- 1 - 「電気パン」の電気的特性と安全性の実験的評価† Experimental

「電気パン」の電気的特性と安全性の実験的評価†
Experimental Evaluation of the Electrical Characteristics and Safety of 'Denki-Pan'
松岡 守*
岩瀬仁志**
手嶋由和**
Mamoru MATSUOKA
Hitoshi IWASE
Yoshikazu TESHIMA
早川ひとみ**
脇田圭造**
尾本保明**
Hitomi HAYAKAWA
Keizou WAKITA
Yasuaki OMOTO
川口博之**
平山雄一**
松村和俊**
Hiroyuki KAWAGUCHI
Yuuichi HIRAYAMA
Kazutoshi MATSUMURA
宮間 敬**
川口元一*
Kei MIYAMA
Motoichi KAWAGUCHI
脚注)
* 三重大学教育学部
** 三重大学教育学部(学生)
† 1999 年 11 月本学会東海支部17 回研究発表会(岐阜大学)に発表
1.緒言
10cm角程度の容器の両側に電極を設け,ホットケーキの素を流し込んで100Vの
交流電圧を印加するとジュール熱でホットケーキの素自体が発熱し,焼き上がるとホット
ケーキの素の電気抵抗が大きくなって自動的に通電が止まるという,いわゆる「電気パン」
の実演は,技術や理科のおもしろい実験としてしばしば教育の現場で実施されている。代
表的な実践例では,容器に牛乳パックを利用し,ステンレス板が電極として使われている。
こうした実践は,工作,理科ないし技術の電気の分野,さらには家庭科の食品を組み合わ
せた複合的な実験と言える。焼けてゆく様子は子どもらの興味を引きつけるもので,格好
の実験のように一見思われるが,ちょっとした条件の違いで生焼けになってしまうといっ
た実験遂行上のノウハウの問題が挙げられている。また実験後にできたホットケーキを生
徒にも食べさせるのが普通であるが,電極付近に黒い微粒子ができることなど,食品とし
ての安全性に対する疑問も時折話題となっている。このように,電気パンはこれまでも多
くの所で教材として用いられ,現在もその状況は変わっていないと思われるが,教材とし
て利用するに先立ち解決しておくべき部分が残っている。そこで本研究では実験的に生焼
けになる場合がある理由を調べ,かつ食品としての安全性を評価した。
電気パンの実践の仕方に関する資料はたくさん出ている1)∼5)。文献1)には歴史的な
経緯や,関連する実験の記述がある。以下にこの文献を主に参考にして電気パンの概要を
記した。
-1-
電気パンの器具はかつて敗戦直後には市販されていた。その構造は木製の容器の相対す
る側面に銅かブリキの電極を取り付けたもので,焼き上がったパンが取り出しやすいよう
に底板が取り外せるように工夫されていた。大きさは口径9cm×15cm,深さ 9cm 程度の
直方体で,電極の取り付け面は短辺,長辺両方のタイプが存在した。また,あるメーカー
はこの原理を用いた電気炊飯器の開発を行っていたとの事である。現在,教材として用い
られている代表例は牛乳パックを容器とした手作りのものである。牛乳パックの上部を切
り去って立方体状の容器とし,この中にアルミホイルやステンレス製の一対の電極を対向
するように差し込んで市販のホットケーキの素を流し込んで焼く,というのが最も一般的
な手法のようである。牛乳パックを用いたこの電気パンについては,用いるホットケーキ
の素の種類,調理の仕方(卵や牛乳,塩を入れるか否か)
,電極材料,かき混ぜ方により,
さらにはほぼ同じ条件でも生徒の班毎に成功,
失敗の生じる場合があると報告されている。
この他にも,同様の原理を用いた実践として,カップラーメンに電極を差し込んで作る「電
気ラーメン」
,塩サンマの頭部と尾部に電極を取り付けて焼く「電気焼き魚」といった試
みもされている。電気ラーメンはスープが黒くなることが報告されており,これらも電気
パンと同じく食用として安全性に疑問がある。
本論文ではまずこのいわゆる電気パンの再現実験を行い,うまく焼けたり焼けなかった
りする理由を明らかにした。また電気ラーメンに関連する実験も行い,その結果を考慮に
