障害者支援施設での焼き菓子の製造指導や販路拡大、児童養護施設などへの訪問活動、さらには小学校での食育の推進活動など、 拡大を支援する「クッキープロジェ 加してほしい」と電話で依頼があっ その県職員の方から、ある時「明 日浦和でイベントがあるからぜひ参 長年にわたり食を通じてさまざまな活動を実践されているパレスホテル大宮の毛塚智之さんにお話を伺いました。 ク ト( 以 下、 プ ロ ジ ェ ク ト ) 」に関 たのです。 何をするかも告げられず、 ―障害者支援施設の商品開発や販路 わっていらっしゃいますが、どのよ ペンとエプロンを持参するように言 をお出ししたり、テーブルマナーの には、施設で行うビュッフェで料理 当時ご紹介いただいた児童養護施設 県 職 員 の 方 と 相 談 を し て い ま し た。 訪問しようということになり、埼玉 への恩返しとして、社会福祉施設へ 年を迎えるにあたり、地域の皆さん 職員の方に「味の面でアドバイスを クトの一つで、主催者の方が同じ県 の助成を受けて行っているプロジェ イベントは埼玉県のシラコバト基金 れ ま し た。 後 で 分 か っ た の で す が、 でアドバイスをして欲しい」と頼ま られてあり、そこで初めて「味の面 会場に行ってみると、いくつかの 障害者施設で作られたお菓子が並べ 覚 え て い ま す( 笑 )。 で も こ れ が き 売り 物 に な ら な い 」 と 答 え た こ と を と、 歯 に く っ つ い た り し て 「 こ れ は てく れ と い わ れ 、 実 際 に 食 べ て み る 知な 世 界 で し た 。 率 直 に 意 見 を 言 っ 入観 が あ る ほ ど 、 私 に は ま っ た く 未 たも の だ か ら 売 れ て い る 」 と い う 先 ま ず い 」 で は な く て、「 施 設 で 作 っ 今 だ か ら 言 え ま す が 、 当 時 は 障 害 者施設で作られた製品は「おいしい・ につ な が っ た と い う 訳 で す 。 と相 談 し て い た そ う で す 。 そ こ で 私 合いのある百貨店などに取り扱いの とが分かりました。そこで、お付き 販売場所の確保に苦慮されているこ 次に考えたのは、販路についてで す。実情をお伺いすると、施設では した。 の向上のためのアドバイスを行いま どの改善点を提示することで、品質 き、材料や製造工程を変えてみるな うので、逆にレシピを見せていただ あったと思うのですが、それではか ピをもらえるのでは」という期待が りました。つまり、ホテルで取り扱 るお手伝いになればということにあ 取 り 扱 う こ と で、 「安心」を広報す 扱わせていただく狙いは、ホテルで 実は、販売にあたって私どもはマ ージンを頂いていません。私どもが ような契約をされていますか。 ね。販売にあたって福祉施設とどの ているものは手に取りやすいですよ ―確かに、ホテルで実際に提供され した。 お客様がいらっしゃるようになりま 持った人のためにも、携わる職員の 員が退職してしまいました。障害を ある時若手の部下が「プロジェク トを通して知り合った熱心な施設職 いただける方がいないでしょうか」 っか け と な り 「 良 い も の を 作 る お 手 相談をしたのですが「衛生面や味の うことのできる衛生基準・クオリテ 方々が、やりがいや思いを持てる環 境が必要なのでは」 と言ったのです。 です が 、 受 賞 し て 取 材 を 受 け た り し 員さ ん に つ い て 、 施 設 長 か ら 「 今 ま ます 。 賞 を 取 っ た あ る 施 設 の 担 当 職 いた だ け る よ う に な っ た と 感 じ て い 実 際 、 コ ン テ ス ト を 始 め て み て 職 員の 皆 さ ん に は 目 標 を 持 っ て や っ て で始 め ま し た 。 