CTのプリント図示したもの等により再三被申立人に対して再審査請
求を挙げたが、認めてもらえなかった。
(4)他の保険会社の同様の保険では、被申立人同様当初は 12 級相当との
判断であったが、主治医への再調査の結果、労災等級 6 級 4 で 40%12
級 5 で 10%の合計 50%の後遺障害と判断してもらっている。再調査す
らしない被申立人とは大きな違いである。
(5)なお、介護保険で要介護状態 3、身体障害者手帳 2 級の認定を受けて
いる。
<共済団体の主張>
申立人の請求を棄却するとの判断を求める。
(1)平成 22 年 1 月、被共済者は、玄関より出て門に行く石段より足を踏
み外し転げ落ち、腰を強く打ち転倒し、M 整形外科病院で入院治療を
行った。平成 23 年 2 月に共済金請求書等および O 病院発行の後遺障害
診断書(平成 23 年 2 月付)を受け付けた。
(2)後遺障害診断書の疾病・外傷名「骨盤骨折後偽関節」、症状の状態は
以下のとおりであり等級の認定は、「身体障害等級別支払割合表」に基
づき第 12 級の 12 号(局部にがん固な神経症状を残すもの)に該当する
と判断し、災害障害共済金 50 万円を支払った。
① 神経系統の機能に関する症状・所見…「神経学的な異常はないが骨
盤骨折後偽関節の状態。立位、座位の保持が不能。」、実施した検査
および具体的な検査所見…「XP・CT:骨盤骨折後偽関節(他覚的
所見:有)」
② 変形障害…「せき柱・体幹骨:レントゲン写真でわかる程度」
③ その他特徴的なこと…「座位、立位で骨盤の激しい痛みあり。麻痺
はない。」
(3)せき柱および体幹骨の変形障害は、せき柱については、変形の程度に
ついて「レントゲン写真でわかる程度」とされているものの、せき椎圧迫
骨折等の所見はないので 11 級 5 の認定基準に該当しない。
体幹骨(骨盤骨)については、変形の程度について「レントゲン写真
でわかる程度」とされ、基準では「裸体となったとき、変形が明らかにわ
かる程度のもの」となっているが、本件は身体の変形が明らかではない
16
ため、12 級の 5 の認定基準には該当しない。
(4)「障害認定必携」のその他の体幹骨の障害についての解説では「骨盤
骨には、仙骨を含め、尾骨は除くものと取り扱う。」と規定し、また、
「障害等級表上の「せき柱」の障害とは、頚部及び体幹の支持機能ない
し保持機能及びその運動機能に着目したものであることから、これらの
機能を有していない仙骨及び尾骨については、「せき柱」には含まない
ものである。」と規定している。
提出された後遺障害診断書では恥骨(骨盤骨)以外に確認できる変形
等の障害が残存していない。これらのことから申立人より要請のあった
医師等への調査については、提出された後遺障害診断書から障害の等級
の認定は可能であり、不要と判断した。
(5)なお、他社の保険、介護保険、身体障害者手帳の取り扱いは、制度趣
旨、約款等の異なるものであり、採用することはできない
<裁定の概要>
審議会では、申立人および共済団体から提出された書面に基づき審議した結
果、下記理由により、申立人の請求は認められないとの裁定をし、裁定手続き
を終了した。
(1)後遺障害診断書によれば、原因となった疾病・外傷名「骨盤骨折後偽
関節」による骨盤の激しい痛みがあるということなので、これは「障害
認定必携」の「局部の神経系統の障害」の項目にしか該当しないことは
明らかである。
(2)被申立人は、被共済者の障害が身体障害等級別支払割合表の第 6 級 4
「せき柱に著しい変形又は運動障害を残すもの」である、と主張するの
で、被共済者の「骨盤骨折後偽関節」による痛みが、これに該当するの
かについて検討した。すなわち、骨盤骨折による偽関節が、せき柱に著
しい変形又は運動障害を残すものに該当するか否かであるが、本件の障
害部位である体幹骨(骨盤骨)について、変形の程度は後遺障害診断書
によれば「レントゲン写真でわかる程度」となっており、裸体となったと
き変形が明らかに分かる程度のものではないため、「鎖骨、胸骨、ろく
骨、肩こう骨または骨盤骨に著しい変形を残すもの」としての第 12 級
5 には該当しない。
(3) また、本件被共済者の障害部位は骨盤骨の恥骨と仙骨であり、恥骨
がせき柱に含まれないことは明らかだが、仙骨は解剖学上せき柱の一部
であると伴に骨盤骨の一部をもなしている。しかし、障害認定必携によ
れば、仙骨及び尾骨については、「せき柱」には含まない取り扱いをし
ている。これは、障害等級表上の「せき柱」の障害とは、頚部及び体幹
17
の支持幾能ないし保持機能及びその運動機能に着目したものであるこ
とから、これらの機能を有しない仙骨及び尾骨については、「せき柱」
には含まないことにしたものである。
(4)したがって、 本件の被共済者の骨盤骨折後偽関節による骨盤の激し
い痛みについては 等級表の第 12 級の 12(局部にがん固な神経症状を
残すもの)に該当する。
【事案Ⅱ-6】火災共済金請求
・ 平成 24 年 7 月 25 日
裁定終了
<事案の概要>
再取得価額まで加入していないと十分な保障が受けられない旨の説明がな
く、不実の説明によって加入したため、損害の額どおり支払われないことを不
服として申立てがあったがあったもの。
<申立人の主張>
被申立人は、火災共済(住宅、家財)の共済金および掛金との差額 1,855,696
円(1,903,226 円-47,530 円)を申立人に支払え、との判断を求める。
(1)平成 21 年 10 月、火災共済契約に加入したが、共済団体には説明義務
があるにも拘らず、契約加入に際し、満額の再取得価額で加入していな
ければ、損害全部の補償が得られないとの説明を受けていなかった。
(2)加入に当っては、共済金額を住宅について 800 万円から 700 万円に減
額したのであるが、減額しても一部の被害なら同じ金額が支払われると
の間違った説明があったため、共済金額を共済の目的である住宅につき
700 万円、家財家具につき 300 万円にて加入してしまった。
(3)そのため、当然に損害認定額全部の支払がなされず、1,855,696 円の
損害を被ったので、同額の損害賠償金の支払を求めるものである。
<共済団体の主張>
本件申し立てを棄却する、との判断を求める。
(1)平成 21 年 10 月の受付の対応については、説明職員の職場経験や職員
教育から、申立人は共済金額 800 万円に加入していたが 700 万円に減額
しても一部の被害ならば同じ金額が払われるとの間違った回答をする
ことはない。
(2)本件火災共済は継続契約であるから、最初の契約時の応答が問題とな
18
ろうが、最初の契約である平成 18 年 11 月の契約時には、比例填補を含
