特集記事 – 1 < 人が 「モノを識別し,数える」 ことが不要になる時代 > ソリューション第一事業部 流通ソリューション部 物流システム担当 主任 溝江 吉記 物流は,“正確にものをお届けする”ことによって荷主で あるお客様のCSを満たします。また更なる信用を勝ち取 るためには,業務の無駄をなくし,精度と効率の飛躍的な 向上が必要です。しかし,多品種化し,高速化,複雑化す る物流現場では,これまで以上に高いレベルで荷扱いの 安全性と確実性が求められています。 これらの課題を解決する目的で導入する情報システム には,まだ「モノの識別」と「モノを数える」ことに人間が介 在する部分があり,大きな弱点であるといえます。 当社の物流ソリューションであるStandard Logistics Package 「LIGNS-RTM 」RFID対応版は,最小限の人の 介在で“モノの認識”と“モノを数える”ことに最大の威力を 発揮するRFIDを活用したもので,物流現場の「伝票レス」 「停滞レス」「モノ探しレス」をコンセプトにしたWMSソ リューションです。 物流現場においては,確実にモノを管理し出庫する仕組 みの確保のために非常に強力なツールであり,高品質な 物流業務の実現とコストダウンを達成する新兵器です。 1. お客様の物流課題を解決します 物流業務には,「必要な時に,必要なモノを,必要な数 お届けする」という必須の役割があります。そのため現在 ほとんどの物流センターでは,モノに貼付してあるバー コードを1点1点読み取って検品精度の向上を図っていま すが,まだまだ人海戦術です。 ・ お客様の利益を圧迫している物流コストを抑えたい。 ・ 「人間は間違う」を前提に,ミスを防ぐ仕組みにしたい。 ・ 瞬時にモノの識別と,数(かず)を正確に認識したい。 これら物流現場の業務改善課題の中で「モノの識別」と 「モノを数える」工程は,正確性の向上,省力化,省人化, そしてコストダウンが可能な重要な部分といえます。 この工程に自動認識機器(RFIDリーダー/ライター)を 導入することによって,上記の課題を解決できるだけでな く,熟練者でなくても正確かつ迅速に処理することができ るようになります。更に次の導入効果が期待できます。 ① 間違い・勘違いの減少,出荷品質の向上,クレームな どの後処理の激減 ② 瞬時の一括読み取り(モノの識別と数を数える)による 物流現場の生産性の向上 ③ PAS化率(パート,アルバイト及びシルバーと正社員の 比率)の向上による大幅なコストダウンの達成 2. 現場改善志向型物流ソリューション (1) ソリューション名称 Standard Logistics Package 「LIGNS-RTM」RFID対応版 本ソリューションは,東芝グループの物流部門である東 芝物流株式会社が物流機能統合と拠点集約の過程で得 られた現場ノウハウを集大成して構築した「LI-GNS® 」 (Logistics Innovation 現場 New Systemの略)と,(社) 日本ロジスティックスシステム協会が「物流事業者向け業 務アプリケーションソフトウェア開発事業」の基本システム として採用したStandard Logistics packageを統合した ソリューションです。 ここでは,本ソリューションの入荷検品・出荷検品工程に RFIDを採用したものをご紹介します。2006年春までには, 他工程へのRFID活用を順次拡大する予定です。 (2) ソリューションの特徴 ①配車計画業務と倉庫業務の完全な情報共有により,配 送計画後に出荷指示することができ,積み込み作業など に無駄が発生しません。 ②様々なEDIへの対応で他システムとの連携が容易です。 ③作業指示データのスケジュール化により,作業の平準 化(ピーク崩し)が図れます。 ④進捗,作業負荷,作業実績をリアルタイムに把握し, “見える物流現場”を実現します。 ⑤蓄積データを現場作業分析や SCMデータに活用で き,資産となります。 ⑥現場担当者に優しく,簡単で,誰でも操作できます。 ・・などを特徴としています。 3. 入荷検品,梱包検品のRFID実施例 物流センターは,入荷の精度でそのセンターの品質,効 率がわかるといわれています。入荷時に正しくモノを識別 し,数を数えて,収まる所へ格納することが後工程の作業 Warehouse Management System (標準機能) パートナー 連携 EDI送受信 入荷受付 出荷受付 配送依頼受付 配送業務 最適配車 支援 物流 設備機器 オプション 受付業務 配車計画 自動積付 自動増車 積替調整 積込検品 配送指示書 バース予約 運賃試算 入 荷 出 荷 WMSエンジン 現品在庫 棚卸し 倉庫業務 入出荷作業 入荷検品 入庫作業 出荷作業 出荷検品 在庫管理 作業管理 棚卸し 進捗管理 ハンディ ターミナル 分析支援 請求・支払業務 オプション 請求計算 支払計算 会計インター フェース LIG LIGNSNS-R 作業実績 配送実績 帳票ツール 分析支援情報 分析支援情報 蓄積 在庫履歴 作業実績 配送実績 マイニング ツール 分析 在庫履歴 図1. LIGNS-RTM機能概念 WMSソリューション標準機能を上記(中央枠内)に示します。 