にか く や っ て み よ う よ 」 と い う こ と のモ チ ベ ー シ ョ ン も 大 事 な の で 、 と 施設 側 と し て は 、 私 ど も か ら 「 レ シ な い 」 と い う こ と に 気 付 き ま し た。 も違 っ て お り 「 同 じ こ と を や っ て い の状 況 も 、 作 っ て い る も の も 、 工 程 模や 関 わ る 職 員 さ ん や 利 用 者 の 障 害 福祉 施 設 と は い っ て も 、 そ れ ぞ れ 規 らい ま し た 。 す る と 、 同 じ 障 害 者 の ている小中学校などでの食育に関す ―毛塚さんは、さいたま市が実施し もご協力できたらと思っています。 っていただけるよう、今後も少しで る人たちや職員の方々にも自信を持 人たちに知っていただき、働いてい えてきています。このことを多くの い製品を作ることができる施設は増 と思っています。それぐらい今は良 す。お世辞抜きで高いレベルにある、 横でその商品を手に取ってくださる てみました。すると、帰りにレジの ヒーの皿に焼き菓子を添えて提供し いたことをヒントに、ホテルでコー 「羊の絵の焼き菓子」が添えられて デザートのプリンに、施設が作った また、北海道の出張の際、出された す。昨今の凄惨な事件の報道に接す 関心を持ってもらいたいと思いま 私はシェフ給食を通して、子ども たちにはもちろん、保護者にも食に うか。 ってしまっているのではないでしょ だと思います。これが一番希薄にな は 食 育 の 柱 と な る「 家 族 だ ん ら ん 」 今も昔も子ども自体は変わってい なくて、一番変わってしまったもの いて、私の料理人としての志です。 くなければ美味しくない」と思って 私は、子どもたちに食を通じた「楽 い っ た お 祭 り 的 な も の で は な く て、 がちなシェフが料理を提供する、と ただいております。一般的に想像し 活動で、5年ほど前からお声掛けい さいたま市との食育の関わりの始 ま り は、「 シ ェ フ 給 食 」 と い う 訪 問 ているのではないかと思います。 たことを伝えていくことが求められ んの楽しさが重要であり、そういっ ためて家族との食事や会話、だんら 家族、おふくろの味が欲しい。あら ンクフードだけでなく、あったかい たのですが、よく考えたらこれはす ごく重要なことだと感じたのです。 そこで「職員のモチベーションを 上げる何かをしたい」と思い、コン テ ス ト を 開 催 す る こ と に し ま し た。 その時、関係者の中からも「施設の 人たちは一生懸命やっている。それ に甲乙つける、というのはどうなの か」とご意見をいただきました。確 か に そ れ も 分 か る の で す が、 「施設 で良い製品を作り出すためには職員 おか げ て、 も の す ご く 明 る く な っ て 、 や る る事業にも関わっていると伺いまし るたび、もし、加害者に家族と食事 一部 を 、 施 設 に ア ウ ト ソ ー シ ン グ し しさ」を伝えていきたい、そして食 今後も、私はプロジェクトやコン テスト、食育活動等、食の楽しさを 最初はどういうことか分からなかっ ているのです。実際、今では百貨店 行われるようになったのですか。 いますが、これはどういった経緯で 子コンテストを開催していらっしゃ プという、障害者施設で作る焼き菓 ―現在、プレミアムクオリティカッ ができている」実感があります。 なってきています。そういう「発信 業のノベルティに使われるようにも や、ウェディングの引き出物や、企 伝い を し た い 」 と い う 強 い 思 い を 持 ク オ リ テ ィ」 な ど に 誤 解 も あ っ て、 ィにあることを発信できればと思っ しかし「ここであきらめることは できない」と、まず自分のホテルを した。 えって施設の持ち味を失くしてしま つよ う に な り 、 お 手 伝 い を さ せ て い 当時は良い返事をいただけませんで 関わ っ た の で し ょ う か 。 