めて一連の説明(再取得価額で加入していなければ、満額の損害が補償
はされないとの説明を含む。)をしている。
(3)また、申立人は、この火災共済加入以前の契約であるK火災海上保険
株式会社の火災保険に加入していたが、その加入時にも比例填補の説明
を受けたと思われる。よって、満額の再取得価額に加入していなければ
満額の補償が得られないことは理解していた筈である。
(4)従って、被申立人は説明義務を尽くしており、申立人が再取得価額の
加入でなければ満額の損害額が補償されないとの説明がなかったとの
点は否認する。
<裁定の概要>
審議会では、申立人および共済団体から提出された書面に基づき審議した結
果、下記理由により、申立人の請求は認められないとの裁定をし、裁定手続き
を終了した。
(1)再取得価額、時価額、現実に支払った保険料ないし共済掛金、加入し
た保険金額ないし共済金額などの額および必要担保額などを総合して
判断すると、申立人には満額の再取得価額〔再取得価額は、住宅につき
1,390 万円(甲第 2 号証)、現在は住宅 1,200 万円(乙第 4、5 号証)〕、少
なくとも再取得価額の 80%以上の金額を共済金額とする意思はなかっ
たものという他はない。
よって、申立人には、満額の再取得価額、少なくとも再取得価額の
80%以上の金額で火災共済に加入する意思はなかった、従って、満額の
再取得価額、少なくとも再取得価額の 80%以上の金額で火災共済契約
を締結しなかったものと言わざるを得ない。
(2)申立人には、その余の争点について判断するまでもなく、その主張の
損害が発生する余地がないのであるから、申立人の主張は採用できない。
【事案Ⅱ-7】年金共済金請求
・ 平成 24 年 9 月 28 日
裁定終了
<事案の概要>
平成 7 年の年金共済契約時の受取年金試算総額より、実際受取る年金総額が
少ないとの主張および掛金払込方法の変更による年金受取総額の減少を不服
として申立てがあったもの。
19
<申立人の主張>
被申立人に対して、年金共済の受取年金総額 1,388 万円の計算金額より諸般
の変遷を勘案の上減額した金額 1,300 万円の支払いを求める。
(1)平成 7 年の契約時は、パンフレットもなく、申立人は、パンフレット
のコピーに基づいて説明を受け、その後、ファクス送信された設計書と
想定受取額試算が送られてきて、受取年金総額 1,388 万円ということで
共済契約を締結した。設計書等に小さな字で書いてある「将来のお受取
額をお約束するものではない」との注意書きは読み取れないし、説明も
なかった。以上から、設計書等に記載された年金総額 1,388 万円(但し
本件申立では年金総額 1,300 万円に減額)が請求できる。
(2)平成 14 年に掛金の月払いを残掛金一括支払いに変更したが、その時
に被申立人が計算した掛金をいわれるままに支払ったが、年金額が 107
万 9,000 円から 106 万円に減額となるという説明は一切聞いていない。
従って、当該契約内容の変更は無効である。
<共済団体の主張>
(1)年金受取総額は、契約年金額総額(本件の場合 106 万円×10 年分)
及び年金受取開始時点までの割戻金(据置割戻金)及びそれ以降 1 年ご
とに加算される割戻金の合計額であり、割戻金は各年度毎の運用実績に
より変動するものであり、契約時の設計書の試算額は支払いを約束した
金額ではない。従って、設計書等に「実際の割戻率は資産運用の実績等
により、毎年変動し、お受取額等もそれに応じて増減します。従いまし
て、将来のお受取額をお約束するものではありませんのでご注意願いま
す。」と表示している。
設計書等に記載された文字が見えにくい点については、ファックス感
熱紙のため経年劣化したものであり、契約当時は判読可能であったと考
える。従って、主契約年金額 106 万円及び年金共済約款所定の割戻金に
よる増額年金を加算した金額が申立人の受け取ることができる年金額
である。
(2)平成 14 年の契約内容異動については、申立人要望の掛金を全期前納
にするためには、その前提として月払から年 1 回払いに変更する必要が
あり、その場合は共済掛金建特約が解除され、契約年金額が 2 万円単位
で千円以下の端数を切りすてた金額に変更されることになるため、契約
年金額が 107 万 9,000 円から 106 万円になったものであり、この点につ
いては、担当者が説明したと思われる。
20
<裁定の概要>
審議会では、申立人および共済団体から提出された書面に基づき審議した結
果、以下のとおり、申立人の請求は認められないとの裁定をし、裁定手続きを
終了した。
申立人は、設計書等に記載された年金総額 1,388 万円が請求できると主張
(但し本件申立では年金総額 1,300 万円に減額しての申立となっている)して
いるが、次の理由から、申立人が請求できる年金額は、主契約年金額 106 万円
及び年金共済約款所定の割戻金による増額年金を加算した金額であると判断
する。
(1)契約時の年金額について
① 本件では、契約時の 1 か月後の平成 7 年 4 月から、年金額の切下げ
がなされることになっていたため、パンフレットが品切れ状態であり、
パンフレットのコピーおよび FAX で送られた設計書等に基づいて説
明を受け、本件年金共済契約が締結されたものと認められ、そこには、
「掛金月額 30,000 円」で「契約年金額約 1,079 千円」、「受取年金総
額約 1,388 万円(うち契約年金総額約 1,079 万円)」の記載があるが、
注意書きとして「実際の割戻率は資産運用の実績等により、毎年変動
し、お受取額等もそれに応じて増減します。従いまして、将来のお受
取額をお約束するものではありませんのでご注意願います。」との記
載もなされている。
② この時の共済証書は証拠として提出されていないが、主契約年金額
107 万 9,000 円、支払期間 10 年間、掛金月 3 万円と記載されていたも
のとみられ、その内容のとおりの年金共済契約が締結されたものとみ
るべきである。
③ この点について、申立人は、設計書等に記載され説明を受けたとお
りの受取年金総額約 1,388 万円が支払われるべきであり、上記注意書
きは小さくて読み取れないと主張しているが、上記注意書きが読み取
れたか否かとは関係なく、主契約年金額 107 万 9,000 円、支払期間 10
年間、掛金月 3 万円の内容の年金共済契約が成立したものと解すべき
ものである。
④ 元来、約款により定型的・画一的に多数人を相手として販売される
金融商品については、一部の契約者との間で約款に存しない内容の契
約が成立することは想定し難いし、また、一部の契約者にのみ約款上
は認められていない利益を与える合意をすることは、むしろ他の契約