注記:分析支援オプションは,発生データの蓄積までとなります。 分析には別途「マイニング ツール」が必要です。 4 「東芝ソリューション テクニカルニュース」 2005年(冬季号) 能率を大きく左右します。特に出庫の際は,指定場所から 指定された数を出庫する内容をコンピュータに指示するこ とで,誰でも正確にピッキングすることができます。 入荷検品時にモノを間違って認識したり,数え間違えた りすると,後工程(出庫)時に現場作業で一番無駄とされる 「モノ探し」を発生させることになります。RFIDの活用に よって,このような無駄を撲滅し,精度と効率を飛躍的に 向上させることができます。 また物流センターの出庫作業の代表的な例として,ケー スそのもの(元梱)を出庫する場合と,ケースを崩し個品 (バラ品)にして,ユニット(輸送梱包箱=通称:通い箱な ど)に混在させて出庫する場合の2つの形態があります。 RFIDが入庫時から個装タグとしてバラ品1個1個に貼付 されていて,出庫指示がバラ品の場合は,ユニット(輸送 梱包箱)の内梱保証明細(中に何をいくつ入れたか)を確 認することが重要です。この確認作業により,モノを受け取 る現場で「ノー検品」が可能となります。 「ノー検品」は大きな効率向上を実現すると同時に,モノ を送受する荷主に梱包明細を保証することで顧客満足度 向上に大きく貢献します。RFIDの威力です。 このようにRFIDを採用することによって,人間が二重三 重にチェックするような検品システムを構築することなく, 効率的かつ高品質という効用を同時に手に入れることが できます。 RFID 入荷検品リスト Ok? すべてを読み切れない場合を想定しておく必要がありま す。モノはキチンとあるのにRFIDの不具合で読めない ケースです。現実にモノが不足していれば,入荷不足で 報告することになりますが,このケースは,モノはすべて到 着しているのですから,入荷不足ではありません。この場 合“何個あるはず”という事前情報を用意しておくことで対 応できます。中味を数えて問題がなければ“RFID過不足 あり”などの紙を貼付し,後工程に支障を起こさない対応 ができます。 (2) RFID貼付位置 RFIDを貼付する位置は,荷物の特徴を想定しておくこ とが必要です。例えば金属で囲ったモノは, RFIDをうまく 読めない位置が存在します。冷蔵庫の例では,出っ張っ ている扉の取手が段ボールとの間に隙間を作るため,前 面の読み取り精度が一番よいという実験結果となりました。 側面・裏面はかなり読み取り精度にバラツキがありました。 (3) どのRFIDを読み込んだのかの見分け 特にゲートなどの高出力RFIDリーダ/ライタの場合は, 本当にターゲットとなる荷物のRFIDを読んでいるか,ター ゲットの近くにある他のRFIDを読み込んでいないかの事 前検証が重要です。万一,この様な現象が発生した場合 には,ターゲットのRFIDのみを正確に読み込む環境作り を工夫する必要があります。電波遮へいカーテンや倉庫 のレイアウト設計など,RFID導入のノウハウが必要です。 (4) RFIDが故障している場合 モノは正しく来ているが,RFIDが故障で,RFIDリーダ でスキャンできない場合もあり得ます。業務を停滞させな いためにも,注意を要する旨の張り紙などを用意しておく ことも重要です。 図2.入荷検品イメージ図 RFIDの読み取りは,どんな環境においてもすべて読みとることを 保証することはできません。RFIDスキャンには正解となる事前出 荷明細情報が必須です。 ピッキング リスト 図4.梱包検品画面例 事前出荷情報と照合してOKであれば「○」, NGは「×」が表示さ れます。イレギュラー処理の対策ルールが必須です。 図3.梱包検品イメージ図 5. 世界標準EPCglobal バラ品のピッキング作業後に,ユニット(輸送梱包箱)へ詰め込む 直前にRFIDスキャンしてユニットとモノ(内容物)をひも付けしま す。この梱包明細を事前出荷明細情報として送信します。 4. イレギュラー処理の対策が必要 本ソリューションは現場にやさしいシステムの構築を目指 しています。しかし,RFID導入において,次の4つの対応 策は,絶対条件といえるほど重要です。 (1) 現場の電波状況 RFIDタグの一括スキャンにおいて,環境や電波状況で RFIDの世界標準となるEPCglobalの策定がまとまりつ つあり,日本でも2005年後半から2007年にかけて,急速 にいろいろなRFID対応のソリューションが創出されるもの と予測されます。物流システムとしては, EPCglobalを採 用したトレーサビリティの実現が待たれ,EPCglobalのネッ トワーク機能により,RFIDの導入に更に大きな弾みがつく と期待されます。 【特許】 *本稿に掲載の技術は,出願中の特許で保護されております。 5 「東芝ソリューション テクニカルニュース」 2005年(冬季号)
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