桜の花エキス - オリザ油化株式会社

ORYZA OIL & FAT CHEMICAL CO., LTD.
桜の花エキス
SAKURA EXTRACT
抗糖化・美白・美肌・アンチエイジング・ヘアケア
食品,化粧品素材
■
桜の花エキス−P
(水溶性粉末,食品用途)
■
桜の花シロップ
(水溶性液体,食品用途)
■
桜の花エキス−PC
(水溶性粉末,化粧品用途)
■
桜の花エキス−LC
(水溶性液体,化粧品用途)
Ver.5.0 MM
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
抗糖化・美白・美肌・アンチエイジング素材
桜の花エキス
SAKURA EXTRACT
1. はじめに
桜は日本を象徴する花として古くから親しまれ,様々な施設の植木や街路樹として
愛されています。厳しい冬の終わりとともに,一斉に樹木全体へ花を咲かせる光景は
圧巻であり,日本はもとより海外においても,桜は富士山と並んで日本の美をイメー
ジさせる代表的存在といえます。
桜の語源は日本書紀の神話に登場する「コノハナノサクヤビメ(木花咲耶姫)」と
言われており,大変美しい地の女神であったとされています。「アマテラス(天照大
神)」の孫である「ニニギノミコト(瓊瓊杵尊)」は天孫降臨(葦原の地を統べるため
に天から降りた)時に,コノハナノサクヤビメのあまりの美しさに一目で恋に落ち,
妻にしたと日本書紀には記載されています。ニニギノミコトは農耕の神として信仰さ
れ,妻であるコノハナノサクヤビメは豊穣の神と解釈されています。これは,桜の花
が日本の初期農耕社会において,その年の農事を占う花であったことから生まれた神
話であったと考えられています。1) また,コノハナノサクヤビメは富士山の神様とし
ても知られ,日本全国で約 1300 社ある浅間神社で主祭神として祭られており,ご神
木として桜が奉納されています。
堂本印象『木華開耶媛』
(1929 年)京都府立堂本印象美術館蔵
1
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日本書紀にも記載され,古代より続く伝説を彩るように,桜の花は日本を象徴する
に申し分ない花として,日本人の心に深く根付いた花です。あでやかな中にも気品が
あり,日本の伝統美を想起させる花でもあります。奇しくも桜はバラ科の植物で,バ
ラが西洋の美しさを象徴するならば,桜は日本の美しさを象徴するものといえます。
国際的にもその美しさが認知され,桜 Sakura は日本らしい美のイメージを世界に発
信し続けています。しかしながら,桜の花は開花から散るまでの期間が短いことから,
今まで食品・化粧品等への応用は限定的なものにとどまっていました。オリザ油化で
は原料調達の難点を解決し,世界で初めて,バルクとして安定供給可能な桜の花エキ
スの上市を実現させました。
オリザ油化では,この生命の息吹を感じさせる桜の花の成分や機能性に注目し,研
究を行いました。桜の花からフェニルプロパノイドの配糖体であるカフェオイルグル
コース(1-caffeoyl-O-β-D-glucopyranoside)や,フラボノイド配糖体であるケルセチ
ングルコシド(quercetin 3-O-β-D-glucopyranoside)を含むエキスを抽出し,その機能
性を調べた結果,シワやたるみの原因になるコラーゲンの糖化を抑制する抗糖化作用
や線維芽細胞のコラーゲン格子形成の増加作用などが認められました。
美や女性,和,気品,春など,情緒的価値を極めて連想しやすい素材である桜を,
科学的な根拠と併せて,美容食品や化粧品,季節品などの機能性原料として幅広くご
利用ください。
参考文献
1) 福島千賀子: 学校法人佐藤栄学園埼玉短期大学研究紀要, 4, 11-22 (1995)
2
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目 次
1. はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
2. 抗糖化とは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
2-1.
老化とAGEs
4
2-2.
生体内でのメイラード反応
5
2-3.
AGEsによる肌トラブル
5
3. 桜の花エキスの含有成分と機能性・・・・・・・・・・・・・・・・
7
3-1.
含有成分
7
3-2.
AGEs産生抑制作用
8
3-3.
線維芽細胞内のAGEs生成に及ぼす作用
10
3-4.
線維芽細胞のコラーゲン格子形成増加作用
11
3-5.
線維芽細胞のアポトーシス抑制作用
13
3-6.
B16メラノーマ細胞によるメラニン生成抑制作用
15
3-7.
チロシナーゼ活性阻害作用
15
3-8.
コラーゲン産生促進・マトリックス形成促進
16
3-9.
抗炎症作用
18
3-10.
臨床試験 1)経口摂取 2)外用(塗布)
19
3-11.
ヘアケア
25
3-12.
ビジュアルデータ
29
4. 安定性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
31
4-1.
熱安定性
31
4-2.
水溶性
31
4-3.
pH安定性
32
4-4.
液剤安定性
32
4-5.
コラーゲンとの配合相性
32
5. 安全性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
33
5-1.
残留農薬
33
5-2.
急性毒性(LD50)
33
5-3.
変異原性試験(Ames 試験)
33
5-4.
代替法による皮膚一次刺激性試験(EpiSkin 法)
33
5-5.
代替法による眼刺激性試験(HCE 法)
33
5-6.
貼付試験(パッチテスト)
34
5-7.
皮膚累積刺激及び感作試験(RIPT)
34
6. 栄養成分・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
34
7. 桜の花エキスの推奨摂取量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
35
8. 応用例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
35
9. 荷姿・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
35
10. 保管方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
36
11. 表示例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
36
3
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2. 抗糖化とは
2-1. 老化とAGEs
老化の原因の大部分は,長い年月にわたって細胞における分子レベルのダメージが
蓄積していくことにあります。その代表は酸化によるダメージです。もう一つのダメ
ージ,それが糖化であり,生体内タンパク質のコラーゲンやエラスチンの糖化反応は,
肌に大きな影響をもたらします。
糖がアミノ酸やタンパク質と結合,重合,分解などを繰り返し,褐変物質メラノイ
ジンに変化することを「糖化(メイラード反応)」と言います(図 1)。例えば,パン
やホットケーキを加熱するとキツネ色になります。これがメイラード反応の一例です。
体内ではタンパク質は糖と結合する性質を持ち,分解されにくい物質を形成します。
これを【AGEs(Advanced Glycation End Products)】と呼び,日本語では終末糖化産
物と訳されます。AGEs は年齢を重ねると共に,徐々に体内に溜まっていき,様々な
老化現象を引き起こすことが報告されています。
(OH)
R−CHO + H2N−R
糖
アミノ酸
(カルボニル化合物)
(アミノ化合物)
R−C=N−R
R −C=CH−NH−R
シッフ塩基
アマドリ化合物
分解,重合,縮合
種々のカルボニル化合物
分解,重合,縮合
AGEs
高分子化合物
褐変物質
低分子化合物
香気成分
e
n
i
s
y
L
H
O
O
C
HC
N
2
H
+
N
N
H
H
N
N
e
n
i
n
i
g
N r
H A
2
H
C
4
)2
H
C
(
H
O
O
C
カルボキシメチルリジン
ペントシジン
(Pentosidine )
(CML )
図 1 メイラード反応の概要と代表的な AGEs
4
H
O
3
)
H
O
H
O
O O
C 4
)
2
2
2
H H H
H H
HC (
C N C C (
C C
N
2
H
etc.