者との公平上、特段の事情のない限り禁じられていると解さねばなら
ないからである。
21
⑤
本件においても、申立人に対して、申立人が支払った共済掛金に対
応する共済年金額を超える共済年金額を受領できる権限を与えるこ
とは、仮に被申立人において口頭または文書による説明の懈怠ないし
義務違反があった場合であっても、他の契約者との公平を害すること
になり許されるべきではない。
⑥ 従って、仮に説明義務違反がある場合であっても、それに基づく損
害賠償責任が被申立人に生じうるか否かはともかく、上記のとおり、
共済証書記載の共済年金額の契約が成立したものとみるべきである。
(2)平成 14 年契約内容異動の有効性について
① 主契約の年金額が 107 万 9,000 円から 106 万円に減額となった被申
立人における処理は、被申立人の主張どおり、掛金を全期前納にする
ためには、その前提として月払から年 1 回払いに変更する必要があり、
その場合は共済掛金建特約が解除され、契約年金額が 2 万円単位で千
円以下の端数を切捨てた金額に変更されることになるため、契約年金
額が 107 万 9,000 円から 106 万円になった経緯であると認められるが、
申立人がそのことを知っていたか否かについては争いがある。
② 申立人が受け取ったことを認めている証拠書類には満期共済金額
として 106 万円と記載されており、共済証書にもその記載がされてい
たとみられる(但し、申立人は、この時の契約内容異動を記載した共
済証書を受け取っていないと主張している)。この時に、主契約の年
金額減額についての説明を受けたか否かは明らかではない。申立人は、
この時、掛金を全期前納に変更することを望んでいたが、掛金の多少
の減少を伴うにしても年金額の減額を望んでいたとは推認できない。
従って、このような場合には、申立人が、全期前納に変更するか、も
しくは、月払いを継続するかについての選択をするために、年金額の
減額が生じることなどに関して、被申立人から申立人に対する十分な
説明が必要とされるが、その点に関して、被申立人の説明が十分でな
かった可能性を否定できない。
③ しかしながら、上記(1)で述べたのと同じように、本件では、客
観的には主契約の共済年金額が 106 万円で契約内容異動が成立してい
ることから、仮に申立人が従前の共済年金額である 107 万 9,000 円を
共済年金額であると主観的に考えていたとしても、共済契約者間にお
ける公平の観点から、変更された共済掛金額に対応する共済年金額を
超える共済年金額を認めることはできないものであるから、申立人か
ら被申立人に対して説明不足等に基づく損害賠償ができるか否かは
ともかく、共済年金額は 106 万円に変更されたものと解すべきもので
22
ある。
④ 従って、平成 14 年に契約内容異動がなされ、その際、主契約の年
金額が 107 万 9,000 円から 106 万円に減額されているが、申立人は減
額となることを知らず、この契約内容異動は無効であると主張してい
るが、当審議会は次の理由から、平成 14 年に、契約内容異動がなさ
れ、その際、主契約の年金額が 107 万 9,000 円から 106 万円に減額さ
れたと判断する。
【事案Ⅱ-8】入院・通院共済金請求
・ 平成 24 年 8 月 17 日
打切り
<事案の概要>
2 型糖尿病で 77 日間入院をして共済金を請求したところ、
「検査数値および
治療内容において長期入院の必要性がないこと、及び外出の多さ」を理由に共
済金が支払われないこと、及び保険・共済の多重契約等を理由に重大事由解除
されたことを不服として申立てがあったもの。
<申立人の主張>
3 種類の共済契約あわせて入院日額 16,000 円の 77 日分 1,232,000 円を申立
人へ支払え、との判断を求める。
(1)平成 23 年 4 月~7 月に 2 型糖尿病で 77 日間入院をした。平成 23 年 7
月に入院共済金の請求をしたが、9 月に被申立人から「検査数値および
治療内容において長期入院の必要性がないこと、及び外出の多さ」を理
由に共済金の支払いはできないという書面が届いた。
(2)書面内容に納得がいかず、平成 23 年 10 月に「糖尿病が難治性である
こと、入院の必要性があることや外出の正当性について」の理由を具体
的に異議申立書(再審査請求書)に記載し、被申立人宛て送った。
(3)平成 24 年 1 月にY法律事務所から「保険や共済についての多重契約
等で 3 種類の共済契約をすべて解除する。解除のため共済金は支払われ
ない。」との文書が送られてきた。
(4)「入院時の血糖値や血圧は正常と言われる医学的基準から超えている
こと」
「外出は他院への通院と運動療法によるもの」
「多重契約も意図的
に加入したものではないこと」であるため契約の解除は不当である。
加入している共済契約のうち 1 件に関しては、死亡・重度障害のみの
保障であり今回の入院の件とは無関係なので解除は特に不当である。
23
<共済団体の主張>
「申立人の請求を棄却する」との判断を求める。
(1)医療照会結果、入院開始日の翌日より外出し、退院までの間に合計
69 日間外出しており、夜間帰院後も不在多いことが確認できた。また、
被申立人顧問医から本件入院については外出の多さが異常であり、治療
行為の妨害に等しい旨や検査結果推移をみるとγ-GTPが高いが入院
の必要である異常値とまでは言えないことの見解が出されている。
(2)被申立人について、本件入院は、検査結果や治療内容、療養態度等か
ら入院の定義に該当しないため病気入院共済金のお支払はできないと
判断した。
(3)その後、被申立人は、申立人から異議申立を受けて事案を改めて再精
査したところ、申立人は本件契約締結後短期間で他社の同種の保険契約
等を複数締結しており、それから間もなく慢性疾患について長期入院を
繰り返していること、病気(疾病)入院保険金等の日額が 92,600 円で
あることが判明したため重大事由による契約解除の妥当性について被
申立人顧問弁護士と検討した結果、共済金等の合計額が著しく過大であ
り、共済制度の目的に反する状態がもたらされるおそれがあると認めら
れるため重大事由による契約解除および共済金の支払はできないと判
断した。
<裁定の概要>
審議会では、申立人および共済団体から提出された書面に基づき審議を進め
たが、被申立人が本件について訴訟提起をし、審議会は訴訟移行につき相当の
理由があるものと判断し、共済相談所規程第 37 条により、裁定手続きを打切
ることとした。
【事案Ⅱ-9】入院・通院共済金請求
・ 平成 24 年 11 月 21 日
裁定終了
<事案の概要>