入れてこの種の実験における食品としての安全性を考察した。
2.実験方法
2.1 電気パン
実験は以下のように教育現場で現在最も普通に行われている手法に倣って実施した。図 図 1
1のa)実験装置の回路図及びb)同写真に示したとおり,非常に簡単なものである。容 a, b
器には牛乳パックの底部を高さ7cmでカットしたものを用いた。牛乳パックは口径が7
cm×7cmであるので,上部の開いた立方体の形状となる。側面4面のうち,相対する
側面1対について7cm×7cmの内面一杯に電極を取り付けた。電極材料としては,1)
牛乳パックと同じくキッチン内にあり入手しやすいことから電気パンの実験に良く用いら
れるアルミホイル(厚み12μm)
,2)0.3mm厚のアルミニウム板,3)0.3m
m厚のステンレス板の3種を用いて実験をし,電極材料による結果の差異を調べた。銅板
電極を用いた実験も文献にあるが,銅が溶けだしてホットケーキが変色することが報告さ
れており,食用に適さないのが自明と考えて本研究では実験を実施しなかった。ホットケ
ーキの素は小麦粉とベーキングパウダーが主成分であるが,その他の成分はメーカーによ
りまちまちであり,詳しい成分が明示されていないものもある。またベーキングパウダー
そのものも成分はメーカ毎に異なる。そこで上記の電極の差異を調べる実験ではホットケ
-2-
ーキの素は特定の1社のものに固定して行った。パッケージに表示されている作り方に倣
って200gのホットケーキの素に水150ccを加えて良く練ったものを容器の1/3
の深さまで入れ,交流100V,60Hzをかけて電流の時間変化と焼き上がりの様子を
調べた。
また,上記の電気パンの実験結果を踏まえてその補助的な実験として,ホットケーキの
素と電極材料を接触させて加熱する実験,およびベーキングパウダー水溶液に通電する実
験も行った。その実験方法の詳細は次の実験結果の章で結果とともに示した。
2.2 電気ラーメン模擬実験
電気ラーメンの場合に電流が流れるのは,主にスープの塩分に伴うイオン電流と考えら
れることから,簡単のために食塩水で模擬実験を行った。容器は電気パンと同じ大きさに
カットした牛乳パックを用いた。電極も同じ形状でステンレス板とアルミニウム板につい
て行い,電極材料による違いを調べた。アルミホイルはこの実験では用いなかった。食塩
水はステンレス板の場合重量濃度1.25%,アルミニウム板の場合重量濃度0.42%
のものを100cc流し込み,電気パンと同じく,交流100V,60Hzをそのままか
けて電流,食塩水と電極の様子を調べた。また溶液中にガラス製の温度計を差し込み温度
変化を調べた。
3.実験結果
3.1 電気パン
図2に電極材料による通電電流の時間変化の違いを示した。アルミホイルの場合は電流 図 2
は0.75A(従って投入電力は75W)から徐々に上昇するが1分を過ぎたところから
減り始め,通電開始後5分でほぼ0Aとなった。アルミニウム板の場合は開始電流は変わ
らないが電流が最大となる時刻がアルミホイルより遅く,通電開始後約2分で1.15A
となり,その後減少して約8分で電流が0Aとなった。ステンレス板の場合は開始電流が
0.9Aと大きく,また通電開始後2分時の最大電流も1.45Aと他より大きくなった。
その後電流は減少するが3分で再び少し増加し,その後ゆっくり減少するものの通電電流
がほぼ0Aとなる10分直前まで比較的大きな電流が継続した。投入された電力量はこの
グラフの面積からそれぞれ,アルミホイル:12.2kJ(kW・s)
,アルミニウム板:
28.9kJ,ステンレス板:58.7kJと,電極材料により大きな違いが見られた。
図3にa)アルミホイル,b)アルミニウム板,c)ステンレス板の場合の焼き上がり 図 3
の写真を示した。うまく焼けたのはステンレス板の場合だけで,特にアルミホイルの場合
は生焼けとなった。ステンレス板の場合はホットケーキの素が膨らんで容器の高さ近くま
で盛り上がった。アルミニウム板の場合もこれに準じたものであったが,取り出して中身
-3-
を調べてみると固まっていない部分があった。アルミホイルの場合は電極付近だけが少し
固くなっただけで大半がどろどろで,そのままの形で容器から取り出すこともできなかっ
た。