フルクトセリシン
(Fructoselysine )
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2-2. 生体内でのメイラード反応
生体内では,コラーゲンやエラスチンなどのタンパク質に糖が結合するメイラード
反応が常に起こっています。その全容は未だ十分には解明されていませんが,ヒトの
皮膚は加齢を重ねると,AGEs が蓄積していくことが明らかになっています。こうな
るとコラーゲンやエラスチンなどのタンパク質は本来の役割を失い,肌に老化現象が
起こります(図 2)。つまり,加齢により AGEs が皮膚に蓄積すると,肌にハリや弾力
が無くなることを意味します。
ハリ・ツヤ
正常な肌
●
コラーゲン
マトリックス
●
●
細胞
●
●
●
コラーゲン
タンパクと
糖が結合・重合
シワ・くすみ
老化肌
●
●
●
●
(糖化)
死細胞
●
変性コラーゲン
コラーゲンマトリックスの破壊
図 2 糖化による皮膚の老化
2-3. AGEsによる肌トラブル
AGEs はコラーゲンと結合,重合し,体内で異物と判断されるため,分解酵素(コ
ラゲナーゼ,エラスターゼ)の分泌量が増え,AGEs を分解,排出しようとします。
この時,AGEs よりも正常なコラーゲン,エラスチンがターゲットとなり,分解が促
進してしまうことで,肌のシワやたるみ,くすみの原因となります(図 3)
。
真皮のコラーゲンマトリックスが破壊
されることにより皮膚の老化
が生じる。
表皮
真皮
AGEs
線維芽細胞
死を誘導
AGEsを分解しようとする酵素
が,正常なコラーゲン,エラス
チンも破壊
図 3 AGEs により引き起こされる肌トラブル
5
コラーゲン
マトリックス
と線維芽細胞
皮下
組織
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〇糖尿病患者
●健常人
皮膚中アミノ酸のPentsidine比率
皮膚中アミノ酸のCML比率
AGEs は加齢と共に体内に蓄積していくことも知られています。Dyer2)らは,糖尿病
患者と健常人で,皮膚コラーゲン中に蓄積されている AGEs を調査し,加齢と AGEs
蓄積に相関性があることを報告しています。この報告では,コラーゲンの構成要素で
あるアミノ酸中に,AGEs 化したものがどのくらい含まれるか,アミノ酸(リジン)
総量と,代表的な AGEs であるカルボキシメチルリジン(CML)とペントシジン
(Pentsidine)の割合を分析しています。
〇糖尿病患者
●健常人
図 4 加齢と糖尿病に伴う皮膚コラーゲン中の AGEs 蓄積量
AGEs はコラーゲンを産生する線維芽細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導するこ
とが知られています。
また,AGEs は,ヒアルロン酸,コラーゲン,エラスチン等に悪影響を与え,肌の
老化に関与しています。さらにシミ,そばかすの原因にもなると言われており,美容
科学の分野でも注目が集まっています。
加齢による肌トラブルを抑制する「抗糖化」は,老化現象の予防になり,若々しい
肌を保つひとつの手立てになります。
オリザ油化では,桜の花エキスが,酸化反応を介さない AGEs 産生(例えば、グリ
オキサールからの CML 産生)を抑制する作用,更には AGEs が誘導する線維芽細胞
のアポトーシスを抑制する作用にも注目した実験を行っています。
参考文献
2) Dyer D.G. et al. Accumulation of maillard reaction products in skin collagen in diabetes
and aging. J. Clin. Invest., 91, 2463-2469 (1993).
6
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3.
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桜の花エキスの含有成分と機能性
3-1. 含有成分
オリザ油化と京都薬科大学の共同研究で桜の花の含有成分に関する研究を行った
結果,フェニルプロパノイドの配糖体であるカフェオイルグルコース(1-caffeoyl-Oβ-D-glucopyranoside)や,フラボノイドであるケルセチングルコシド(quercetin 3-Oβ-D-glucopyranoside)などが含有されていることを世界で初めて見出しました(図 5)。
OH
HO
O
O
OH
O
O
OH O
HO
O
OH
OH
OH
OH
HO
O
OH
OH
OH
カフェオイルグルコース
OH
ケルセチングルコシド
OH
HO
O
O
O
O
O
HO
O
OH O
HO
O
OH
OH
OH
O
OH
OH
OH
クマロイルグルコース
HO
O
OH
OH
OH
シンナモイルグルコース
ケンフェロールグルコシド
OH
OH
HO
O
HO
OH
O
O
O
OH O
OH O
O
O
O
HO
O
HO
O
OH
OH
OH
O
O
O
OH
OH
OH
ケルセチンマロニルグルコース
OH
ケンフェロールマロニルグルコース
図 5 桜の花エキスの含有成分
7
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3-2. AGEs産生抑制作用
桜の花エキスとその成分の AGEs 産生阻害作用を調べるため,代表的な糖であるグ
ルコースと生体内タンパク質であるアルブミンの混液に,桜の花エキスやそのエキス
中の主要成分を添加し,60℃で 2 日間インキュベートしました。3,4)
その結果,桜の花エキス 100 µg/mL 以上で有意な AGEs 産生抑制作用が認められま
した。また含有成分であるカフェオイルグルコースとケルセチングルコシドについて
は,10 µg/mL 以上で有意な AGEs 産生抑制作用が認められました(表 1,図 6)。
桜の花エキス中に微量に含有され,カフェオイルグルコースの水酸基が少ない構造
を持つ成分である,クマロイルグルコース及びシンナモイルグルコースでは,カフェ
オイルグルコースと比較して,AGEs 産生阻害活性が弱いことが分かりました。
これに対し,フラボノイド配糖体の活性は総じて強く,規格成分であるケルセチン
グルコシドの活性は,同じくフラボノイド配糖体である,ケンフェロールグルコシド
の 2 倍以上(IC50 で)の高い活性を示しました。またフラボノイドはケンフェロール
及びケルセチン共に,アグリコンでも高い活性を示しました。
表 1 桜の花エキス及び含有成分の AGEs 産生抑制
AGEs 産生抑制率(%)
桜の花エキス
カフェオイルグルコース
3(µg/mL)
10
-14.6±0.7
-10.8±0.4
30
100
IC50
300
-9.9±0.6
15.1±0.7**
42.6±3.2**
0.9±0.1
10.7±0.1**
19.5±0.3**
25.0±0.3**
30.0±0.4**
クマロイルグルコース
-8.2±0.1**
-8.6±0.1**
-8.9±0.1**
-3.7±0.1**
11.6±0.1**
シンナモイルグルコース
-10.4±0.1
-10.9±0.4*
-7.8±0.1
5.7±0.1
23.3±0.4**
ケンフェロールグルコシド
-9.1±0.2**
-2.0±0.1
19.4±0.1**
45.0±0.5**
80.3±0.7**
6.5±0.1*
27.6±0.5**
49.8±0.7**
74.2±1.1**
100.8±0.6**
-8.5±0.1
0.2±0.1
20.5±0.3**
50.8±0.4**
91.7±1.7**
1.9±0.1
20.4±0.3**
43.7±0.7**
74.6±0.7**
103.9±3.6**
−
1.4±0.1
18.1±1.1
42.6±1.7**
67.7±1.6**
カフェ酸
6.0±0.1
17.9±0.3**
19.3±0.5**
0.4±0.1
-5.7±0.1**
クマル酸
-19.7±0.5
-7.4±0.5
-14.5±0.1
29.9±0.7*
91.8±27.3*
ケイヒ酸
-4.9±0.3
1.9±0.1
7.2±0.6
28.2±2.2*
52.7±4.1**
ケンフェロール
6.9±0.5*
30.4±2.8**
61.5±7.5**
87.5±7.2**
98.2±7.3**
-22.2±1.0
4.5±0.1*
38.9±1.4**
96.1±4.3**
−
ケルセチングルコシド
ケンフェロールマロニルグルコシド
ケルセチンマロニルグルコシド
塩酸アミノグアニジン(対照)
ケルセチン
(µg/mL)
>300
>300
>300
>300
102
30
78
36
138
165
259
21
32
* 塩酸アミノグアニジンは糖化抑制の医薬品です。
各値は 3 例の平均値と標準誤差で示した。アスタリスクはサンプル未処理群との Dunnett の多重比較検
定による有意差*: p < 0.05, **: p < 0.01 を表す。
8
AGEs 産生抑制率 (%)
桜の花エキスカタログ
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60
**
50
**
40
**
30
20
**
**
**
10
0
100
300
桜の花エキス
10
30
カフェオイル
グルコース
10
30
ケルセチン
グルコシド
濃度(µg /mL)
各値は 3 例の平均値と標準偏差で示した。
アスタリスクはサンプル未処理群との有意差**:p < 0.01 を表す。
図 6 桜の花エキス及び含有成分の AGEs 産生抑制作用
参考文献
3) Lee E.H. et al. Inhibitory effect of the compounds isolated from Rhus verniciflua on
aldose reductase and advanced glycation endproducts. Biol. Pharm. Bull. 31, 1626-1630
(2008).
4) Nakamura K. et al. Acid-stable fluorescent advanced glycation end products:
Vesperlysines A, B, and C are formed as crosslinked products in the Maillard reaction
between lysine or proteins with glucose. Biochem. Biophys. Res. Commun. 232, 227-230
(1997).