申立人が契約者・被共済者となっている 2 件の養老生命共済について、平成
12 年から平成 18 年までの 4 回の入院の入院・手術共済金の請求が父親により
行われ、父親の口座に共済金を支払ったことは無効であることの確認と、改め
て契約者・被共済者である申立人からの共済金請求を受理して申立人へ共済金
を支払うことを求める申立てがあったもの。
24
<申立人の主張>
共済契約者・被共済者以外の者からの請求および支払は無効である、との判
断を求める。また、契約者・被共済者である申立人からの共済金請求を受理し
て、申立人への共済金支払え、との判断を求める。
(1)平成 12 年・平成 16 年・平成 18 年 2 月・同年 4 月の入院共済金の請
求の受理に関して、父親からの請求を受理し、父親の口座に支払ったの
は、共済契約に反しており、請求および支払は無効である、との判断を
求める。申立人は、平成 23 年に被申立人に共済金の開示請求をするま
で、契約者は共済金が本人以外から請求されて支払われていることを知
らなかった。
(2)上記(1)の請求内容について、改めて共済契約者・被共済者である
申立人からの請求を受理し、当該本人に支払え、との判断を求める。
① 請求当時、申立人は成人しており、父親は申立人の法定代理人では
ない。父親が掛金を払っていたが、掛金原資は家計から支払われてお
り、申立人も家計に入金をしていた。
② 請求行為は、父親が窓口で行なったものである。請求書類に契約者
確認済と記載があるが、申立人は確認を受けていない。請求者と申立
人は、当時から確執があり本共済契約の取引状況を知らされておらず、
確認連絡があった場合に同意することはあり得ない。
③ 申立人が共済金請求の権利行使できなかったのは、被申立人が共済
金支払の際に申立人の意思確認を行なわなかった、故意の不法行為に
よるものであり、時効を援用するのは信義則に反する。
<共済団体の主張>
申立人の請求は認められない、との判断を求める。
(1)入院共済金は被共済者が来店できず、請求関係書類を家族が持参した
場合も、本人の利便性を考慮して受理し、被共済者以外の口座へ振込の
場合は、担当者が電話連絡等により被共済者本人からの請求であること
を確認した上で受理をしている。当該請求でも担当者の確認記録が残っ
ている。なお、平成 12 年の請求については、書類保存期間が経過して
いるため請求書は残っていない。
(2)被申立人は平成 20 年 5 月の書面にて、平成 9 年 10 月契約の養老生命
共済の入院共済金を支払った事実を知らせている。また、平成 5 年 7 月
契約の養老生命共済は、平成 20 年 2 月に解約し解約返戻金が申立人口
座に振り込まれているが、いずれの時点でも、支払内容を開示しており、
申立人から共済金支払いについて、何らの異議申し立てはなかった。知
らなかったということはあり得ない。
25
(3)申立人の家計および家族の状況は知らないが、本件の各請求手続きに
おいて、申立人の意思確認が行なわれており、被申立人らの支払手続き
は適正に行われている。
(4)仮に、本件各共済金の支払手続きに何らかの問題があったとしても、
申立人による共済金にかかる請求権は、全て時効により消滅している。
改正前商法 683 条・663 条では生命保険契約における保険金支払義務は
2 年と定められ、養老生命共済約款 14 条でも支払手続きを 2 年間怠っ
たときは支払わないことができると定めている。被申立人は消滅時効を
援用する。
<裁定の概要>
審議会では、申立人および共済団体から提出された書面に基づき審議し、次
の理由により、申立人の請求を認めることはできないとの裁定をし、裁定手続
を終了した。
(1)申立人の父の共済金請求が無効であることの確認の訴えは、特定した
権利の存在・不存在の確認を求めるものであり、確認によって紛争の解
決が期待できる場合を除き許されない。本件で申立人は、入院・手術共
済金の支払いを求めており、申立人の父の共済金請求が無効であること
を確認しても、本件の共済金請求に関する紛争の抜本的な解決がはかれ
るわけではなく、確認の利益を欠くものであり、こうした申立を裁定手
続きにおいて認めるべきではないと考える。したがって、この請求は不
適法として却下を免れない。
(2)申立人の入院・手術共済金の支払請求について、支払い事由が発生し
たことは、当事者間に争いがない。被申立人は、申立人に支払ったこと
及び仮に支払われていないとしても時効により消滅したと主張する。以
下の事情を考慮すれば、本件における被申立人の時効の援用が信義則に
反するものとは認められない。したがって、本件の入院共済金請求権は、
時効により消滅しており、申立人の請求(2)は理由がなく、その請求
は棄却すべきものである。
① 約款では時効期間を 2 年間とし、消滅時効の起算点について、定め
がされていない。本件約款上、入院共済金請求権が発生するのは、入
院が継続して 10 日以上となったときである。本件の最も起算点が遅
い入院共済金請求権は、平成 18 年 4 月に発生している。手術共済金
請求権は、平成 18 年 3 月に発生している。約款上、共済金請求は、
支払事由が発生した日から 1 ヶ月以内に請求しなければならず、共済
金は、請求に必要な書類が被申立組合に到達した日から 1 ヶ月以内に
支払わなければならないと規定されている。
26
②
共済金請求権の消滅時効の起算点は、
(a)共済事故発生時(b)
共
済金請求者が共済事故の発生を知った時(c)約款で定められた猶予
期間が経過した時、とする考え方がありうるが、本件ではそのいずれ
も、現時点で2年間が経過していることは明らかであり、平成 18 年
の入院・手術の入院・手術共済金請求権は、すでに時効により消滅し
ている。したがって、これより前に発生した入院共済金請求権も同様
に時効によって消滅している。
③ 申立人は、被申立人の時効援用が信義則に反すると主張する。共済
金請求権に短期消滅時効が採用されているのは、一般に保険制度の技
術性・団体性のため、相当期間経過後に過去の保険金請求を認めるこ
とは保険事業の円滑な運営を阻害し、迅速決済が実現されないためで
あるとされており、その理由は合理的なものと考えられる。また、当
時の客観的状況に照らし、仮に現実に権利行使を期待しえない特段の
事情があったとしても、本件では、ァ)申立人は平成 20 年 5 月の被
申立人書面により入院共済金の支払いの事実を知り得た。ィ)平成 5
年 7 月契約の養老共済契約は平成 20 年 2 月付で解約され、平成 9 年
10 月契約の養老共済契約についても裁定申立てにより解約返戻金の
請求がなされたが、解約返戻金の受領により平成 20 年 7 月で裁定申
