外断熱構工法の外装タイル仕上げの変形追従性に関する実験的研究 深澤 協三 【(社)日本建設業経営協会 中央技術研究所】 立花 正彦【未来科学部建築学科】 1.はじめに 押出しポリスチレンフォ ーム(外断熱材) RC壁 近年、RC造建物において、躯体の老朽化防止・室内の結露防止等の点から、外断熱工法の採用例が増加している。RC躯体 の外側に直接断熱材を張付ける密着工法は、コスト・施工性には優れるが集合住宅の外装材として多用されるタイル仕上げ を採用しにくい。その理由として、火災時に断熱材が焼失により外装タイルが一気に落下してしまうことが挙げられる。 そこで図1に示す通り、タイル落下防止の為のネットを打ち込んだ外断熱材(押出法ポリスチレンフォーム)をが開発され た。本研究では、この断熱材を用いた外装タイル張り仕上げの地震時における変形追従性について実験的に検討すること を目的とする。 グラスファイバー繊維 外装タイル 2.試験体計画 400 1800 3-D19 450 ポリマーセメントモルタル D10 @100 6 陶磁器質タイル 15 15 ポリマーセメントモルタル 80 900 115 115 D10 @100 押出法 ポリスチレンフォーム D10 @100 図1.工法概要 表1. 材料強度 RC躯体 400 試験体は図2に示す通りスパン 1800mm、高さ900mm、厚さ80mmの RC壁を対象とする。 RC壁の片面では、RC躯体に直接 陶磁器質タイルを圧着工法によっ て貼り付ける。もう一方の面では、 RC躯体にグラスファイバー押出法 ポリスチレンフォームをポリマー セメントで貼り付け、さらに押出 しポリスチレンフォートの表面に タイルを貼付ける。 表側 3-D19 裏側 (壁筋) 外断熱タイル張り仕上げ 部位 壁筋 図2. 試験体の形状・寸法 材質 SD295.4 径 D10 図3. 試験体の断面 σy 374.5 σu 502.1 (コンクリート) σc(N/mm2) 30.9 材質 Fc21 3.実験方法 1)加力方法 加力装置を図4及び写真1に示す。同図に示す通り反力フレームを固定し、壁頂部側の加力梁にせん断力 を載荷する。 載荷は正負繰り返し漸増載荷とする。層間変形角(R=δ/H,δ:見かけのせん断変形、H:内法高さ) 1/1000,1/500,1/300,1/200radの正負繰り返し載荷(繰り返し回数は各加力サイクルとも3回)を行う。 2)測定項目 試験体の測定項目を以下に示す。 ①荷重変形 ②層間変形 ③せん断変形 ④コンクリート、直貼タイル外断熱側タイル表面歪(3方向ゲージ による) 実線:正加力時 :タイル直貼側 点線:負加力時 900 1800 写真1.実験状況 図4.加力装置 800 600 せん断力(kN) 1)破壊状況 実験終了時のひび割れ発生状況を図5及び写真2に示す。また、R= 1/600時の直貼側・外断熱側のひび割れ発生状況を図6に示す。図5,6に示 す通りタイル直貼面ではR=1/1000加力時にせん断ひび割れを生じ、その 後の繰返し載荷により両対角線方向にせん断ひび割れの発生する。 外断熱材側ではタイル面に発生するひび割れはR=1/600の加力サイク ルであり、タイル直貼面とは異なり、タイル目地に沿ったひび割れであり、ま たその本数も少ない。外断熱材側で顕著になるのはR=1/200の加力サイ クルである。 また。R=1/200の加力サイクル終了時の両面のひび割れを比較すると、 直貼面でせん断ひび割れが卓越している。 なお、R=1/200の第2サイクル目で壁脚部でスリップ破壊が発生する。 2)荷重変形関係 試験体に載荷したせん断力と層間変形の関係を図7に示す。R=1/1000 加力サイクルのQ=366kNで壁にせん断ひび割れが発生する。その後繰り 返し載荷とともにひび割れの進展・本数の増加に伴い剛性低下を生じる。 また、R=1/200の第2サイクル目で大幅な体力低下を生じるがこれは壁脚 部にスリップ破壊の発生によるものである。 3)せん断変形 載荷したせん断力と層間変形RC壁のせん断変形、外断熱側タイル表面 で測定したせん断変形の比較を図8に示す、RC壁のせん断変形はR= 1/1000~1/600では層間変形の約2/3を占めている。 一方、外断熱側ではR=1/400まではほとんどせん断変形が発生せず、R =1/200でも層間変形の1/5程度の変形となっている。 ひび割れ状況及びせん断変形より外断熱材RC躯体と外装タイル材間の 変形に対する絶縁材として作用し、躯体の変形に伴うタイルひび割れ低減 効果が得られている事が考えられる。 :外断熱側 アクチュエータ- 1/1000 ▽ 1/600 ▽ 1/200 ▽ 1/400 ▽ 400 200 0 -5.0 -4.0 -3.0 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 -200 3.0 4.0 -400 -600 :外断熱側 :タイル直貼側 -800 実線:正加力時 図7.荷重変形曲線 点線:負加力時 直貼り面 RC壁 外断熱面 全体変形 図6.ひび割れ状況(R=1/600) 800 600 1/200 ▽ 1/400 1/600 ▽ 1/1000 ▽ ▽ 400 200 0 -5.0 -4.0 -3.0 -2.0 -1.0 0.0 -200 1.0 -400 2.0 3.0 4.0 変形(mm) -600 -800 図8.せん断変形 (外断熱側) 写真2.最終ひび割れ状況 5.0 変位(mm) 図5.最終ひび割れ状況 せん断力(kN) 4.実験結果 回転防止治具 (直貼側) 5.まとめ RC躯体と外装タイル材間にポリマーセメントモルタルを用いて貼付けた外断熱材は躯体層間変形に伴い断熱材・タイルとも剥離・剥落を発生しない。また外版熱材は躯体・タイ ル間の絶縁材として作用し、躯体変形に伴う外装タイルのひび割れ低減効果を得られる。 5.0
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