9
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Ver.5.0MM
3-3. 線維芽細胞内のAGEs生成に及ぼす作用
桜の花エキスとその規格成分の細胞内 AGEs 生成に及ぼす作用を調べました。5,6) ヒ
ト正常二倍体線維芽細胞に糖化刺激作用のある中間糖化物(グリオキサール)とサン
プルを添加し,5 日間培養後に抗 AGEs 抗体で AGEs の検出を行いました。その結果,
グリオキサールによる AGEs の増加に対し(Control と Non の比較),桜の花エキスは
10 µg/mL で AGEs の生成を強く抑制しました。カフェオイルグルコースも 1 及び 10
µg/mL で AGEs の生成を抑制しました。一方,ケルセチングルコシドも AGEs の生成
を抑制しましたが,カフェオイルグルコースより弱い作用でした。以上の結果から,
桜の花エキスとカフェオイルグルコースは,AGEs 形成経路において酸化反応を介さ
ない AGEs 生成反応を抑制することが判明しました。また,桜の花エキスの細胞内
AGEs 生成抑制作用には,カフェオイルグルコースの寄与が高いことが判明しました。
5) Kueper T. et al., Vimentin is the specific target in skin glycation. J. Biol. Chem. 282,
23427-23436 (2007).
6) Cantero A.V. et al., Methylglyoxal induces advanced glycation end product (AGEs)
formation and dysfunctionof PDGF receptor-β: implications for diabetic atherosclerosis.
FASEB J. 21, 3096-3106 (2007).
Control より AGEs のバンドが薄く,生成を抑制している。
Non
Control
10
100
1
桜の花エキス
10
100 µg/mL
カフェオイルグルコース
バンドの色が Control とほぼ同じであることから,主要成分であるカフェオイルグル
コースのほうが AGEs 産生抑制作用が強い。
Non
Control
1
10
100 µg/mL
ケルセチングルコシド
図 7 桜の花エキスとその成分の細胞内 AGEs 産生抑制
10
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3-4. 線維芽細胞のコラーゲン格子形成増加作用
線維芽細胞をコラーゲン溶液存在下で培養すると,コラーゲン格子の形成が認め
られます。また,この系に糖化刺激作用のある中間糖化物(グリオキサール)で糖化
した線維芽細胞を添加するとコラーゲン格子の形成が抑制されます。7) しかしながら,
グリオキサールと同時に,桜の花エキス (100, 1000 µg/mL)を線維芽細胞に添加すると,
コラーゲン格子の形成促進が認められました。したがって,桜の花エキスは線維芽細
胞の糖化を抑制し,真皮細胞外マトリックス中のコラーゲンと線維芽細胞の「絡みつ
き」を正常に保つ働きがあることが示唆されました(図 8,9)。
7) Kueper T. et al. Vimentin is the specific target in skin glycation. J. Biol. Chem. 282,
23427-23436 (2007).
11
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白いもやが
線維芽細胞の
伸展突起と
コラーゲン格子
Normal (中間糖化物無添加)
桜の花エキス 100 µg/mL
(中間糖化物添加)
Control (中間糖化物添加)
桜の花エキス 1000 µg/mL
(中間糖化物添加)
図 8 24 時間後の各ウェルの肉眼像
Normal と比較して
Controlは線維芽細胞
数が少ない。
写真全体に線維芽細胞
が確認できる。
数える程しか線維芽細胞
が確認できない。
Normal
Control
桜の花エキスを
Controlに添加する
と,線維芽細胞が伸
展突起(↓)を形成
する。
伸展突起の伸張が
伸展突起の伸張が
見られる。
伸長突起が細胞間
伸長突起が細胞間
を満たしている。
桜の花エキス 100 µg/mL
桜の花エキス 1000 µg/mL
図 9 24 時間後の各ウェルの鏡検像
12
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3-5. 線維芽細胞のアポトーシス抑制作用
皮膚内に生じた AGEs は,皮膚細胞に障害を与えます。皮膚の主要な AGEs の 1
つである carboxymethyl lysine (CML)-collagen による線維芽細胞のアポトーシス(細胞
死)に対する桜の花エキス及び含有成分の作用を調べました。8) その結果,桜の花エ
キスやカフェオイルグルコース,ケルセチングルコシドの添加によって,アポトーシ
スの指標であるカスパーゼ活性が低下し,特にカフェオイルグルコースとケルセチン
グルコシドで強い活性の低下が認められました。したがって,桜の花エキスやその成
分は,AGEs による皮膚細胞の障害やアポトーシスを抑制し,肌の老化に有効である
と考えられました(表 2,図 10)。
表 2 桜の花エキス及び含有成分の線維芽細胞アポトーシスに及ぼす作用(カスパーゼアッセイ)
アポトーシス抑制率(%)
桜の花エキス
1(µg/mL)
3
10
−
−
61.8±2.6
100
77.1±4.2*
カフェオイルグルコース
26.2±0.5*
37.6±1.2
72.2±2.7*
−
クマロイルグルコース
17.2±0.5
7.1±0.2
51.1±1.9
−
シンナモイルグルコース
-11.8±0.3
19.7±0.9
48.6±2.9
−
ケンフェロールグルコシド
-0.7±0.1
27.9±1.1
100.7±4.2
−
ケルセチングルコシド
44.2±1.5*
39.0±1.1*
121.5±5.4**
−
ケンフェロールマロニルグルコシド
-18.9±0.6
-17.3±0.6
10.5±0.5
−
ケルセチンマロニルグルコシド
21.8±0.7
36.6±1.4
98.4±4.4*
−
塩酸アミノグアニジン(対照)
−
−
−
104.8±34*
* 塩酸アミノグアニジンは糖化抑制の医薬品です。
各値は 5 例の平均値と標準誤差で示した。アスタリスクは CML-collage を添加したサンプル未処理群との Dunnett
の多重比較検定による有意差*: p < 0.05, **: p < 0.01 を表す。
8) Alikhani Z. et al. Advanced glycation end products enhance expression of pro-apoptotic
genes and stimulate fibroblast apoptosis through cytoplasmic and mitochondrial pathways.
J. Biol. Chem. 280, 12087-12095 (2005).
13
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アポトーシス抑制率 (%)
%)
140
140
線維芽細胞のアポトーシス抑制率(
120
120
100
100
*
*
80
*
*
80
60
60
40
*
40
*
20
20
0
0
10
10 100
11
10
10
1
桜の花エキス
カフェオイル
**
**
*
*
11
10
ケルセチン
グルコシド
グルコース
濃度(µg /mL)
)
各値は 5 例の平均値と標準偏差で示した。
アスタリスクはサンプル未処理群との有意差**:p < 0.01,*:p < 0.05 を表す。
図 10 桜の花エキス及び含有成分の線維芽細胞アポトーシスに及ぼす作用
桜の花エキスの抗糖化作用に関する掲載文献
1)Shimoda H., Nakamura S., Morioka M., Tanaka J., Matsuda H., Yoshikawa M. Effect of cinnamoyl and
flavonol glucosides derived from cherry blossom glowers on the production of advanced glycation end
products (AGEs) and AGE-induced fibroblast apoptosis. Phytotherapy Res. 25, 1328-1335 (2011).
2)下田博司 5 サクラ 糖化による疾患と抗糖化食品・素材 米井嘉一監修 シーエムシー出
版社 pp. 195-200 (2010).