立の取り下げをしている。以上の事実から、申立人は遅くとも平成 20
年 7 月には本件の入院・手術共済金請求権の発生を認識し、権利行使
が客観的に可能であった。平成 20 年 7 月からも 2 年以上が経過して
おり、いずれにしても、現時点では消滅時効が完成している。
【事案Ⅱ-10】後遺障害共済金請求
・ 平成 25 年 1 月 16 日
裁定終了
<事案の概要>
平成 22 年に申立人が交通事故により尾骨および仙骨を骨折し、これにより
仙尾骨部に神経症状(本件障害)を残したため、被申立人に後遺障害共済金を請
求した。本件障害は後遺障害 14 級 9 号(局部に神経症状を残すもの)に該当す
ると判断をされたものの、平成 17 年に受傷した左手甲裂傷に基づく左母指の
神経症状(前件障害)が後遺障害 14 級 9 号に該当するとして、後遺障害共済金
を支払済みであるところ、前件障害と本件障害はともに神経系統の機能の障害
として同一部位(系列)の障害であり、かつ、本件障害により障害状態がより重
27
くなっているとはいえないから、加重の取扱いによっても既存の障害と差額は
発生しないとして共済金が支払われなかったことから、これを不服として申立
てがあったもの。
<申立人の主張>
被申立人側の判断は適当ではない、とし、後遺障害共済金の支払いを求める。
(1)本件障害につき、後遺障害後 14 級 9 号が認定されているにもかかわ
らず後遺障害共済金が支払われていない。
(2)被申立人の不払い理由として、前件障害と同一部位(系列)の障害であ
るため加重扱いとなり既存の障害との差額は発生しないとの理由であ
るが、厚生労働省労働保険審査会の判断事例(事件番号等平成 14 年労
第 38 号(障害関係事件)・取消)に「2 つの障害を同一部位に生じた障
害としてみるのではなく、異なった部位に生じた別個の障害として評価
すべきである。」とあることから、被申立人の判断は適切ではない。
<共済団体の主張>
本件申し立てを棄却する、との判断を求める。
(1)申立人からの共済金の請求に関しては、別部位に発生した新たな神経
障害としての取扱いができない。このことは、「共済契約規定・同事業
規約・同事業細則」および被申立人の本障害等級認定に至る経過の通り
である。
(2)厚生労働省労働保険審査会の判断事例については、厚生労働省におか
れている同審査会にされた再審請求の案件につき、審議された個別の事
案であり、加重の扱いに関する認定基準を示すものではない。
「事件番号等平成 14 年労第 38 号(障害関係事件)・取消」の審決が「施
行規則」および「障害認定必携」の認定基準の変更等に影響を及ぼすも
のではないので、個々の審査事案に対して審査会が裁決した加重の取扱
いに関する認定を用いて、身体障害の評価・認定をおこなう取扱いはし
ない。
<裁定の概要>
審議会では、申立人および共済団体から提出された書面に基づき審議し、次
の理由により、申立人の請求を認めることはできないとの裁定をし、裁定手続
を終了した。
(1)本件契約上の身体障害等級の認定は、労働者災害補償保険法施行規則
第 14 条(労災補償における障害等級について定めたもの)に準じて行
うとされているところ、その認定基準として基本通達(昭和 50 年 9 月
30 日基発第 565 号労働省労働基準局長通知)が発出されている。その内
28
容は、労災補償の運用実務において長きにわたり採用されてきたもので
あるから、施行規則第 14 条の解釈は、基本的にはこれに依拠するのが
相当である。
しかるところ、基本通達は、障害系列表において、「神経系統の機能
または精神」については、これを身体の部位により区分することなく系
列区分 13 として1つの欄で表示し、同一欄内の身体障害についてはこ
れを同一の系列にあるものとして取り扱うとしている(障害等級認定基
準第 1 の 3)。これは、神経系統の機能の障害は、その障害が具体的に
身体のどの部分に発現しているかを問わず、1個の系列にあるもの、す
なわち同一部位にあるものとして取り扱うべきものとしているもので
ある。
そして、各都道府県労働基準局主務課長あて労働省労働基準局補償課
長の事務連絡「障害認定」における局部の神経系統の障害の取扱いにつ
いて(平成 2 年 10 月 24 日事務連絡第 30 号)は、この基本通達の考え
方を踏まえて、既に身体の特定の部位に局限して存在する局部の神経症
状を有する者が新たに身体の他の部位に局限して存在する局部の神経
症状を残した場合には、これらを同一系列の障害として取り扱うことを
前提としつつ、併合の方法を用いて準用等級を定めた上で加重障害の取
扱いをすべき旨を示している。
(2)申立人の本件障害と前件障害の内容については、前者は尾骨・仙骨骨
折を原因とする仙尾骨部の神経症状であり、後者は左母指圧挫創を原因
とする左母指部の神経症状であるから、その態様からみて、相互に関連
する神経の損傷に基づくものとは考え難く、それぞれ相互に関連性を有
しない別個の末梢神経の損傷に基づくものと推認される。
本件の問題は、このように身体の部位を異にしてそれぞれその部位に
限定した末梢神経の損傷に基づく複数の神経症状が存するに至った場
合に関する上記施行規則第 14 条の解釈の問題であり、上記基本通達の
考え方に従いこれらを 1 個の神経系統の機能の障害として取り扱うべ
きか、あるいは、これらを別個の障害として取り扱うべきかという問題
である。
(3)障害等級表上、神経系統の機能の障害のうち第1級から第 9 級までに
ついては、神経系統の機能の障害が労務能力等に及ぼす影響の度合いに
より順位づけられているから、神経障害の症状が身体のどの部位にいく
つ存しようとも、全体を1個の障害として把握すべきものとして位置づ
けられていることが明らかである。これに対し、第 12 級及び第 14 級に
ついては、「局部の神経症状」を対象としているから、上記(2)のよ
29
うに身体の部位を異にして別個の神経症状が存する場合にこれらを1
個の障害として取り扱うべきか別個の障害として取り扱うべきかは、文
理上明らかであるとは言えない。
しかしながら、障害等級表上、上記第1級から第 14 級までの障害は、
神経系統の障害という1つの系列の障害について、労働能力の喪失の程
度に応じて序列付けられたものであり、その中で第 12 級及び第 14 級は、
その障害が労務能力に相当程度の影響を及ぼす程度に至らない場合に
ついて、第 1 級から第 9 級までより下位の等級に位置付けたものと見る
べきである。そうとすれば、その全体を通じて、統一的に1つの系列に
属する障害として位置付けられているものと解釈するのが、障害等級表
全体の見方として相当であると考えられる。
当審議会としては、障害等級表上、本件障害は、前件障害と同一系列