アルミホイルの場合は実験途中で電極とホットケーキの素の電極との接触面との間で何
か所か点状に輝くスポット放電が見られた。実験後取り出したホットケーキの素の接触面
には黒い粒々が付着していた。同様の付着物はアルミニウム板の場合にも見られたが,点
状の放電は確認できなかった。ステンレス板の場合は点状の放電,付着物とも見られなか
った。
図4に実験後のa)アルミホイル,b)アルミニウム板,c)ステンレス板の電極面の 図 4
様子を示した。撮影は指先で軽く表面をこすってホットケーキの素の付着を取り除いた上
で行った。アルミホイルはホットケーキの素にくっついて破れやすく,片側の電極の破れ
ずに残った部分だけを示した。下部のホットケーキの素に接していた面が白くくすんでい
るのがわかる。この状況はアルミニウム板も同様であるが,アルミニウム板の場合はホッ
トケーキが焼け進んで盛り上がるので白くくすむ範囲も上に広がっているのがわかる。ス
テンレス板の場合はこのような変色は見られなかった。
アルミホイルやアルミニウム板を電極として用いた場合に見られた黒い粒々や電極面が
白くくすむ現象は,1)加熱に伴うホットケーキの素と電極との間の化学反応,2)通電
に伴う化学反応,のいずれかが考えられる。そこでこれらを確かめるための補助的な実験
を行った。
まず加熱に伴う単純なホットケーキの素と電極との間の化学反応かどうかを確かめるた
めに,フライパンの上にアルミホイル片ないしアルミニウム板片を置き,その上にホット
ケーキの素を流し込んでフライパンを電熱器で加熱した。その結果,ホットケーキの素は
正常に焼き上がり,
アルミホイル片ないしアルミニウム板片の表面に変化は生じなかった。
つまり黒い粒々や電極面が白くくすむ現象は,単なる加熱に伴うホットケーキの素と電極
との間の化学反応ではないことがわかった。
次に通電に伴う化学反応かどうかを確かめるために以下の補助実験を行った。簡単のた
めにホットケーキの素ではなく成分のはっきりしているベーキングパウダーを用いた。た
だし,ベーキングパウダーもメーカーによって成分が異なるので,成分による差も調べる
ために表1の3種について比較実験を行った。
(1)
の薬局扱いの重曹は別にして,
(2)
,
(3)のベーキングパウダーは重曹(炭酸水素ナトリウム)以外にも様々な成分を含んで
おり,メーカーにより種類,成分比とも大きく異なることがわかる。これらを100cc
の水に溶かし,電気パンの場合と同様に牛乳パックに流し込んで通電した。溶解させた量
は表1に示したとおりでそれぞれ異なるが,これは(1)から(3)の順に実験を行った
際,その前の実験を元に電流値が適当な値になるように調整したことによる。得られた結
果は表1に示したようにそれぞれ少しずつ異なるものとなった。薬局扱いの重曹では数秒
-4-
表1
で電流が流れなくなった。実験後電極を取り出して調べると白くくすんだ絶縁膜が形成さ
れていた。この状況は(2)
,
(3)のベーキングパウダーでも同様であるが,電流停止に
至るまでの時間が長く,また溶液内ないし電極面に黒い粒々が生じる点が異なる。この実
験から,電気パンでアルミホイルやアルミニウム板を電極として用いた場合に生焼けにな
るのは,重曹水溶液の通電に伴う化学反応でアルミニウム表面に酸化膜が形成されて通電
が阻害されるためであり,また黒い粒々は重曹以外の成分の追加に伴い,同じく通電に伴
う化学反応で生じるものであることがわかった。
3.2 電気ラーメン模擬実験
電気パンの実験ではステンレス板を電極に用いた場合に電極の損傷がなかったので,電
気ラーメン模擬実験の場合もステンレス板なら損傷を受けないと思われた事からまずステ
ンレス板で実験を行い,次いでアルミニウム板でも実験を行った。ステンレス板では電流
が過大となったため,アルミニウム板の実験では食塩水の濃度を1/3にした。
得られた結果を表2にまとめた。ステンレス板の場合は電流が過大となったために通電 表 2
開始後60秒で,アルミニウム板の場合は電極からの泡の発生が激しいため90秒で通電
を停止した。ステンレス板,アルミニウム板に関わらず食塩水の濃度に応じた大きな電流
が流れ,溶液の温度も上昇したようである。ステンレス板の場合には通電開始初期より溶