14
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
3-6. B16メラノーマ細胞によるメラニン生成抑制作用
メラニン生成に対する桜の花エキスの影響を検討しました。
B16 メラノーマ細胞に桜の花エキスを添加し,3 日間培養後,細胞を超音波破砕し
て吸光度を測定し,メラニン生成率を算出しました。その結果,桜の花エキスは濃度
依存的にメラニン生成を抑制する傾向が認められました。
桜の花エキスのメラニン生成率をアルブチン(β型)及びアスコルビン酸グルコシ
ド(ビタミン C)と比較したところ,アルブチンより生成率は高く,アスコルビン酸
グルコシドとは同程度でした。
したがって,桜の花エキスはアスコルビン酸グルコシドと同等のメラニン生成抑制
作用を有すると考えられました。
表 3 B16 メラノーマ細胞におけるメラニン生成率
メラニン生成率(% of Control)
0 µg/mL
1 µg/mL
3 µg/mL
100±1.7
96.2±2.8
94.9±1.2
桜の花エキス
100±3.7
95.5±1.5
87.9±1.3
アルブチン
100±3.2
97.9±0.3
94.6±1.0
アスコルビン酸グルコシド
10 µg/mL
90.0±3.5
84.6±0.5
90.2±0.5
3-7. チロシナーゼ活性阻害作用
チロシナーゼ活性阻害率(%)
メラニン生成過程における律速酵素であるチロシナーゼ活性に対する桜の花エキ
スの影響を検討しました。
桜の花エキスは濃度依存的かつ有意にチロシナーゼ活性を阻害しました。したがっ
て,桜の花エキスはチロシナーゼ活性阻害によりメラニン生成を抑制する可能性が示
唆されました。
60
**
50
40
**
30
**
20
**
**
10
0
1
3
10
30
100
1000
濃度(µg/mL)
図 11 桜の花エキスのチロシナーゼ活性阻害(平均値 ± 標準誤差,n = 5,**: p< 0.01)
15
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
3-8. コラーゲン産生促進・マトリックス形成促進
ヒト正常二倍体線維芽細胞に対して,桜の花エキス(30, 100 µg/mL)を添加し,3
日間培養しました。その後,細胞外に分泌され培養プレートに付着・蓄積した I 型コ
ラーゲンタンパクをウェスタンブロッティング法で検出しました。一方,細胞内の I
型コラーゲン発現については,ウェスタンブロッティング法でタンパクを,RT-PCR
法で mRNA をそれぞれ調べました。その結果,図 12 上図に示すように,分泌 I 型コ
ラーゲン量は桜の花エキス(30, 100 µg/mL)処理により,増加しました(上段のバン
ドが濃くなっている)。また,細胞内の I 型コラーゲンも桜の花エキス(30, 100 µg/mL)
処理により増加しました(中段のバンドが 10, 30 µg/mL で濃くなっている。下段の
GAPDH は比較対照タンパク)。この時,mRNA レベルでも発現量の増加が確認され
ました(図 12 下図)。
桜の花エキスの含有成分についても,RT-PCR で I 型コラーゲンの mRNA 発現に及
ぼす作用を調べましたが,カフェオイルグルコースやケルセチングルコシドには,発
現促進がみられなかったことから,ポリフェノール以外の水溶性成分がコラーゲン増
加に関与しているものと考えられます。
I型コラーゲンmRNA発現
m RNA発現量
( β - ac t in で 補正)
3
2.06
2.5
2
1.5
1.69
1.86
30
100
1.00
1
0.5
0
0
10
桜の花エ キス濃度 (µg/ m L)
図 12 桜の花エキスの線維芽細胞における I 型コラーゲン産生促進作用
上:コラーゲンタンパク,下:mRNA(平均値 ± 標準誤差,n = 4)
16
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
皮膚の真皮内では,線維芽細胞と分泌されたコラーゲンなどの細胞外基質が,マト
リックスを形成しています。そこで,桜の花エキスの線維芽細胞とコラーゲンとのマ
トリックス形成に及ぼす作用を調べました。線維芽細胞にコラーゲンを添加して培養
すると,リング状でゲル質のマトリックスが形成されました(図 13)。一方,桜の花
エキスと培養した線維芽細胞に,コラーゲンを添加したところ,マトリックスの凝集
が認められました。この現象は,桜の花エキスの主成分「カフェオイルグルコース」
を線維芽細胞に作用させたときに,より顕著に見られました。
弊社ではすでに,桜の花エキスの糖化された線維芽細胞とコラーゲンによるマトリ
ックスの形成回復作用を報告していますが,この実験結果より,正常な線維芽細胞に
おいてもコラーゲンとのマトリックス形成を促進させることが判明しました。
桜の花エキスはコラーゲンとの相性が非常に良い素材であると考えられます。皮膚
の真皮ケアに,コラーゲンなどとの併用をお勧めします。
図 13 桜の花エキスとその主成分「カフェオイルグルコース」の線維芽細胞とコラ
ーゲンによるマトリックス形成促進
17
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
3-9. 抗炎症作用
NO濃度( µM)
炎症反応は,①マクロファージ,T-cell,多形核白血球などの炎症性細胞と血管内
皮細胞から,一酸化窒素(NO)とスーパーオキサイドが産生される過程と,②NO と
スーパーオキサイドが反応して強い細胞傷害活性を持つパーオキシナイトライトが
生成する過程を経て起こることが知られています。炎症性細胞のうち抗原提示細胞と
して中心的な役割を果たすのがマクロファージですので,マクロファージの NO 産生
量は炎症反応の重要な指標と考えられます。そこで,マクロファージ様 RAW264.7 細
胞を用い,LPS 刺激による NO 産生に及ぼす桜の花エキスの作用をグリース法によっ
て確認しました。
その結果,桜の花エキスは,10∼100 µg/mL の濃度において,NO 産生を抑制しまし
た。また,桜の花エキスに特に多く含まれ,規格成分でもあるカフェオイルグルコース
は,1∼100 µg/mL の濃度において,NO 産生を抑制しました(図 14)
。
以上より,桜の花エキス及び主成分であるカフェオイルグルコースは,LPS によるマ
クロファージの活性化を抑制して NO 産生を抑制することで,抗炎症作用を示すと考
えられました。
35
30
25
20
15
10
5
0
###
**
Cont. LPS
1
3
***
***
10
30
***
100
Indo
桜の花エキス濃度(µg/mL)
NO濃度( ⎠ M)
50
40
###
*
30
20
**
***
***
***
10
30
100
10
0
Cont. LPS
1
3
Indo
カフェオイルグルコース濃度(⎠ g/mL)
図 14 桜の花エキス及びカフェオイルグルコースの NO 産生抑制作用
### :Cont.と比べて,p<0.001
**
:LPS 群と比べて,p<0.01
*** :LPS 群と比べて,p<0.001
Indo :Indomethacin ( 8.9 µg/mL ), n = 5-6
18
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
3-10. 臨床試験 (抗糖化作用)
1)経口摂取
桜の花エキスについてプラセボ対照二重盲検試験によるヒト臨床試験を行い,桜の
花エキスの肌状態改善作用を検証しました。
具体的には,化粧のノリや肌のたるみ,肌の乾燥が気になる,または肌の老化を有
する,ないしは実感する 30 代∼50 代の日本人女性 20 名を被験者とし,10 名ずつを
桜の花エキス群及びプラセボ群に割り付けました。桜の花エキス群の被験者には桜の
花エキス 150 mg/日を,プラセボ群の被験者にはデキストリン 150 mg/日を,8 週間
継続して毎朝食後に摂取していただきました。
その結果,桜の花エキス 150 mg/日を 8 週間摂取することで,①AGEs 量の低下と
②皮膚粘弾性の低下抑制,③シミと赤い部分の減少,④毛穴の増加抑制,⑤湿度低下
に伴う肌乾燥の抑制,⑥肌のすべすべ感の改善などが認められました。
最終糖化産物である AGEs は,肌の重要な構成分子であるコラーゲンを変成させ,
コラーゲンの機能を低下させると考えられています。桜の花エキスは,皮膚 AGEs 量
の低下を介してコラーゲン変性を防ぐことでコラーゲン組織の機能を維持し,肌粘弾
性や肌の乾燥,すべすべ感など肌状態を総合的に改善すると考えられました。
①AGEs 量
蛍光分光方式 AGE リーダーを用いて,AGEs 量を測定しました。AGE リーダーは
心臓疾患や糖尿疾患,腎臓疾患などの研究への応用が期待されており,非侵襲的に生
体内 AGEs 量を測定できる点で画期的な測定装置です。
AGEs 量は,桜の花エキス摂取群において 8 週間で約 7 %低下し,有意な低下が認
められました。一方,プラセボ群では約 3 %低下しましたが,有意な変化は認められ
ませんでした(図 15)。
生体内 AGEs 量は,20 歳から 80 歳にかけて 1.5 から 2.5 に増加し,45 歳で中間値
の 2.0 となることが報告されています。9) そこで,桜の花エキス摂取群において,初
期 AGEs 量が 2 以上と 2 未満で層別解析を行いました。その結果,初期 AGEs 量が 2
以上の層では AGEs 量が約 8 %低下し,有意な低下が認められました。一方,初期 AGEs
量が 2 未満の層では有意な変化はありませんでした(図 16)。
したがって,桜の花エキスはヒトにおいて AGEs 低下作用を有し,その作用は AGEs
量が高い方に発揮されると考えられました。
19
桜の花エキスカタログ
AGEs量 (AU)
2.2
Ver.5.0MM
桜の花エキス群
プラセボ群
2.1
**
2.0
1.9
1.8
摂取前
摂取後
図 15 AGEs 量の変化 (** : p < 0.01)
AGEs量 (AU)