(同一部位)にあるものとして取り扱うべきものであり、本件争点に関
する申立人の主張は採用することができないものと判断する。そして、
本件の場合は、前件障害および本件障害ともに障害等級は第 14 級であ
るから、前記の課長通知の運用によっても、併合の方法による障害等級
の繰り上がりはなく、障害の程度を加重した場合にも当たらないから、
本件障害につき本件契約に基づく交通災害共済金を支払うべき場合に
当たらないことになる。
【事案Ⅱ-11】入院・通院共済金請求
・ 平成 25 年 1 月 25 日
裁定終了
<事案の概要>
糖尿病により入院し共済金請求したところ、入院の定義に該当しないとして
入院共済金を支払わないこと、さらに前回入院により既に受領していた入院共
済金の返還を求められたことを不服として申立てがあったもの。
<申立人の主張>
入院共済金 732,000 円を申立人に支払え、との判断を求める。
(1)前回入院(①18 日間、②46 日間)と本件入院(③61 日間)については入
院の経緯・経過に変わりなく、被申立人の専門医も変わりないのに、前
回は支払われて、今回支払われないのは納得できない。
30
<共済団体の主張>
申立人の請求を棄却する、との判断を求める。
(1)Ⅰ型糖尿病による前回入院については、次の点から主治医、顧問医見
解を総合すると医学上、客観的にも合理性が認められるため、支払った。
① 医師または歯科医師による治療が必要
② 自宅等での治療が困難
インスリンが常に必要な状態であり、重篤になると生死に関わる
症状(脳梗塞、心筋梗塞等)を呈する。
③ 病院または患者の収容施設を有する診療所に入り、
④ 常に医師または歯科医師の管理下で治療に専念すること
本傷病は放っておくと生死に関わる事態になりかねないため、本
人のコントロールが不十分であれば、当然医師による治療を要す
ることになる。
(2)本件入院については、アルコール禁止が指示されていたにもかかわら
ず飲酒していたこと、過去にも同疾病に関して入退院を繰り返し、共済
金を給付していることを鑑み、入院の定義に該当しないと判断した。
前回入院について再精査した結果、治療の必要は認めるものの入院の
必要はないものと判断し、既に給付した共済金 768,000 円の返還請求を
行った。
<裁定の概要>
審議会では、申立人および共済団体から提出された書面に基づき審議し、次
の理由により、入院共済金 732,000 円の支払いを認めるとの裁定をし、裁定手
続きを終了した。
(1)申立人の本件入院が、事業規約において支払いの対象となる「入院」
に該当するか否かを判断するに、まず、入院時の病状から被申立人の事
業規約にいう「医師による治療の必要があったこと」に該当するものと
いえる。また、入院中の外泊、外出も年末年始の医師許可による外泊に
とどまり、被申立人の事業規約にいう「病院または患者の収容施設を有
する診療所に入り、常に医師の管理下で治療に専念していた」といえる。
(2)次に、「入院」の要件である「自宅等での治療が困難なため」に病院
等に入ったかどうか、即ち「自宅等での治療が困難であったか」どうか
である。
入院の要件の有無の判断は、通常は医師の判断を尊重して決定される
ものである。しかし、共済契約における入院共済金の対象となる「入院」
に該当するか否かについては、いかなる場合においても、一旦なされた
医師の判断を無条件に尊重して決定されなければならないというもの
31
ではない。入院時の医学水準、医学的常識に照らして客観的、合理的に
必要な入院の場合に限られると解すべきであり、このように解すること
は、共済契約が有する射幸性による弊害を防止し、共済契約者一般の公
平を守るという点に照らしても妥当である(札幌地判平成 13 年 1 月 17
日、札幌高判平成 13 年 6 月 13 日)。
(3)申立人には、配偶者はなく、会社役員もしており、その生活は不規則
になりがちであったろうことが予想され、定時に食事をすることも定量
の運動をすることもできなくなり、ストレスも加わるなどして血糖値が
不安定となったことは想像に難くない。
被申立人は「飲酒は血糖コントロールに影響を及ぼす。γ―GTPは
アルコールをほぼ毎日飲んでいる方は高い値が出る。本件入院時に 206
IUあった」と言うが、アルコール以外にも反応する場合があり、また、
どの程度の飲酒量であったかは、これを明らかにする直接の証拠はない。
一方、飲酒とγ―GTP活性には正の相関があるとは言え、本件入院
により断酒状態にあったため、γ―GTPは入院時 202IU/L が 33IU/L
に減少しており、アルコール性肝障害が顕著に改善したといえる。
Ⅰ型糖尿病でかつ高脂血症のある申立人において、少なくとも一般論
としては1単位/日が適量であり、2 単位は多すぎる。さらに、申立人
が糖尿病を原因とした入退院を繰り返している事情を鑑みると、飲酒は
自宅でのインスリンコントロールを困難にするとともに、脳梗塞や心筋
梗塞などの重篤な症状を招致する危険があり、断酒が必要な状態である
と言うことは相当と言える。
(4)ところで、保険・共済が対象とする保険事故・共済事故の要件に「偶
然性」があるが、この「偶然」とは、被共済者が事故原因または結果の
発生を予知していないことをいう。申立人の病状から断酒が必要だとし
ても、
「アルコール量(2 単位まで)」との医師の指導があったことから、
申立人が入院という結果を予知できたとは言えない。医学的な知見とし
て断酒が適当であることは、本件申立てによる被申立人の主張があって
初めて明らかにされたことであり、その不知の責めを申立人に転嫁する
ことはできないものと言わざるを得ない。
入院時の症状、治療の状況等を考え合わせると、「自宅等での治療が
困難であった」ことを直ちに否定するに至らない。
32
【事案Ⅱ-12】自然災害共済金請求
・ 平成 25 年 1 月 21 日
和解解決
<事案の概要>
申立人所有の建物が雪害により損害を受けたため請求したところ、被申立人
の鑑定による評価額が建物の実態を反映したものではなく高額となっており、
付保割合が下がってしまうことから十分な自然災害共済金が支払われないこ
とを不服として申立てをしたもの。
<申立人の主張>
被申立人は、2,172,535 円の自然災害共済金を支払え、との判断を求める。
(1)2年ほど前の大雪のため屋根・樋等の被害を受ける。昨年6月頃納屋が
倒壊したためこのまま放置することはできないと考え、建物全体の修理
または解体を検討するとともに、担当者に立ち会いを依頼し、共済金請
求をしたところ、被申立人は、建物再取得価額を母屋3,150万円、離れ
1,420万円と評価し共済金は100万円程度とのことであるが、この評価額