何度も説得して、販売に漕ぎ着ける ことができました。現在では、年間 施 設 の 製 品 を 販 売 し て い ま す。 気も で て き て 、 成 長 し た 」 と 伺 い ま た。さまざまな活動を通じて感じて をとれる環境があったならこんな事 で した 。 私 た ち が 意 図 し て き た こ と が いること、また伝えたいメッセージ 件 は 起 こ ら な か っ た の で は な い か、 初 め の 2、3 カ 月 は、 県 内 の 多 く の福 祉 施 設 を と に か く 訪 問 さ せ て も 少し で も 形 に な っ て 良 か っ た な と 思 などお願いします。 で少 し 引 っ 込 み 思 案 な 職 員 だ っ た の いま す 。 と同業者の間で話題になったりしま て製 造 を お 願 い す る よ う に な り ま し に関心を持ってもらいたい、という 伝えていきたいと考えています。食 す。カップラーメンだったり、ジャ た。 施 設 で 製 造 さ れ た ケ ー キ は パ レ ことを一番に考えて活動していま を通してお力になれることがあれ さ ら に 現 在 は 、 一 歩 進 め て 、 ホ テ ルで 提 供 し て い る パ ウ ン ド ケ ー キ の スホテルの商品として販売されま す。食の大切なところは、美味しい 洗浄消毒センター/三郷市早稲田8-25-6 流山営業所/流山市平和台3-2-41 葛飾営業所/葛飾区亀有4-25-8 本 社/三郷市早稲田3-16-5 三郷営業所/三郷市早稲田3-8-1 早稲田介護相談室/三郷市早稲田3-8-1 彦成介護相談室/三郷市彦成3-7-12-101 彦成ヘルパーステーション/三郷市彦成3-7-12-101 お菓子づくりを見守る毛塚さん。 ば、なんでも協力したいと思ってい 介護保険事業所番号 1171200213 ―実 際 、 プ ロ ジ ェ ク ト に ど の よ う に ただ く こ と に な り ま し た 。 問しています。 講座を行うなど、今でも継続して訪 があるプロジェクトだったのです。 われて参加したのですが、実はそれ うなきっかけがあったのですか。 20 2007年当時、私どもパレスホ テルが丸の内から大宮に開業して 1968 年栃木県栃木市生まれ。 情熱と熱意、そして料理の原点である「母親の味」を常に信念に持 ち、ホテルのみならず、お客様の自宅で高級フランス料理を提供す ると共に、次世代の子ども達の食育セミナー、講演等に積極的に取 り組む。2014 年には、彩の国優秀技能者「埼玉の名工」を西洋料 理界より初めて受賞する。座右の銘は「食は楽しいが原点であり想 いと言う最高のスパイスと共に」 内閣府認定公益社団法人全日本司厨士協会総本部教育指導委員長、 シェフクラブ SAITAMA 理事、埼玉県食の安全県民会議委員歴任、 さいたま市障害者授産支援アドバイザー、埼玉県技能検定委員 ( 西 洋料理 ) など多数。 ではなく、間違いなく「楽しい」が 30周年 まで さ 2 2016 年 10 月号 2016 年 10 月号 けづか・ともゆき ます。 福祉用具貸与・販売/住宅改修 訪問介護サービス 12 原点だと思っています。食は「楽し プレミアムクオリティカップ 2016 年 の優勝作品。 3 2016 年 10 月号 4 巻頭インタビュー 毛塚 智之 さん パレスホテル大宮 副料理長兼宴会・洋食レストラン統括料理長 食の原点は楽しさにあり 食 の原点 は楽 しさにあり 巻頭インタビュー 法に定められた制度です。 な雰囲気の中で育てていく、児童福祉 として迎え入れ、温かい愛情と家庭的 里親制度とは、様々な事情により家 庭で生活できない子どもを家族の一員 ことを確認していると考えています。 るか、見捨てることはないのかという 里親が自分を無条件に受け入れてくれ うちにそういう「問題行動」を通して、 と呼んでいますが、子どもは無意識の け ま す。 