2.4
初期AGEs2以上
2.2
初期AGEs2未満
**
2.0
1.8
1.6
摂取前
摂取後
図 16 AGEs 量の変化(層別)(** : p < 0.01)
②皮膚粘弾性(R0)
プラセボ群では,試験終了後に皮膚粘弾性が約 13%低下し,有意な低下が認められ
ました。一方,桜の花エキス摂取群では,皮膚粘弾性が約 6 %低下したものの有意な
変化は認められませんでした(図 17)。
したがって,桜の花エキスには,季節変動によるものと思われる皮膚粘弾性の低下
を抑制する作用があると考えられました。
皮膚粘弾性(AU)
0.30
桜の花エキス群
プラセボ群
0.25
0.20
**
0.15
0.10
摂取前
摂取後
図 17 皮膚粘弾性の変化 (** : p < 0.01)
20
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
③シミと赤い部分(VISIA Evolution による顔面画像解析)
VISIA Evolution を用いて顔面画像解析を行い,「シミ」と「赤い部分」の変化を測
定しました。その結果,桜の花エキス摂取群では,シミが約 7 %,赤い部分が約 15 %
低下し,有意な低下が認められました。一方,プラセボ群では有意な変化はありませ
んでした(図 18,19)。
in vitro 実験において,桜の花エキスにはチロシナーゼ活性抑制やメラニン生成抑
制など美白作用があることが確認されています。桜の花エキスは生体内においてもこ
れらの作用を発揮し,シミと赤い部分を減少させる可能性が示唆されました。
2.6
桜の花エキス群
プラセボ群
シミ
2.4
*
2.2
2.0
1.8
1.6
摂取前
摂取後
図 18 シミの変化 (* : p < 0.05)
赤い部分
2.0
*
1.5
桜の花エキス群
プラセボ群
1.0
0.5
0.0
摂取前
摂取後
図 19 赤い部分の変化 (* : p < 0.05)
④毛穴(VISIA Evolution による顔面画像解析)
VISIA Evolution を用いて顔面画像解析を行い,「毛穴」の変化を測定しました。そ
の結果,桜の花エキス摂取群では毛穴に有意な変化は認められませんでしたが,プラ
セボ群では毛穴が約 20 %増加し,有意な増加が認められました。(図 20)。
したがって,桜の花エキスは,季節変動によるものと思われる毛穴の増加を抑える
可能性が示唆されました。
21
桜の花エキスカタログ
2.0
**
毛穴
1.5
Ver.5.0MM
桜の花エキス群
プラセボ群
1.0
0.5
0.0
摂取前
摂取後
図 20 毛穴の変化 (** : p < 0.01)
⑤皮膚水分量
皮膚水分量は,桜の花エキス摂取群及びプラセボ群の両群で有意な低下が認められ
ました(図 21)。しかしながら,低下率は桜の花エキス摂取群で約 13 %,プラセボ群
で約 16 %であり,プラセボ群の方がより大きく低下しました。
試験が実施された 2010 年 10 月中旬から 12 月中旬は,湿度が急激に低下し,1 年
の中でも湿度が低い時期にあたります(図 22)。桜の花エキス摂取群及びプラセボ群
の両群で皮膚水分量が有意に低下したのは,湿度変化の影響を受けたからと考えられ
ますが,桜の花エキス摂取群の低下率はプラセボ群の低下率より小さかったため,桜
の花エキスには保湿作用があると考えられました。
皮膚水分量(AU)
75
桜の花エキス群
プラセボ群
70
65
**
60
**
55
50
摂取前
摂取後
図 21 皮膚水分量の変化 (** : p < 0.01)
22
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
80
湿度(%)
70
60
50
試験期間
40
30
1月
4月
7月
10月
図 22 湿度の変動(東京,2010 年)
肌のすべすべ感の増加量
⑥肌のすべすべ感
桜の花エキス摂取群及びプラセボ群の両群で,肌のすべすべ感のスコアが有意に上
昇しました。上昇率は,桜の花エキス群で約 200 %,プラセボ群で約 186 %であり,
桜の花エキス群の方がより大きく上昇しました。
したがって,桜の花エキスには肌のすべすべ感を改善する作用があると考えられま
した。
5.0
4.5
4.0
3.5
**
**
3.0
2.5
2.0
桜の花エキス群
プラセボ群
図 23 肌のすべすべ感の変化 (** : p < 0.01)
⑦考察
ヒトの肌ではコラーゲンが重要な役割を担っています。コラーゲンはヒト真皮にお
いて格子状の組織を形成し,肌の水分などの維持に重要な役割を担っていることが知
られています。最終糖化産物である AGEs の蓄積により,皮膚においてはコラーゲン
の変性や線維芽細胞のアポトーシスなどが起こり,コラーゲンの機能が低下すると考
えられています。
これまでの桜の花エキスに関する in vitro 実験から,桜の花エキスは AGEs 産生抑
制作用やコラーゲン格子形成促進作用,線維芽細胞アポトーシス抑制作用などを有す
ることが明らかとなっています。
今回のヒト臨床試験では,桜の花エキスの経口摂取により,生体内においても AGEs
量の低下や肌状態の改善などが認められました。桜の花エキスは,AGEs 量の低下を
介してコラーゲン変性を防ぐことでコラーゲン組織の機能を維持し,肌粘弾性や肌の
乾燥,すべすべ感など肌状態を総合的に改善する作用があると考えられました。
9) H.L. Lutgers et. al., Diabetes Care, December 2006
23
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
2)外用
①タンニング剤を使用した抗糖化試験
桜の花エキスの外用での抗糖化作用を,ヒトの皮膚に塗布することで評価しました。
実験ではタンニング剤により皮膚上でメイラード反応を起こさせ,皮膚褐変の抑制効
果を評価しました。
以下の表に示した対照液(コントロール)または試験品(桜の花エキス-PC 1 %含
有品)を含浸させた不織布に左前腕部の 20 分間貼付しました。その後 3 %DHAaq(タ
ンニング剤)を含浸させた不織布を 3 時間貼付し,不織布剥離 3 時間後に皮膚を撮影
しました。
その結果,図 24 に示すようにコントロールと比較して,試験品(桜の花エキス-PC
1 %含有品)ではタンニング剤による褐変が抑制されていました。したがって,桜の
花エキス-PC は塗布により,糖化反応を抑制する事が明らかになりました。
コントロール
デキストリン
アスコルビン酸
リンゴ酸
エタノール
水
試験品
桜の花エキス-PC
エタノール
水
配合比
0.69 %
0.03 %
0.03 %
50.0 %
49.25 %
配合比
1.0 %
50.0 %
49.0 %
Before
After
桜の花エキス-PC(1%)
コントロール
図 24 桜の花エキス-PC のタンニング剤による皮膚褐変に対する抑制作用
24
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
② ヒト臨床試験(シワ改善・保湿効果)
健常者 20 名(女性・35 歳以上)を対象に、桜の花エキス-PC 0.5%配合ジェル及びプラセボ(桜の花エキス無配合ジ
ェル)をハーフフェイスで 1 日 2 回 1 ヵ月間塗布し、①シワ解析 ②角層水分量・水分蒸散量測定 ③皮膚科医に
よる肌診断④アンケートを実施し、肌質改善の評価をしました。
桜の花エキス配合ジェル
無配合ジェル
塗布側
塗布側
使用前
使用前
1 ヵ月後
1 ヵ月後
【シワ改善評価】
シワ三次元解析装置(Primos 3D
/GFMesstechnik 社製)により、総シワ平
均深さ(測定範囲内のシワの平均の深
さ)と最大シワ最大深さ(測定範囲内で
最大のシワの最大の深さ)の変化を解析
ました。
桜の花エキス配合ジェル塗布で
は無配合ジェル塗布と比べ、両
シワ解析パラメーターの顕著な
減少が見られました。
【皮膚科医による目視評価】
試験開始前、被験者目尻のシワを 7 段階のシワグレード〔表 1〕でスコア化
し、1 ヵ月後の改善度を 4 段階〔表 2〕で評価しました。桜の花エキス配合ジ
ェル及び無配合ジェル塗布部位の改善度における被験者の割合を調べました。
〔表1〕
シワグレード
シワは無い
不明瞭な浅いシワがわずかに認められる
明瞭な浅いシワが認められる
明瞭なシワが認められる
やや深いシワが認めらる
明瞭な深いシワが認められる
著しく深いシワが認められる
〔表2〕
スコア
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
シワ改善評価
変化なし
わずかな改善あり
やや改善あり
顕著に改善あり
スコア
1
2
3
4
桜の花エキス配合ジェル塗布部位において過半数の被
験者にシワ改善効果が認められました。
25
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
【保湿性評価】
角層水分量測定(CORNEOMETER®)
と水分蒸散量測定(Tewameter
300®)をおこない、ジェル使用前・
後の変化を評価しました。
桜の花エキス配合ジェル塗布で
は無配合ジェル塗布と比べ、角
層水分量が増加し、水分蒸散量
の減少が見られました。
【皮膚科医による触診評価】
試験開始前、触診にて 3 段階の肌質〔表 1〕をスコア化し、1 ヵ月後の改善
度を 4 段階〔表 2〕で評価しました。桜の花エキス配合ジェル及び無配合ジェ
ル塗布部位の改善度における被験者の割合を調べました。
〔表1〕
〔表2〕
滑らかさがなく、硬くザラザラしている肌
やや柔らかく、ややなめらかな肌
柔らかく滑らかでうるおいのある肌
スコア
1
2
3
評価
変化なし
わずかな改善あり
やや改善あり
顕著に改善あり
スコア
1
2
3
4
桜の花エキス配合ジェル塗布部位において 90%の被験者
に肌質改善効果が認められました。
【アンケート】
桜の花エキス配合ジェルおよび無配合ジェルを 1 ヵ月間使用したあと、
下記 9 項目の肌質改善についてアンケートを実施しました。
Q1.