はいずれも高額すぎるものである。
(2)母屋、離れとも、戦前の建物(特に母屋は100年以上前の建物)であり、
2階建てではあるが、総床ではない。母屋には牛舎・物置・土間等があ
り、また、2階は約半分が蚕棚であった(あとの半分は吹き抜け)。離れ
は住まい部分は8畳間が2部屋(1階2階上下)、残りの約2/3は物置(吹き抜
け)。これによる評価の結果は、母屋21,823,200円、離れ8,862,000円と
なる。この評価を基準に計算し
母屋:損害額3,116,453円×共済金額1,000万円/21,823,200円
離れ:損害額1,319,535円×共済金額500万円/8,862,000円
計算の結果、2,172,535 円の自然災害共済金を支払ってもらいたい。
<共済団体の主張>
申立人の請求のうち 1,076,780 円を超える部分を棄却する、との判断を求め
る。
(1)共済価格の評価にあたって、共済団体においては全ての契約者に対し
公平な支払を実施するために建物の用途・構造による簡易評価方式を採
用しているが、その適用が妥当でないと判断されるものについては、第
三者機関である外部鑑定等の意見を請う等、適正・公平な評価に努めて
おり、本件でも外部鑑定機関へ評価の依頼をしており、鑑定人による現
33
場確認を踏まえ物件の用途・構造や実態に応じた共済価格および損害額
の評価をすすめ算定された結果について、当方としても妥当であるとの
判断をしている。
(2)お申し出の吹き抜け部分等建物内部の一部内装等を欠く建物について
は、内装等を有する建物に比して価格は低くなるものと考えるが、一般
的なプレハブ造の建物とは異なり、罹災建物全体の造りは在来工法によ
り建築された純和風建築であり、全体評価として鑑定評価額相当の価値
を有するものと考える。
よって鑑定結果に基づく当初ご提示のとおり、母屋: 31,500,000円、
離れ: 14,200,000円を評価額と考え、母屋: 2,203,950円、離れ:
1,071,000円を損害額として認定し、支払う自然災害共済金は母屋
699,667円、離れ377,113円となる。
<裁定の概要>
審議会では、申立人および共済団体から提出された書面に基づき審議を進め、
当事者双方に和解案を提示したところ、同意が得られたので、和解契約書の締
結をもって円満に解決した。
【事案Ⅱ-13】死亡共済金請求
・ 平成 25 年 3 月 18 日
裁定終了
<事案の概要>
被共済者が一定の年齢に達したので団体信用生命共済の契約は消滅すると
の理由により、死亡を原因とする死亡共済金 1,270 万 1,280 円が支払われない
ことを不服として申立てがあったもの。
<申立人の主張>
被申立人は、生命共済金 1,270 万 1,280 円および平成 23 年 2 月から支払い
済みまで年 5 分の割合による遅延損害金を申立人に支払え、との判断を求める。
(1)平成 4 年 8 月、契約者は金融機関と金銭消費貸借契約を締結し、被申
立人と共済契約を締結した。金融機関の担当者は年齢制限の記載がない
説明書を交付し、死亡した場合には年齢に関係なく住宅ローンが消滅す
る旨の説明をした。
(2)平成 23 年 2 月、契約者は死亡。その時点における金銭消費貸借契約
の残金は 1,270 万 1,280 円であった。契約者が死亡したので支払い義務
34
の履行を求めたが、平成 24 年 6 月、被申立人は共済契約は消滅してい
るので共済金を支払う根拠がないと拒否をされた。
(3)当事者間において年齢制限が存在しない共済契約を締結する旨の合意
が成立していたことは、契約当時の契約者の年齢(58 歳 10 か月)から
みても明らかである。金銭消費貸借契約は 30 年であり、平成 3 年の事
業規約によれば、共済契約によりカバーされる期間は 6 年 2 か月に過ぎ
ないことになり、契約者にとってあまりにもメリットが薄いものとなる
から、他の商品を選択していたはずである。
(4)契約者にとって年齢制限の有無は重要な関心事項であったため、何度
も説明を求めて、担当者から年齢制限は存在しない旨の説明を明示的に
受けていた。万が一、契約者と被申立人との間で年齢制限の存在しない
共済契約が成立していないとしても、被共済者が一定の年齢に達したこ
とは消滅事由になることについて、何ら説明がされていないことは明ら
かであり、事業者には消費者に対して十分な説明をおこなう信義則上の
義務があり、これを怠った場合には、損害賠償義務を負わなければなら
ないのは当然のことである。
<共済団体の主張>
被申立人に団体信用生命共済金の支払い義務は存在しないため、申立人の請
求を棄却する、との判断を求める。
(1)共済契約は被申立人と契約者とで締結された契約であり、共済金受取
人は金融機関となり、申立人は共済契約における当事者になれない。
(2)生命共済加入申込書兼告知書の裏面では、被共済者について「契約更
新時の年齢が 65 歳以上のときは、金融機関が債務者以外の者を被共済
者に選定させていただくことがあります。」と記載し、年齢制限のある
共済契約であることを明示していることから、年齢制限が存在しない共
済契約が成立しているとの申立人の主張に理由はない。
(3)共済契約は平成 22 年 8 月をもって消滅しており、平成 23 年 2 月時点
で有効な契約は存在していないため、被申立人に共済金の支払い義務は
発生していない。仮に有効な共済期間中に契約者が死亡した場合でも、
共済金受取人は金融機関となるため、申立人には共済金を請求する権利
がない。
(4)契約者が他の商品を選択していたなどとの認識、動機に関する主張は、
推測であり受け入れることはできない。
(5)金融機関の担当者の説明については、双方のやり取りを記録した資料
などもないため、申立人の主張のみをもって受け入れることはできない。
通常、信用生命共済制度の契約者兼被共済者には、年齢制限を迎える 1
35
年以上前に「ご融資における返済計画の見直しについてのご案内」を契
約者宛に送付し、共済期間が満了することを説明している。
(6)年齢制限のある共済契約であると書面にて説明しているので、損害賠
償義務を負うとする主張は根拠がない。
<裁定の概要>
審議会では、申立人および共済団体から提出された書面に基づき審議した結
果、下記理由により、申立人の請求は認められないとの裁定をし、裁定手続き
を終了した。
(1)本件の争点は、①被共済者と被申立人の間において、年齢制限が存在
しない本件生命共済契約が成立していたかどうか、②被申立人の側にお
いて、被共済者が一定の年齢に達したことは消滅事由になることについ
て、何ら説明がなされていないから、被申立人には、消費者に対して十