液が茶褐色に変色し,実験後電極面を観察したところ電極面も茶褐色に変色していた。そ
の様子はステンレス板ではなく鉄板が錆びた状態と同等に見える。アルミニウム板の場合
は通電開始初期より電極面から激しく泡が発生し,実験後電極面を観察したところ電極面
の光沢がなくなっていた。以上の様子から交流にも関わらず電気分解を起こしていること
が明らかである。
4.考察
4.1 生焼けの原因
3.1の実験から明らかなように,電極材料がアルミニウムの場合は通電に伴って不導
体酸化膜が形成されるのが生焼けの主原因と考えられる。ホットケーキの素の成分はメー
カーによって異なるため,導電率が異なること,および酸化膜の形成までの時間にずれが
生じる事が現象を複雑にしていたと考えられる。本論文に示した実験ではアルミニウム板
を電極に用いた場合は生焼けの部分が少し残ったが,ほぼ同様の条件で(条件の差異は不
明)完全に焼き上がった場合もあった。文献1)には「塩分を加えると急激に焼き上がる
がきめが粗くて焦げ目ができ・・・」とある。つまり導電率が高めで酸化膜が十分形成さ
れる前に焼き上がるか否かにより焼き上がりに違いが生じたものと考えられる。電極材料
がステンレス板の場合は不導体酸化膜が形成されないために電極の形状(面積と間隔)と
-5-
ホットケーキの素の導電率とが適切な関係になるように選べば常にうまく焼き上げること
ができると考えられる。
アルミホイルとアルミニウム板とで焼き上がりに違いが生じた原因は不明である。アル
ミホイルは光沢のある面とない面があるが,アルミホイルを裏返して取り付けても焼き上
がり方は同様であった。アルミホイルは柔らかいためホットケーキの素との間に隙間がで
きやすいためかも知れない。
この他に電極の片側付近だけが少し焼け,他はほとんど生の状態となる場合もあった。
交流印加であるが,たまたま片側が先に焼けるとそれがさらに促進されるといった帰還が
生じてこのような非対称性が生じたものと思われる。
4.2 食品としての安全性
3.1の実験より,アルミニウムを電極として用いた電気パンの場合は通電に伴う重曹
の化学反応で酸化膜が生じ,かつ電極付近に重曹以外の成分のある場合に黒い粒々が生じ
た。重曹(NAHCO3)でホットケーキが膨らむのは
2NAHCO3 → NA2CO3 + H2O + CO2(↑)
という反応で炭酸ガスが生じることによる。アルミニウムの炭酸塩は不安定で通常存在し
ないので,アルミニウム製の電極表面に生じた酸化膜は電気分解により生じた(水)酸化
物Al(OH)3ないしAl2O3のいずれかと考えられる。一般に交流では電気分解が起
こりにくくなるが,60Hz程度の低周波では条件によって電気分解が起こる。これは本
実験でも明らかであるが,電解質溶液の導電率測定には電気分解を防ぐために1000H
z程度の交流が使われていることからも明らかである。同時に生じた黒い粒々も重曹以外
の成分の追加に伴う電気分解の何らかの生成物と考えられる。
一方,電気パンの実験では一見電極面の変化がなく,また黒い粒々も生じなかったステ
ンレス板も,食塩水の通電実験では激しく腐食した。ホットケーキの素には多少は塩分が
含まれている可能性があり,従って一見変化の見られなかったステンレス板の場合もわず
かに腐食して電気パン(ホットケーキ)の中に混入した可能性がある。黒い粒々も問題で
あるが,ホットケーキの素の成分はメーカーにより多様であるので,ここで得られた以外
の生成物が生じる可能性もある。さらにメーカーによっては全成分を明記していない場合
もあるので通電に伴って生成される成分をあらかじめすべて知って食品として安全かどう
かを確かめるのは困難である。当初生成物の分析を行おうと考えたが,この理由により本
研究では実施しなかった。文献の中にはステンレス板を用いて,かつ黒い粒々を避けるた
めに電極付近をカットすれば電気パンで作ったホットケーキを食べても大丈夫としている
ものもある。実際おおむね大丈夫なのかも知れないがこれは乱暴な結論であろう。本来食
用として想定していない,組み合わせによりどのような生成物が混入しているかわからな
いものができるものであるので,化学反応の起こりにくい白金電極でも用いない限り,実
-6-