保湿性の向上
Q2.
ハリ感の向上
Q3.
肌トーンの向上
Q4.
ひきしめ感の向上
Q5.
たるみ改善
Q6.
くすみ改善
Q7.
肌のなめらかさの向上
Q8.
毛穴の開き改善
26
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
3-11. ヘアケア作用
桜の花エキスのヘアケア作用を,桜の花抽出物を用いて検討しました。以下に,毛
髪の処理方法を示します。
化学処理を行っていない同一人毛を用いて毛束を作製し,ポリオキシラウリルエー
テル硫酸ナトリウム水溶液(固形分 2.0 %)に 40℃で 30 分間浸漬し,流水洗浄後,
ドライヤーで乾燥したものを健常毛試料(Normal)としました。ブリーチ(損傷)処
理として,1%アンモニア,3%過酸化水素溶液に毛髪を浸漬し,30℃にて 40 分放置後,
流水洗浄し,ドライヤー乾燥しました。この操作を 3 回繰り返し,損傷毛髪を作成し
ました。
損傷毛髪を,固形分 1.0%に調整した桜花抽出物水溶液に浸漬し,40℃で 10 分間振
とう後,流水洗浄し,タオルドライ後ドライヤー乾燥しました。この操作を 10 回繰
り返し,桜花抽出物処理毛試料(Sakura)としました。比較として水で同様に処理し
た毛髪を損傷毛試料(Control)としました。健常毛,損傷毛髪,桜花抽出物処理毛
の各試料は,一晩室温で放置した後に評価を行った。
① 毛髪の感触評価
桜花抽出物処理による毛髪への影響を調べるため,20 本の毛髪をプレパラートに等
間隔に貼り付け, Control および Sakura の各試料毛髪表面の平均摩擦係数(MIU)と
摩擦係数の変動値(MMD)を測定しました。
その結果,図 25,26 に示すように桜花抽出物は MIU,MMD をともに改善しました。
これは桜の花エキスのコーティング効果により,キューティクルへの引っかかりが抑
えられたため,MIU,MMD の値が低くなったと考えられます。つまり,損傷した毛髪を
桜花抽出物で処理する事で,すべりが良く,なめらかな髪が保てる効果が期待できま
す。実際に触れた感覚からも,桜花抽出物で処理した毛(Sakura)では,損傷毛
(Control)に比べてしっとり感が感じられました。
27
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
すべりが良い←MIU→すべりが悪い
0.14
0.12
0.10
0.08
0.06
0.04
0.02
0.00
Sakura
Control
図 25 Fig撫
で返しの平均摩擦係数
1. 撫で下ろしの平均摩擦係数(MIU)
なめらか←MMD→ざらつく
0.0006
0.0005
0.0004
0.0003
0.0002
0.0001
0.0000
Control
図 26
Sakura
Fig
4. 撫で返しの平均摩擦係数の変動値(MMD)
撫で返しの平均摩擦係数の変動値
② 走査型電子顕微鏡(SEM)による毛髪表面の観察
桜の花エキスのキューティクル修繕作用を確認するため,走査型電子顕微鏡で損傷
毛髪(Control)および桜花抽出物処理毛(Sakura)の毛髪表面をそれぞれ 1000 倍,
2000 倍で観察しました。その結果,図 27 に示すように Control ではキューティクル
のめくれ(リフトアップ)が認められるのに対し,Sakura ではリフトアップが改善さ
れていました。
したがって,桜の花エキスは毛髪表面を保護する効果があることが電子顕微鏡によ
っても確認されました。
28
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
キューティクルのめくれ
(リフトアップ)
×2000
Control×1000
×2000
Sakura×1000
図 27
電子顕微鏡による毛髪表面の写真
③ 毛髪の保水力評価
毛髪試料(Control,Sakura)の加熱による二次蒸散水分量を測定することで,保
湿性の評価を行いました。その結果,図 28 に示す通り Control と比較して Sakura の
二次蒸散水分率は有意に高い値を示しました。
したがって,桜の花エキスは毛髪表面をコーティングするとともに,髪内部からの
水分蒸散を抑え,保水力を保つ効果があるものと考えられます。
29
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
12.0
二
次
蒸
散
水
分
率
(%)
*
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
0.0
Control
Sakura
*p < 0.05 (paired t -test)
図 28 毛髪における保湿作用
④ 毛髪のまとまり感評価
調整した 3 種の毛髪サンプル(Normal,Control,Sakura)の毛束を,湿度 47%Rh,
室温 20℃条件下で市販ブラシを用いてブラッシングを行いました。毛髪のまとまり感
は,髪の毛の広がり(まとまり)の観察と,結束部より下 5 cm の広がり幅を測定す
ることで評価しました。広がり幅の測定は,30 回のブラッシングの後,手櫛にてまと
める操作を 5 回行った時の平均で示しました。
その結果,図 29 の写真から,各試料ではブラッシング回数を増やすことで,静電
気の影響で,毛束が広がりました。特に Normal と Control は毛髪の一本一本が浮き
上がり,互いに反発しあっている様子が見られました。一方,Sakura ではこれらと比
較して,毛髪の広がりが抑えられていました。
30
桜の花エキスカタログ
Normal 0 回
10 回
20 回
30 回
Control 0 回
10 回
20 回
30 回
Sakura 0 回
10 回
20 回
30 回
図 29
Ver.5.0MM
ブラッシング後の毛髪
また,図 30 には毛髪の広がりを数値で示しました。Normal や Control と比較し,
Sakura では毛髪の広がりが抑えられ,30 回ブラッシング後の広がり幅は 1/2 程度に
まで抑えらました。つまり,桜の花エキスに毛髪がコーティングされることで,水分
が保持され,乾燥に伴う静電気の発生による毛髪の広がりが抑えられたものと考えら
ます。
結
束
部
下
50
mm
の
毛
束
幅
(mm)
70
60
50
40
Normal
Control
Sakura
30
20
10
0
0
10
20
30
ブラッシング回数(回)
図 30
毛髪のまとまり比較
31
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
3-12. 抗糖化作用のビジュアルデータ
桜の花エキスの抗糖化作用を視覚的にアピールするため,追加実験を行いました。
図 31 は,3-2. AGEs産生抑制作用で行った実験系において,紫外線を照射したも
のです。AGEs が蛍光を発しているのが分かります。これに対し,桜の花エキスの添加
により,蛍光が減弱しています。
図 31. 桜の花エキスの抗糖化作用
左:未糖化,中:糖化後,右:糖化中に桜の花エキスを添加したもの
真皮の AGEs は加齢とともに増加し、皮膚弾力の低下やくすみの原因の一つと考え
られています。また表皮中にも AGEs は存在し、肌のキメの乱れや角層の肥厚に影響
しているとの報告があります。表皮の AGE 化に関してはまだ不明な点も多いのですが、
真皮と表皮の AGE 化の挙動が異なるとの報告もあり、真皮だけでなく表皮 AGEs への
アプローチも必要であると言えます(図 32)。
表皮の AGE 化
角層
・キメの乱れ
表皮
・肌のゴワツキ
真皮の AGE 化
・肌弾力低下
真皮
・黄ぐすみ
若齢肌
老齢肌
図 32. 皮内 AGEs と皮膚の変化の模式図
32
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
そこで,今回表皮(角層)への抗糖化作用について評価を行いました。60 代男性前腕
部の角層を採取し、桜の花エキスを含む水溶液に 1 日浸漬後、AGEs を蛍光試薬で検出
しました。その結果、桜の花エキス浸漬処理したものは、未処理と比べて AGEs 量(赤
色部)が少ないことが分かりました(図 33)。