分な説明を行う信義則上の義務があり(民法第 1 条 2 項)、これを怠っ
た場合には、損害賠償義務を負わなければならないのは当然のことであ
り、被申立人にこの説明義務違反が認められる以上、被申立人は共済金
相当額の損害賠償義務を負うどうか、以上の二点である。
① 被申立人の事業規約には年齢制限が明定されているのであるから、
一般には、共済契約者は、個別具体的な約款条項の内容につき熟知し
ていない場合であっても、事業規約によって共済契約を締結するとい
う意思を有しているのが通常であることにかんがみると、当事者双方
が特に事業規約によらない旨の意思を表示しないで共済契約を締結
した場合には、特段の事情がない限り、上記当事者は事業規約による
という意思をもって共済契約を締結したものと推認するのが相当で
ある。
② 本件生命共済契約を締結した者が、年齢制限に関して説明を受けて
いたとしても、年齢制限条項を含む規約に基づく生命共済契約を締結
するかしないかの選択権を有していただけであって、生命共済契約を
締結する以上は年齢制限条項を含む規約に基づく生命共済契約を締
結するほかはなかったのであるから、申立人らの主張のように、被申
立人には年齢制限がないと信じていた申立人らの信頼を保護して、共
済金額相当額の損害を賠償すべき義務を負うとするのは、共済契約が
附合契約であることと相反するものであって、採用することができな
い。
また、本件共済契約の申込者は、申込書に記載された年齢制限等に
関する情報の提供を求め得る十分な機会があり、被申立人の側が、申
立人らに対し、本件生命共済契約の締結に当たって、年齢制限に関す
36
る事項について意図的にこれを秘匿したなどという事実はない。した
がって、本件生命共済契約の締結に当たり、被申立人に、本件生命共
済の年齢制限に関する事項についての情報提供や説明において、仮に
被申立人からの情報の提供や説明に何らかの不十分、不適切な点があ
ったとしても、特段の事情が存しない限り、これをもって損害賠償請
求権の発生を肯認し得る違法行為と評価することはできないものと
いうべきである。
【事案Ⅱ-14】自然災害共済金請求
・ 平成 25 年 2 月 5 日
裁定終了
<事案の概要>
建物が大雪による損害を受けたとして請求したが、雪害が原因ではないと
して自然災害共済金が支払われないことへの不服として申立てがあったもの。
<申立人の主張>
被申立人は、自然災害共済金 2,257,500 円を支払え、との判断を求める。
(1)申立人は平成 24 年 3 月、申立人所有物件の水漏れを確認し、被申立
人に連絡した。被申立人の鑑定人が現場確認をした結果、屋根の集合煙
突のコーキングが劣化し割れていることが確認された。
(2)鑑定人より「屋根自体は外見からは損害は見受けられないが、雪災の
可能性は否定できない」との説明を受けたが、その後、被申立人より、
雪災ではなく集合煙突根元のコーキング劣化による水漏れのため支払
対象外との通知文がきた。
(3)今回の災害が雪災でないことの証明を被申立人に求めたが、明確な回
答は無かったので、さらに、鑑定結果に基づいて実際に集合煙突にホー
スで水をかけてどこが原因かを調べるよう被申立人に提案したが拒否
された。
(4)鑑定人が現場確認した際、雪災の可能性は否定できないと言っていた
ことを被申立人に追及すると、「そんなことは言っていない」と否定し
た。目視で分からない損害は出さないと約款に書いてあるのかと問うた
が、返答は無いままだった。
(5)申立人は今回の被害は大雪によるものと考えており、被申立人は申立
人に対して自然災害共済金を支払うよう求める。
37
<共済団体の主張>
申立人の請求を棄却する、との判断を求める。
(1)外部鑑定会社による現場調査の結果、屋根金属板と煙突廻り金属板の
取合い部にコーキング劣化部分があり亀裂が生じていたが、屋根には積
雪過重による変形等の損害は確認できなかったため、共済約款に記載さ
れている「雪災」には該当せず、共済金支払非該当と判断した。
(2)原因調査費用は約款上、規定がないため、本件漏水にかかる調査費用
を負担することはできない。
<裁定の概要>
審議会では、申立人および共済団体から提出された書面に基づき審議した
結果、下記理由により、申立人の請求は認められないとの裁定をし、裁定手
続きを終了した。
(1)申立人によれば、本件建物は昭和 58 年 3 月に建築された建物であり、
平成 24 年 3 月に本件水漏れが確認された時点で築後 29 年間を経過して
いる。また、一番最近のコーキング工事は平成 17 年とみられ、申立人
がコーキング工事をしてから少なくとも 6 年 9 か月を経過しており、そ
の後本件水漏れまでの間に 7 回の冬を経過していることが認められる。
(2)次に積雪荷重による屋根の破損・変形等があったか否かについては、
被申立人が依頼した外部鑑定会社の調査によっては、破損や変形は確認
できなかったとされている。他方、申立人が変形ありとしてその証拠と
している証拠資料によっても、具体的変形の内容が指摘されておらず、
また双方から提出された写真を見ても変形の事実を示すものは確認で
きない。
(3)逆に、申立人が求めている損害の根拠としている見積書を見る限り、
トタン撤去工事及びルーフ 23K 貼の面積と建物の延べ床面積を比較す
ると、この見積書の内容は、事実上屋根の全面貼替工事であり、このこ
とは逆に 2 棟の屋根全体の老朽化を窺わせるものとみることもできる
ものである。
(4)本件水漏れの原因は、上記のように、屋根の破損・変形等の状態が確
認されていない状況、コーキングの亀裂等の劣化状態が見受けられるこ
と、更には、水漏れ個所が煙突周囲からの水漏れと考えられる場所であ
ること、などから、屋根上の積雪が、屋内及び煙突からの熱により融雪
水としてプールされ、それが、いわゆる、すが漏れ(屋根材等に溜まっ
た積雪や氷が起因となって生じる雨漏り)と同じ原理によって、煙突周
囲のコーキングの劣化により毛細管現象によって水漏れが起こったと
推測することが可能である。
38
(5)本件で、厳密な事実認定をするにはさらなる鑑定調査が必要であるが、
しかしながら、屋根の破損・変形等の事実が認定できず、上記のように、
すが漏れ的現象による水漏れとの理解が可能であることから、本件にお
ける全証拠を検討しても、現在の証拠からは、本件を雪災による水漏れ
損害が生じたという認定をすることはできない。
39
Ⅲ
その他
(該当事案なし)
Ⅳ
申立不受理
(該当事案なし)
40
Author
Document
Category
Uncategorized
Views
1
File Size
480 KB
Tags
1/--pages
Report inappropriate content