私 達 は そ れ を「 試 し の 行 動 」 盗みなど里親を困らせる行動を取り続 庭から多くのものを得ていると言えま にして、子どもは自立に向けて里親家 できます。里親との深い信頼関係を基 会との付き合い方も学んでいくことが 自然に体得していきますし、近隣や社 里親制度の意義はそれだけに留まり ません。家庭生活を通して親モデルを の一番の意義があると考えています。 となのだと思います。そこに里親制度 めない、里親家庭だからこそできるこ り、集団で生活する施設では決して望 な成長のために必要不可欠なものであ と言えます。それは、子どもの健やか ゃん返り」により育ち直しをしている 子どもは「試しの行動」により基本 的な大人との信頼関係を獲得し「赤ち います。 の遊びを通して確認しているのだと思 祝福されたものだったということをそ を繰り返します。それは、自分の生が れて良かった」と喜ぶ。そうした遊び (性別や年齢等)が限定的という3点 ある、③里親の受託する子どもの条件 にくい、②子どもに様々なハンディが まない理由は、①保護者の同意がとり しかし、里親家庭を必要とする子ど もも少なからずいます。里親委託が進 ます。 施設で生活する子ども達の多くは、家 も は 3 0 0 人 弱 な の で す。 も ち ろ ん、 くいる一方で、里親家庭に暮らす子ど で生活している子どもが1500人近 玉県の現状は、乳児院や児童養護施設 家庭で生活できない子どもに新しい 家庭を、と私達は考えていますが、埼 す。 の何よりの支えになっているようで 里親会の里親同士のつながりは、里親 の役割を担ってもらっています。特に 設と里親をつなぎ、里親支援者として 関や里親会、子どもの所属していた施 福祉 を考 える 家庭で生活できない子ども達の多く は、乳児院や児童養護施設で生活して 里親が無条件に自分を受け入れてく れ る 存 在 で あ る こ と が わ か る と、「 赤 す。 子どもの健やかな 成長のために 団の中で育つより家庭で育つ方がいい ちゃん返り」を始めます。這い這いし、 時 期 ま で 遡 り 満 た さ れ よ う と し ま す。 ります。子どもは、満たされなかった が重要だと思っています。児童相談所 のがあります。だからこそ、里親支援 とはいえ、そうした子どもにつきあ う里親の苦労は筆舌に尽くしがたいも そ う し た 社 会 が 作 ら れ て い く こ と が、 多くの方が里親制度をきちんと理解 して、里親家庭を温かく見守っていく。 があります。もう一つ、里親制度が知 多くの子は「出産ごっこ」を繰り返し は、 個 別 の 支 援 だ け で な く、「 委 託 直 と思っています。 れていないことも大きいと思います。 られていないことやその意義が理解さ 里親家庭で暮らすことになった子ど もは、見せかけの「いい子」の時期が やりたがります。里母のシャツに潜り います。そうした施設の、いわゆる集 埼玉県中央児童相談所 里親委託等推進員 鬼澤 平隆 ―里親制度の意義と課題― というのは、自明のことのように思い おむつをしたがり、哺乳瓶を使いたが ますが、里親制度の意義はもっと深い り、おんぶや抱っこをせがむようにな 庭とつながり、家庭復帰を目指してい ものだと思っています。 過ぎると様々な「問題行動」を起こし 里親制度推進の何よりの原動力になる 開催して里親子をフォローする仕組を 後研修」や「里親サロン」を定期的に ぎゃー」とシャツから飛び出してくる。 作っています。一方で、地域の関係機 込 む。 里 母 が 陣 痛 の 真 似 を す る。「 お な偏食) 、 排 泄 の 問 題( 失 禁 や 弄 便 ) 、 里母は「こんな可愛い赤ちゃんが生ま ます。それは、食の問題(過食や極端 暴 力 暴 言、 号 泣 長 泣 き、 癇 癪、 虚 言、 2016 年 10 月号 5
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