角層 AGEs 染色像
桜の花エキス
-
10 ㎎/mL
図 33 桜の花エキスによる角層 AGEs 除去作用
また 30 代女性前腕部の角層を桜の花エキスを含む水溶液と糖化刺激作用をもつグ
リオキサールの混液に 37℃で 3 日間浸漬した後、同様の検出を行いました。その結果、
グリオキサール処理により AGEs 量が増加し、グリオキサール・桜の花エキス混液処
理では、グリオキサール未処理と同程度の AGEs 量を示しました。つまり表皮中で起
きる AGEs 産生を桜の花エキスは阻害するものと考えられます。(図 34)。以上の結果
より、
『桜の花エキス』は角層中の AGEs 除去作用と産生阻害作用を持ち、真皮だけで
なく表皮においても糖化によるダメージから保護できる素材であると考えられます。
角層位相差像
角層 AGEs 染色像
グリオキサール
桜の花エキス
−
+
−
−
図 34 桜の花エキスによる角層 AGEs 産生阻害作用
33
+
10 ㎎/mL
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
4. 安定性
4-1. 熱安定性
桜の花エキス-P(水溶性粉末)の熱安定性を検討した結果,主要成分であるカフェ
オイルグルコース及びケルセチングルコシド含量は,1 時間の加熱(120℃)によって
も変化がみられず,通常の食品加工温度に対して安定であることが分かりました。
含量%(初期値を100%とした)
140
120
100
80
カフェオイルグルコース
60
ケルセチングルコシド
40
20
0
初期値
1時間後
図 35 桜の花エキス-P の熱安定性
4-2.水溶性
桜の花エキス-P を水に溶解し,室温及び 5℃で 3 日間保存後,沈殿や濁りの有無を
目視で確認しました。桜の花エキス-P の水溶性は中性域及び酸性域において高いこと
が分かりました(表 4)。推奨摂取量(50∼150mg/日)を 30 mL のドリンクに溶解し
ても問題なくお使いいただけます。
表 4 桜の花エキス-P の水溶性とその濃度(3 日)
桜の花エキス-P
中性(pH6∼7)
酸性(pH3)
水溶液濃度
室温
5℃
室温
5℃
1%
〇
〇
〇
〇
2%
〇
〇
〇
△
5%
〇
△
△
×
10%
△
×
×
×
20%
×
×
×
×
〇:透明,沈殿物なし,△:若干の濁り,沈殿あり,×:濁り,沈殿あり
34
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
4-3. pH 安定性
桜の花エキス-P(水溶性粉末)を蒸留水に溶解させ,pH 調整し,非遮光下,室温
で 1 週間保存後,桜の花エキスの主要成分であるカフェオイルグルコース含量を測定
しました。その結果,カフェオイルグルコースは,弱酸性で安定であり,中性からア
ルカリ性では,約 2 割の含量低下が見られました。
初期
1週間後
カフェオイルグルコース ,初期
値を100とした時の相対含量
(%)
150
100
50
0
3
4
5
6
pH
7
8
9
図 36 桜の花エキスの pH 安定性
4-4. 液剤安定性
桜の花エキス-P について,0.5%水溶液(pH3.5)を調製し,室温(光照射),5℃(遮
光),25℃(遮光),40℃(遮光)で 4 ヶ月保存し,沈殿,濁りの有無を目視で確認し
ました。
桜の花エキス-P の液剤安定性は酸性域において極めて高いことが分かりました。
液剤安定性(0.5%水溶液,pH3.5 条件下)
室温
5℃
25℃
40℃
(光照射)
(遮光)
(遮光)
(遮光)
沈殿
なし
なし
なし
なし
濁り
なし
なし
なし
なし
4-5. コラーゲンとの配合相性
ポリフェノール類は,コラーゲンとの混和水溶液中で,沈殿,濁りを生じ,混合配
合が難しいことが知られていますが,コラーゲン 1%,桜の花エキス 0.2%の混合水溶
液において,沈殿,濁りは見られず,コラーゲンとの配合の相性は非常に良いことが
分かりました。したがって,コラーゲンとのドリンク処方設計にも安心してご利用い
ただけます。
35
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
5. 安全性
5-1. 残留農薬
桜の花について,食品衛生法及び農薬取締法に準じて,518 項目の農薬の有無を調
べました。その結果,全項目について基準値(検出限界値)以下であることが判明し
ました。
試験依頼先:株式会社マシス 食品安全評価分析センター
試験成績書発行年月日:平成 21 年 11 月 9 日
依頼番号:34234
5-2. 急性毒性(LD50)
医薬品の単回投与毒性試験ガイドラインに従い,動物に負担のかからない許容最大
量である 2000 mg/kg の桜の花エキス(賦形剤未添加品)を,絶食下の ddY 系雌雄マ
ウス(5 週齡)に経口投与し,14 日間飼育・観察を行いました。その結果,死亡例や
体重推移の異常(対照群との比較)は認められず,試験終了後に行った剖検において
も,臓器の肉眼的異常は認められませんでした。したがって,桜の花エキスのマウス
における LD50 値(経口投与)は,雌雄ともに 2000 mg/kg 以上です。
5-3. 変異原性試験(Ames 試験)
桜の花エキス(賦形剤無添加品)について,ネズミチフス菌 TA100 及び TA98 を用
いて,Ames 試験を行いました。その結果,直接法,代謝活性化法ともに,変異コロ
ニー数の増加は認められませんでした。この結果より,桜の花エキスには変異原性は
無いものと考えられます。
5-4. 代替法による皮膚一次刺激性試験(EpiSkin 法)
桜の花エキス(賦形剤無添加品)1%水溶液について,皮膚モデル(EpiSkin)を用
いた皮膚一次刺激性試験を行いました。その結果,MTT 試験による細胞生存率変化,
IL-1αの定量値ともに ECVAM の判定基準(Risk Phrase 38)以下でした。このため,
桜の花エキスの皮膚一次刺激は無刺激性です。
5-5. 代替法による眼刺激性試験(HCE 法)
桜の花エキス(賦形剤無添加品)1%水溶液について,角膜上皮再生モデル(HCE)
を用いた眼刺激性試験を行いました。その結果,桜の花エキス 1%水溶液を暴露した
組織細胞の生存率は COLIPA 試験方法の判定基準以下でした。このため,桜の花エキ
スの眼刺激は無刺激性です。
36
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
5-6. 貼付試験(パッチテスト)
桜の花エキス(賦形剤無添加品)1%水溶液について,健常な日本人男女 18 歳以上
60 歳未満 20 名(男性 2 名,女性 18 名)でのパッチテスト行いました。
被験者背部(傍脊椎部)に,試料を含ませたパッチテストユニットを 24 時間貼付
し,皮膚刺激を観察しました。その結果,桜の花エキスの皮膚刺激指数は「許容品」
と判定されました。
5-7. 皮膚累積刺激及び感作試験(RIPT)
桜の花エキス(賦形剤無添加品)について,健常な男女 30 名での皮膚累積刺激性
試験(累積刺激及び感作試験)を行いました。
その結果,桜の花エキス(賦形剤無添加品)では,30 名の被験者全員において毒性
や刺激性,アレルギー反応は認められず,「very good」と判定されました。
したがって,桜の花エキスの使用は,好ましくない肌の反応を引き起こさないと考
えられました。
6. 栄養成分
分析項目
桜の花エキス-P
注
分析方法
水分
5.0 g / 100g
タンパク質
0.9 g / 100g
脂質
0.3 g / 100g
酸分解法
灰分
0.5 g / 100g
直接灰化法
炭水化物
93.3 g / 100g
2
380 kcal / 100g
3
エネルギー
減圧加熱乾燥法
1
燃焼法
修正アトウォーター
食物繊維
0.0 g / 100g
プロスキー法
ナトリウム
10 mg /100g
原子吸光光度法
食塩相当量
0.0 g / 100g
ナトリウム換算値
注 1) タンパク質換算係数:6.25
注 2) 計算式:100 – (水分+タンパク質+脂質+灰分)
試験依頼先:株式会社エスアールエル
試験成績書発行年月日:平成 22 年 2 月 17 日
依頼番号:第 201002030028 号
7.
