北海道札幌視覚支援学校 2015.9.30発行第２号耳で映画を楽しもう自立活動部花尻真由美私たちの身の回りには映画やドラマ、インターネットによる動画配信など、映像娯楽があふれています。視覚に障がいがあるとそれらを眼で見て楽しむことはできませんが、最近、「シネマデイジー」というものが少しずつ増え、耳で映画を楽しむことができるようになってきました。「シネマデイジー」の話をする前に、まず「デイジー」について簡単に説明しましょう。「デイジー」とは、視覚障がい者など文字を読むことが難しい人のための音声録音図書の国際標準規格で、この規格に沿って製作されたデジタル録音図書を「デイジー図書」といいます。デイジー図書には様々なメリットがありますが、中でもページや見出しに素早く移動できるのが最大の特徴で、「聞きたい場所を探すのに時間がかかる」というカセットテープの欠点が克服されています。また、長編小説など、カセットテープでは10巻以上になっていたものも１枚のCDにまとめて録音することができます。「シネマデイジー」とは、映画のサウンドに登場人物の表情や動作、画面の様子を説明する音声解説を付けてデイジー形式で製作されたものです。私たちが映画を観賞するとき、台詞のないシーンなど、主音声だけでは分かりにくい場面がたくさんありますが、場面転換、情景などの解説が加わることで、映像のイメージがぐっと広がります。１度見た映画をシネマデイジーで聞き直してみると、「あのシーンはそういうことだったのか」と新たな発見がいっぱいです。「シネマデイジー」の入手方法は２つあります。１つは、日本点字図書館や日本ライトハウス情報文化センターからCDを借りて、パソコンやプレクストークで再生する方法です。一般のCDプレイヤーでは再生できませんので、ご注意ください。もう１つは、「サピエ」というホームページからデータをパソコンにダウンロードし、プレクストークまたはデイジー図書に対応している市販のICレコーダー（オリンパスボイストレックDM4など）に転送して再生する方法です。参考までに、９月７日～９月14日までの１週間にサピエからダウンロードされたシネマデイジーのベスト５を紹介します。第１位第２位第３位第４位第５位｢ふしぎな岬の物語｣｢超高速！参勤交代｣｢サクラサク｣｢ティファニーで朝食を｣｢壬生義士伝｣この他にも、「アナと雪の女王」、「釣りバカ日誌１～12 」、「ハリー・ポッターシリーズ（第１巻～第４巻）」、「フランダースの犬劇場版」など、洋画・邦画の名作・話題作が190タイトル登録されています。サピエの会員登録及びデータのダウンロードは全て無料です。「シネマデイジー」で検索すると結果がリストアップされますので、好きな映画が見つかったらぜひ１度聴いてみてください。 ■「障害者差別解消法」が来年４月より施行されます。間もなく施行される本法について簡単にご紹介します。 ○概要 ①国の行政機関や地方公共団体等及び民間事業者等による「障害を理由とする差別」を禁止すること。 ②差別を解消するための取組みについて政府全体の方針を示す「基本方針」を作成すること。 ③行政機関ごと分野ごとに障害を理由とする差別の具体的内容等を示す「対応要領」・「対応指針」を作成すること。 ○障害を理由とする差別とは？障害を理由として、正当な理由なく、サービスの提供を拒否したり、制限したり、条件を付けたりするような行為。例えば、障害を理由として、サービスの提供や入店を拒否すること。また、障害のある方から何らかの配慮を求められる意思の表明があった場合には、負担になり過ぎない範囲で社会的障害を取り除くために必要で合理的な配慮（代筆や読み上げなど）を行うことが求められます。こうした配慮を行わないことで障害のある方の権利利益が侵害される場合も差別に当たります。 ○本法のポイント不当な差別的取扱い国の行政機関・地方公共団体等民間事業者障害者への合理的配慮禁止法的義務禁止努力義務 ○障害を理由とする差別があった場合役所に相談を受け付けてくれる窓口があります。 ○差別した会社・お店への対応障害者にどのような対応をしたのか役所に報告するよう求められたり、差別をしないよう注意されることがあります。「障害者差別解消法リーフレット」より便利グッズ紹介 ■ｉ ‐ Ｐｅｎ（アイペン）：ペン型のボイスレコーダー特殊印刷されたシールに接触させて、その後ボタンを押しながら音声を録音すると、ペンでシールに触れる度に録音した内容を聞くことができます。音楽CDのケースや薬の箱など身の回りの物を識別するのに役立ちます。録音内容はマイクロ SDカードに保存されます。付属の４GBカードに約555時間録音可能。シールは 4000枚付属します。販売は、日本点字図書館。価格は、20,370円。 ■光チェッカー「ピコ」：感光器部屋の明るさなどをブザーで教えてくれます。明るさをブザーの音色で教えてくれるタイプと、６種類のステップ式で教えてくれる２つのタイプがあります。幅 18㎜・長さ 60㎜・厚さ 17㎜、重さは 18ｇと小型軽量で、ストラップ付きです。使い方は非常にシンプルで、センサー部を対象の方向に向け、本体側面のボタンを押します。電源はスーパーキャパシターという大きなコンデンサーを使用しており、充電池のような劣化は起こりません。１回の充電で連続５分動作します。充電は乾電池４本の専用充電器を使用し約１分間で満杯になります。製造・販売は、ジャパンエレキット・アイサポート倶楽部。価格は、 2,200円。 ■クローバー３：電子ルーペ株式会社タイムズコーポレーションから、軽量かつコンパクトな電子ルーペの新製品が発売されました。画面サイズは３インチ。倍率は、被写体に乗せた場合約 3.8～約 16倍、約 3.5時間充電で約 3～ 4.5時間連続使用可能。カラーモードは、カラー・白黒・白黒反転・黒黄。静止画可能。大きさは約90×72×22㎜。重さ約100ｇ。価格は、29,800円。 ■にじいろリーダー：音声色彩識別装置本体のセンサー部を色を知りたい対象物に当てボタンを押すと、約40種類の色を識別します。代表的な色だけでなく、「とてもこい青」「うすい赤」など微妙な色の違いも区別します。光や LED にも対応しており、充電ランプの確認などにも役立ちます。音声の大きさは４段階で調節できます。大きさは約42㎜×70㎜×15㎜。重さ約38ｇ。単４乾電池１本で駆動。開発は米国。輸入販売元は(株)アメディア。価格は19,800 円。以下に紹介する物品は、自立活動室にあるものです。 ■Ｖｉｅｗｎａｌ：遮光眼鏡オーバーグラスまぶしさの主な原因である青色光は、波長が短く乱反射しやすい特性があります。遮光眼鏡は、この青色光を選択的にカットする効果があり、視界を暗くすることなく、見たいものをクリアに見せててくれます。オーバーグラスは眼鏡の上からかけられるタイプで、学校には５色用意しています。その他、トライアルキットもありますので、冬を前に購入等を検討している方は一度自立活動部員にご相談ください。 ■よむべえ：音声拡大読書器｢よむべえ｣は読ませたい本や原稿を本体上部の読み取り部に乗せて、エンターキーを２回押すだけですぐに音声化してくれます。スキャナの精度が高く、読み上げも非常に滑らかです。また、テキストファイルやワードファイルの読み上げを初め様々な機能があります。