験後食用に供するのは避けるべきであると考えられる。
電気ラーメンも文献に「スープが少し黒くなる」とあるのはステンレス電極が通電によ
り腐食しスープに溶け出すためで,やはり食用に供するべきではないと考えられる。電気
焼き魚は電極を取り付けた頭部と尾部取り払えば実際上大丈夫のように思えるが胴部に本
来食用として想定していない生成物が通電により生じる可能性が否定できないので同様に
食用に供するべきではないと考えられる。また,電気焼き魚は電気椅子的な面もちがあり,
子どもたちの情操教育的な見地からも教材として採用するのを避けるべきではないかと考
える。
5.結論
本研究は三重大学教育学部技術教育講座の電気領域を専門とする研究室に配属となった
3年生のゼミとして実施したものである。実験は非常に単純で,元々はうまく焼ける条件
を見つけてみんなで食べようと言うつもりで始めたものであるが,結果的には以下のよう
に,現在でも各所で実施されている電気パンの実験に注意を促す示唆に富んだ結論を得る
こととなった。
電気パンの実験で生焼けになることがあるのは通電により電極面に絶縁膜が形成されて
電流が阻害されることが主原因であることがわかった。従って,通電により絶縁膜を生じ
ない材質の電極を用いて,かつ通電電流が適切となるように電極間隔とホットケーキの素
の電気伝導度の関係を保てば再現性良く焼くことができそうである。ステンレス板を電極
に用いると絶縁膜が生じないのでうまく焼くことができる。
ステンレス板の場合は食用としての安全性も実際上問題がないように見えた。しかしな
がら食塩水の通電実験では電気分解が生じてステンレス板は激しく腐食し,食塩水は茶褐
色になった。これはホットケーキの素に塩分等が含まれていれば同様の事が多少なりとも
生じることを示している。ホットケーキの素の成分が明らかであればどういう材質の電極
を用いれば通電に伴って余計な生成物ができないか,あるいは生成物ができてもそれが食
用として安全かどうかを調べることは原理的に可能である。しかしながら市販のホットケ
ーキの素の成分はメーカーによってまちまちであり,なかにはすべての成分を明記してい
ないものもあるので,すべてについてこうした調査は実際上困難で,科学的に安定な白金
電極等を用いない限りは食用に供するには不安がある。つまり,電気パンの実験は子ども
らにとって非常に興味深いものではあるが,もともと食品として想定していない化合物の
生まれる可能性のあるこの実験では,実験後これを食用に供するのは避けるべきであると
考えられる。この結論は電気ラーメン,電気焼き魚についても同様である。
謝辞
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三重大学教育学部理科教育講座新居淳二助教授,家政教育講座磯部由香助教授,及び富
山大学を中心とした技術教育メーリングリストのメンバーの方々には参考となる情報をお
寄せいただきました。ここに記して感謝の意を表します。
文献
1)左巻健男編著:理科 おもしろ実験・ものづくり完全マニュアル,東京書籍,
pp.2126,1993
2)ガリレオ工房・滝川洋二編著:物理がおもしろい,日本評論社,
pp.43-50,1995
3)本間明信,小石川秀一,菅原義一編:イベントを盛り上げる化学実験お楽しみ広場,
新生出版,pp.78-79,1992
4)愛知・岐阜物理サークル:いきいき物理わくわく実験,新生出版,
p.115,1988
5)田辺守男:たのしい授業,仮説社,
No.188(1997 年 10 月号)
,pp.58-61
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図の説明
図1
実験装置
a)回路図
b)写真
図2
電極材料による通電電流の時間変化の違い
図3
電気パンの焼き上がりの状況
a)アルミホイル
b)アルミニウム板
c)ステンレス板
図4
電気パンの実験後の電極の様子
a)アルミホイル
b)アルミニウム板
c)ステンレス板
表の説明
表1
比較試験に用いたベーキングパウダーと得られた結果
表2
電気ラーメン模擬実験結果
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