桜の花エキスの推奨摂取量
一日あたり
桜の花エキス-P として,50∼150 mg の使用をおすすめします。
37
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Ver.5.0MM
8. 応用例
利用分野
食品
美容
(抗糖化,美白,美肌)
食品
化粧品
美容
(抗糖化,美白,美肌)
化粧品
訴求
剤形
飲料(清涼飲料水,ドリンク等),ハ
ードおよびソフトカプセル,タブレ
ット,キャンディー,チューインガ
ム,グミ,クッキー,チョコレート,
抗糖化,美白,美肌 ウエハース,ゼリー等
アンチエイジング
サンスクリーン,化粧水,ローショ
ン,パック,ボディジェル,シャン
プー,リンス,入浴剤等
9. 荷姿
桜の花エキス-P(水溶性粉末,食品用途)
5 kg
内装:アルミ袋
外装:ダンボール包装
桜の花シロップ(水溶性液体,食品用途)
20 kg 内装:キュービーテナー
外装:ダンボール包装
桜の花エキス-PC(水溶性粉末,化粧品用途)
5 kg
内装:アルミ袋
外装:ダンボール包装
桜の花エキス-LC(水溶性液体,化粧品用途)
5 kg
内装:キュービーテナー
外装:ダンボール包装
10. 保管方法
桜の花エキス-P,-PC:高温多湿を避け,室温にて暗所に保管して下さい。
桜の花シロップ:室温,暗所に保管して下さい。
桜の花エキス-LC:室温,暗所に保管して下さい。
38
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
11. 表示例
<食品>
・桜の花エキス-P
表示例: 桜の花エキス加工粉末,または
〔澱粉分解物/デキストリン〕,
〔桜の花抽出物/桜の花エキス/桜抽出物/桜エキス/サクラの花抽出物
/サクラの花エキス/サクラ抽出物/サクラエキス〕,
〔アスコルビン酸〕,〔リンゴ酸〕
* 〔〕内に複数表記がある場合は,商品に合わせて選択してください。
・桜の花シロップ
表示例: 桜の花エキス加工液,または
〔還元水飴/液糖〕,
〔桜の花抽出物/桜の花エキス/桜抽出物/桜エキス/サクラの花抽出物
/サクラの花エキス/サクラ抽出物/サクラエキス〕,
〔アスコルビン酸〕,〔リンゴ酸〕
* 〔〕内に複数表記がある場合は,商品に合わせて選択してください。
*食品表示については所轄の保健所及び地方農政局にご確認下さい。
<化粧品>
・桜の花エキス-PC
INCI 名
:Dextrin (and) Prunus Lannesiana Flower Extract (and) Ascorbic
Acid (and) Malic Acid
表示名称
:デキストリン,サトザクラ花エキス,アスコルビン酸,
リンゴ酸
・桜の花エキス-LC
INCI 名
:Water (and) Butylene Glycol (and) Prunus Lannesiana Flower
Extract (and) Ascorbic Acid (and) Malic Acid
表示名称
:水,BG,サトザクラ花エキス,アスコルビン酸,
リンゴ酸
39
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
製品規格書
製品名
桜の花エキス−P
食品
本品は、サクラすなわちバラ科サクラ (Prunus Lannesiana)の花から含水エタノールで抽
出して得られた粉末である。本品は定量する時、カフェオイルグルコースを2.0%以上、ケル
セチングルコシドを0.05%以上含む。本品は水溶性である。
性
状
淡桃色∼淡赤褐色の粉末で、わずかに特有なにおいがある。
カフェオイルグルコース含量
2.0 % 以上
(HPLC)
0.05 % 以上
(HPLC)
10.0 % 以下
(衛生試験法,1 g,105℃,2 時間)
ケルセチングルコシド含量
乾燥減量
純度試験
(1)重金属(Pbとして)
(2)ヒ
素(As2O3として)
20 ppm 以下
(硫化ナトリウム比色法)
1 ppm 以下
(食品添加物公定書、第3法、装置B)
一般生菌数
3×103 個/g 以下
(衛生試験法,標準寒天培地)
真菌数
1×103 個/g 以下
(衛生試験法,ポテトデキストロース
寒天培地クロラムフェニコール添加)
大腸菌群
組
陰
性
(衛生試験法,BGLB 培地)
成
成 分
澱粉分解物
桜の花エキス
アスコルビン酸
リンゴ酸
合 計
含有量
69 %
25 %
3 %
3 %
100 %
賞味期限
製造後2年間
保管方法
高温、直射日光を避け、換気が可能な湿気のない暗所にて密
封状態で保管する。
40
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
製品規格書
製品名
桜の花シロップ
食品
本品は、サクラすなわちバラ科サクラ (Prunus Lannesiana)の花から含水エタノールで抽
出して得られた抽出物を還元水飴に溶解して得られた液体である。本品は水溶性である。
性
状
淡桃色∼淡赤色のシロップで,わずかに特有なにおいがある。
純度試験
(1)重金属(Pbとして)
(2)ヒ
20 ppm 以下
素(As2O3として)
(硫化ナトリウム比色法)
1 ppm 以下
(食品添加物公定書、第3法、装置B)
一般生菌数
1×103 個/g 以下
(衛生試験法,標準寒天培地)
真菌数
1×102
(衛生試験法,ポテトデキストロース
寒天培地クロラムフェニコール添加)
大腸菌群
陰
組
個/g 以下
性
(衛生試験法,BGLB 培地)
成
成 分
還元澱粉糖化物
桜の花エキス
アスコルビン酸
リンゴ酸
合計
含有量
99.40 %
0.48 %
0.06 %
0.06 %
100.00 %
賞味期限
製造後1年間
保管方法
高温、直射日光を避け、換気が可能な湿気のない暗所にて密封状
態で保管する。
41
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
製品規格書
製品名
桜の花エキス−PC
化粧品
本品は、サクラすなわちバラ科サクラ (Prunus Lannesiana)の花から含水エタノールで抽
出して得られた粉末である。本品は定量する時、カフェオイルグルコースを 2.0%以上、ケル
セチングルコシドを 0.05%以上含む。本品は水溶性である。
性
状
淡桃色∼淡赤褐色の粉末で,わずかに特有なにおいがある。
カフェオイルグルコース含量
2.0 % 以上
(HPLC)
0.05 % 以上
(HPLC)
乾燥減量
10.0 % 以下
(1 g,105℃,2 時間)
純度試験
(1)重金属(Pbとして)
(2)ヒ 素(As2O3として)
20 ppm 以下
1 ppm 以下
(第2法)
(第3法)
ケルセチングルコシド含量
一般生菌数
1×102 個/g 以下
(衛生試験法,標準寒天培地)
真菌数
1×102
個/g 以下
(衛生試験法,ポテトデキストロース
寒天培地クロラムフェニコール添加)
性
(衛生試験法,BGLB 培地)
大腸菌群
組
陰
成
成 分
デキストリン
サトザクラ花エキス
アスコルビン酸
リンゴ酸
合 計
保証期限
含有量
69 %
25 %
3 %
3 %
100 %
製造後2年間
保管方法
高温、直射日光を避け、換気が可能な湿気のない暗所にて密
封状態で保管する。
この規格及び試験方法において,別に規定するものの他は,外原規通則及び一般試験法を準
用するものとする。
42
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
製品規格書
製品名
桜の花エキス−LC
化粧品
本品は,桜すなわちバラ科サクラ(Prunus Lannesiana)の花から含水エタノールで抽出
したエキスを,含水1,3-ブチレングリコール(BG)に溶解して得られた水溶性溶液である。
性
状
褐色∼赤褐色の溶液で,特有なにおいがある。
確認試験
ポリフェノール類
本品30 µl を,3.5 ml の水に加え,フォーリンデニス試薬 0.2 ml
と飽和炭酸ナトリウム溶液 0.4 ml を加えるとき,液は青色を呈する。
3.0 ∼ 5.0
pH
純度試験
(1)重金属(Pbとして)
(2)ヒ
素(As2O3として)
(本品の10%水溶液)
10 ppm 以下
(第2法)
1 ppm 以下
(第3法)
一般生菌数
1×102 個/g 以下
(衛生試験法,標準寒天培地)
真菌数
1×102 個/g 以下
(衛生試験法,ポテトデキストロース
寒天培地クロラムフェニコール添加)
大腸菌群
陰
(衛生試験法,BGLB 培地)
組
性
成
成 分
水
BG
サトザクラ花エキス
アスコルビン酸
リンゴ酸
合計
含有量
68.76 %
30.00 %
1.00 %
0.12 %
0.12 %
100.00 %
保証期限
製造後2年間
保管方法
高温、直射日光を避け、換気が可能な湿気のない暗所にて密封状
態で保管する。
この規格及び試験方法において,別に規定するものの他は,外原規通則及び一般試験法を準
用するものとする。
43
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
商品企画からOEM生産まで
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* 本書の無断複写,及び流用は,著作権法上の例外を除き,禁じられています。
* 本カタログに記載された内容は,都合により変更させていただくことがあります。
* 今回の改訂箇所
・P.37 栄養成分の成分変更
・P.41 桜の花シロップの規格変更
制定日 2010 年 4 月 26 日
改訂日 2013 年 10 月 1 日
桜の花エキスカタログ
Ver.5.0MM
ORYZA OIL & FAT C HEMIC AL CO., LTD.